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隔世異伝・転生記~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
女子高生蛇神討伐編~黄金の瞳編~
358/713

神友!二郎真君の戦い!

延命国の戦いは他の場所でも繰り広げられる。


そしてここで戦うは?


私は法子。

延命国での私達の戦いが始まったの。

その戦いが正解なのか分からないまま。

既に敵側の鉄扇ちゃんと白骨乙女さんの戦いが繰り広げられている最中、こちらでもやりづらい戦いが始まろうとしていた。


その戦いとは同じく敵側のナタクに対して八怪が対峙していたの。

「お前達を行かせるわけにはいかない。邪魔をするなら討伐すると伝えたのを忘れたか?」

「なんぴたりともオラを止める事は出来ねぇらよ!あっ、法子はんは例外らよ」

二人は間合いを詰めていた。

ナタクは天界の命令で捲簾蛇の護衛を任されていたの。

そして互いの間合いに入った直後、同時に姿が消えていた。

それは素早い瞬間移動での攻撃のやり合い。

拳の衝突音が響く度に周りの柱が崩れ落ち、床や階段に亀裂が入る。

「オゥラアアアア!」

八怪の繰り出した渾身の拳を両腕を交差して受け止めたナタクが両腕を振り払い、互いに後方へと距離を取り間合いを取り合う。

「・・・・・・」

ナタクは正直、八怪の驚異的なパワーアップの驚きよりも全力を出せる相手に武者震いしていた。

黒豚妖怪での八戒の実力を知るなら、今の魔神族八怪の力は全くの別人で桁違い。


けれどナタクは目の前の八怪とは遥か昔に既に出会っていた。

それは八怪の転生前である遮那と呼ばれた天界の少年武神だった時の事。

天界の武闘祭で少年ナタクは闘技選手としていた。

それと同じく捲簾大将の弟子として着いてきていた遮那を一目見た時にその潜在能力に興味を持っていたの。しかし遮那はまだ天界に来たばかりで闘技場の選手でなかった事から二人があいまみえる事はなかったの。


「本気で斬らせて貰おう」


ナタクの目が本気になる。

闘神ナタクとして無心で敵を狩る。

鞘から抜かれた剣は閃光を放ちながら八怪に向かって斬撃の雨を降らす。

「うぬぅ!ならオラも!」

八怪の漆黒のオーラが広がると突風が巻き起こる。

そして振り払う拳が竜巻を起こしてナタクの斬撃を寄せ付けない。

「抜刀・神突!」

ナタクの踏み込みは一瞬で八怪の間合いに入り込み、その喉元を貫く!

「なぁんの!」

八怪もまた武器を手にしていた。

漆黒の刃を持つ鍬のような鎌・釘鈀!

振り回した漆黒の斬撃は閃光のようなナタクの突きと衝突して微かに軌道が逸れる。

「危なかったらよ!」

八怪もまた釘鈀を振り上げると石床を斬り裂きながら斬撃がナタクを襲う。

ナタクもまた残像のように移動しつつ斬撃を躱しながら距離を縮めて再び斬りかかる。

「あんまり時間をかけれねぇら!ナタク!」

すると八怪は接近するナタクに強烈な覇気を放ち、そして全身のチャクラが廻る。

「開眼!」

それは覚醒した八怪の第三の眼。

その眼が開かれた時、潜在能力が一気に解放された。

ナタクはその凄まじい力を肌身に感じ、構えると同時に神気を全開させ対抗する。

その殺気に八怪は全身が痺れる。

「そうらか?ならオラもお前を破壊する気でやらなきゃ先には行けないようらな」

八怪も手加減出来るとは思ってはいなかった。

それでもなるべく殺さないようにしたかった。

けれど、そんな甘い気持ちでは自分が死ぬと実感したから。

それは同時に先に向かった私の死にも繋がる・・・


「オラはもう失わないら!」


八怪はかつて間に合わなかった。

それが大切な掛け替えの無い友であり恩師を二人も失っている。

だから私を守ろうと思う意思はとてつもなく強かった。

それは孫悟空も沙悟浄も私に対しての思いは過去への償いであり、自分自身の魂に刻んだ誓いだったの。

だからこそ今、この場でナタクを殺してしまう事になっても・・・


ナタクも気付いていた。

八怪から感じる気はナタクの全開の発気を上回っている事に。

だからこそ力の差を埋めるために、己の力を刃の一点に集中させる。

その構えた抜刀は真蛇王エキドナを斬った奥義。

手加減など出来ない一撃必殺。

噴き出す力が一点に集中し加速を増す。


「超神速抜刀!」


その一撃はエキドナの闘気をも斬り裂き貫く刃!

その時、別方向から声が響いたの。


「ここから先は私も加勢する!」


その声はナタクの兄で天界より捲簾覇蛇の護衛を任されたもう一人の武神である恵岸行者さんがこの状況で現れてしまったの。そして掌に籠めた神気から木の蔓が噴き出すようにして八怪に向かっていく。


「!!」


全身を植物の蔓に絡まれ身動きを止められる。

けれどソレは?

弟のナタクの身体を縛り付けていたの??

その状況に八怪も戸惑っていた。

そして恵岸行者さんは八怪に告げたの。


「私の弟子の沙悟浄、それに我が師である聖音観音様を救って欲しい」

「!!」


それって恵岸行者さんは私達に味方してくれるって事で良いのよね?

すると八怪は頷き、先を急いで走り去る。

そして隙を突かれて兄の恵岸行者さんによって身動きを止められているナタクは口を開く。

「何のつもりだ?兄者」

「私は最初から我が師である聖音観音様に全て捧げている。そしてあの捲簾覇蛇は私の師を愚弄し、辱めた倒すべき敵」

「なら何故あの者達に託した?」

「それは・・・」

すると恵岸行者さんが信じられない事を告げたの。


「捲簾覇蛇の中にいる我が師の魂が私に告げたのだ。沙悟浄を何としても救えと!そしてその鍵になるのは救世主の力なのだと!」


えっ?ソレって?

もしかして、もしかして?


そして今、その捲簾覇蛇の前には戦う事を決意した二郎真君さんが立っていたの。


「天界きっての英雄神と名高い二郎真君が天の命令に叛き、はたまた世界を滅ぼす手助けをしようとはな。ふふふ」


しかし二郎真君さんには迷いはなかった。


「ふっ。今でこそ英雄神と言われているが、若い頃は気に食わない奴はぶん殴っていたんだぜ?」


すると二郎真君さんは前髪を掻き上げてガンを垂れて見下ろす。


「それに俺は手助けしている訳ではない。俺は俺の意思でお前を許せないだけだ!」


すると両手を前に差し出して印を結び唱える。


「聖獣変化唯我独尊・哮天犬」


二郎真君さんの背後から白き犬の聖獣が飛び出して出現すると、その背には大槍が背負われている。

その槍を手にした二郎真君さんは前方で回転させた後、捲簾覇蛇に対して構えたの。


「例えその身を消滅させたとしても、魂だけは救ってやる!」


今、因縁の対決が再び。

捲簾覇蛇と二郎真君さんとの一騎討ちが始まっていたの。

「此処では狭いだろ?外に出たまえ!」

捲簾覇蛇の姿が消えると城の屋根の上に出現し、その居場所を察知した二郎真君さんが城の屋上に気を放ち穴を開けて外に飛び出す。

「あんまり私の城を散らかさないでくれないか?二郎真君。昔から君は私の部屋を汚して片付けなかったね?そして何度と小言を言わせて貰ったか」

「!!」

それは過去、二郎真君さんと元の捲簾大将との記憶の事を言っていたのだ。

しかもその口調や仕草は思い出す記憶と変わらない昔のまま。

「あざとい!」

二郎真君さんは手にした三尖両刃刀を捲簾覇蛇に向かって突き出すけれど、残像を残して躱される。

しかし一回転その場で振り回すとその衝撃が一瞬で捲簾覇蛇の残像を打ち消したの。

「私の動きを捉えられますか?」

「やって見せよう!」

二人は城の屋根の上を駆けながら攻撃を繰り出し、そして追い詰められていく捲簾覇蛇は掌に籠めた気を振り撒くように投げ付ける。

まるでマシンガンのように放たれた気弾を二郎真君さんは三尖両刃刀を連打で突き出し打ち消す。

さらに捲簾覇蛇の指先から光線のように放たれる気を躱しながら三尖両刃刀を突き出して突っ込む。

二人は城の屋根上を駆け巡りながら衝突してはお互いの波動に弾かれ、そして体勢を整えながら再び衝突を繰り返す。

「やはり一度は私を倒した事はある。しかし今の私は楊善とは違うのだよ?楊善とは!」

「くっ、キサマァアア!」

楊善さんの死は全て目の前にいる捲簾覇蛇。

その仇を前にして二郎真君さんは猛る!


「開眼!」


足下の屋根がその凄まじい気に瓦が浮かび上がり、そして粉々になって粉砕していく。

すると二郎真君さんの額に第三の眼が開かれたの。

「ほぉ?以前私と戦った時とはまるで別神。しかし私はお前の更に高みにいる!」

捲簾覇蛇の背後に五光が輝き、神々しい力が二郎真君さんを寄せ付けない。

「カァアアア!!」

気合いと共に爆発する二郎真君さんの覇気が捲簾覇蛇からの重圧を押し退ける。

「俺は今度こそお前を倒す!」

復讐心に猛るその武は鬼気迫るものがあった。

「うぉおおおおお!」

「!!」

その一閃が捲簾覇蛇の頬を切り血が垂れる。

「キサマ!」

頬の傷は直ぐに再生して消えたけれど、捲簾覇蛇の怒りは込み上がる。新たな力を得て、一度は敗れた二郎真君さんとは圧倒的な力の差を得たと自我持参していたプライドが傷付けられたのだから。


『千手貫音菩殺』


直後、捲簾覇蛇の背後に出現したのは光で具現化された掌が捲簾覇蛇を中心に孔雀の羽根のように広がっていく。その速度は神速の刃!

「この千手の前にお前はもう私に触れる事は勿論、近付く事も許されん」

「何を!!」

それでも飛び出そうとした直後、二郎真君さんの膝に神気の光線が直撃して転げてしまう。

「あははは!言ったろ?近付けぬと!この千手観音の掌の上でお前は踊り死ぬ」

更に光線が放たれ、二郎真君さんは躱す度に踊らされてしまう。

それでも決して諦めない闘志が余計に捲簾覇蛇を苛つかせたの。


「千手掌打!」

「!!」


それは神気で具現化した掌打。

「うがぁあああ!」

その直撃は受け止めたはずの二郎真君さんを弾き飛ばし全身に衝撃を与えたの。

圧倒的な力の前に二郎真君さんは倒れたまま動けずにいた。

まさか今の攻撃でやられてしまったの?

目の前にいる捲簾覇蛇は前に戦った真蛇王デルピュネースの力と比較してもその上をいっていた。

しかも今は一人で戦っている以上、頼れる者はいない。

いや!頼ってはいけないのだと!

「くっ、うぉおおおお!」

膝を立て、気合いで立ち上がろうとする二郎真君さんに対して、容赦なく追撃が降り注ぐ。

全身を襲う衝撃に二郎真君さんは意識を保つ糸を繋ぎ止める事だけで精一杯だった。

「!?」

そんな途切れ掛けの二郎真君さんに何処からか声が聞こえて来たの?

それは切っても切れない友の声。

聞き違うはずなかったの。

「まだ寝る時間じゃないよね?ほら?見えるかい?あそこに私達の友が見えるんだよ!手を伸ばせば届く場所に彼はいる。だったら届かせよう!私が犯してしまった過去の償いを、真君?君に託して良いかい?」

その声に二郎真君さんの胸が熱くなる。

その声は自分の魂から聞こえた。

その声は間違いなく、


「楊善!俺はお前の為にも俺自身の為にも諦めはしない!そして今度こそ俺は!」


その声は死んだはずの楊善さん。

けれど死ぬ間際、その魂は二郎真君さんの魂の中に宿り、そして一つとなったの。

「!!」

再び立ち上がろうとする二郎真君さんの身体から噴き出す神気は本来の神気とは別に楊善さんの神気まで感じ取れた融合神気だった。


「共に戦おう!楊善!そして友(捲簾大将)を救うぞぉ!」


背後に浮かぶ楊善さんの姿が真紅の鷹へと変わっていき、二郎真君さんの哮天犬の鎧と融合した哮天鷹の鎧へと変わる。飛び出す二郎真君さんに向けて放たれる千本の掌打の光線が降り注がれる中で、その突進は止まる事なく捲簾覇蛇へと向かっていく。


「無駄だと言うのが分からないのかぁー!」


五光の掌打が重なり合い障壁となって二郎真君さんの突進を遮ってくる。

「ウォおおおおお!」

二郎真君さんが吼える!

すると捲簾覇蛇の眼前に見える障壁に亀裂が入る。


「そ、そんな馬鹿な!!」


直後、閃光が二人を中心に爆発し広がっていったの。

この勝敗は?

一体、どうなると言うの?


そんなこんな。


次回予告


先を急いでいた法子の前に立ち塞がるは?


法子の戦いが始まる。

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