失われた存在、九霊元聖!?
真蛇王マダムを倒すためには、その部屋の扉を開けるためには扉を守護する大蛇王を倒す事だった。
私は法子。
真蛇王マダムを倒すためには、その部屋の扉を開けないといけないの。
その扉を開ける鍵こそ扉を守護する十体の大蛇王を倒す事だった。
でも既に九体を倒して、残るは一体。
九蛇王コブラと海蛇王トグロが残っている事に気付き、とにかく残り二体倒さなければならなかった。
そして今、黄風魔王が九蛇王コブラを撃破したにも関わらず、扉は開かない。
つまり残る海蛇王トグロが扉を開ける最後の鍵なのね。
トグロと戦っているのは金禅子の手下の九霊元聖って妖怪なのだけど、その妖怪の情報はないの。
ただ、金禅子が私達が制覇した事で役目を果たし崩壊した干支十二宮殿を残留思念から一時的に復活させ、その全宮クリアで死者を蘇らす願いで復活させた妖怪らしいのよ。
金禅子にお茶を入れ直しながら黄眉大王が質問してみたの。
「あの九霊元聖って私達の時代にも千年前の妖怪にも名を連ねない無名の妖怪ですよね?いったい何者なのでしょうか?金禅子様?」
すると金禅子は珍しく答える。
「奴はこの世界の歪みの影響で世に出る事が出来なかった妖怪だ」
「歪み?世に出なかったって?意味が全然理解出来ませんのですが?はて?」
続ける金禅子の発言は更に理解を超えていたの。
「本来奴は俺と孫悟空達との旅で最難解の試練だった。その実力は俺の折り紙済みだ。しかし時間軸の改変で奴が現れるタイミングで蛇神が世に放たれてしまった。さらに過酷な試練としてな?その事で九霊元聖は時間軸から追い出され存在が失われた幻の妖怪」
「??」
「この世界の九霊元聖は旅の試練としての存在を失い、代わりに干支十二宮殿の番人としての新たな配役を与えられちまった。だからわざわざあの世から現世に引き戻し、お前ら同様この世界を壊すための駒として俺のもとにいるのだ」
「まぁ!?全くぅ〜意味わかりましぇ〜ん??」
黄眉大王と同じく私も理解不能だったの。
「しかしこの世界の九霊元聖はあまりにも弱い。弱過ぎる!この俺や孫悟空を苦しませた真の強さは見る影もない。だからこそ必要なのだ!奴を追い込ませ、この世界でも本来の力を覚醒させるための試練がな」
黄眉大王は話を聞きながら九霊元聖を見る。
「少なくとも九霊元聖の奴は今でも儂らより強いのですけどねぇ・・・」
九霊元聖は両手に光る妖気で海蛇王トグロの身体を殴り付けるけれど、ビクともしなかった。
強固な身体と、その腕力という単純な能力だけで海蛇王トグロは他の大蛇王や九蛇王コブラよりも上回る力を持っていたの。
「マダムは俺が守る。お前を始末した後、他の連中も一人残らず始末しその首を並べてやろう」
海蛇王トグロから発する蛇気は形となって二体の蛇の姿と変わっていく。
「海流の蛇地獄!」
二匹の蛇のオーラが九霊元聖の周りを囲みながら渦を巻いて閉じ込める。
渦の中で暴れるように抜け出そうとするけれど海蛇王トグロの足下が浮かび上がっていく。
そして身体が回転するように揺さぶられ渦の中を振り回されたの。
「う、うがぁあああ!」
身体の自由を奪われ、全身が蛇気に締め付けられていく。
そして渦の中心に立つ海蛇王トグロが拳に蛇気を籠めて殴りつける。
拳は九霊元聖の胸を抉るように直撃し吐血する。
そして床に落下し動かなくなったの。
「あれ?あらら?九霊元聖、負けてしまいましたよ?ありゃ〜助かりませんよ?絶対に〜」
黄眉大王が慌てる中、金禅子は無言だった。
そして思い出すのは、
過去の記憶。
金禅子が妖気の渦に吹き飛ばされそうになったところを孫悟空が腕を伸ばして掴む。
そして左右には同じく八戒と沙悟浄がいるの。
えっ?
どうして三人が金禅子と一緒に戦っているの?
そして四人が戦っている相手は九霊元聖だったの。
「あの九霊元聖が俺の敵ではなく味方になるのなら、それこそこの世界も使い物になると言う事。後は改変の歪みが奴を同一体と認めるか?それとも排除するかは賭けでしかないな」
その呟きは何を意味しているの?
すると倒れている九霊元聖の身体が痙攣し始めたの。
その状況に金禅子は笑む。
「ようやくか」
「へっ?」
金禅子の言葉の意味は?
黄眉大王は九霊元聖の身に起きている異常をただ見ている事しか出来なかった。
そして当の九霊元聖は記憶の錯乱を起こしていたの。
「こ、これは?何だ?俺の記憶?知らない?これは誰の記憶だ?」
九霊元聖は物心ついた時には既に死者の魂が封じられた干支十二宮殿の結界の中に眠っていた。他にも何体か同じく眠っている者達がいた。けれど他の妖怪との違いは現世で産まれ死んだ過去がなく、死者の世界である宮殿に突如湧いて出た妖怪なのだと聞かされたらしいの。
無から発生した妖怪。
そんな時、干支十二宮殿が私達に制覇され役目を果たし存在が消えた事で、九霊元聖は選抜に選ばれる事もなく何も役目を持たずして消滅した・・・はずだった。
突如再生した干支十二宮殿。
そこで九霊元聖に門番の「役目」が与えられた。
存在する意味を与えられたの。
しかし直ぐに宮殿は突破され、九霊元聖も倒されてしまったの。
僅かな時間を「生きた」。
しかし死を迎えたはずの九霊元聖は次に目覚めた時に、現世に生者として存在していたの。
その理由の主犯格が金禅子だった。
金禅子は九霊元聖を見下ろして告げたの。
干支十二宮殿を突破した者が最後に願ったのが九霊元聖の復活。そもそも九霊元聖を現世に呼び出す事のために崩壊したはずの干支十二宮殿を一時的に再生させたのだと。
そして金禅子からさらに驚くべき事を聞かされたの。
語られるのは九霊元聖の存在しないはずの過去。知らない自分。失われた存在の記憶。
かつて金禅子の一行を苦しめた凶悪な妖怪。
天界神の聖獣であったけれど地上に降り、九匹の獅子を仕えさせて地上界を支配した大魔王。
全く知らない自分の過去を聞かされているうちに欠けていたピースが埋められていく感覚になる。
他人?虚像?誰かと勘違いしているのではないかと思いつつも、毎晩見る夢の中の自分と被らせる。
「俺は何者なのだ?」
その迷いに金禅子は答えたの。
「俺は、お前を失わせたこの世界を破壊する。お前は俺の手足となり、その旅の中で失われた自分を取り戻すが良い」
「!!」
そして九霊元聖は己の失われた過去を取り戻すために金禅子に従い仲間となったの。
「俺はまだ何も取り戻しちゃいねぇ!」
九霊元聖の妖気が噴き出すように高まると、海蛇王トグロの前に再び立ち上がったの。
「馬鹿な?俺の技を受けて立ち上がるとは?ならば今度こそ二度と立ち上がれないように八つ裂きにしてやろう!」
しかし九霊元聖もまた狂気の形相で睨み付ける。
「この俺を八つ裂きだと?八つ裂きになるのはお前の方だぜ?蛇野郎!」
正直、どちらも凶悪そうで恐いわ〜
「唸りを上げろ!光の獅子!」
九霊元聖の身体から八匹の獅子の聖獣が飛び出して部屋中を駆け回りながら吠えると口から妖気の破壊波が八方向から放たれたの。
「このような攻撃が何だと言うのだ?」
海蛇王トグロが腕を交差させると海流が噴き出し全身を覆いながらトグロを巻きながら壁になる。
九霊元聖の獅子から放たれた全ての破壊波は弾かれると、九霊元聖は口笛を吹いたの?
「九獅変化唯我独尊!」
飛び出した八匹の獅子の聖獣が九霊元聖と合体して変化したの。
両肩、両肘、両膝、右胸、左胸、そして頭部の九つの獅子頭が目立つ鎧。
「獅子九剛咆哮!」
放たれた九つの破壊波は九霊元聖の両掌で混ぜ合わせ融合しながら凝縮する。
そして右手が獅子の頭のような妖気が噴き出した状態で構えたの。
「俺の攻撃は絶対に受けられないぞ?死にたくなければ逃げるのだな?だが、俺は逃げたお前を狩るのが楽しみなんだけどなぁ?にやぁ〜」
九霊元聖は飛び出していた。
「誰が逃げるものか?下級の妖怪の分散で!」
海蛇王トグロから発する蛇気は形となって二体の蛇の姿と変わっていく。
「海流の蛇地獄!」
互いの蛇気と妖気が衝突する。
「なぁ、なぁ?なぁに??」
九霊元聖の獅子の拳は海蛇王トグロの渦を貫き、そのまま突き出されるとトグロの身体の半身が失われていたの。恐る恐る振り向いたその時、恐怖しながら目の前の開かれた口に動けなくなる。
直後、噛み付かれたかのように海蛇王トグロは獅子に喰われてしまったの。
「ペッ!あ〜不味い」
九霊元聖は舌打ちすると金禅子に勝利を捧げたの。
これで九体の大蛇王と九蛇王コブラ、そして海蛇王トグロを倒したわけなんだけど?
あれ?あれれ?
どういう事なのかしら?
真蛇王マダムの部屋の扉が開かないのは?
その状況に金禅子は呟く。
「どうやら扉を開くには残り二体いたか」
金禅子は先に向かわせた百眼魔王の見ている扉を同調するように見ていたの。
百眼魔王は開かない扉に刻まれた窪みを見て説明する。
「金禅子よ、扉には鍵となる球を嵌め込む場所が十三箇所ある。既に十一箇所は埋められているようだぞ?」
百眼魔王に説明された金禅子は命じたの。
「大蛇王はまだ二体いるはずだ。早急に探せ!」
「俺使いの荒い旦那だよ!本当に!」
百眼魔王は百の眼を城全体に飛ばすと、その眼は力の強い反応を見付けたの。
同時に発見した眼が潰されて百眼魔王の目から血の涙が溢れる。
「おのれぇー!殺してやるぞ!」
怒り狂う百眼魔王だったけれど、それより先に大蛇王の目の前に現れた者がいた。
場所はマダムの要塞城の屋根上。
吹き荒れる風を諸共せずに大蛇王の前に姿を現した者は、紅色の鎧を纏った戦士だったの。
戦士は悠然と要塞城の屋根上へと着地する。
その姿を余裕で見ていた大蛇王の姿は双頭の大蛇王だったの。
しかも空高くに蛇気の槍を作り出し、要塞の中で戦っている金禅子一行やナタクの兄弟を既にロックオンしており、今にも撃ち落とそうとしていたの。
もし撃ち落されれば無防備な状態で全員串刺しにされていたの。
「俺の名は天蛇王・ダダ。高見の見物をしていたが、まだ城外にも残っていたようだな?俺もお前達の戦いを見て疼いていた所だ。先ず先に血祭りにしてやろう」
しかし翼の者は名乗らずに剣を向ける。
その兜で顔は覆われ、その素性は謎のまま。
次回に続く!
そんなこんな。
次回予告
天蛇王ダダと謎の紅色の鎧の戦士の戦い。




