唯我蓮華~止まる運命?動き出す宿命~
河童に転生した捲簾。
しかし彼にはもう何もなかった。
私は捲簾
私は天界での陰謀により命を落とした。
天界の破壊光線により私は遮那共々消滅した。
けれど寸前に一か八かの賭けを施した。
それは今一度再転生する術。
しかし目覚めた私は異郷の地の湖の中にいた。
しかもそこに写る私の姿は?
頭に皿を乗せた河童と呼ばれる妖怪だった。
しかも私の持っていた神力は全て失われていた。
「今の私は無力なのか?」
遮那が生きているのか?
無事に転生出来たのかも分からないまま。
私はとにかく力を求めた。
仮にも妖怪。
多少時間はかかっても妖力はあるのだから、仙術を会得さえすれば遮那の居場所を探り当てる事も出来るかもしれない。
それに・・・私達の運命について伝えられなかった全てを語らねばならないのだから。
私は自分の置かれている状況を把握に努める。
私は捲簾として自覚するのに時が経った。
河童として産まれ、成長し、湖で水浴びをしている時に記憶が戻ったらしい。
それまでの河童での私の記憶も残ってはいる。
この近辺の族長の息子で、直族長として選ばれる日に反対派の河童達に拉致され殺されそうになっていた。貧弱だった河童の私が命の危機に捲簾としての自我が目覚めた事で拉致した者達を返り討ちにし、そしてまだボヤける頭で水浴びしていた。
「多少は捲簾の記憶が役に立つようだ」
確かに術や神力は失われたとしても生き残るための知識は残っていた。
治癒術は出来なくとも薬草で薬は作れる。
天界の武術で鍛えた肉体は失われても策を練って軍師として戦う事は出来る。
「この新たな生も無駄にならないはずです」
私は今出来る事をしようと試みる。
そんな私の豹変ぶりを周りの河童達は異様に思ったに違いない。
それでも私は時間を惜しんで己を高めるしか出来ない。
数年の後、私は神気こそ失われたが多少の妖気を身につける事が出来た。
それでも使える技術は身体の強化と、水術。
私は湖の中で意識を高めると水気がオーロラのように光り輝き枯れていた花や樹木が活性化していく。
水術の根源は自然界の活性なのだから。
「ん?」
すると離れた大木の影から何者かが落ちている枯れ枝を踏み音が聞こえた。
誰かいるのでしょうか?
私が振り返ると、そこには人間の女性が私の姿を見て立ち止まったまま固まっていたのです。
彼女は近くの人間の村に住むサラという女性。
「貴方は神様なのですか?」
恐る恐る彼女は私に近付き話しかける。
「私が神様に見えますか?ふふふ。私はしがない河童と呼ばれる水妖ですよ」
「か、河童?」
「はい。河童ですよ」
「そうなのですね。私はてっきり」
「てっきり?これでも私は妖怪なのですが、私の事が恐くはないのですか?まぁ〜取って食べたりはしませんけどね」
「恐くはないです。だって貴方は綺麗だから」
「あはは!私よく言われます。美形だとね」
「貴方の瞳が美しく綺麗だから」
「あちゃ〜そっちでしたか?」
と、私は初めて出会った彼女と他愛もない話をしていた。
まるで昔からの知り合いのように。
意気投合した私とサラは人目を忍び度々会っては他愛もない話をするようになった。
まさか私が自分の使命以外で心を許しあえるなんて正直、思ってもみなかった。
それだけ彼女との時間が憩いになっていた。
しかし私には宿命があるのだ・・・
例え力を失ったとしても。
戦場で消えた遮那の事も気掛かりだし、天界に潜み、私を洗脳したあの者の動向も。
このような場所で立ち止まっている場合ではない。
私は独自で占星術を使えるようになっていた。
まだ力は不十分だが、知りたい事は分かるはずだ!
「そ、そんな馬鹿な事が・・・」
私はそこで知ってしまった。
あの出来事から時が立ち過ぎている事。
しかも今いる世界は私のいた世界と時系列が異なるという事実だった。
平行世界と呼ばれるパラレルワールド。
似たような歴史の分岐した時間軸。
とにかく今いる私の世界からは存在しない世界にいたのだと。
こうなると禁忌を犯して未来や過去に渡れたとしても、過去いた同じ世界には渡れない。
詰んだ・・・
こうなってしまえば今の私の力では何も出来ない。
出来ないのだ!
嘗ての力さえ戻れば、観音菩薩と私の持っていた金色の魔眼の力さえあれば時を渡り、異なる平行世界にさえ行けたかもしれなかったと言うのに・・・
しかし今の私はただの河童に過ぎないのだ。
今の私に出来る事は何もないのか?
絶望と無力感に苛やまされる私をいつも傍で支えてくれたのがサラだった。
そして時が経ち、私は諦めていた。
私の役目はもう終わったのだと・・・
そして新たな人生を送っていた。
サラとともに。
「ふぎゃ〜ふぎゃ〜」
私とサラの間に新たな生が産まれた。
そして私はその自分の赤子をひと目見て驚愕してしまった。
同時に自分にはまだ役目が残っている事を知ってしまったのだ。
「こんな事が?私はまだ諦められない」
私の赤子は、私の友の生まれ変わり。
永遠の時の中で廻り逢えた転生者。
しかしそれはあってはならなかった。
あの世界でこの子は他の運命の友と出逢わなくてはならないのだから。
だから私は送り届けなければならない。
共に永遠の絆を持つ他の三人の友のもとに!
そして力を合わせて戦わなければならない。
あの世界の終わりと!
そんな私の決意に気付いたサラが私の手の甲に掌を重ねて話しかける。
「この子は優しい子に育って欲しいです」
「そうですね。サラ」
私と人間のサラとの間に産まれた半人半妖の子。
私達は、この子の名を沙悟浄と名付けた。
次回予告
再び時を渡る手段を考える捲簾。
捲簾と妻子に迫る危機!
そこに現れたのは?
※今話の物語は過去作 転生記の「八戒と沙悟浄!その過去?」 https://ncode.syosetu.com/n0468cc/19/
の伏線回収です。




