蛇神再建!地上界の危機!
覇王から逃れた者、捕らわれた者。
今、地上界は危機的状況だった。
私は法子。
「・・・」
うむむ・・・
私が今いるのは蛇神城の地下牢獄。
私はまたまた捕らわれの身になっていたの。
けれど良かった。
私以外は皆無事に逃げ出せたようね。
それにしても驚いたわ。
私は思い出してみる。
覇王と魔導覇蛇との戦いで崩壊した蛇神城。
けれど白蛇の巫女は足下に指を向けて自分の血を垂らすと、地面が盛り上がる。
それは蛇?数千、数百万の蛇が噴き出すように地面から湧いて出て重なりながら新たな蛇神城が出現したの。障気が城を覆い生者は近寄れない。
同時に蛇神兵達が砂糖に群がる蟻のようにウジャウジャと出てきたの。
そして私は身体を拘束され連れて行かれたの。
そこには覇王の座し、側近に白蛇の巫女。
覇蛇である軍蛇覇蛇と妖輝覇蛇。それから遠征より戻って来ていた六尾の雷蛇六尾と牙流六尾が仕えていたの。
「マダムとマダラは現在、北と西の地を領土とし、新たな居城を建てたと報告が有りました。覇王様」
「そうか」
「既に龍神界を含む南の地も占拠を終えている今、北の地を奪えば地上権は全て覇王様の占領地になり得ましょう」
嘘?そんな事になっているの?今?
会話を聞くに、北の地には今力のある妖怪達が全ての地より集結し、蛇神軍から防衛していたの。
そこには月兎の一族や影の一族もいるみたい。
皆も無事なのね!
他の地では捕らわれた人間や妖怪は全て各地の蛇神城で囚人として餌にされてしまうの。
そんな地獄のような事が起きてるなんて。
「本当にだらしないですね」
白蛇の巫女に睨まれ、西の地を遠征に出ていた雷蛇六尾と牙流六尾は顔を背ける。この二人は北の地を任され支配する命令を与えられていたのに、その任を果たせずにいたようなの。
北の地には今、妖怪連合を束ねている者が曲者かつ強者であったの。
しかも妖怪ではなく神仙。
太公望だったの!
「俺の余興を邪魔した輩か」
覇王は興味深く笑う。
「どうやら俺を楽しませる猛者はまだ地上に何匹か残っているようだな。実に面白い。そして奴らは必ずこの俺のもとに来るだろう。その時まで腕を磨き立ち向かって来るが良い」
「覇王様?本当に来るのでしょうか?このまま雲隠れするような事は?」
「ふふふ。だから奴らを呼び寄せる蜜を手元に置いたのだ」
「蜜?あの人間の娘ですか?」
「奴等は必ずその蜜を求めに現れる。より手強い力を持って再び刃を交えられるだろう。それにあの場にいた奴等だけではあるまい。この地上に微かに感じる猛者達が、この覇王の前に集まって来よう。実に楽しみではないか?」
「分かりました。ではその人間の娘を地下の牢に閉じ込めて置きましょう」
すると私は蛇神兵によって、この地下の牢へと連れて来られたの。
「とりあえず殺されなくて助かったわ」
そうよ。
生きてさえいれば必ず打開策はあるの!
私は信じているんだから!
場所は代わり、北の地。
そこには妖怪や人間、それに地上に取り残されていた神兵や仙人が連合を組んでいたの。
その指揮をしていたのが、
「どうやら強力な戦力を失わずに済んだのぉ」
年寄りのような喋り方の若者。
太公望さんだったの。
この地には戦える者達だけでなく疲弊し傷を負った者。
数多くの難民が避難し集まって来ていたの。
食料の備蓄、武器の確保、人種だけでなく異種族との関係。
新たな難民の引き入れから、他の地へ軍を率いて救助に向かう等。
問題は山積みだったの。
それでも一番の問題は蛇神襲撃からの身を守る事。
「やれやれ、猫の手も借りたいのぉ」
そして太公望さんは特別治療室へと足を運ぶ。
そこには二郎真君さんが椅子に座り眠ったまま動かないナタクを寝ずに看病していたの。
「ナタク。お前まで失ったら俺は」
二郎真君さんは既に親友とも言える楊善さんを失っていたの。
そして過去に捲簾さんと言う友。
そしてナタクまで失えば、もう。
そこに太公望さんが部屋に入って来たの。
「あの化け物のような覇王と戦い命を拾っただけで十分じゃ」
同時に部屋に八怪と紅孩児君も入って来たの。
しかも縄で縛られた状態で?
「どうやら揃ったようだのぉ?お前達」
皆を集めたのは太公望さん。
「俺様は父上の仇を取りに行く!だからジッとはしてらんないんだ!」
「オラも法子はんを救出に向かうら」
飛び出そうとする八怪と紅孩児君は太公望さんの縄に引っ張られて転げさせられる。
「返り討ちにあうのが関の山じゃ」
太公望さんの説得に暴れる二人は拘束する縄によって力を封じ込められていたの。
「全く、慌てん坊めらが」
すると太公望は懐から小瓶を取り出す。
「ふふふ。どうせ戦うのなら一気にパワーアップしてからにしておかんか?」
「エッ??」
って、何よ?それ?
どうやってパワーアップするてぇ〜の?
と、ここで脱線します。
ここから私の知らない場所で起きている話も少ししないといけないわね?
此処は蛇神城から離れた魔導覇蛇の隠れ家。
そこに今、
「ぐはぁ!」
息を吹き返した者がいたの。
「ハァ、ハァ、た、助かったのか?僕は?」
それは魔導覇蛇だったの。
って、生きてたんか〜い??
「完全に忘れていた。すっかり忘れていた。万が一の為に複製体を一体移動させていた事に」
魔導覇蛇の目の前には幼い蛇神の少年がニコニコして見ていたの。
「魔導覇蛇様。お帰りなさい」
それは最後の九蛇だった。
あの戦いが起きる前に特別任務として戦場から離れた場所に魔導覇蛇の最後の器を移動させていたの。
本当に念入りなのね?
「お前のお陰で助かったぞ?幼児九蛇よ。お前が僕の言いつけを守ってくれたお陰で、やり直せるってもんだよ」
魔導覇蛇は考え込む。
「しかしあの覇王に勝てる気なんてしないわ。レベルアップして勝てるもんなのか?やっぱり、このまま逃げ続け雲隠れするべきか?」
すると幼児九蛇が言葉をかける。
「逃げるだなんてご足労かけなくて大丈夫ですよ」
「それはどう言う意ぃみみみみ???」
すると魔導覇蛇は突然幼児九蛇に顔面を強い力で掴まれたの。
「な、ナニ、何をす、する??」
「ちょっとジッとしといてくださいです。もう少しで・・・」
幼児九蛇の姿が見る見る成長していき、その目が恐ろしく光る。
「アンタの中の覇王の血を吸い出せるからよ」
「なぁ?何ぃい?させるかぁ!」
魔導覇蛇は力が奪われていくのを感じる。
魔導覇蛇は両手を刃に変えて幼児九蛇の腕を斬り落とそうと抵抗する。
「お前!この主の魔導覇蛇様に何を暴挙を!お前を生み出したる主に手を出すなんて、ふざけるな!直ぐに離せ!離さんかぁー!」
「えっ?お前は僕の主なんかじゃない」
「へっ?」
直後、鈍い音がした。
魔導覇蛇の頭蓋骨は潰される。
「痛い!頭がぁ!止めろ?止めてくれ!お願い」
「みっともない元主様?僕の真の主はママだけだよ?だからお前は必要ないんだ」
「ま、ママだと?それはまさか?」
思い当たる節があった。
そして幼児九蛇は口を広げて魔導覇蛇を飲み込んでしまったの。
そして噛み砕くように口の中で転がす。
「や、止め、てて、痛い、痛!お願い、します。嫌だ、こんな、こんなところで死に、たく、なぁ・・・痛うぎゃ!」
魔導覇蛇の生命力が抜けていく。
そしてこれが本当に魔導覇蛇の最期だったの。
「ふぅ〜。覇王の血が全身に行き渡る。これで俺もママの力になれるよ。この九蛇王・コブラ様がな」
な、何事?
九蛇王・コブラ?
ママって誰の事なの?
それは新たな凶悪な蛇神の誕生だったの。
そして更に新たな脅威が迫っていたの。
それは海を越えて?
日の国より、この大国に向かって障気を纏う黒船が接近していたの。
そして南西の海岸近くに碇が下ろされると、その接近に気付いた蛇神達が集まって来ていたの。
「この地の蛇か?しかしこの俺が来た以上、好き勝手にはさせぬ。誰が真の支配者か教えてやろう」
蛇神達が黒船から降りて来た男に群がり襲いかかる。
蛇神の群れに覆われたその時、手に籠め凝縮した気を放ったの。
直後、大地が爆発し群がって来た蛇神が一瞬で消し飛び消滅していく。
そして黒船より降りた者の顔を隠していた真っ黒なマントが開けて顔が露わになったの。
その頭上には漆黒の二本の角を持った、
体格が二メートル近くある黒髪の蛇神の男!?
「この夜刀ノ神様が、この地の覇王と名乗る輩を平伏せさせ、真の支配者となろうぞ」
エッ?エッ?エッ?
何よ?またまた新たな蛇神が登場って?
まだまだ先が見えない展開だわ〜!
そんなこんな。
次回予告
捕らわれた法子は大丈夫?