蛇神伝承編! ヤマタノオロチ!
過去の物語
ヤマタノオロチとは?
私は法子。
私は今、軍駝覇蛇の記憶の中を見ていたの。
その記憶の中での彼は人間で、妖怪を倒す退魔を生業としていた。
そこで出会ったのが特殊な力を持つ巫女との出会いがあったの。
忌まわしき八つの頭を持つ蛇神ヤマタノオロチを倒すために、退魔師達は戦いの準備をしていた。
彼らの武器は魔物に通用する。
その武器には今まで殺した魔物の血を塗り付けた呪詛の力が纏われた魔道具。
この武器を持って人間である彼らは魔物討伐を成し遂げていたの。
「俺達兄弟はこの刀で千体以上の魔物を狩ってるんだぜ?」
「へへへ」
兄の無冠と弟の執心は元々盗賊だった。
金品や食料強奪をしていた彼らを捕らえた国に魔物が入り込み、そのどさくさに紛れ逃走した。
しかし魔物は彼等を追って来て、逃げるため、生きるために死にものぐるいで抗い戦った。
その時に使った刀で何度も何度も魔物をくしざしにした。息絶えても何度も何度も!
圧倒的な強者であった魔物を殺す事が彼等に歓喜と快楽を与えた。
それが退魔師になった経緯。
頑鋼はもともと国の用心棒として働いていた。妖怪相手に屈強に戦い、拳を使った肉弾戦で妖怪を殴り付け血を浴びているうちに鎧が魔道具として力を得たの。
それから妖怪を殺す事に生き甲斐を感じる。
また薬膳は薬師であった。
薬師であると同時に毒の生成にも優れ、自分の見た目を馬鹿にした者を毒殺した。
気に食わない嫌いな者は全て毒殺した。
やがて究極の猛毒を追い求めているうちに妖怪の呪詛に手を伸ばし、呪毒完成させた。
その材料として妖怪の血肉を手に入れる為に退魔師となった者。
妖怪を退魔しているうちに心の箍が外れ欲望にかられて力を求めるようになる。
それは螺旋も似ていた。
彼が退魔をする理由は自分の村を襲い肉親を殺した妖怪に対しての復讐という欲望からだった。
しかし香梁は憎悪といった欲望で退魔の道に進んだのではなく、村の唯一共に生き残った螺旋と同じ道を進んでいたのは異例なの。
既に三日後に来たる日が迫る中、罠を仕掛ける者、武器の点検や強化をする者。
戦いの準備を着々と進めていた。
「恐いか?」
螺旋は祭壇の炎を見つめていた巫女様に質問したの。
巫女様は螺旋に振り向くと、
「恐くないと言ったら嘘になります。けれど今は少し嬉しい気分でもあるのです」
「嬉しいだと?気でもふれたか?」
「本当に螺旋は失礼ですよね?私が嬉しいのは一人で脅えているのではなく、貴方が傍にいてくれているからです。一人村の皆からの手前、心を露わにして恐怖に耐えなくてすみますから」
「そうか」
「!!」
すると螺旋は巫女様を抱き寄せ胸に顔を沈めさせる。
そして頭を撫でて言った。
「恐ければ泣けば良い。誰にも責めさせはしない。咎めさせたりはしない。お前一人が苦しむ必要などない」
「うっ!!」
巫女様は螺旋の胸の中で肩を震わせ泣いた。
初めて心を表に出したの。
そして時は進む。
村人達が巫女様を神輿に担ぎ上げ、祭壇に乗せる。
炎の松明が囲み、祭壇に松明がくべられる。
揺れる炎に揺れる影。
六人の退魔師は各自飛び出せる場所に潜んでいた。
村人達は魔物の指示した丑三つ時に合わせて自分達の村へと逃げるように去って行く。
巫女様を残して。
「誰も巫女を助けたいと思わないのだな?巫女が自分達のために生贄になる事を当然だと思っているのか?あんな連中を守る必要が本当にあるのか?」
螺旋は刀を手に舌打ちをする。
「よっぽどあの巫女様にご執心なのね?嫉妬したゃうわ〜私」
「どうやら今回の魔物は今まで倒して来たのとは比較的にならないくらいの化け物だ。お前はわざわざ付き合わなくても良いんだぜ?」
「あ〜ら?私がいなくて大丈夫なの?ここは俺に付いて来いと私を引っ張るのが良い男ってもんよ?」
「死ぬなよ?」
「お互いにね?」
二人は気配を消して魔物が来るのを待つ。
時が迫る。
闇が濃くなる。
何かが迫る気配を感じる。
同時に全身を痺れさせる危機感。
確実に近付いて来ているの。
今まで感じた事のない強大な魔物の気配が!
すると大地をすりながら大地が揺れ動く。
そして隠れながら見上げた先で山が動いた。
「!!」
その場に残った者達は山が八つに分かれ動くのを見て悟った。自分達が相手にしようとしていた魔物は自分達が今まで倒して来た小者など比べ物にならないほどの化け物なのだと実感する。
魔物は噂通り八つの頭を持つ大蛇だった。
その頭一つ一つが供えていた樽に入れた酒に頭を突っ込み飲み干していく。
しかし全員その場で金縛りに合ったかのように動けなかった。凍てつくような恐怖。
「これが俺達が相手にしようとしていた化け物なのか?」
螺旋はかつて無力に姉を見殺して生き延びた時の恐怖が頭を過ぎる。
動けずに震えるしかなかった。
「けれど俺はもう二度と!」
螺旋は駆け出していた。
そして祭壇にいた巫女様を抱き寄せると祭壇から飛び降りる。
「螺旋!貴方は何を?」
「悪いな?あの化け物を始末するなんて無理だ!だが、お前の命を守るために逃げる事は出来る!」
「そんな事をしたら村が!」
「関係ねぇー!お前はお前の事を考えろ?他人の事なんか背負う必要ない!」
暴れる巫女様を抱きしめる腕は強く抗う事は出来なかった。しかしその前に、
「好きにはさせねぇよ?」
「その女を寄越せ!」
無冠と執心が道を塞ぎ、そして攻撃して来たの。
無冠の刀を巫女様を庇いながら刀を抜いて受け止める螺旋。
しかし背後から執心が動けない状態の螺旋に向けて刀を振り下ろしたの。
「させないわよ!」
しかしその刀は香梁の刀で受け止められる。
螺旋と香梁、無冠と執心が対峙している中、ヤマトのオロチが巫女が消えた事に気付き起き上がって来たの。しかし動きが鈍い?
「どうやら俺の仕込んだ毒が効いて来たようだな?お前が呑んだ酒には味覚では感じない即効性の猛毒が仕込んでいたんだ!しかもお前と同じ大蛇をも仕留めた物の数百倍の一品よ!」
それは薬師でもある薬膳だった。
そして手にした刀でヤマタノオロチの眼に向けて突き刺そうとした時、ヤマタノオロチが再び動き出して猛毒の障気を吹き出したの。
「ぬっ?ヌゥおおおおお!?」
薬膳の身体が猛毒に焼かれて熔け命を落とした。
その猛毒の中を突っ込んで来る者がいた。
その鎧と盾には猛毒をも中和する耐性のあった頑鋼が、飛び上がりヤマタノオロチの頭上から大槍を突き刺そうとする。
「気をつけろ!後ろだ!」
「なぬ?」
螺旋が叫んだ時には頑鋼の背後から近付いて来ていたヤマタノオロチの別の頭が頑鋼を丸飲みにした。
「う、うぎゃあ!」
その口腔内で頑鋼は全身を潰されて命を落とす。
その惨劇に螺旋達は戦うのを止めて金縛りに合う。
ヤマタノオロチの睨む眼に魂を吸われる感覚がした。
このまま気が抜けるような。
「皆さん!気をしっかり!喝!」
巫女様から発した光に全員我にかえる。
そして同時にその場から逃げていた。
螺旋は振り向かずに走る。
その腕に巫女様を抱えながら。
執心の悲鳴が聞こえ、その次に無冠が掴まった。
そして崖にまで来た時、追い詰められる。
ヤマタノオロチは直ぐそこにまで来ていたの。
「飛び降りるしかないようね?」
「そのようだな」
螺旋と香梁は一か八か崖から飛び降りた。
その時、螺旋は気付く。
一緒に飛び降りたはずの香梁の姿はなく、崖上でヤマタノオロチ相手に刀を抜いて戦っていたのが見えた。香梁は二人を逃がすために囮になっていたの。
「後はよろしくやりなさ・・・いょ」
直後、満身創痍の香梁は身体を両側から大蛇に噛まれて真っ二つに引き裂かれたの。
「香梁ぉーー!!」
落下しながら苦楽を共にした香梁の最期を目の当たりにし、幼き日のトラウマから一切流す事のなかった涙を流していた。
螺旋は崖下の大木に身を強打しながらも巫女様を抱きしめ守っていた。
そして地面に落下しそのまま二人は意識を失ってしまったの。
そんなこんな。
次回予告
ヤマタノオロチの脅威はまだ終わらない
生き残った巫女と螺旋の運命は?




