女子高生の弟は一生懸命!
秀吉と対する勇斗は、その決着は?
続いて三蔵勇斗だ。
俺が戦っているのは、あの豊臣秀吉!
かつて日本の頂点にまで登り詰めた野心家!
しかも…
元は役小角様の直属の配下であり、織田信長を伐つために送り込まれた総本山のスパイだった事を知る。
だが、秀吉は織田信長のカリスマ性に憧れを抱き総本山を裏切った。更には自分自身が織田信長に成り代わりたいとまで野心まで抱く。
「どうじゃ?男と産まれて来たなら、一度は頂点を手にしたいと思うは当然であろう?童よ?」
「誰が童だ?お前がどうしたいとか、どうあるべきだとか自己主張するのは構わない…しかしな?」
「?」
「俺にお前の考えを押し付けるな!爺!」
俺は豊臣秀吉に啖呵をきると、再び戦う意思をみせる。
「夢を抱く事も野心なき者は強き力に押し潰され、家畜のように使われるか虫のように潰されるのみ。それが解らぬなら、それまでの器よ!」
「勝手に言ってるんだな?それに俺にも戦う目的や野望だってある…」
「何じゃ?それは?」
「教えねぇーよ!」
俺は再び指を噛むと血が流れながら奇妙な動きをする。それは深紅の二匹の蛇?
「またその奇怪な血の力か?カミシニのとは異なる神殺しの血?」
俺は指先に力を入れて秀吉に向けると、二匹の蛇はうねりながら襲い掛かる。
二匹の蛇は鞭のように秀吉の造った血の壁を破壊して、迫る!
「儂の血が小僧の血に反発しておるな?似て非なる魔性の血か?なら、どちらが高潔な血か試そうぞ!」
秀吉もまた腹に力を入れると吐血し、その血は地面に染み込んでいく。
「臭うぜ?お前のキモクセェ~臭いがよ?」
俺は地面が盛り上がる前に飛び上がると、地面から血の槍が飛び出し剣山のように足場を埋め尽くした。
「上手く飛び上がり逃げたが良いが、その後の着地はどうするつもりじゃ?」
俺は落下しながら、
「こうするさ!」
俺の操る蛇の鞭が剣山の先端を切り裂き、平らになった場所に着地する。
「馬鹿め?着地した場所は儂の血の上じゃぞ?」
秀吉の言葉通りに足場の血が液体化して俺の足に絡み付く。
「これで逃げ場なく殴り殺しじゃな?」
「そうか?」
今度は俺が足下を指差して見てみろ?と合図する。
「これは一体?」
俺の足に絡む秀吉のカミシニの血が沸騰し、蒸発し始めていた。
「俺の魔性の血、カミシニの血がどうこう言うより、俺の血はお前のような分家ではなく、生粋の純血だったようだぜ?」
「何じゃと!?」
秀吉のカミシニの血は信長の血を分け与えられた物。
それに比べて俺の蛇神の血は生粋なんだ!
すると秀吉の身体が震えだす?何がどうしたんだ?
「何が生粋じゃ!何が武士じゃ…どいつもこいつも血が何じゃと言うのじゃ!」
突如、怒りの形相へと変貌した秀吉に、一瞬身震いした。
秀吉に感じたのは荒ぶる憎悪?
「儂は農民からのしあがり、信長様に代わり日本国を支配した…いわば魔王じゃ!そうじゃ…信長様とて、儂の力を恐れておるからこそ、儂のみが老体の姿で甦らせたのじゃ…じゃが!」
「!!」
突如、秀吉の身体から嫌な力を感じる。まるで今から山でも噴火するような危機感を感じる。
「何が起きるってんだ?まだ何かあるのかよ?秀吉!」
秀吉は両手で自らの胸を貫き、自らの心臓を鷲掴みにすると力強く圧迫させる。すると異常な血流が秀吉の体内を廻り、身体が真っ赤に染まりながら纏っていた鎧や衣を破り巨大化し始めたのだ。
「うぉおお?」
見上げる俺の前に真っ赤な身体の筋肉マッチョの化け物が現れた。
まるで金剛力士みたいな姿に俺は…
「それがお前の本気らしいな?」
「怖じ気ついたか?小僧よ?」
「上等!」
俺は蛇血鞭を振り回し、巨大化した秀吉に絡み付ける。
「どうだ?」
だが、俺の蛇血鞭は秀吉の身体に触れて蒸発してしまった。
「マジかよ?」
秀吉の拳が降り上がっていき、まるでトラックが突っ込んで来たかのような勢いで俺の頭上へと殴り下ろされた。大地が凹み、音を立て崩れる。俺は辛うじて砂ぼこりの中で躱したが、秀吉は俺のスピードに惑わされる事なく、あの巨体で追ってくる。
「うおっ?マジに怖ぇ~!」
俺は掌に気を集中させ手を叩くと、向かって来た秀吉の前で発光させた!
「ぐぅ?目眩ましか?」
俺は今のうちに安全な岩の影に隠れる。
が、突如俺の背後の岩が持ち上がった?
「マジかよ?」
秀吉が俺の逃げた場所に既に移動していた。
砕かれる岩を目の前にして、
「俺の逃げ場を予測していたか?さすが策士だな?筋肉マッチョマンになっても頭は廻るんだな?」
「ふふふ。こう見えても儂は状況を見極める目を持っているからこそ、天下を取れたのじゃ!地べたを這いつくばりながら、それでも勝機は絶対に見逃さない!それが儂、豊臣秀吉じゃ!」
そんな秀吉の言葉に俺は感心する。
「何じゃ?」
「いや、うん。解るって思ってな?下から這い上がる男ってのは、やはり凄いよな?」
「何を言っておる?」
「だが、俺はあんたよりも凄い奴を知っている」
「?」
「俺は昔、逃げた…。危機的な状況に置かれて、俺は自分が生き残る事だけを考えた。ガキだった俺に力がなかったから仕方ない?違う!俺の知ってる奴は無力で立ち向かう力が無くても前に出て、勝てるはずないモノを相手にして前に出た…ソイツはあんたとは別の意味で諦めるとか知らない馬鹿なんだぜ?」
「だから何を?」
「あんたは決して負けるとか思っていないんだろ?どれだけ不利な状況も境遇も覆せると思っているんだろ?すげぇな…そういう馬鹿で真っ直ぐな所に俺は…
「尊敬する!」
俺には何もない。世界平和のために戦うとか、あんたのような天下取りの野心とか、執着ってのがなかったんだ。だから知らなければ努力もしなければ人生を無駄に生きるだけだった」
「今になって泣き言か?死を前にして頭が飛びおったか?」
俺は、目の前の秀吉に敬意を持って答える。
「俺の名字は三蔵だが、個人的にマジになった時には敢えて旧姓を名乗る事にしている。俺は…」
『蛇塚 勇斗!』
そして俺は真言を唱え始めたのだ。
『オン・アミリティ・ハッタ!明王変化唯我独尊!』
真言を唱えた時、俺の身体より力が漲り噴き出す。そして俺の身体中のチャクラが全開して高速回転をし、もう一人の俺の魂を呼び起こしたのだ!
俺の肌は青く変色し、筋肉が盛り上がる。その姿は既に人と呼ぶには神々しくも激しい荒ぶる神…
明王へと変化したのだ!!
「俺は神の転生者なんだってよ?神だぜ?神…笑っちまうよな?こんな俺が神なんだって言うのだから?」
俺は再び現れた二匹の赤い蛇をマフラーのように首に絡めると、
『軍茶利明王・勇斗!』
正に明王と呼ばれる神へと転身したのだ。
「豊臣秀吉!俺の本気を見せてやるぜ!」
「小僧がいくら喚こうが、この儂を相手に何をしても無駄じゃ!」
「無駄かどうかは俺が決める。俺が不可能を可能にしてやる!」
俺は飛び上がると、秀吉の顔面に向けて殴りかかる。秀吉もまた俺に拳を降り下ろし互いの拳が激突した。本来、カミシニを相手にする神は、触れただけで神力を奪われるが…俺の血は反発するかのように持ちこたえる。
「後は、もう退かねえー!!」
俺の拳が秀吉の巨大な拳を押し返し、衝撃が伝って秀吉の肘が外れ曲がった。
「ぐんぬぅおお!?」
更に俺は、
「まだまだいくぜ!」
『蛇血鞭』
俺に絡まる二匹の赤い蛇が腕に移動すると、鞭のように扱う!
音速を越える蛇血鞭の連打が秀吉の巨体を襲う。
カミシニの血が徐々に熱を溜めて蒸発し、秀吉の身体が縮んでいく。
「グウヌゥウ…」
秀吉は跪いて俺を見上げていた。
「まさか…儂が信長様以外に見上げる者が現れようとはな…」
俺は逆に秀吉を見下ろして答える。
「俺は…秀吉さん?アンタを尊敬するぜ?その野心は己の主張!自分自身の証明だからな…俺はまだ青二才だ。人生経験なんてあったもんじゃない。けど、それでも俺は自分自身を証明したい。俺を…」
俺の台詞に、秀吉は笑みを見せていった。
「女子か?」
「!!」
「一度は天下をも取った儂の野望をも捩じ伏せ、どんな強い野望を持っとるかと思えば…好きな女に自分を証明するためとはのう?」
「んな?」
赤面する俺に秀吉は優しい顔付きになって言った。
「好きな女は必ず手に入れよ!諦めたり後悔するくらいなら最初から惚れるな?ぶつかり得た女はほんに最高じゃ!うむ。儂にもおった…人の身であった時に心底愛した女子がのぅ」
すると秀吉は傷付いた身体で立ち上がり、
「さて、互いの野望が解ったところで…再戦といこうかのう?」
「秀吉?」
「勇斗と言ったのう?お主の青臭い野望と儂の天下の野望…本に強いのがどちらか比べてやろうぞ!!」
「上等ぉ!」
俺と秀吉は最後の奥義を込めて、互いに渾身の一撃を繰り出そうとする。
そして、
先に動いたのは俺の方だった。己の神力と蛇神の血を融合させた破壊の一撃!
『ヘビメタル・インパクトーーー!!』
だが、秀吉は攻撃をせずに俺の一撃を無防備に受けたのだ!?
なっ?
秀吉は俺の一撃を受けて消滅する間際、その遺言とも思える最期の言葉が聞こえた…
『信長様を…カミシニの血の呪縛より、解放させてやっておくれ…』
消滅した秀吉の遺言を聞き止めた俺は立ち尽くす。
「戦う力が残っていないくせに、最後は武士として勇ましく死ぬとは…マジにカッコ良いぜ?天下の秀吉さんよ…」
そこで俺もふらつくように倒れかけた時、俺の上空の空間が歪み、結界が割れて飛び出して来た奴がいた。
「勇斗ー!死んじゃ駄目ぇええ!」
あ~耳に響く煩い聞き慣れた声だった。
俺はソイツの頭に手を置くと、
「ば~か?俺は死なねえよ?姉貴?」
泣きじゃくっている姉貴の頭を撫で、俺は…
姉貴…
俺が姉貴を守るから…
そのまま姉貴の胸の中で意識を失った。
織田信長のいる富士の頂上にある鮮血の本能寺に辿り着くためには、カミシニの力を持つ六人の門番を倒さねばならなかった。
既に五人の門番を撃破した今、残る門番は?
森蘭丸!
信長の小性として信長の最期に居合わせた側近。
対する総本山の勇姿は?
二人の男女だった。
共に高校生くらいの若い二人は、剣を手に蘭丸と戦っていた。
しかし?
この二人は一体何者?
どんな力を持っている?
それは、これから語られる外伝にて伝えよう。
次回予告
その少女は突然事件に巻き込まれた。
それは少女と少年の物語
『百魂刀』の物語




