因縁腐れ縁!鉄扇と白骨乙女!
敵となった鉄扇に法子の助っ人として現れたのは白骨乙女だった。
この二人の対決は因縁?それとも?
私は法子。
私は捲簾覇蛇と戦う事を決めた。
例えそれでその先、覇王が蘇ったとしても!
私は城内の階段を駆け上がりながら、捲簾覇蛇の護衛隊長になっていた鉄扇ちゃんの相手をしている白骨乙女さんの事が気掛かりだった。
二人はそもそも因縁こそあるライバル的関係。
それでも干支十二宮殿の戦いでは私と共に力を合わせて戦った同志だったと言うのに。
今回の計画を白骨乙女さんに話した時、彼女は一言呟いたの。
「本当に馬鹿なんだから、あの娘」
その言葉に白骨乙女さんと一心同体の錬体魔王さんは肩に手を置き支えていた。
もし二人が引き離されたとしたら、きっと同じ事をしたに違いない。だからと言って見て見ぬふりが出来るほど、もう他人じゃないと思っていたの。
もし友達が道に逸れたのなら引き戻す事が出来るのが友達なんだから。
「それは私だって同じよ」
けれど私じゃ鉄扇ちゃんを止められない。
「適材適所よ?」
そう言って白骨乙女さんは足止めを引き受けてくれたのよ。
だからお願い!
二人とも無事でいて!
残された鉄扇ちゃんに白骨乙女さんはクンフーの構えを取る。
手加減出来る相手じゃないことはわかってるし、本気でぶつからないと止められない。
彼女の心を!
「行くわよ!」
白骨乙女さんが先攻で動いた。
突き出す手刀は鋭利な槍のように、不規則な方向からの蹴りや肘、その一撃一撃の破壊力は一品。
しかも白骨乙女さんは体術の才能があったの。
元々人間だった彼女は不幸な経緯で妖怪に生まれ変わり、その怒りと恨みで力を得るために体術を学んだのだけれど、それが彼女の才能を開花させた。
さらに骸骨妖怪である彼女の関節は360度不規則に曲がる為に、人間を相手の体術だと思って組み合えば視界の外からの不規則な攻撃が繰り出される。
それでも対応出来る鉄扇ちゃんもかなりの使い手だからこそ捌けているの。
「貴女は今件から手を引きなさい!私達が何とかするわ!」
「出来もしない事を抜かすな!沙悟浄ちゃんは私が必ず取り戻す!だから捲簾覇蛇に手を出されて何かあっては困るのよ!」
二人の攻防は互角だった。
けれど二人には隠し玉がある。
「アンタが手を引かないのなら痛い目に合ってでも止めてあげるわ!いでよ!」
すると白骨乙女さんの背後から強力な力を持つ何かが召喚される。
その姿は骸骨のティラノサウルスの姿をした妖怪とは異種の妖恐と呼ばれる化物。
更にその魂には白骨乙女さんの彼氏の錬体魔王さんが意識を制御しているの。
その最強の守護霊を「骨覇魅神」と言うの。
恐竜の雄叫びが響き、その破壊の力は大地を震わせたの。
「だから何?なら私も見せてあげるわ!」
すると今度は鉄扇ちゃんが手にした神具・芭蕉扇に神気を籠めると突風を起こして妖恐と白骨乙女さんを近寄せない。更に雷が足下を直撃して抉ると白骨乙女さんを背に乗せた妖恐が飛び上がり後退する。
すると二人の目の前に、鉄扇ちゃんの正面に新たな化け物が出現したの。
その姿は鵺。
あの干支十二宮殿の主であった化け物を鉄扇ちゃんは手懐け、下僕にしていたの。
「鵺!」
雷を纏う化け物に対して妖恐ティラノが衝突する。
この戦いはもう私には手におえないわ。
「そろそろ本気でいかない?先に行った法子を捕らえないといけないから。時間稼ぎするつもりなら、あんた死ぬよ?」
「出し惜しみ出来ないのはお互い手の内知り過ぎているのは厄介ね」
二人は干支十二宮殿の戦いの後、無理矢理強引に蛟魔王さんに首根っこ掴まれて拉致され修行をつけさせられてしまったの。そんな長い期間ではなかったけれど、二人の才能は更に開花した。
「骨化権力骨恐血体・妖恐変化唯我独尊!」
妖恐・骨覇魅神が白骨乙女さんの身体へと同化していくと、
その肌に恐竜の皮膚が浮かび上がる。
そして溢れんばかりの覇気を全身から発したの。
これは聖獣変化を妖恐で成功させた変化。
背後霊であった錬体魔王さんとの愛の絆!
「今の私は歯止めが効かなくてよ!」
それは白骨乙女さんの限界を超える究極奥義変化。
妖恐ティラノの力を己に同化させる事で全身に恐竜のような尾が伸びて、更に恐竜のような皮膚が全身を覆い凶暴な破壊力を持つ。
同時に鉄扇ちゃんからも凄まじい覇気が解放される!?
気合いと同時に鉄扇ちゃんから今までとは異質な妖気が解放される。
身体から発するのは黒い気。
「羅刹の極み!」
鉄扇ちゃんの究極奥義は魔神族の力を血流を通して過剰に廻らせ、一時的に爆発的な力を発揮する。
鉄扇ちゃんの白い肌が黒く、髪が血のように赤く変色する。
まさに魔神化した姿。
今、お互いの究極奥義を込めたこぶしが激突する!
衝撃が階段に亀裂を作り陥没する。
二人は睨み合いながらお互いの成長を感じる。
干支十二宮殿の時とは桁違い。
水ち魔王の下で修行した二人は、お互いの究極奥義の持続時間を増やす事を主に訓練させられた。
最初は組手も蛟魔王一人に二人がかりで、息を切らせていたが徐々に単独で相手出来るようになった。
二人はお互いの奥義に足りなかった技術を相手の奥義がヒントになった事もある。
白骨乙女さんは鉄扇ちゃんの魔神の力の集中のさせ方。
羅刹の極みは力を一点に集めて拳だけや指先だけを強化する事が出来る。
しかし妖恐変化は溢れ出す力を全身で制御するだけだった。
それがこの技術を学ぶ事で無駄なエネルギーを使わずに変化出来るようになったの。
また鉄扇ちゃんは自らの魔神の血を一時的に引き出す奥義。それが白骨乙女さんの得意な太極拳に必要な呼吸法から全身を廻らす血を全身に廻らせ活発化させられる事に成功した。
まさに好敵手の関係。
蛟魔王さんも二人の成長は必ず蛇神との戦いに役に立つと信じていたのに、まさか二人が争う事になるなんて運命の皮肉としか言えない。
そして二人もお互いの手の内を知っているからこそ決着が付かないでいたの。
鉄扇ちゃんは愛する沙悟浄の身体を奪われ、仇である捲簾覇蛇の手下として働いている。
鉄扇ちゃんから見たら、それでも仮染めでも一緒にいたいからなのだと思う。
けど本当にそれは幸せなのか?
そんなの間違っている!
だからこそ白骨乙女さんは反乱軍を組織して鉄扇ちゃんのために戦っているの。
錬体魔王さんは錬魂術のエキスパート。
もしかしたら沙悟浄を取り戻せるかもしれないという微かな希望に賭けて。
その事は鉄扇ちゃんにも伝えた。
けれど万が一失敗したら沙悟浄を失う恐怖から、鉄扇ちゃんは今の苦渋の選択を決めたの。
「本当にそれがアンタの望みなの?」
「オマエには関係ないわ!」
「関係あるわ!私はアンタのそんな苦しそうな顔を見てられないから!アンタが何て言おうと、私達の腐れ縁は切っても切れないくらい情が芽生えてしまったんだから!だから、あの時だって」
白骨乙女さんは思い出していた。
目の前の鉄扇は自らの命を顧みず自分を蛇神から救ってくれた命の恩人なのだと。
それは蛇神軍が蛟魔王が留守の時に龍宮城に攻め込んで来た時、そこには鉄扇ちゃんと白骨乙女さんが修行の最中だった。流れ込む蛇神の大群に二人はなすすべなく、二人を喰らおうと口を開き襲い掛かって来た蛇神を躱す事は出来なかった。
その時、鉄扇ちゃんは白骨乙女さんを咄嗟に突き飛ばしたの。
「えっ?」
白骨乙女さんの目の前で鉄扇ちゃんの姿が大蛇の閉ざされた口の中に消えて鈍い音と血が垂れる惨劇を目の当たりにした。
「ば、馬鹿!な、何故私を・・・あんたは私が殺るって言っていたのに・・・」
いがみ合う仲だった。
時には争い命を奪おうともした。
それなのにいつしか情が芽生えていた。
そんな鉄扇の最期は本当にトラウマになった。
泣き叫び戦意喪失になった白骨乙女さんを彼氏の錬体魔王が背負い蛇神の追手から逃れられた。
それから白骨乙女さんは捲簾覇蛇を鉄扇ちゃんの仇と追い続けたの。そして現れた捲簾覇蛇は沙悟浄の活躍で倒され、そして死んだはずの鉄扇ちゃんを再生させるという奇跡を見せた。
だからこそ再び生きて会えた鉄扇ちゃんに対して返しても返しきれない恩があるからこそ、今苦しんでいる鉄扇ちゃんを放っては置けなかった。
「余計なお世話よ!」
「お互い様よ!勝手に私を助けて勝手に死んだと思ったら、また生き返るなんてね?本当に、本当に」
白骨乙女さんの目から溢れ落ちる涙を見た時、鉄扇ちゃんも胸が痛くなった。
「それでも私は」
鉄扇ちゃんは芭蕉扇を構えると神気を高め芭蕉扇から雷を帯びた竜巻が巻き起こる。
「やる気なのね」
白骨乙女さんは自分の魂の中にいる錬体魔王さんに呟いたの。
「私の事を最期まで支えてくれる?」
「当然だよ。私は君と共にあるのだからな」
二人の魂の共鳴。
その思いが力になって鉄扇ちゃんに受けて立つ。
「行くよ!」
「行くわよ!」
二人の高める極限の力がお互いの思いを乗せて今、衝突した。
そんなこんな。
次回予告
延命国の戦いが広がっていく。
そこで戦っているのは?




