三蔵の究極奥義、ブチかませ無乗拳降伏!
孫悟空は格上のテューポーンを倒せるのか?
俺様は孫悟空。
百獣王との一騎討ちで一度は確実に死んだはずのテューポーンが真蛇王デルピュネの生命エネルギーを吸収して復活した。
「エキドナの奴が分身を産み出していた事が幸いとなったな。この私にとってな!」
それは俺様達からみれば不運としか言えなかった。もし離れた戦場でもう少しデルピュネが倒されるのが遅ければ、テューポーンは復活出来なかっただろう。
正直、俺様は百獣王がテューポーンを倒してくれた事に感謝して喜ぶ自分がいた。
そう考える事は間違いではないと思う。
それが仲間ってヤツだから。
しかしソレは俺様にとって本当に良いのか?正しいのか?
俺様はいつから守られる側になったのだ?
「忘れていたぜ・・・」
最近めちゃくちゃ強い化け物が目の前に現れるもんだから、ついつい楽してしまったのか?
臆病風に吹かれたか?
違う。
俺様は諦めていたのだ。
自分自身の強さに!
それが百獣王の戦いを見ていて胸が騒いだ。
「俺様は今こそ限界を超えてやる!」
俺様は飛び出すと再生したばかりのテューポーンに攻撃を仕掛ける。
テューポーンは存在しているだけで近場にいる者の生気を吸収していた。
奴に接近戦は危険だが、少しでも近くから攻撃しなければ傷一つ付けられない。
「あっ!?」
しかし俺様は逆に間合いに入られ指先で顔面を叩かれ吹っ飛ばされる。
「ウガッ!」
けれど身を回転させて着地すると印を結ぶ。
すると一気に百体の分身が出現した。
「小虫のようだ。先程の獅子の獣神が甦る前に始末せねばならないからな?早急に消えよ!」
爆風の如く弾ける蛇気が一度に俺様の分身を消し去った。
けれど消えていく俺様の分身の中から、
「聖獣変化唯我独尊・青龍!」
俺様は青龍の鎧を纏うと、全身に龍気を纏いながら繰り出す攻撃の手数を増やす。
しかし通用しないどころか相手にされていない。
こんなに力の差があるのかよ?
けれど俺様も馬鹿の一つ覚えで喧嘩してない。
「ねるねるねるね〜」
俺様は油断を誘いつつテューポーンをブッ倒す奥の手を決めるタイミングを見計らって気を練っていたのだ。奥の手が何なのかって?
それは・・・
俺様は時鏡で過去の俺様の中に入っていた。
そこで俺様は三蔵に再び会えたのだ。
しかしそんな俺様と三蔵の前に現れたのが過去のテューポーンだった。
過去の俺様は相手にならず(今もだけど)瀕死の状態の所を、三蔵は俺様を庇いつつ一人で撃退した。
その時に見せたのが三蔵の究極奥義なのだ。
あの日俺様は見せて貰った。
三蔵が生涯の間で一度だけ見せたあの技を!
「!!」
その時、現実の俺様は我に返る。
テューポーンは俺様からただならぬ気配を感じて俺様を弾き飛ばしたのだ。
「今、コイツから嫌な感じがしただと?」
それは無意識の防衛本能だった。
「多少でも躓く可能性があるのならオマエから先に始末をしてやろう」
俺様は転げながら立ち上がると、呼気を吐き出す。
「三蔵の呼吸。三蔵の気の練り、三蔵の高まり!段々と俺様と一つに感じて来たぜ・・・」
すると俺様の青龍変化が解ける。
この大技の前には変化を一度解いて、集中せねばならなかったから。
思い出せ!三蔵を!思い出せ!あの時を!
思い出せ!本当の俺様自身を!
「うぉおおおおおおお!」
俺様から発する気迫にテューポーンが目を奪われる。
「似ている?あの人間の男と?この私を封じ込めたあの人間の救世主に?」
油断は同じ過ちを繰り返す。
同じミスは許されない。
「雑魚であろうとお前のような小石に躓く事は許されぬ。その魂共々消し去ってやろう!」
「俺様が小石か?残念だったな?俺様は小石じゃなくて石猿!躓く先は地獄だせぇー!」
俺様は自分自身と過去の三蔵を被せる。
動きも呼吸も魂すらも同調させるように。
一度見た三蔵の究極奥義を模写する。
あの瀕死の状態だった俺様は、それでも三蔵の動きだけは目に焼き付かせていた。
これが三蔵から教えを顧える最後の機会だと思い。
三蔵は両掌を差し出し印を結びながら魂の気をチャクラに乗せて廻らせながら唱えていく。
「ナウマク・サマンダ・バザラ・ダンカン」
徐々に三蔵の身体から濃縮かつ激しい神気が吐き出すように噴き出すと何かが飛び出して来たのだ。
「あれは!?」
それは三蔵の分身?
俺様の見る三蔵の姿は五体。
しかも不動明王を中心に降三世明王、軍荼利明王、金剛夜叉明王、大威徳明王の姿をしていた。
後に俺様は三蔵が同じく五体の明王と呼ばれる神を己の身に同時に宿す五大明王合身なる究極変化を見た事がある。しかしこの究極奥義とは違うようだ?
「まだ未完成だが、かなり堪えるな」
三蔵は呟くと俺様が見ている事を確認する。
「よく見とけぇー!猿!これが俺の究極奥義だ!」
中央の不動明王の三蔵を残し、他の四体の明王が飛び出してテューポーンを四方向から囲み印を結ぶと神気が繋がりながら結界を張る。テューポーンは外に出ようと暴れるが完全に閉じ込められたのだ。
「この私を封じ込めるつもりか?特殊な封印術で私を抑え込もうが無駄だぞ!直ぐに破壊して再びお前達を掴まえ始末してやるぞ!」
が、三蔵は笑みを見せた。
「封印術だぁ〜?俺はそんなに甘くねぇよ!お前を消滅させるための大技だからな!」
すると不動明王は飛び上がると四方面の明王達の頭上に定位置に留まる。
そして拳を振り上げ力任せに全ての力を一点に吸い上げたのだ!
「ななななな!?」
その状況にテューポーンは初めて悪寒を感じる。
中から抜け出ようと暴れ回るがビクともしない。
それどころか自分自身の力が物凄い勢いで根こそぎ吸い上げられて力が入らないのだ。
そうか、この究極奥義が何なのか分かったぞ!
これは自分自身の力だけでなく敵の力を奪い上乗せさせた強引なカウンター攻撃を一点集中でブチかますのだ。しかもこの結解の中からは決して脱出は出来ない。
三蔵の拳が金色に光り輝く!
まるで救世の魔眼と似た金色の光だった。
「ブチかますぜ!」
再び俺様は我に返って思考を廻らせる。
俺様には三蔵のような五大明王は持ってはいない。
けれど今なら出来るはずだ!
全てが合致する。
これは全て何か見えない力が動いているように思えるほどだ。
この俺様が四聖獣を全て揃えた事。
時鏡で過去にこの段階の今の俺様が行った事。
昔の俺様だと真面目に意識して三蔵とテューポーンの戦いを、究極奥義を見なかったかもしれないしな。逃げ出す事に夢中で・・・
だから「今の俺様」が見る必要があった。
そして今この時に鮮明に再現するためにも。
「聖獣変化唯我独尊・青龍!朱雀!白虎!玄武!」
俺様の聖獣変化した四体の分身が出現してテューポーンを取り囲もうとする。
「あの時の忌々しい技かぁ!その技は油断せずに配置に付かせなければ何も恐れる必要はない」
かつて人間と見下した三蔵に与えられた屈辱。
この急遽奥義によりテューポーンは一度は消滅した。
しかしエキドナにより再生させられ真蛇王マダラとして復活したのだ。
テューポーンとエキドナは前世で夫婦だった事もあり、その魂が繋がっていたた。
だからテューポーンが死んだ時に複製を産み出せるようにしていた。
逆にエキドナが死んだ場合はその魂はテューポーンと同化出来るようにしていたのである。
全ては始祖でもない現覇王を討つために!
それがまさか救世主たる蛇神の仇敵に殺されるとは思ってもみなかった。
そして現在、救世主三蔵はいない。
にも関わらず自分の前に現れる新たな救世の魔眼を持つ百獣王。
テューポーンの邪魔者が次から次へと現れる現状。
それに!
「うぉおおおおおお!」
今、俺様は覚醒状態にいた。
しかもその瞳は金色に光り輝く魔眼が覚醒状態でいたのだ。
金色のオーラを纏う俺様の力は他の分身達の力を全開に引き上げていた。
配置に付かせないように青龍、朱雀、白虎、玄武の鎧を纏う俺様に向かって蛇気を籠めた攻撃を仕掛けにも関わらず全て弾かれる。
朱雀の炎が!
白虎の雷撃が!
玄武の剛力!
青龍の龍気がテューポーンの蛇気を寄せ付けなかった。
「忌々しい!雑魚がウロチョロと舐め腐って!」
徐々に集中力が散漫されていく。
格下のはずなのに?
けれど俺様の魔眼が金色に光り輝いたその時、俺様の力は飛躍的に跳ね上がり上昇していたのである。
さらに俺様の魂に語りかける聖獣達も同調して力を貸してくれているのだ。
これは相乗効果と言うものなのか?
そして配置が揃ったのだ!
そして俺様は飛び上がるとテューポーンの上空に飛び上がり拳に力を集中させる。
「馬鹿目!狙い撃ちになるとは思わなかったのか?一度受けたモノが二度通用すると思うな!」
テューポーンは頭上に見える俺様に向かって狙いを定めると、百獣王を一度は倒した破壊破を放つ。
俺様に向かって来る破壊破が押し寄せる状況でも冷静にいた。
「三蔵、上手く出来たかな?まだ三蔵ほど上手くは出来ないが、力を貸してくれないか?」
俺様は拳に力を吸い上げるように引き上げる。
「うぉおおおおおおおおお!」
青龍の力が、朱雀の力が、白虎の力が、玄武の力が俺様の拳に吸い込まれ、更にはテューポーンの放たれた破壊の渦をもスポイトのように根こそぎ吸収していく。
この究極奥義には力の差は関係ない。
むしろ相手が強ければ強いほど威力を増すのだから。
そして全ての力が集約した拳が金色に光り輝く。
まるで太陽のように!
「行くぜぇーブチかますぜぇー!」
その直後、テューポーンはかつて自分を消滅させた三蔵と俺様がブレるように被らせて見える。
「まさかこの私がまた・・・滅ぼされると言うのか?また?嫌だ・・・嫌だぁあああ!」
だが俺様は躊躇なく拳を放った。
「究極奥義・無乗拳降伏!」
テューポーンは向かって来る拳に対して差し出した腕に力が入らなかった。
相手の力を吸収する事に長けていたはずなのに逆に力を奪われ枯渇したような無防備な状態。
「い、嫌だ・・・あってたまるかぁああああ!」
俺様の拳に触れたテューポーンの身体が塵と化していく。
そして粉砕すると同時に消滅させたのだ。
「くっ!いゃったぞおおおお!」
確実な勝利の手応えに俺様は着地に失敗して地面に転げ落ちる。
あれ?
身体に力が入らん?
コレは奥義の反動なのか?
でも勝ったのだな。
「三蔵、お前から受け取ったぜ?お前の究極奥義って手土産をな?そしてこのお前からの手土産は必ず返すからな?お前の大切にする・・・アイツに」
けれど俺様はその場で吐血して動かなくなった。
生命力の低下?
俺様に蛟魔王と玉龍が駆け寄る。
これは奥義の反動なんかではなかった。
俺様の身体には実は限界が近付いていたのだ。
次回予告
場所は変わり蛇神城。
そこには囚われた軍駝覇蛇の前に覇王が!?




