偉神・太公望の実力!?
法子が捕らわれ、八怪、ナタク、紅孩児、二郎真君は
新たなパワーアップのために霊薬スーパーアムリタを飲む。
そこに雷帝覇蛇が軍を率いて迫っていた。
私は法子よ
私は覇王の蛇神城の地下牢から、イヤリングに隠し持っていた水晶を使って離れ離れの皆の状況を見ていたの。それにしても魔導覇蛇のアイテムは性能はトップクラスよね?本来なら蛇神の結界の中で遠視の水晶なんて役に立たないはずなのに問題なく見れるのは、間違いなく魔導覇蛇自身が蛇神の情報を収集するために特別に作り出して使用していたに違いないわ。
私が覗いて見ていたのは北の地にある蛇神への抵抗勢力。
そこは蛇神の襲撃から逃れて来た種族関係ない連合軍だったの。
その指揮をしているのが天界から降りたった神仙であり偉神の太公望さん。
そして今、雷帝覇蛇率いる千体の蛇神の軍隊が押し寄せる中、その中心に単独で太公望さんが飛び降りて奇襲をかけたの。
「さて、腕の見せ所かのぉ?」
太公望さんは宝貝の打神鞭を振り回すと雷撃が地面を削りながら地割れを起こす。
「打神鞭・雷串」
地面から雷の槍が無数に飛び出して来て蛇神の兵達を串刺しにしていく。それでも反応の良く生き残った蛇神兵は中心に立つ太公望さんに襲い掛かる。
「打神鞭・雷巻」
振り回す鞭を下方から上方へと軌道を変えると雷を帯びた竜巻が襲いかかる蛇神達を両断していく。
「今ので一割も削れんとは厄介よのぉ〜」
すると太公望さんの前に雷帝覇蛇が蛇神の神輿から降りて来たの。
「おっ?よく見れば雷を操っておった蛇神ではないか?暫く見んうちに化けおったの?」
それはこの北の地に幾度と攻め続けていた蛇神の将が雷蛇六尾だったから。
太公望さんは幾度とその進行を撃退していたの。
しかし今、目の前に現れた雷蛇六尾は覇王の血を手に入れ雷帝覇蛇として進化していたの。
「幾度とこの俺の邪魔をして来たお前の首を持ち帰り、これまでの汚名を払拭してやるぞ!この雷帝覇蛇がな!」
雷帝覇蛇は全身に雷を纒い、その尾が百本伸び出してきたの。
そして配下の蛇神兵に絡み付くと、蛇神兵の姿は全て雷帝覇蛇の姿となる。
「この蛇神兵は全て俺と繋がっている。繋がった俺は全て同等の能力を持つ。つまり百体の俺を相手にお前は戦わねばならんのだ!さぁ?どう足掻けるか楽しみだぞ」
さらに他の蛇神にも雷の粉が身に降りかかると、その身体能力を引き上げたの。
「さぁ!蛇達よ!向かうが良い!そして生き残った虫ケラ共を皆殺しにせよ!」
蛇神兵達は瞬時に動くと太公望さんを残して連合軍の城塞へと攻め込んでしまったの。
太公望さんは動けないでいた。
何せ百体の雷帝覇蛇が道を塞いでいたから。
このままでは強化された蛇神兵達の進撃に連合軍は全滅させられてしまうわ!
すると進行して来た蛇神兵の足下が闇に覆われて足場が落とし穴のように沈んでいく。
「影穴」
それは影一族の術だったの。
さらに城塞から人間達が霊気を籠めた矢を弓を使って飛ばすと、蛇神達を串刺しにしていく。
「その矢は私達の月の加護を加えた霊矢です。この矢なら蛇にも対抗出来ましょう」
月兎一族の白兎さんと无兎さんも人間達と力を合わせていたの。
それでも城塞に攻め込む蛇神兵に対して、門を守る青鬼一族が襲い掛かる。
三大暗殺集団の協力関係は連合軍の要だったの。
さらに多種の妖怪達、それに人間の兵も手を組み力を合わす。
「うむ。しばし耐えておってくれよ。この儂も直ぐに手助けに参るからの」
しかし容易くなかった。
百体の雷帝覇蛇は太公望さんの打神鞭を素速い動きで躱しては、四方八方から雷撃を放って来る。
「容赦ないのぉ?ふん!」
振り払う鞭は空を切る。
このままでは幾ら皆が頑張っていても時間の問題だわ!
それに百体も覇蛇を相手になんて無茶よ!
「うぎゃあああ!」
連合軍の城塞の中から悲鳴が聞こえ始める。
「蛇雷槍牙」
蛇神兵は雷属性の術を使い、門を守る兵士を貫き殺していく。そして城塞に入り込む蛇神兵の突破を許すと、至る場所で悲鳴が数多く聞こえてきたの。
「なぁ?何故?」
所々で同士討ちが始まる?
蛇神の中に姿を変える者がいるようなの。
さらに姿を透明にする者。
素速い動きで翻弄し、更に巨大化する者。
雷帝覇蛇の雷は蛇神兵の肉体強化だけでなく潜在能力を開花させ、様々な特殊能力を持たせたの。
「白兎様このままでは!」
「今は堪えるしかありません」
どこもかしこも大混乱になっていく。
その中で城の内部に潜入した蛇神兵が治療を受けて眠っている戦えない者達を見付けると、次々と剣で串刺していく。さらに介護をしていた物達にも襲いかかり、部屋中血に染まる。
すると奥の部屋に気付き、その中に四人の眠っている者達に近付いて行く。
その四人とはスーパーアムリタを飲み動けないで眠り続ける八怪、紅孩児君、二郎真君さん、ナタク。
このままでは四人の身が危ないわ。
その状況を雷帝覇蛇と戦いながら千里眼を通して見ていたのは太公望さんだったの。
「うむむ。マズイのぉ。奴らが目覚めるにはまだ時がかかる」
太公望さんは戻りたくとも雷帝覇蛇の執拗な攻撃を躱すだけで精一杯だったの。
そして動きがあった。
「この場に眠ってやがる虫けらは白蛇の巫女様の手配書にあった連中じゃないか?これはこれは広い物ではないか。この俺はツイてるぜ」
蛇神兵は剣を手に眠っている三人の首を落とそうとする。
ん?三人?
「ん?四人いなかったか?」
蛇神はその時、背後の殺気に気付き青褪める。
それは冷たく意識を切り離されるような殺気。
そして振り向くより先も、その蛇神の頭は足下に転がっていたの。
「どうやら奴の体質にスーパーアムリタの効果は薄かったようじゃな?これは好都合と言うべきか?それとも」
唯一先に目覚めたのは全身の四肢を切断され瀕死状態だったナタクだった。
スーパーアムリタの効果は万能の霊薬とともに潜在能力を引き上げる。しかしナタクは宝貝の身体で命を繋いでいる特殊な神であったため、スーパーアムリタは崩壊した身体を修復したものの潜在能力を引き出すまでには効果は及ばなかったの。
だからこそこの窮地に先に目覚める事が出来た。
「・・・」
ナタクは寝起きで状況が分からないでいた。
ただ寝ている時に自分に向けられた殺気に身体が反応して、勝手に殺したに過ぎなかったから。
そこに太公望さんから念波が入る。
「状況は分かった。なら、この地に入り込んだ蛇神を全て一掃する」
ナタクは眠っている二郎真君さんを横目で見て、
「お前が目覚める前に終わらせて置いてやる」
そう言うと全身に雷を帯びて瞬足で移動したの。
「スーパーアムリタの誤算はあったが、これで心置きなく戦えるわぃ」
太公望さんも目の前の敵に対して打神鞭に意識を集中させる。
「今より封神開始じゃー!」
太公望さんは打神鞭を地面に叩きつけると魔法陣が出現して大地が盛り上がっていく。
魔法陣の上に立ちながら下から追って来る百体の雷帝覇蛇達に向かって打神鞭を振り払う。
「打神鞭・百雷」
太公望を中心に雷が降り落ち向かって来る雷帝覇蛇達に直撃したの。
しかし、
「この雷の化身、雷帝覇蛇に雷撃が通じると思うのか?愚策だな!」
すると全身雷の大蛇と化した雷帝覇蛇が太公望さんの身体に巻き付き、次々と重なり覆ってしまう。
「お前の身体は俺の雷の中で跡形もなく消え去るのだ!」
それはもう一億ボルト級の雷撃に閉じ込められたの。
雷は全身の血管を破り、肉も骨も焼き尽くす。
残るのは形も残さない消し炭と灰。
「何ぃいい!?」
が、しかし雷の中で閃光が放たれ強い力で雷帝覇蛇達を吹き飛ばされたの!
「な、何が起きたと言うのか?この俺の雷の中で生きていられるはずはない!」
しかしその視線の先に太公望さんは存在していた。
「聖獣変化唯我独尊・四不像」
しかも聖獣の鎧を纏って!
四不像
太公望の乗騎神獣。
麒麟の種族にて頭は麒麟。
身体は竜の鱗に覆われた獣。
「この儂の本気を見せてやろうか?代償はお前の命だよ!」
太公望さんの神気の高まりは異常に膨れ上がると左右から襲いかかる雷帝覇蛇を打神鞭の振り払われた衝撃で消し去ったの。
「打神鞭・神音」
その鞭はまるで反響の如く広がり次々と雷帝覇蛇を打ち砕き消し去っていく。
「だが、いつまでもつか?」
雷帝覇蛇は離れた間合いから太公望を囲むと口を開き同時に破壊の雷撃を放ったの。
「やむを得ない」
太公望さんは指先を切ると血文字で自らの掌に文字を描いて、額に押し当てる。
「儂の秘奥義を見せてやろう」
すると太公望さんの額から雷が放たれる。
「无術・五雷正法!」
放たれた雷は閃光の如く広がっていくと、雷帝覇蛇の放った破壊の雷撃を打ち消し、そして本体をも覆うように広がっていく。
「こ、これはどういう事だ!?」
雷帝覇蛇の力が急激に失い雷が消えていく。
そして次々に分身の雷帝覇蛇達が消えて、最後には本体のみとなったの。
「ち、力が出んぞ?何なのだ?この術は?」
「これこそ儂の无術じゃ」
「无術?」
かつて太公望が仙界大戦の切り札として使用した秘奥義。
その雷は相手の力を無力化する。
「お主はもう儂には赤子同然よ」
「そんな馬鹿な!?」
太公望さんは打神鞭を振るうと、雷帝覇蛇は上下に両断され、その雷に全身を焼かれ消滅したの。
「せめて雷に討たれ死になのだから本望じゃろ?」
「うぎゃああああああああ!」
今、太公望さんが強敵雷帝覇蛇を倒し勝利を手に入れたの。
「ぐっ」
同時に太公望さんは膝をつく。
「力を制限している今の儂にはこれが精一杯のようじゃな。後は若い連中に任せるとするか」
てか、喋り方は年寄り臭いけど見た目は私と同じくらいなんですけど~
天界から太公望さんは今の術で覇王を討つように命じられていた。
けれど覇王を目の当たりにして、この无術が通用するか半々だと気付く。
ならば自分ではなく他の者達を強化して確実に覇王率いる蛇神を討伐させた方が良いと判断したの。
太公望さんは連合軍の中に侵入した蛇神達の様子を千里眼で見る。
「どうやら奴はスーパーアムリタは必要なかったようじゃな。流石は闘神と呼ばれる小僧よ」
内部ではナタクが次々と蛇神達を葬っていたの。
姿を化けて同士討ちさせている者も、姿を消す者もナタクの気配感知の間合いに入った途端に首を跳ねられ、巨大な大蛇も一刀両断にした。
スーパーアムリタで潜在能力の引き上げこそ出来なかったけれど、瀕死状態から回復した事で闘神と呼ばれるが如く更に力を上げて復活していたから。
それは戦いの経験と分析。
瀕死状態から無意識下で戦いのシュミレーションを繰り返し、再び覚醒出来た時に戦える準備をする。
そのまま死んでたら終わりだけど、目覚める事が出来たのなら飛躍的に力を付けている。
それがナタクの闘神としての所以なの。
ナタクは侵入した蛇神を全て倒すと、雷帝覇蛇を倒した太公望さんも帰還したの。
連合軍の仲間達の安堵と歓声が響き渡る。
「ナタク、お主に向かって貰いたい所があるのじゃが」
「何だ?」
太公望さんはこの連合軍と目覚めない八怪達も見なければならないから、この地から動けなかったの。
「そこでじゃ」
ナタクは頷くと、旅の準備もせずに飛び出して行く。
「せっかちじゃな。しかし頼むぞ?ナタク!お主にこの地上界の命運がかかっておるぞ」
旅立ったナタクの向かった先は?
そんなこんな。
次回予告
ナタクが向かった先は新たな戦場。
新たな脅威だった。




