繋げ未来!龍神族の王としての黄龍王!
孫悟空の身体を手に入れるのは孫悟空か?
それとも黄龍王なのか?
俺様は孫悟空。
俺様達と黄龍王との俺様の身体を巡る争奪戦の結末は相討ちに終わった。
けれど本当に勝敗は付いていないのか?
「ハッ!?」
俺様の意識が目覚める。
目覚めると同時に気付いた。
今、俺様の意識は俺様だけでなく、
「あれ?僕は一体?」
玉龍の意識が重なり合い、更に?
「我々は意識が統合化したと言うのか」
黄龍王までも一つになっていたのだ。
この状態は意識の根源に位置する一番深い深層意識の中にあるため、争う事も相手を追い払う事も無理。つまりどうしようもない状態。
しかも意識が定まっていないため肉体も動かす、仮死状態とも言える。
問題は長くこの状態でいると徐々に俺様だけでなく玉龍も黄龍王も意識が消えて存在が無くなる。
唯一伝わるのはお互いの思考のみであった。
ここから先は心理戦か?
「この身体は俺様の物だ!そんなわけで早々に出て行って貰えないか?」
「あ、すみません!」
「いや、玉龍、お前の事じゃないから〜」
「はわわ〜すみません」
と、俺様と玉龍の会話に黄龍王が口を入れる。
「騒がしい!」
怒られて、しょんぼりする俺様と玉龍。
けれどバトルにはならないから、まだ恐くはなかった。
ガチにまた戦ったら勝てないしな。
「お前達こそ出て行くが良い!孫悟空の方は肉体を失い消滅するがな?しかしお前が生き残ったとしてどうする?蛇神の脅威になすすべなく殺されてしまうのが落ちであろう?無駄死にだ!」
「・・・」
俺様は言葉を失う。
「我なら外にいる蛇神はおろか、地上に蔓延る全ての蛇神、そして覇王すら倒す事が可能だ。お前達の目的とも一致するであろう?だからお前は我に身体を明け渡すのだ」
「そんな事はない!孫悟空さんなら必ず蛇神を全て倒してくれるはずです!」
玉龍がムキになって割って入る。
「例えどんなに強大な敵であっても孫悟空さんには仲間がいる!皆で力を合わせれば不可能を可能に出来るんです!」
その言葉に黄龍王も言葉を失う。
何せ圧倒的な力の差のある黄龍王に対して俺様達は絆の力で不可能をひっくり返したばかりだから。
「ふふふ。お前達のそんな一か八かの戦いが何度も通用すると思っているのか?」
「でもゼロじゃない!孫悟空さんには奇跡を呼び込む力があるんです!ですよね?孫悟空さん」
「えっ?あ、そ、そうだぜ!」
正直、俺様をヨイショし過ぎだぜ?
チヤホヤで照れちまう。
「仲間だと?絆だと?馬鹿を言うな!そんなモノが何になると言うのだ!たかが一度我の油断を誘った程度で粋がるなぁ!」
「!!」
それは怒り?いや?
とてつもない黄龍王の感情の波が押し寄せて来た。
これは黄龍王の記憶か?
始祖の龍。
金色に輝く思念体であった始祖龍は己の魂を卵に宿し復活を試みた。
その意志は龍神界の英雄であった応龍と、その娘である四海龍王であり、巫女であった紗紅椰姫がいち早く知る事になる。ちなみにサクヤ姫は乙姫(蛟龍王の本名)の姉であった。
「父上様、ついに私達の神が降臨するのですね?」
「そのようじゃ。しかし見よ!あの星の輝きを!お前はどう見る?
「輝きが増して神々しく、その光は天界の王に引けを取らない。しかしその星の輝きは儚い」
「龍神族の征く末を不安視する星運」
しかし二人は見る。
突如、龍神の神王を意味する星の近くに存在していなかった金色の星が近づくと、神王の星の輝きが一瞬世界を照らすほど閃光を放ったのを!
それは何を意味するのか?
それから時が経つ。
サクヤ姫は星の流れから二つの流れ星を見る。
そして墜落と同時に赤子の産声が響いた。
「誕生したようだ」
応龍が当時の四海龍王であった紫龍王に連れて来るように命じると、紫龍王は即座に出向いた。
しかし紫龍王は裏切るつもりでいたのだ。
産まれたての神王の赤子を手に入れ、その力を奪うつもりだったのだ。
しかしその計画は失敗に終わった。
まだ幼かった赤龍、白龍、黒龍、それに若き四海龍王になった青龍王、応龍の次女である乙姫が偶然居合わせ阻止したから。
その後、赤子は王宮に運ばれた。
しかし問題が起こる。
王たる赤子は双子だったのだ。
それが黄龍王と玉龍だった。
赤子は成長し黄龍王は幼くしてその力は応龍に匹敵する力を兼ね備えていた。
まさに龍神族を統べる皇帝龍になっていた。
そして永き争いがあった天界の神々に向けて黄龍王は戦争を仕掛けたのだ。
その手には真王のみ手にする事が出来る聖魔の剣を手にして。
黄龍王率いる龍神族の進撃は天界を揺るがした。
黄龍王に従うのは龍神族の英雄応龍。
そして八大龍王と四海龍王、数万の龍神兵達。
同時に地上界から妖怪軍の進撃も相成って天界の混乱は留まる事はなかった。
しかし黄龍王に異変が生じる。
龍神兵を止めるために天界からは最高神で組まれた四天王が足止めしていた。
天界武神と龍神兵の大混戦。
まさに百年戦争勃発になりかねなかった。
「ぐはぁ!」
突如、黄龍王が吐血して膝をつく。
「黄龍王様!!」
駆け寄る応龍は黄龍王の異変に気付く。
その身体が徐々に崩壊しているのだ。
それは真王のみ持つ事が許される聖魔の剣を手にした事で急激に生命力を奪われていたのだ。
「この我は真王ではないと言うのか?そんな事は許さん!我は真の王!世界を統べる皇帝なのだぞ!」
しかし剣を持つ腕に力が入らない。
現実は黄龍王を追い詰めていく。
「退くのじゃー!」
応龍は天界進軍の撤退を命じる。
「何を勝手な事を!許さぬぞ!」
暴れる黄龍王に対して応龍は一言。
「御無礼を申し訳ありませぬ」
拳を打ち黄龍王を気絶させて龍神界へと軍を引き返したのだった。
龍神界へと戻った時の黄龍王は全身崩壊の状態で指一つ動けないでいた。意識はあり、動き出そうと龍の雷を巻き起こす天災に耐えかねた応龍は仕方なく黄龍王を鎮めるために龍神石に封じたのだ。
「新たな器が見付かるまでの辛抱でございます」
黄龍王の器探しが始まった。
最初に候補になったのは存在が見付かったばかりの双子の玉龍だった。
しかし資質から身体能力。
もし魂を移したとしても本来の力は発揮する事は出来ないと判断された。
それでも保険として玉龍は龍神界に置いておくことにした。
それから数百年後、器に成り得る者が見つかる。
この俺様の身体だった。
それは四聖獣の宿主になっただけでなく、朱雀、白虎、玄武を三体も宿す器だったから。
そして俺様に行き着くわけなのだが・・・
経緯はもうどうでも良かった。
その真実に玉龍は涙していたのだ。
俺様達が知った真実とはこれまでの黄龍王の本当の気持ち、心までも流れ込んで来たから。
「僕は誰?僕は王様なの?
王様って何?王様は国を守るのがお仕事なの?
守るってどうするの?知識が必要?」
幼い黄龍王は学ぶ。
国の事。龍神族について。
他の種族との関係。
天界の神々との因縁。
地上界にいる妖怪や人間について。
そして蛇神族について。
「国を守るためには何が必要?
力?力?力?力?絶対無比の力?
誰にも奪われない力?
国を龍神の民を守るための力!」
黄龍王の神才は急激な成長を速めた。
速めた事で負担がかかりなからも。
直ぐにでも民を安心させたかったから。
しかしそれは命を削り始めていた。
何度も何度も吐血をし全身を蝕む激痛に耐えながらも、その威厳をもって誰にも知られずに振る舞う。
しかし限界が来た。
無理な成長の促進が肉体を蝕み始めたのだ。
寿命が残り少ないと気付いたからこそ、天界への進軍を決意した。
自分の存在を天界に広める事で龍神界に手を出させないようにするため。
早急に動かないと自分が動けるうちに。
その思いは全て龍神界の民のためだった。
正しく王たる意志。
しかし目的を果たす半ばで寿命が突きかけ、天界から堕ちて地上界に降りた時、そこで怪我をした人間の男の命を救った。その目的には自身の復活への保険でもあった。
しかしそれでも、
「我が命でも小さき命を救えるのだな」
初めて一族以外の生き物の命を救った。
気付けば天界との争いは終わり龍神族は平和だった。
天界も蛇神も脅威である事には間違いないが、自分から争いを始める必要はなかった。
それでも降り掛かる敵は倒す。
自分にはそれだけの力があるのだから。
敢えて自分から荒波を立てる必要はないのかもしれないと気付く。
しかし考えは甘かった。
絶望の未来を見てしまったのだ。
蛇神軍の進撃が自分が大切にして来た国を崩壊させる未来。
どれ程の龍神の民が血に染まるのか?
しかし黄龍王は止められない。
何故なら民を守るために救う手も肉体もない。
本来の器は過剰な成長と聖魔の剣の力の負荷で崩壊してしまい魂を封じて存在を維持しているに過ぎない。このままでは龍神の民は滅びる。
「嫌だ!我は王としてこの命をかけてでも民を救わねばならない!これが定めなのだから!」
その為に強硬手段に出た。
事を早め俺様の肉体を手に入れる計画。
俺様の中の阿修羅を取り出して代わりに封じられていた龍神石より自分の魂を俺様の身体に入り込んだのだ。しかし直ぐには魂が定着しない。
時を見て復活する予定が、予言で見た蛇神族の進撃が始まってしまったのだ。
急がねば!
しかし間に合わなかった。
また無理な成長をすれば同じ過ちが起こるだろう。
その為に必要なピースはあった。
万聖龍王に与えていた黄龍の血を再び自分の身体に戻して自らの魂を促進させ、復活を遂げる。
そのために万聖龍王に血を預けていたのだから。
どんな犠牲が伴っても。
「構わない。我の命は民のため!その民に血を流せ、国を滅ぼした蛇神族は決して許さない!この命が尽きるまでには必ず蛇神族を根絶やしにしてやろう!」
怒りと復讐。
「そして唯一残った民には、せめて民だけは平和に穏やかに生きて欲しい。その為の礎になるのなら王として本望だ」
その想いは黄龍王の本音。
素の声。
その真実の本心の声が流れて来た事に玉龍は衝撃を受けて涙を流していたのだ。
「貴方は、何て気高く、そして王として相応しい方なんだ・・・自分の事は顧みず、龍神族のために生きて来たなんて・・・。それに引き換え僕は何て無力なんだ。貴方と共に産まれたにも関わらず、己の弱さを嘆き、悲観しながら兄さん達に守られて生きて来た。まるで正反対じゃないか」
嘆く玉龍は黄龍王に伝える。
「勝手に我の心を覗き見るな!無礼者!」
けれど玉龍は涙を流して訴える。
「貴方は誰よりも優しく責任深い。貴方こそ僕達の王として相応しいです。けれど孫悟空さんの身体は奪わないでください!もし可能なら!僕の!僕の器を使ってください!」
「!!」
しかし黄龍王は首を振る。
「愚かな!それにお前の器では役不足。多少は潜在能力を引き上げはしたようだが、我の魂を受け入れるまでには達してはいない」
二人のやり取りに俺様は割り込む。
「なら、またぶん殴ってでも取り返す」
「出来るのか?お前に?」
「いや、俺様じゃなくて玉龍がな?」
「って、僕ですか?無理ですよ〜」
「俺様は嫌だぜ?法子に言われてるんだよ!女を殴ったら駄目だってよ?」
「そんな事言ったって僕は・・・!?」
その時、玉龍は自分の耳を疑い首を傾げた。
「えっと、あれ?あの?今、何と?」
「何がだよ?」
「いえ、今さっき何かとんでもない事を言われませんでした?誰を殴ったら駄目って言いました?」
「ん?黄龍王?」
「他に何か言いましたよね?」
「はぁ?だから女は殴れないんだって!」
「えっ〜〜??」
そこで玉龍は驚きながら黄龍王をガン見する。
自分と似た容姿に似た声。
けれど言われて見れば?
そこで初めて玉龍は黄龍王が女だって事を知ったようなのだ。
って?あれ?皆気付いてたよな?
臭いとがで?
「煩い!何が女だ!我は黄龍王!性別など関係ない!我は龍神界を救う!その為になら何でもする!それが王としての責務!」
「そんな責務なんて捨てちまえ!お前はもうよくやったよ。けれどお前はまだ世に出るには早すぎったんだ。お前はもっと時間をかけて成長し、そして立派になって龍神界を統べるべきだったんだ」
「何を知った事を!もし我が現れなければこの世は蛇神に奪われ、龍神族だけでなく全ての一族が滅ぼされてしまうのだろうが!」
「そんなもんは俺様が何とかしてやる!蛇神族は俺様が全員ブッ倒す!」
「フッ。口ではどうとでも言える。お前程度では世界は変わらない。何も動かない」
「動くさ!俺様一人では無理でも俺様には仲間がいる。お前が出来る事を俺様は仲間の力を借りてやってやる。お前一人で全て背負い込む必要はないんだ。俺様達は皆で未来を作り出す!」
「!!」
すると俺様の意識に青龍王、朱雀王、白虎王、玄武王のオーラが覆い包む。
「コイツらがよ俺様に言ったんだ。お前を救って欲しいとな?本来なら皆でお前を支えたかった。聖獣界の存続の全てをお前に任せきりになってしまった。これからはお前が今日まで頑張って来た全てを俺様達が引き継ぐ。だから、なぁ?お前はもう休めよ」
「!!」
その時、黄龍王は俺様に可能性に気付いてしまったのだ。
俺様の瞳、金色に輝いていた魔眼に!
その輝きは黄龍王の背負って来た重荷から解放するような温かさがあった。
「救世主が我の跡を継ぐと?我が大切にして来た世界を救ってくれると言うのか?」
しかし休むと言っても肉体を失った黄龍王の意識は?
魂はどうなると言うのだ?
その時、声が響き渡る。
それは蛟龍王の声?
提案だった。
すると強烈な閃光が俺様と玉龍を包み隠す。
「ハッ!?」
気付くと俺様は元の肉体に戻っていた。
目の前には蛟魔王と万聖龍王、そして俺様と一緒に元に戻れた玉龍がいた。
俺様は無事に自分の肉体を取り戻したのだ。
「あの〜それで黄龍王様は?どうなったのですか?」
玉龍は不安そうに蛟魔王に聞くと、俺様も蛟龍王を見る。
「玉龍、心配はしなくて良いよ。黄龍は生きている。生きているからな」
「えっ!?」
蛟龍王は精神世界での提案の内容を告げた。
黄龍王は再び蘇る。
新たな肉体を手に入れて!
それは誰かの肉体を奪うのではなく、新たに産まれて来ると言うのだ。
「この私からな」
「えっ?」
蛟龍王の提案とは黄龍王の魂を蛟龍王の胎内に残し、新たに産み落とすと言う受胎転生だと言う。
つまり蛟龍王の子供として再び産まれてくるのだ。
しかし問題はある。
この世界が滅びていたら元も子もない。
「黄龍王が産まれて来る時、この世界が蛇神によって滅びてないように我らが繋いでやらないとな」
「そうだな」
俺様は拳を向けて答えた。
「俺様が必ず繋いでやるぜぇー!」
そして蛟魔王曰く、
もう一つこの受胎転生には問題はあるようなのだ。
「浦島よ?後はお前の頑張りだぞ?分かってるな?」
「えっ?俺っすか?俺が何の役に立・・・あっ!」
万聖龍王は赤面した後に顔を喜ばせて答える。
ん?意味が分からないだと?
つまり産むには蛟魔王一人では出来ないだろ?
だから~「おしべとめしべの定義」だよ!
後は親に聞け!産む。ではなく、うむ。
「俺!頑張るから!張り切るからな!乙姫さん!」
はぁ〜ヤレヤレ。
何をイチャコラしとるんだよ?
緊張が解けてちゃ駄目だろ〜
てか、俺様達はそんな悠長な事を言ってられる状況じゃないよな。
まだ戦場は終わっちゃいねぇ!
だって目の前では激しい戦闘の真っ只中なのだから。
蛇神の王・テューポーンと百獣王の!
まだまだ終わりそうになさそうだ。
次回予告
蛇神の王・テューポーンとの戦いはまだ終わってはいなかった。
百獣王は蛇神の王・テューポーンを倒せるのか?




