玉龍の出生!?選ばれなかった赤子?
玉龍は白龍王の死と引き換えで逃げ延びれた。
そこは一方通行の空間転移の中。
玉龍は一人転送装置から龍神界より飛ばされていた。
その最後に目に写ったのは、白龍王が輝皇覇蛇の突き出した剣で貫かれた場面だった。
「うわぁあああ!白龍王さまぁー!」
泣き叫ぶ玉龍。
しかし転送装置に入ったら最後、一度出口に出るまでは引き返す事は不可能であった。それに引き返したとして自分に何が出来ると言うのか?せっかく白龍王が命懸けで逃してくれた命を捨てるだけ。
無力と絶望と悲しみが込み上げる。
「どうして僕なんか、僕みたいな何者かも分からない捨て子を」
そもそも玉龍の出生は龍神界でも特殊であった。
捨て子だった赤子の玉龍を拾って来たのは、何を隠そう四海龍王達なのだから。
だから物心付いた時には龍神城のお世話役として四海龍王の傍にいたのである。
玉龍は龍神族の同い年の者達から見ても劣等生であった。臆病かつ貧弱軟弱で、何の取り柄もない。
もし四海龍王のお世話役でなければイジメにあっていたと思われる。
あ、一つだけ他より長所があるとしたら四海龍王のミーハー大ファンで、本人達が忘れているような事も覚えて知っていたりする事から、お世話役はピッタリの仕事だった。
それでも赤龍王は玉龍の軟弱さを叩き直させようと無理に訓練をさせたり、黒龍王には千尋の谷に落とされて危なく死にかけたりもした。唯一白龍王には過去に自分自身も玉龍のように劣等生だった事を告げて自分にも出来る事があると希望を貰った。
それでも玉龍には何の開花も見えなかった。
そんな時、四海龍王達が自分の事について話しているのが聞こえて来たのである。
「やはり力を全て傍らにでしょうか?」
傍ら?
「玉龍の成長は並の龍族以下だ。可能性はあるな」
「それでも玉龍は我々の手で育てる。そう誓ったはずだ!せめて一人でも生きていけるくらいにな」
その言葉の真意をその時の玉龍は分からなかった。
けれど、この空間転移の最中、玉龍の意思に連動するかのように残留する影像が浮かび上がる?
昔、書物で読んだ事がある。
空間転移は時空間の術の一つ。
同じ時間帯の中で離れた場所の空間を重ねて一瞬で移動する事が出来る高難易度の転移術。
それは時として空間を結び付けるのだ。
その際、注意事項がある。
オ・カ・シの原則。
1、押さない事
2、駆けない事
3、喋らない事
つまり移動中は空間の壁を触らないように、入ったら動かないように、そして心を静める事。
玉龍はその原則を破って空間転移の中で白龍王のいる場所へと戻りたいと願い、足掻いてしまった。
その事で空間の術が歪み、時を逆行しながら玉龍の前に記憶にない光景が映像のように浮かび上がる。
「これは!?」
そこには幼い赤龍、白龍、黒龍の姿があった。
三人は深夜に龍神城を抜け出して、龍神墓場に向かっていた。
理由は白龍が夜空を見ていた時に光る何かが墓場に向かって落ちたのを見たから。
白龍に赤龍と黒龍は見に行こうと誘う。
そして三人は立ち入り禁止の龍神墓場に無断で入り込んだのだ。
そこで三人は目撃する。
墓場に落ちた隕石?
いや金色に輝く玉子を。
するとそこに三人に向かって殺気が放たれたのだ。
「!!」
それは元四海龍王であった紫霊龍王。
しかし三人は警戒していた。
この紫霊龍王には黒い噂があり、その地位のために仲間殺しをし、龍神族転覆を企てていると。
赤龍は同じく四海龍王であった炎龍王に聞かされていたから知る事実。
しかし何故此処に紫霊龍王が?
「童が何用で此処にいる?」
紫霊龍王は辺りを見回すと他に誰もいない事を確認すると、
「どうやらお前達だけのようだな?なら早急にこの場から消えるが良い。お前達も知っていよう?この龍神墓場は立ち入りを禁じられている事を」
三人は顔を見合わせる。
マトモな言葉に呆気にとられるも頷き、この場から逃げるように離れようとしたその時。
「!!」
突如、三人に向かって攻撃的な龍気が放たれた。
三人は吹き飛ばされながらも、振り返りその龍気を放った正体が紫霊龍王だと気付く。
「痛みなく始末するつもりだったが、反射的に躱す身体能力が仇となったな?残念だが楽に殺すほど私は器用ではないぞ」
すると地面が盛り上がり、墓場の下から死霊が抜け出して来て三人の身体を押さえつける。
「う、うがが!」
三人はもがくも身動き取れないでいた。
「この場に現れた事がお前達の運のつきだ」
紫霊龍王は死霊に三人を喰わせるように命じたその時だった。
「!!」
死霊達が次々と消滅して、三人は拘束を解かれて自由になったのだ。
そして助けた者が三人の前に現れたのである。
「アンタら後でお仕置きだよ?」
その者は白龍の姉の乙姫だった。
「それに紫霊龍王殿?これは何のおふざけですか?事と次第によっては上に報告致しますわ」
乙姫の出現に紫霊龍王は溜息をつく。
「本当に今日は面倒な日だ。応龍の娘が現れたからには仕事を急がねばなるまいな」
紫霊龍王は乙姫に剣を向ける。
「やれやれ?謀反かい?仕方ないね。なら私も黙って見過ごせないね!」
乙姫は龍王相手に戦闘態勢を取る。
しかし天才と名高い乙姫であっても龍王を相手に敵うはずなかった。
「そう言うわけだから、アンタも手を貸しなよ?」
「!!」
すると柱の影からも人影が現れる。
「やむを得ない」
それは四海龍王候補と約束されていた青龍であった。
紫霊龍王を相手に乙姫と青龍が挑む。
その戦いに三人の赤龍、白龍、黒龍は目を見開いて見ていた。
これが四海龍王と龍王候補の二人の戦いを目の当たりにしていたから。
その目標とする手に入れるべき力を垣間見て、
「俺も必ず追い付いてみせる!」
赤龍の目は覚悟を決める。
そして白龍と黒龍も同じく頷く。
「このガキがぁー!!」
紫霊龍王の剣が乙姫の拳で折られ、そこに青龍が懐に入り込み青龍刀を突き刺したのだ。
後にこの武勇は広まり、青龍が新たな四海龍王と任名されたのだ。
それから数年後に乙姫も龍王に任命されたのである。
しかし分からない事は紫霊龍王の目的。
そこには例の隕石に似た金色に輝く玉子を見る。
その玉子の正体は直ぐに知る事になる。
玉子が割れ、中から赤子が産まれたのだ!
しかもその赤子は天命により授けられた。
龍神族の真王にて神!
黄龍であった。
黄龍の赤子は神殿にて育てられる。
しかし、分からない事があった。
金色に輝く玉子の中から現れたのは黄龍だけではなかったのだ。
同じく瓜二つの赤子がもう一人。
銀色の髪の龍の赤子。
しかし黄龍は赤子ながら龍王に勝る龍気を産まれながらに持っていたにも関わらず、もう一人の銀髪の赤子は全ての力を双子に奪われたかのように何の力も感じなかった。
ゼロかイチの器だった。
そう。
それが玉龍の出生の秘密だった!
力の無い玉龍を、特別扱いは出来ない。
それでも赤龍王は赤子だった玉龍を抱き上げて誓った。
「こいつの名前は玉龍!玉とはもう一つの王の証!
いずれ黄龍様と共に龍神界を守護する運命の赤子だ!」
玉龍は自分の出生を空間の歪みから見えた映像より知り、そして胸が熱くなった。
「僕は、運命を託されたんだ!」
その時、玉龍の身体が光り出す!?
その姿は法子を乗せる馬の姿へと?
すると転移する空間の中で玉龍は逆行し始めたのだ!
有り得ない!
一方通行の時の道を逆走するなんて!
しかも走り出す速さは次第に光の如く来た道を戻っていく!その姿は銀色に輝く馬?
違う!
馬とは事なる異種の姿!
龍と白馬の融合したその美しき光の獣の名は?
麒麟!
麒麟は空間転移の壊れ閉じかけていた扉を蹴り破り、
そして飛び出すように太陽と重なりながら降りて来る。
「その手を離せぇー!」
それは輝皇覇蛇が白龍王を貫く間際だった。
奇跡は時をも遡り、起きた未来を変えた。
閃光の獣は輝皇覇蛇から白龍王を救い、その姿を再び玉龍へと変えて剣を構えていた。
しかしその玉龍は誰もがしる軟弱病弱貧弱な姿ではなく、
龍神の戦士として現れたのだ。
次回予告
玉龍の身に起きた変化?
玉龍の真価が今!




