女子高生の弟の決意?
桃井剣太郎、金丸 剛、一瀬 明希が佐々成政、不破光治、前田利家を倒した。
そして新たな門番を前にしている総本山側の男は?
法子の弟、三蔵 勇斗だった?
俺は、三蔵 勇斗!
いつもは俺の姉貴が語っているが、今回は俺が担当する事になったようだ。
はぁ…
俺は目の前に現れたカミシニを相手に対峙していた。
この富士の結界の門番。こいつを倒せば良いんだよな?確か?
俺は術札に念を籠めて投げつけると、札は門番に当たる前に弾けて消えた。
そうだった。
カミシニには神の力が通じなかったんだっけ?
俺は腰にぶら下げていた独鈷杵を手にし構える。
なら、物理攻撃で戦うしかなさそうだな?
俺は駆け出すと、門番に向かって独鈷杵で殴りかかる。が、門番は容易く俺の攻撃を躱して余裕の笑みを見せた。
「!!」
直後、俺の足場が盛り上がって来て、地面から血の槍が突き出す。
俺はバック転しながら攻撃を躱して距離を取る。
あのカミシニ?
さっきから直接攻めて来ないな?しかも俺の攻撃を遊ぶように見定めてから、何かしらの罠が発動しているようだ?
俺は自分から門番までの距離を見定める。この足場には既に幾つもの罠が張り巡らされ、容易に踏み込めなくなっていた。
「!!」
その時、突然空間に歪みが生じた?何が起きたんだ?
「どうやら、また門番の誰かが倒されたようじゃな?」
何?
俺は振り返ると、門の向こう側の空間が歪み、その向こうに晴明さんと姉貴の姿が見えた。
「姉貴…」
きっと驚いているだろうな?俺がここにいる事に?しかも戦っている姿なんて?
姉貴は俺が一般人だと思っている。特別な修行もしている姿なんか見せた事もなければ、「はぁ?お化け?何を言ってんだよ?いつまでも夢見てんなよ?」と、言っていたくらいだから。
だけど、俺はもうこれ以上姉貴に首を突っ込まれたくないんだ…
俺は印を結んで金の錫杖を構成させると、門番に向かって駆け出す。
とにかく奴を倒す!
そしたら次は信長を倒して、邪魔な奴等は全員俺が倒しまくってやる!
そしたらもう…
姉貴が戦う必要が無くなるんだよな?
姉貴…
俺と姉貴は…
実の姉弟じゃない…
俺には実の父親と母親の記憶が残っている。
その頃に、俺は今の姉貴と会っていたんだ。
よく遊んでくれた…いつも笑顔で、ニコニコしながら幼い俺を連れ回しては、少し歳上の姉のように接してくれた。
それが初めての出会い…
それから間もなく、あの悪夢が起きたんだ。
総本山に魔物の軍勢が押し寄せ、その際に俺の父親と母親は死んだ…
そして、姉貴もまた…
父親と母親を失った。
同じ境遇。
その後、俺は母親の兄である今の親父の養子として育てられる事になった。
「あっ!」
そこで再び俺は彼女と再会した。彼女もまた今の親父に養子になっていたんだ。
だけど…
再び俺の目の前に現れた彼女は、俺の知っている面影はなかった。
髪は白髪に、げっそり痩せて、過去の記憶は勿論、言葉もろくに喋れなかった。唸る事で意思疏通をするしか出来なく、まるで獣のように見えた。
俺は姉貴になった彼女の世話役をした。彼女が吐き出したり、漏らした汚物の後片付けをしながら思う。
彼女に何が起きたんだ?
俺も両親を失った。
けど、こんなに変貌するほどの事が?
どんな状況が彼女をここまで変えたんだ?
俺はあの日、総本山から離れた家にいたため、総本山で起きた事は噂を耳にするだけだった。
けど、幼い彼女はあの場に居合わせたんだ。
彼女は夜な夜な悲鳴のように悲鳴をあげて泣き叫ぶ。そんな彼女を親父は涙を流し抱き締めて宥めていた。
そんな毎日が続いてある日、姉貴の世話をしていた俺は姉貴を車椅子に乗せて寺の外に出た。
外の風景を見せたら何かしら気晴らしになるのでは?
そんな考えだった。
けど、俺は後悔したんだ。
彼女を連れて寺を出て、広い公園に着いて散歩する。周りには子連れの親子がいて、俺は少し寂しくなった。姉貴には同じ思いをさせたくないと道を変えようとした時…
「きゃああああ!」
突然、あちらこちらで悲鳴が聞こえ、公園に来ていた人々がパニックを起こしていた。
何が起きたんだ?
辺りを見回した時、突然影が頭上に迫り、俺は驚いて車椅子を倒してしまった。姉貴は車椅子から放り出され、俺もまた転げるように倒れた。
その瞬間、車椅子が俺の目の前で宙に浮いて、ひしゃげるように潰れた?
俺は目を凝らして見るとそこに影が浮いていて、その中心に目があった?その影の目は俺達を見下ろしていた。そして、獲物を見付けたように向かって来た。
逃げなきゃ!
力の無い俺は逃げる事を考えた。
だけど姉貴を放って置けない…一緒に?
そう思って倒れている姉貴を見た時、そこに彼女の姿は無かった?
そこに新たな悲鳴が響き渡る!影の化け物は一体だけでなく何体もいて公園にいた人間達を襲っていたんだ。この状況で何が出来る?今は自分達が逃げる事だけを考えるのが先決…
「嘘だろ?」
しかし、悲鳴がした方向に脅える家族を守るように、彼女は影の化け物から家族を守るように腕を広げて立っていたんだ。
何を?まさか助けようってんじゃ?馬鹿じゃないのか?そんなの無茶に決まっているじゃないか?
姉貴に…僕らに何が出来るってんだ!
それでも、僕は身を呈して影の化け物から家族を守ろうとしている姉貴から目を離せなかった。
影の化け物は宙を数回ぐるぐると回った後、標的を姉貴に向けて襲い掛かって来た!
もう駄目だ!
そう思って目を綴じようとした時、僕の真横を駆け抜けて姉貴の名を叫ぶ声が?
それは俺がよく知る声だった。
「父さん?」
現れた親父は印を結ぶと、強烈な霊気を放つ。閃光が公園を覆い、影の化け物は一瞬で消滅した。
そして俺と姉貴は駆け付けた親父によって救われたんだ。
その後、俺は親父にこっぴどく叱られた。あの影の化け物は力に引き寄せられたと知る。それは彼女の存在。彼女は産まれながらにして総本山から外には出られないほど、魔を引き付けると言うのだ。
「それじゃ…姉さんは一生総本山から出られないの?」
俺の問いに親父は目をふせて頷いた。
「そんな?そんなの可哀想だよ!何とかならないの?父さんなら何とか出来るんじゃないの?」
それは無茶な事は解っている。それだと、二十四時間いつまでも姉貴の傍に親父がいなければならない。親父には無理…それは幼げに薄々と感じていた。親父は普通の人間じゃない。総本山なんて一般人が知らない影の世界で生きる裏の人間。しかも、親父はその中の首領なんだと気付いていたから。
「なら…」
俺は公園での出来事で自分自身を振り返る。俺はただ逃げようとしていた時に、姉貴は無力なくせに見知らぬ家族を救うために立ち塞がった。その時の彼女の姿に幼い俺は憧れを抱き、そして…胸が熱くなった。
「だったら僕が守るよ!姉さんを守れるように僕が強くなる!」
「!!」
驚く親父は、
「お前にはさせられん。お前の本当の母さんに頼まれたんだ。俺のような闇の世界には置かないと…だから…」
親父は首を振ろうとした時、俺の中の何かが目覚める。それは?
「まさか覚醒したのか?お前?」
親父の驚く顔を見て、自分の身に起きた変化に気付く。
俺はどうなった??
「これは?」
それは俺の強い決意が力を求め、魂を揺れ動かした事で、眠りし者が目覚めたのだと知る。その状況に親父も断る事は出来なかった。
「これもまた宿命か…」
「父さん?」
「優斗?お前の決意は試練の道だぞ?決して甘くはない。命を懸けられるか?」
俺はその言葉の意味を理解して答えた。
「僕が姉さんを守る!」
その俺の言葉に頷く親父は、更に驚く事になる。
「ま…まさか?」
「えっ?」
驚く親父の視線の先に、姉貴が立っていたんだ。
しかも…
俺の傍に歩いて来て、頭を抱き締めて言った。
「ありがと」
それは久しぶりに聞いた彼女の声だった。
元に戻った?
いや、記憶は失われたままだった。けれどその日を境に、彼女…姉さんは第二の人生を始める。言葉を学び、今までの歳の分を取り戻すかのように…
更に身を守るために護身術を学び、驚くスピードで成長していった。
そして、
俺は彼女を…姉さんを守るために戦っている!
このカミシニの戦いには俺は自ら名乗りをあげた。
かつて総本山を襲撃した魔物はカミシニの力を持っていた。神の力の通用しない化け物に総本山は壊滅し、俺の両親も姉さんの両親も殺されたんだ!
ならば、そのカミシニって奴等は俺達の仇みたいなもんだ。
なら、ソイツらは俺が全て滅してやるんだ!
この日のために磨きあげた俺の力で!
そしてもう、姉貴には戦わせない…姉貴の敵は全て俺が戦う。
あの日、
俺は誓った。
無謀にも無力な身で弱き者を守ろうとした姉貴に憧れた。
あの馬鹿姉貴はこれから先にも無謀な事をしては周りを心配させるだろうな?
だったら、俺が後始末してやるよ?
俺が姉貴の代わりに戦ってやる!
今度は俺が姉貴を…
守るんだ!!
俺は門番を前にして立ち上がると、再び戦意を見せる。俺の戦う門番…
『豊臣秀吉』
を前にして!
次回予告
三蔵 勇斗の戦う相手は、あのまさかの豊臣秀吉??
あの豊臣秀吉???