チート爆発!俺サイコー!!
捕らわれた私を救うために強敵の九蛇を倒してここまで来てくれた八怪、二郎真君、ナタク。
その前に立ちふさがるのは?
私は法子。
エッ?嘘?何?
捕らわれた私を救うために強敵の九蛇を倒してここまで来てくれた八怪、二郎真君、ナタク。
それが今、倒れている?
全身に傷を受けて還付無きまでに倒されたの。
そんな馬鹿なよね?
たった一人の覇蛇に三人がかりでも敵わないなんて信じられない。
「やはり物語の主人公はこうでなければ面白くない!」
勝ち誇る魔導覇蛇。
本当に圧倒的な強さだった。
八怪の拳も、ナタクの剣技も、二郎真君さんの術すら子供の手を捻るように全て撥ね返され、そして傷一つ付ける事なく倒されてしまった。
魔導覇蛇。
本当に出鱈目な強さよ!
もしかしたら覇王よりも強いのかもしれないわ。
「見ているんだろ?法子さん!これが僕、いや俺の強さだよ!この力こそ絶対無敵の主人公の証!」
魔導覇蛇は全てお見透し。
ここまでの経緯の中で私が水晶を通して見ていた事も、皆の勝利の後に自分の強さを見せつけるための茶番。まさに手の平で回らされていたの。
魔導覇蛇は自身の力に酔いしれる。
それもこれも全て計画通りだったから。
私に見せつけるためだけに!
蛇神城を手に入れ、救出に来た邪魔者も返り討ち。
「正直、ここまで上手くいくと笑える」
魔導覇蛇は思い出していた。
これまでの経緯。
僕はこのとんでもない世界へ迷い込み、まさか世界を征服する覇王の配下として転生した。
覇蛇の儀式から出て来た時は正直パニックで状況も分からずに黙り込んだまま頭の中真っ白だった。
「何?なに?この状況てば?」
恐い連中が自分と同じく召喚され、目の前には本能的に分かる近寄れない化け物(覇王)がいた。
泣き出したく逃げ出したく、チビってしまった。
もしそんな真似をしたら即刻殺されたかも。
でも一番衝撃を受けたのは自分自身の変わり果てた姿だった。
骸骨の顔の醜い姿。
「転生したら魔王配下の骸骨だった件?」
以前読んだ小説に有りそうなネタで笑えた。
そこで生き残るために考える事にした。
余計な事を口走れば小物とバレてしまう。
なるべく喋らない事を心掛ける。
それが周りから寡黙の畏怖される対象として見られるようになる。
それが後を期して不気味さを醸し出す。
そして他の蛇神達から隠れて計画を練る事にした。
「えっと、こうやって、これを組み替えて、それから、あ、イテテ!危なく脳死するところだった。身体の筋繊維も早めに」
正直、運が良かった。
今の自分の身体は人間ではなく万能なのだと。
アンデッド!
不死の肉体。
更に魔術の類いも使えるようだったから。
とにかく考えられる出来得る事を試みた。
現世ではゲーム開発を趣味で作っては小遣い稼ぎにしていた。
プログラムは多少なりとも得意分野。
それを魔術に置き換える。
そのために自分の肉体を実験に使ってみた。
失敗しても死なない?と安直な考えで、限界ギリギリの強化を試みる。
先ずは筋肉、おっと?今は骨の身体の強化。
骨の中の物質を組み換えて、ダイヤモンド並にしてみた。その激痛に涙が出たから、痛感機能を無くした。痛みを感じないと、そこを弱点として負ける悪役をアニメでよく見たので、何か身体に支障が出ると文字として脳に知らせ自己修復をするように組み換えた。再生能力は蛇神の専売特許だから思ったより簡単だった。更に自己治癒力に関しては特に能力を高めておく。
「ふん!」
繰り出された物理攻撃は衝撃波をうみ山を一つ消し飛ばした。
正直、やり過ぎ感あったが、こんなもんだろう。
それから魔術の幅を広める。
自らの脳を改造して天才的にした事が本来の知識と組み合わさり、理解力を高める。
雷、炎、水から雷、地の五行から始まり、応用の氷や重力なんかも最高難易度の術を使用可能。
高位術発動に生じる身体的負荷、連続発動のインターバルと言ったデメリットを全て外に逃がして自己負担はかからないように成功。さらに物理的攻撃、高熱や凍結、雷撃から毒や何らかの精神的な幻惑から特殊な魔術耐性能力の強化から無効化にも成功した。
更に異空間に箱のような魔術結界を造り、そこに無限無蔵の魔力を蓄えて随時補給可能。
この地点でゲームやアニメの魔王とか言われても十分成り立つのだけれど、自分がなりたいのは世界を支配する悪役を倒す正義の味方なのだから!
ここで問題。
自分の立場が今、その悪役の大将の配下な状況。
なら自分のなすべき事は上司である覇王ってのを倒してハッピーエンドなんじゃ?
そうなると覇王攻略の手順としては先ず先に自分と同じく召喚された覇蛇の連中。
奴らは化け物じみた独特の特殊能力を持ち、何より不死能力者なのだ。
不死能力者で特殊能力を持つ覇蛇は厄介な相手。
攻略法がなければ足を掬われる。
先ずは奴らの特殊能力と不死能力を解析。
硬剛覇蛇のように破壊され再生する度に力と硬度を増す能力。
奴の不死能力は単に自己再生治癒能力。
蛇神の治癒力を強化し、自身の身体を組み換えて強化出来る自分には特に興味ない能力だった。
そうなると喰殖覇蛇や蝕王覇蛇は魅力的だ。
喰殖覇蛇は喰らった者の魂を自分の魂に特殊な結界を張って保管し、貯めておく。すると殺される度に魂を命のエネルギーとして交換して不死を得て、更に食らった者の能力まで使えるようになるとか。
また蝕王覇蛇は自分が殺される寸前、相手と肉体を入れ換えてしまう。これは自分を殺す相手が強ければ強いほど、ヤドカリのよう新たな器を手に入れて強くなれる。この能力も魅力的だ。
それに比べて軍駝覇蛇や妖輝覇蛇は特殊な不死体能力は見られなかった。
つまり覇蛇の中では落ちこぼれ。
熔毒覇蛇に関しては自らを猛毒の塊として同化させたスライムみたいな能力。斬っても叩いても駄目なら跡形もなく焼き尽くし消滅させれば攻略出来るとは思っていたけど、どうやら本当に何処かの炎の妖怪に攻略されたようだ。
そうそうあの覇蛇最強って言ってた輝皇覇蛇の奴も龍神に敗北したんだったけ?
奴の不死能力は異空間に結界を張って自らの器を補完しとく。
保管って意味なら喰殖覇蛇と似た能力だけど、輝皇覇蛇は異空間に器を補完しているため、万が一器に乗り換えられなかった場合に詰まれてしまう。逆に喰殖覇蛇は体内に器を入れてるからそういったリスクはないが、体内の結界を中から破壊されたら終わり。
つまり一長一短なのだよ。
そこで九蛇の者達にも特殊不死能力を与えてみた。
結果、思いがけない攻略法で敗北。
これはこれで今後の改善になるから良しと。
数々のチート作品を読んだ。
で、今の自分には特殊不死能力を全て兼ね備えてみたのだから、これだけの不死性質、更に有り余る魔力に、漫画や文庫で知り得た知識の数々。
もうこれが本当のチートじゃね?
チートだろ?チートだぞ!俺ぇー!!
チート爆発!俺サイコー!!
「今の俺に敗北はない。何故ならチートは男のロマン!栄光なる主人公ロードは開かればばかりだから!ははははははは」
・・・何か私の語りを奪われてしまったようだけど、また私が状況を語るわよ?
突然笑い出していた魔導覇蛇が真面目な顔付きになって振り返る。
「そうは思わないですか?覇王様!」
えっ??
えっ???
魔導覇蛇の視線の先には、龍神界の凱旋より戻って来ていた覇王がいた。
「ほぉ?覇蛇の中でお前が先に俺に刃を向け挑むと言うのか?この覇王たる俺に」
その威圧感はその地を揺るがす程の覇気。
にも関わらず魔導覇蛇は平然としていたの。
「やっぱ、ビンビン来ますね?これからこの魔導覇蛇がアンタを倒して下剋上噛ましますんで!」
今度は魔導覇蛇から凄まじい覇気が天地を揺るがし始めたの。
それは覇王に匹敵するくらいに。
「さてさてさて」
魔導覇蛇の頭上に膨れ上がるように巨大化していく炎の塊。
見上げるソレはまるで太陽のようだった。
「先ずは私からのお土産をどうぞ?」
太陽が落下して来るかのように炎の塊が覇王に向かって落下していき飲み込んでいく。
「!!」
すると内部から粉砕した炎の塊は熔岩を撒き散らせながら飛び散り大地を燃やしていく。
そして無傷の覇王がそこに留まっていたの。
「流石は覇王様。この程度で終わるなんて思ってもみなかったし、ここまでの準備が無駄になってしまいますからね?と、言うわけで本気で遊ばせて貰いますよ!」
今、覇王と魔導覇蛇の一騎討ちが始まる。
そんなこんな。
次回予告
覇王とチート能力魔導覇蛇
その戦いの結末は?