蛇神伝承編! 狙われた巫女
軍駝覇蛇の看病をしていた法子。
その時、法子は意識が飛んでいた。
う〜ん?
あれ?ここは何処?
私は法子。
うん。頭はハッキリしているようね?
私は傷付いた軍駝覇蛇を手当てしている最中、突如急激な睡魔に襲われて気を失った。
正確には眠ってしまったの。
つまり今は夢の中なのかしら?
私が今見ているのは見渡す限り平和な山々。
私の知らない風景だから妄想?
だけどリアルなのよね〜
とりあえず頬を抓ると
「痛くな〜い!やっぱ夢だわ!」
私は試しに宙を飛びながらこの世界を見て回る。
因みに今の私は幽体のように透け通り、自在に空を飛んでるから夢で間違いないのよね?
そこで私は人が住む村を発見する。
「う〜ん?コレって?」
夢の中の住人は古い民族衣装で、学校の教科書で見たような昔の日本の衣を纏っていたの。
「昔の日本なのかな?なんとなく」
でも何故?
とりあえず起きようかしら?
そう思った時、夢の中の人々が騒がしくなる。
「何が起きたの?私の夢で?」
村を囲う堀から異形の化け物が這い出て来た。
「えっ?魔物?」
槍を持った村の男達が中に入れないように魔物相手に戦うけれど、全然相手にならなかったの。
どうしよう!
て、私には何も出来ないわ。
だって、コレ?夢よね?
けれど襲われる村人達の生々しい姿が目に余る。
「もーう!」
私は印を結んで魔物に向かって念を放ったの!
実は私、夢の中で自由に動く事に関しては慣れてるって言うか〜。
うん!意識の持ち方次第で夢を操れちゃったり出来るのよ。
「?」
けれど私の念は何も生じなかったの?
それに夢を操るどころか勝手に話が進んでるの。
「どうなってるのよ?これ?本当に私の夢?」
すると魔物達がわんさか村の中へと侵入を許してしまったの。
女子供の悲鳴が響き渡る中、村の中央から男達に背負われた神輿が運ばれて来たの。
「えっ?何事なの?」
すると神輿の中から神聖な波動が広がっていき、迫って来た魔物を浄化し消滅させていく。
その波動を感じた私は唾を飲む。
「嘘?何で?どうして?」
私の胸を熱くするこの波動は何なの?
感じた事のあるような懐かしさがあった。
すると私の見る夢の中で、神輿から誰かが降りて来たの。
それは女性?長髪の黒髪に巫女のような衣を纏った私に歳の近い女の子だったの。
「皆さん、まだ強い力を感じます!」
険しい瞳の視線の先には、同じく堀から黒く巨大な魔物が腕を伸ばして登って来る。
「うごぅおおおおおお!」
その雄叫びに大地は震撼して村人達は立っていられずに倒れていく中で、巫女の女の子は膝を付きながらも波動を放つけれど魔物には通用しなかった。
そして魔物が堀から完全に抜け出ると見上げる程の化け物だった。
そして目の前の巫女を捕らえようと腕を伸ばして来たの!
「もう!もう!もう!」
私は助けたくてもどうにも出来なかった。
私の力が何も出ない。
全く出ない。
夢だから仕方ないと思うけど、こんなの見て見ぬふりなんて出来ないもん!
その状況で魔物の手が巫女に手が近付いた時!
「お願いします」
巫女が発した言葉に隠れていた者達が姿を現したの。その者達は禍々しい障気を帯びた武器を持った男達だった。あの武器からは妖気を感じる?
恐らく妖怪を斬った武器に大量の化け物の血と障気を帯びて、化け物を殺せる魔道具。
魔道具を持った彼等は化け物を専門に狩るために呼ばれた用心棒みたいなもの。
用心棒達はお金で雇われた無法者。
その荒々しい戦いは魔物相手に残虐だった。
別に魔物に対して私怨があるわけでもなく、狩りを楽しむといった理由での請負い退魔師。
けれど村を守るためには彼等に頼むしかなかった。何故なら村の祠の方には数多くの女子供達が避難していたから。これ以上先に行かせたら村は滅びると予言で知り、彼等を雇っていた。
「本当なら奴等のような忌まわしき連中に頼んだりしなかった。お前が片付けられぬからだぞ?」
「ち、父上様」
巫女の背後に村の長である男が現れる。
長にして、巫女の父親。
魔物が口から障気を飛ばすと一人の退魔師が盾になって受け止める。
って死ぬ気?
「ぐふふ。この俺の鎧と盾にはどのような攻撃も効かねえぜ?」
その者の鎧も魔物の血を吸った魔道具。
その鎧から発する障気が魔物の攻撃を無力化した。
そこに二人の退魔師が左右から攻撃を仕掛ける。
「うりゃぉおおお!俺が一番乗りだぜ!」
「焦るなよ?兄弟!」
その二人は兄弟の退魔師。
手にした妖魔刀で魔物の両腕を同時に斬り落とす。
他には?
壷を背負った男が一人。
「怪我したら俺の手製の万能薬を高く売ってやるからな?だから怪我しろ!へへへ」
それに離れた場所で大木の上から見ている二人。
「あの野蛮な兄弟はノリノリね〜?そうは思わない?」
「・・・」
まるで女性のように化粧をした男に、無口な男。
ん?あれ?えっ?嘘?
その時、私は初めてこの夢の中で見知った登場人物を発見してしまったの。
あの無口の退魔師って、似てるわ!
軍駝覇蛇に!!
あれ?あれ?あれ?
私は改めてマジマジ見てみる。
よく見れば他の退魔の連中もそうだわ!
あの頑丈な鎧の男は八怪が倒した硬剛覇蛇?
薬の壺を背負っているのは紅孩児君が倒してくれた熔毒覇蛇なのかな?
あの兄弟は喰殖覇蛇と蝕王覇蛇。
女装してる男は妖輝覇蛇に似てなくもない。
そう言えば魔導覇蛇も元は私のいた時代の男の子が蛇神化したのよね?
それに龍神界を襲った輝皇覇蛇も別の時代に人間が蛇神化したと言ってたし。
そうなると他の覇蛇の連中も元は人間だったて事?
もし、もしよ?
今私が見ているこの夢が夢じゃないのなら、考えられる事は一つしかないと思う。
コレは軍駝覇蛇の記憶の世界なのね?
私は彼の記憶の中にいると思う。
だから私の力が干渉出来ないのだわ。
だって記憶は夢と違い既に起きた出来事なのだから。
私はとりあえず状況を見てる事にする。
理由は好奇心。
六人の退魔師は魔物達を全て一掃させると、その数の分だけ村の者から金品を要求し支払われる。
これで仕事は終わる。
男達は村を守った褒美と宴会に誘われお酒や贅沢な料理をふるわれたの。
「で?俺達を滞在させた理由が他にあるんだろ?言えよ?金になるなら聞いてやっても良いぜ?」
「後は酒な?」
兄弟の退魔師が村の魂胆を見抜き提案する。
「流石だな。金の匂いには敏感だな?」
「あっ〜??」
薬師の退魔師の挑発に兄弟達は睨み合う。
どうも仲間?ではないみたいね?
同業者であるけれど時に手を組み、時には敵になるような間柄みたい。
それは他の二人とも同じ。
「あなたが魔物を狩る事に手を出さなかった理由分かったわ〜。本命が他にいる事に最初から気付いていたのね?」
「まぁな」
どうもこの村には更に強力な魔物が棲みつき、怖れられているようね?
「なら話そう。お前達への仕事を頼みたい」
村の長は座すると、現状を説明し始めた。
この村の深海と呼ばれる場所に巨大な化け物が出現したの。
その化け物は八つの頭を持つ蛇神。
ヤマタノオロチと呼ばれる化け物!
ヤマタノオロチは覚醒する為に巫女を生贄として差し出すように命じて来たの。
そうすれば村の安泰を約束すると。
「お前達にはそのヤマタノオロチを始末して貰いたい。報酬は望むがままだ!」
「やけに太っ腹だな?」
「それだけ難しい仕事だと言う事だ」
その話を聞いていた軍駝覇蛇に似た男が話に割り込んで来たの。
「八つの頭を持つ蛇の化け物の話は噂で聞いた。ここから離れた大国を一夜にして滅ぼしたと聞いている。それほどの化け物が何故このような小さな村の巫女を欲するのだ?」
「そ、それは・・・」
言葉をつぐむ長の代わりに、この会話に巫女が姿を現したの。
「それは私が魔を滅する力を持つ巫女の一族だからです」
「お前が生贄の巫女か?確か魔物を奇っ怪な力で消したのを見た。それが魔を滅する力か?」
「その通り。私の一族は代々神の声を聞き、そのお力をお借り出来るのです。その力を蛇神は欲しているのです。私は村のためにこの命を捧げるつもりです」
「愚か者!お前が死んだら、それこそこの村は終わりなのだぞ?」
父親は娘の力が必要だった。
その話を聞いていた男は、
「ふん!俺は降りる」
話を聞くなり外へ出て行ってしまう。
「ちょっと待ってよ〜」
その後を追うもう一人の退魔師。
「ケッ!臆病風に吹かれたんだろ?俺達兄弟は褒美を貰えれば手伝ってやるよ!」
その参加に薬師の退魔師と大盾を背負う大柄の退魔師も参加表明したの。
「お願い致します。時は七日後。丑三つ時」
それは時と場所を越えた物語。
そんなこんな。
次回予告
それは覇蛇の前世の物語。
それは法子とどう関わってくるのか?




