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隔世異伝・転生記~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
女子高生蛇神討伐編~黄金の瞳編~
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心の迷宮?沙悟浄を救い出せ!

白骨乙女と錬体魔王の死


その死が繋ぐ思いに答えられるのか?


私は法子。

私達の目の前で白骨乙女さんと錬体魔王さんが命を賭してまで作ってくれたチャンス。

泣いてばかりでは駄目!

私達に今出来る事は戦う事なのだと胸に誓う。


白骨乙女さんと錬体魔王さんは戦う前に二人きりで話をしていたの。

「余計な事に首を突っ込んでごめんなさい」

「何を謝る?私はお前と共に有るのであればそれ以外に求めるものはない」

「ウフッ」

二人は笑みを見せ合うと、

「私ね、人間だった頃は六人姉妹でずっと旅をしていてね?そこで妖怪に襲われ死んだの」

錬体魔王さんは黙って聞いていた。

「私はその後、一人妖怪に転生してしまったけど。人間だった時も今の妖怪になってからも・・・」

もじもじしながら照れ笑いしながら告げる。

「と、友達って!女の子友達っていなかったのよ〜。だから・・・」

「あの鉄扇を救ってやりたいのだな」

頷く白骨乙女さんは突然涙ぐみ錬体魔王さんの胸元に身を寄せる。

「どうしたのだ?」

そして覚悟を伝えた。

「きっと私、死ぬかも。私達が戦ってる蛇神はそれだけ計り知れない化け物なのよ。それでも私は」

「ならば私も頑張らねばな?君が止まらないのは百も承知だ。当然、君を死なせないように力を尽くすつもりだ。それでも万が一の時は・・・」

錬体魔王さんは白骨乙女さんを強く抱き締めながら心にある誓いを立てたの。

「君のためにこの身を捧げよう」

これが二人の愛の形だった。



その二人が繋いでくれた未来への希望。

絶対に形にしてみせるから!

残った救世観世音を相手に金色の魔眼を覚醒させた鉄扇ちゃんが攻防戦を繰り広げていたの。

「なるほど。金色の魔眼に対抗出来るのは同じ金色の魔眼なのだと言う事か。しかし残念ながら私とお前とでは根本的に格が違う!」

鉄扇ちゃんの突き出した大鉄扇を躱した救世観世音はその掌を刃に首を跳ね落とそうとする寸前、何者かが背後より攻撃を繰り出したの。

「そう言えばまだ虫けらが残っていたのを忘れていたよ。けれど早死にになったようだよ」

その助太刀は私、法子よ!

「そう簡単にいくかしら?私は規格外だからね!」

救世観世音はどう見ても格下の私に向けて手刀の斬撃を放ったの。

「しゃらくさいわ!」

私は手にした如意神向を前方に向けて叫ぶ。

「止まりなさい!」

すると如意神向の効果で救世観世音の斬撃が見えない壁によって止められたの。

そこに鉄扇ちゃんが芭蕉扇を腰から抜き抜扇する。

繰り出されたのは竜巻に混じられた斬撃と雷撃。

「無駄だと言う事が理解出来ないのですね?」

しかし鉄扇ちゃんの攻撃は救世観世音の防壁を破り直接攻撃を与えたの。

全身に傷を負った救世観世音は思ってもみなかった負傷に驚愕していた。

「そ、そうか!あの女の持つ魔眼が私の防御を破壊出来るほど威力を上げていると言う事なのか?」

しかも油断して受けた傷の治りが遅い。

「金色の魔眼所持者を殺すには同じ魔眼でしかないと言う事。しかしそれはあの女に対する私とて同じ。なら油断さえせねば問題にならない」

が、その油断を誘うのが私の役目なのよ。


「この如意神向の第三の特殊能力見せてあげる!」


止める。方向変える。

そして三つ目の効果とは?

「うぉおおおお!」

私の全身全霊の霊気を籠めると如意神向の標示が「止まれ」から「徐行」に変わったの。

「ぐ、ぐふっ!?」

その効果が救世観世音の身体を急激に重さを与えて動きを鈍らせたの。

「なっ?何だコレは?じ、重力なのか?」

油断大敵なんだからね〜


そして私も頑張っている中で、救世観世音の中へと消えた八怪はと言うと?


「な、なんら?変な感覚ら・・・」


八怪は今、救世観世音の魂と同化した状態なの。

その中で意識を保れているのは錬体魔王さんの札のおかげ。

そしてその効果は八怪にも分かりやすいように八怪と言う存在を形として作り上げたの。

これは認識の作用らしいのだけど私には説明したくても、もうちんぷんかんぷんだからパス!

「理屈は分からないらが、沙悟浄を探せば良いのらよな?」

本来なら八怪も沙悟浄もこの魂の中で光の融合と化しているから形として認識は出来ないの。

つまり真夏に太陽の逆光を直視しながら宙に浮いた数ミリ単位の蜘蛛の糸を探すくらい難しいのよ?

あっ!一つ忠告よ?

目が悪くなるから真似しちゃ駄目だからね。

けど難しいのはそれだけじゃない。

「やっぱり邪魔が入るらな」

八怪の前に現れたのは捲簾覇蛇だったの。

「私の中に寄生虫が入り込んだようですね」

「だ〜れが寄生虫ら!そりゃオマエの方ら!」

八怪が構えたその直後、

「!!」

八怪は背後からの気配に気付き瞬間的にしゃがみ込み躱すと、頭上を手刀が通り過ぎたの。

八怪は前方に飛び退きその相手の存在に戸惑う。

「どう言うこったら?」

そこには二人、いえ?五人の捲簾覇蛇がニヤニヤと自分を見ていたのだから。

分身?

その捲簾覇蛇は思念から存在する。

それが一体とは限らないの。


八怪は五体同時に襲い掛かる捲簾覇蛇の猛攻を受けながら、今は戦う事よりも沙悟浄を探す事を優先して頭上に向かって飛び上がったの。

追って来る捲簾覇蛇達に向かって漆黒の破壊弾を放つと、爆発して同時に煙幕が覆う。

そしてその場から消え去った八怪は、

「そこらかぁ?待たせたらなー!」

微かに感じた沙悟浄の意識に向かって行ったの。


この中では距離は遠からず近からず。

一向に距離は縮まなかった。

それでも方向は分かる。

八怪の胸に貼られた札が熱くなって教えてくれているから。

けれど何故沙悟浄のいる場所に近付かないの?


それは迷いだった。


八怪は沙悟浄を救う事に迷いがあったの。

それに気づいた時、八怪は自分自身を責めた。

「お、オラは迷っているんらか?沙悟浄ではなく捲簾を取り戻したいと願っているんらか?」

そう。

この世界には八怪と捲簾覇蛇、そして沙悟浄の他に本物の捲簾大将である観音菩薩の魂が同じく一つとなっている事を魂を通して確信してしまったからなの。


「オラはどっちを救うのら?」


肉体は一つ。

少なからず捲簾覇蛇は当然有り得ないとして、

沙悟浄と捲簾さんのどちらかしか甦る事は出来ないのだから。

しかしその時、八怪の脳裏に声が響いたの。


「お願い!沙悟浄を!」


その声は私の懇願の声だった。

そして八怪もその願いに返した。

「今、オラは・・・」

決意したその直後、八怪の目の前に閃光が放たれ、その中から人影が出現したの。

人影は正しく!

「さ、沙悟浄なんらか?」

光の蔓で身体を縛られた状態の沙悟浄が意識を失った状態でそこに存在した。

「今、助けるら!待ってるらよ!」

八怪は光の蔓を力任せに引き千切ろうとするがビクともしない。この世界では自分の想像が具現化してしまう。この光の蔓も突然沙悟浄の魂の所に来れたのも思いの強さ、思念の力で決まる。

「おい!起きるら!河童ぁ!法子はんが、オラたちがお前を迎えに来たらよ!」

八怪の言葉は沙悟浄に届くの?

しかし八怪の背後から気配を感じた。

それは殺気!


「その小物を取り戻しに来たのか?愚か者め。確かにその妖怪は私の弟である喰殖覇蛇を倒す力を見せた。しかしそれは金色の魔眼が見せた奇跡に過ぎん。そして本当の力の持ち主はソイツではなく同じ魂の中に潜んでいた観音菩薩の魂のおかげに過ぎない」


その者は追って来た捲簾覇蛇の魂だった。


「さて、この器の主導権の一部をお前に奪われてしまっているようですね。さっきからお前を外に排除しようとしているのに働かないからな?それもこれもお前の胸に貼り付いた札のせいか?」

「オメェには教えてやんねぇらよ!」


錬体魔王さんの札は救世観世音の中に入って意識の主導権を奪う働きがあるの。これは全て自分自身を人体実験に使いながら作成した自信作だと言っていた。

本当に、ちゃんと力になってるわ。

「オメェは白骨乙女さんに錬体魔王の仇でもあるんら。だから許しはせんらよ!」

八怪が構えると捲簾覇蛇は余裕を見せる。

「その札をお前から剥がせばどうなるのかな?」

「!!」

捲簾覇蛇は八怪を倒す必要はなく札を剥がせば外に追い出す事が出来るのだから容易い。つまり札を消し去れば勝負がついてしまうの。

「その札は無用ですね」

捲簾覇蛇の背後に出現する千の掌から光線が八怪に向かって一斉に放たれたの。

八怪は背にいる沙悟浄を守りつつ胸の札を庇いながら千の光線を拳で弾きながら防御する。

「ウララララララララァ!」

しかし捲簾覇蛇の狙いは八怪の背後にいる沙悟浄に光の矢を射ったの。

それはまさかの行動。

もし沙悟浄に何かあれば自分自身の身体にも支障が出てしまうはずなのに?

けれどそれは全て見透かしていた。

八怪が沙悟浄を庇う事を狙っての攻撃だったの。

「くぅ、うううぅ」

八怪は沙悟浄を庇い矢を胸に受けていた。

力任せに矢を抜き捨てるけれど、その傷は再生しなかった。

精神世界で肉体ではない魂には八怪の驚異的な再生力は働かなかったの。

その上、捲簾覇蛇の千手が追撃し八怪に突き出される。

「!!」

全身血を流し傷だらけの中で、八怪の胸の札が徐々に塵と化していく。

同時に八怪の身体も薄く消えていくのがわかる。

「そ、そんな!?」

八怪は絶望的に落胆する。

「無駄な足掻きもここまでだ。外の連中共々直ぐにお前の本体も消し去ってやろう」

確信なる勝利に捲簾覇蛇は満悦したその時、

「ど、どういう事なのだ?」

捲簾覇蛇は自分の目を疑う。

その異変に八怪も気付いて自分の身体を見る。

「これは!?」

確かに札は塵の如く消えて半分ほど消滅していたはずなのに札は八割ほど元に戻っているの?

そして八怪の身体も元に戻っていく。

その理由に八怪は気付き笑みを見せる。

「ようやく目覚めたようらな?」

八怪の背中越しに掌の感触と熱い温もりが伝わり、消滅しかけていた札を再生させていた。

それは錬体魔王さんの札の仕組みを瞬時に解析して新たに作り出しているの。

そしてそれが出来るのは術札に関して私よりも才能がある・・・


「は、八怪兄貴ですよね?その声?姿が違うから最初分かりませんでしたよ!けど、何故だか八怪兄貴が来てくれるって信じていたんですよ〜!私!」


目覚めたばかりの沙悟浄だったの。

「おはようさんらよ」

「は、はい!」

すると沙悟浄の身体を拘束していた光の蔓が消えて自由になると、八怪の隣に並び立つ。

「深い眠りの中で声だけが聞こえていました。こんな私の名を呼ぶ声が。それは八怪兄貴だけじゃありません。法子さんに、鉄扇ちゃんも!」

「皆、待っていたらよ。あの馬鹿猿も阿修羅や玉龍らってな?」

「ありがとうございますぅ〜」

「泣いてる暇あるなら今は先にやるべき事があるらよ?」

「そうですねぇ!わかっていますとも!」

二人は自分達の視線の先に立つ捲簾覇蛇に対して構えたの。

「不思議です。あの人が敵なんですよね?確かに蛇神の力を感じますけど、何か胸が騒ぐのはなんでなんでしょうか?」

「難しい事は分からないらよ」

ついに沙悟浄が自由になったけれど、まだ目の前の捲簾覇蛇を何とかしなければ解決したとは言えないの。けれどそんな時?

何処からともなく声が響き渡る?

その声は染み渡るような慈愛に満ちた声だった。


「永劫なる時の旅の末に、ようやく廻り会えた」


その直後、この場にいた八怪と沙悟浄は閃光に視界を奪われてしまう。

「うわぁあああ!」

そして視界が戻ったその時、沙悟浄は隣にいる八怪が目を丸くして驚愕している事に気付く。

「どうしたんですか?八怪兄貴?」

「あ、あわわ」

二人は目の当たりにする。


そこは天界?


しかもそこには空中に飛行雲に乗った何百万もいる天界の武神に囲まれて二人の神が戦っていた。

その戦っている二人の神とは?

「あ、アレって?まさか?」

「間違いないら」

一方の神は先程まで戦っていた捲簾覇蛇にそっくりだった。

そしてもう一方は沙悟浄の目の前にいる人の姿をした八怪にそっくりだったの。


それって八怪の転生前の遮那と生前の捲簾大将の一騎討ちの戦いの戦場だった。


「これって?私達どうなってしまったのでしょうか?」

「お、オラにも分からないらよ!けど、アレは間違いなくオラだよ!そしてもう一人は・・・捲簾らよ」


戸惑う二人の前に再び声が聞こえてきたの。



「全てを伝えよう。私に起きた事を・・・」


その声は、

「け、捲簾なんらか?」


二人は知る。


二人の因縁と運命を・・・


そんなこんな。

次回予告


唯我蓮華!その後・・・

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