炎喰の能力!因縁と復讐の炎灼六尾!
龍神界に蛇神族が進撃して来た。
四海龍王の青龍王・赤龍王・白龍王・黒龍王が迎え撃つ!
蛇神と龍神との全面戦争が切って開かれていた。
数で凌駕していた蛇神を四海龍王の参戦で仲間の指揮を高めていた所に、今度は六尾が二体現れたのである。そして戦況はどちらに傾くか分からない状態が続いていた。
赤龍王と炎灼六尾が対峙する。
「この俺を名指しした事を後悔させてやる」
「そうか?俺はお前に会いたくて会いたくて仕方なかったんだぜ?お前が壊滅させた俺の村を焼き尽くされた時からなぁ!」
「何だと!?」
炎灼六尾と赤龍王には因縁があったのか?
ソレは今から三百年以上前の話。
若き赤龍は試練を受けていた。
それは四海龍王の称号を与えられるために力を示す事であった。既に龍神界では実力共に申し分ないと言えど、その最後の試練が蛇神の討伐だったのだ。
そこは炎蛇の一族が隠れ棲み、その地の生き物を攫っては餌食にしていた。
天界の武神も討伐に出た噂はあったが、その炎蛇の長の強さは名の知れた武神をも返り討ちにする程であったのだ。本来敵同士の天界、龍神にとって蛇神は共通の敵であった事から赤龍王は己の実力を示すにはうってつけの相手でもあった。
熔岩の麓にあった蛇神の隠れ家は灼熱地帯となった。
それは赤龍の覚醒した炎が蛇神達を燃やしていく。
唯一生き残った炎蛇の長と激しい戦いを繰り広げ、ついに赤龍王は勝利したのだ。
その中で二人の戦いを見ていた蛇神がいた。
まだ幼い炎蛇の長の息子だった。
それでも殺意を持って特攻の如くスピードで赤龍王に向かって斬り掛かる。
「クッ!!」
咄嗟に突き出した炎の剣が炎蛇の少年の胸を貫く。
「幼くも蛇神か、いずれ脅威となった。恨むなら蛇神として産まれた事を呪うが良い」
そして赤龍王は炎蛇の里を滅ぼし試練を見事に成就させて四海龍王になったのである。
「俺はお前に胸を貫かれ、死の縁から甦った!お前への復讐のためにだ!」
「ならばお前はあの日の少年なのか?」
「もう一度俺を殺してみせろ!」
襲い掛かる炎灼六尾の剣を赤龍王は炎の剣で受け止める。
「!!」
が、炎灼六尾の能力を垣間見る。
突如、赤龍王の炎が吸い込まれるように炎灼六尾の身体に消えていく。
徐々に力が抜けていく事に気付き後方へと飛び上がり間合いを取る。
「お前の炎は俺が喰らってやる!俺の炎喰の能力でなぁ!」
炎喰の能力とは敵の炎を吸収し自分のエネルギーへと変換する能力。炎蛇の一族でも数百年に一人産まれ、この能力のお陰で幼少時に赤龍王によって胸を貫いた炎の剣を喰らって逆にエネルギーとして生き残ったのだ。
「復讐か?」
「お前にも味合わせてやるぜ!」
すると炎灼六尾の蛇気が炎を発しながら巨大な球状へと膨れ上がっていく。
「そりゃあー!」
炎灼六尾は上空に作り上げた巨大な炎の玉をさらに空高く飛ばして空中で止めた。
「あの炎の玉を俺に落とすつもりか?」
「呑気だな?上空に飛ばしたアレはお前が守る民を皆殺しにするだろう」
「どう言う意味だ?」
「あの炎の玉は俺の意思で飛散し、お前の後方に見える龍神の城にいる民の発する熱を感知して降り落ちるだろう。そうなればどうなるか楽しみだな?俺の炎蛇の村の再現。お前の行為が返ってくる気分はどうだ?」
「俺に恨みがあるのではないのか?」
「俺はお前に俺と同じ境遇を味合わせ、その上で俺の手で始末する!どうする?リミットは五分。それまでに俺を倒せなければ、あの蛇炎が飛んでいくぜ?焦ろよ?急いで俺を倒せよ?守る者を失った痛みを思い知るがよいぜ!」
「よく分かった。多少なりともお前に同情しないわけではなかったが、人質を取られた以上お前に対して慈悲は必要ないと思おう」
「慈悲だと?上からモノを言える立場か?お前は炎蛇の民の恨みを味わうが良い!」
すると炎灼六尾の周りに炎が人柱のように出現すると、鎧を纏った兵士の姿へと変わる。その鎧は過去に赤龍王が滅ぼした炎蛇の者達が纏っていた鎧だった。
「さぁ!恨みを晴らしてやれぇー」
炎灼六尾の合図に鎧を纏った炎が剣を振るって襲い掛かる。その攻撃を躱しなが赤龍王は拳に炎を燈して拳を放つと炎蛇の亡霊は次々と消滅していく。
「亡霊で俺を止められると思うなよ!」
赤龍王から激しく炎が迸り、その龍気が急激に高まっていく。
「逆鱗!」
それは龍神の持つ特有のアドレナリンを全身に駆け巡らせ、己の限界を上げる奥義であった。
「すげぇーな!ビリビリ伝わるぜ!お前の力が!」
「行くぞぉー!」
「なぁ!?」
赤龍王は炎灼六尾に向かって一直線に突進し、受け止めようとする炎灼六尾に対して寸前で飛び上がったのだ。その向かう先は上空に浮いている炎の球体だった。
「俺の炎がお前の炎を消し去ってやる!」
赤龍王は炎灼六尾の作り上げた炎の球体の中へと飛び込みその姿が消えた。
「馬鹿目!ならばお前事、お前の守ろうとしている龍の民を皆殺しにしてやる!」
炎灼六尾は宙に浮かんだ炎の球体を飛散させて龍神の城へと飛ばしたのだ。炎は槍の如く遠く離れた龍神の民を感知し飛んで行く最中、炎は矢は突如軌道を変えて更に上空へと飛んで行くと交差しながら衝突しあい爆発しながら消えていく。
「!!」
その中心には赤龍王が全身を火傷しながら息を切らしながら浮いていた。
「民を守るために自分が犠牲になったか?見事な散り様だ!」
炎灼六尾は再び拳に炎を籠めると赤龍王に向けて放つと、炎は蛇の形へと変わりながら、避けられずに宙に残っていた赤龍王を飲み込もうとする。
「残念だったな」
赤龍王は呟く。
再び赤龍王の龍気が急激に高まっていく。
それは逆鱗のさらなる覚醒。
「逆鱗・二枚!」
二枚目の鱗が光り輝き炎灼六尾の放った炎の蛇に向かって渾身の奥義を放つ。
「赤龍百龍!」
赤龍王から放たれたのは百体の燃え盛る炎の龍。
燃え盛る龍と蛇が衝突する。
「お前ぇええ!赤龍王!俺がお前の炎を全て喰らい尽くしてやるぜ!」
すると徐々に赤龍王の炎が吸い込まれるように炎灼六尾の放つ炎の蛇をより強大に狂暴な炎の大蛇へと姿を変える。
「どうだぁ!赤龍王!俺の炎がお前を焼き付くすぞ?これが炎蛇の、俺の力だぁー!」
勝ち誇る炎灼六尾に対し、狂暴な炎の蛇に全身を焼かれつつ赤龍王の眼は戦う意思を消してなかった。
「炎灼六尾、お前は俺には勝てん。断言しよう!
一つ、お前は俺への恨みを龍神の民へと向けた事!
二つ、俺が四海龍王としての責務として負けられない事!
そして三つ!」
その直後、赤龍王の身体が燃え上がるように肌が紅く染まり、強烈な覇気が激しく発気する。
「逆鱗・三枚!ウォオオオオオオ!」
その手に炎を燈す赤龍の剣を構え目の前に口を広げ迫る炎の大蛇を一刀両断にしたのだ。
そのまま炎灼六尾に向かって突っ込む!
「テメェエエエ!」
赤龍王と炎灼六尾が衝突した。
それは大地をも焦がす炎の衝突。
その中で炎灼六尾は呟く。
「な、何故だぁ!?」
炎灼六尾の胸には赤龍王の剣が突き刺さる。
吐血しながら炎灼六尾は、
「お前の炎が俺を上回ったと言うのか?俺の炎喰の能力が許容範囲を超えるなんて??まだお前に届かなかったのか?俺は?」
その問いに赤龍王は答えた。
「恐らくもう少し前に戦っていれば俺はお前に負けていただろう。ただ俺はお前より先に戦った者がいた。その者は俺を上回る炎に愛された者だった。その者に敗北したからこそ俺はもう二度と負けられぬと自身を鍛え直していたからな」
「お前を上回るだと?」
赤龍王は紅孩児を思い出していた。
「俺もお前もまだ未熟だったと言う事だ!だからお前は再び俺に挑むが良い?それまで本当の勝負はお預けにする!」
「お、俺に慈悲だと?ふざけるな!赤龍王!」
赤龍王の突き刺した剣は炎灼六尾の急所を貫いていなかったのである。
が、その時赤龍王に対して強烈な覇気が全身を貫く感じがした途端、全身に衝撃を受けてその場に倒れてしまう。
「ウグッ!な、何が?」
正直、自分が何をされたかすら分からなかった。
けれど、自分に攻撃をした者の正体は直ぐに分かったのだ。
「蛇神の分際で情けを受けるとはな」
「ぐわぁー!」
突如現れた者は倒れている炎灼六尾の背中に剣を突きつけると、捻るように痛みを与える。
「ソイツはもう戦える身体ではない!俺が相手をする。たから、その手を離せ!」
「ん?これは蛇神のケジメだ。それに龍族が俺に指図をするとは身の程知らずだな」
その者は覇蛇。
この地に侵攻して来た蛇神の軍を率いた者。
輝皇覇蛇!
その存在感に赤龍王は本能的に身体が震えた。
この者、最強の覇蛇!
金色の鎧を身に纏う超越せし蛇神であった。
「どうやらお前が頭のようだな?この戦場で抜きに出た異質な力を感じていたが、お前を倒せばこの戦いも終わろう」
赤龍王は赤龍の剣を構えると、まだどのような能力を持つか分からない輝皇覇蛇に向かって斬り掛かる。その剣先を初手から見切るかのように軽々と躱す輝皇覇蛇に赤龍王の動きは更に逆鱗で加速する。
「どうした?その程度か?龍王とは!」
直後、赤龍の剣が目の前で止められた。
「何ぃ!!」
赤龍王の燃え盛る剣は輝皇覇蛇の差し出した二本の指で止められると、その炎が消滅した。
「馬鹿な?まさか、こいつも炎喰の能力者か?」
が、同時に剣を握る自分の握力が弱まる。
咄嗟に剣を手放した赤龍王に対し、
「良き判断力だ。だが遅い!」
繰り出した蹴りが赤龍王を吹き飛ばす。
「ぐはぁ!」
直撃をくらい倒れる赤龍王は咄嗟に立ち上がろうとするが顔を上げた瞬間、輝皇覇蛇に顔面を摑まれてしまう。
「!!」
締め付けられると同時に全身の力が急激に失っていく。
抗おうにも力が入らず、このままでは命が危ないと身の危険を感じた時、
「!!」
背後に気配なく現れた者が輝皇覇蛇の赤龍王の顔面を掴む腕を掴み返して妨害した。
「ほぉ?俺に触れて平然としているとはな?」
「その手を離せ?さもなくばこのままお前を斬る」
それは後方から戦況を見ていた青龍王だった。
赤龍王を手離した輝皇覇蛇は、
「どうやらお前と戯れる方が面白そうだ」
すると互いに覇気を衝突させて威嚇する。
「お前がこの蛇神の軍を率いているようだな?なら頭のお前をここで倒せば蛇神を黙らせられよう」
「お前に出来るか?この輝皇覇蛇を止める事が!」
互いの間合いが押し合う。
「お前にも一つ教えておいてやろう。別の場所でお前達以外の龍王の相手をしている大嵐六尾は実力で言えば俺以外の覇蛇を上回る。お前以外の龍王はお前とは随分力の差があるようだが何処まで食い止められるか見物だ」
「・・・」
皇覇覇蛇の言葉に青龍王は一呼吸し言い返す。
「見誤るな?龍王の実力を!あの二人もまた龍王として選ばれし戦士だとな!」
離れた場所でも壮絶な戦闘が繰り広げられていた。
いや、その戦いは一方的な暴力!
二人の龍王を相手に、その蛇神は近寄せる事もさせなかった。
六尾最強かつ、嘗て皇覇覇蛇と一騎討ちの後、その傘下として忠誠を誓った覇蛇をも上回る蛇神。
その蛇神を前にして若き龍王・白龍王と黒龍王に勝ち目があると言うのか?
次回予告
最強の六尾・大嵐六尾の前に白龍王と黒龍王に勝機はあるのか?