果心居士の罠?仁王さんの必殺奥義!?
富士山を舞台に総本山の猛者達が、果心居士の放った戦国のカミシニと対峙する。
私は法子。
私は戦国と化した富士の麓にて鎧武者相手に戦っていたの。
「倒しても倒しても全然減りもしないわね?」
私は術札に念を籠めて上空に投げると、まるで雨のように雷が私を囲む鎧武者に落雷する。焦げて消滅する鎧武者に振り向きもせずに私は山頂を目指す。
「早く晴明師匠に追い付かなきゃ!」
すると前方からヒズメの音が響き渡ると、今度は骸骨の馬に乗った鎧武者達が槍を構えて向かって来たの。
「うっそ?」
流石にたまらないわ~
私は振り返ると、落雷で倒した鎧武者の生き残りが私に迫って来ていた。
うっ?
逃げ場がないじゃん?
私は前後両方で囲まれ逃げ場を失った時、
「全く無鉄砲なんだから!」
聞き覚えのある声が響き渡り、同時に骸骨馬に乗った鎧武者達が誰かに額を撃たれて消滅する。
それは?
私は振り向かずに笑みを見せる。
それは後方より銃を構えた宮ちゃんだったの。
私を追って来たのね?
そして私に向かって追い付くと、
「貴女って子は!無鉄砲にも程があるわ!」
「怒らないでよ?ちゃんと解ってますって!宮ちゃんが追い付いて来て助けてくれるって?」
その言葉通り宮ちゃんを拘束していた偽晴明師匠抱きしめ式神は、数分後に消えて宮ちゃんを解放させたのよ。
「全く…ここまで来たら貴女を最後まで守るわ」
「ありがとー?でもね?」
「何ですか?」
「私は守られているだけの女の子じゃないわ!」
「本当に貴女には呆れるわ」
そして私と宮ちゃんは先に向かう晴明師匠を追った。
そして場所は変わる。
柴田勝家と対峙している仁王さんは額に大量の汗をかいていたの。それは柴田勝家の力量が予想以上だった事を含め、剣術は一級品。一瞬の隙が命を持っていかれからなの。
更にカミシニの武器は神力を奪い無力化させる。例え仁王さんが神の力を二体も宿しているとしても、その力は無力なのよ!それでも仁王さんは五重塔を守護する程の実力者だからこそ、この激しい戦いの消耗の中でも対等に戦えるの。
更に織田の三武将を任された三人組は?
意外にもカミシニを相手に善戦していたの。
「俺達はカミシニを狩るために選ばれた者だ!お前達は今、俺達の引き立て役なんだよ?」
佐々成政が日本刀を振り払うと剣太郎君が受け止める。
「小僧?俺達を甘くみるなよ!」
更に金丸君と明希君もまた、前田利家と不破光治を相手に善戦する。
この三人はカミシニの力を持つ人間側の者。
カミシニと同じ血の力を使っ武器を使い、しかも己の中の神の力を奪われずに戦えるの。
正に対カミシニのための戦士よね!
そして、三つの門へと入った晴明師匠は、迷宮の中に閉じ込められていたの。
「平行感覚が麻痺するような迷宮だな…しかし!」
『臨兵闘者皆陣烈在前!』
九字の印を唱えると、空間に道が開いたの。
「どうやら、この先にいるようだ…」
晴明師匠は感付いていたの。自分の来た道の先に果心居士と織田信長がいると!
しかし?
「まさか?」
道を抜け出た先には?
「あれ?晴明師匠?」
そこには私と宮ちゃんがいたの?
「………」
晴明師匠は無言で軽く地面を蹴る。そう言えば晴明師匠は実は極端なほど方向音痴だったのよね。
「やはり来たのですね?法子」
「やはり来ました!私!」
「威張るな!」
宮ちゃんの突っ込みに、晴明師匠も半ば諦めていたように溜め息をつく。
「仕方ありません。私の傍を離れては駄目ですよ?」
「ところで晴明師匠は何故ここへ?先に向かったはずでは?」
宮ちゃんの問いに晴明師匠は真剣な顔で私達に返す。
「私が方向音痴だから道に迷ったとか思ってはいないですよね?」
「………」
「ゴホン!」
晴明師匠は私達に誤解を解くために説明する。
富士の頂上には六つの門があって、その門番を倒さねば頂上には行けないからくりになっているのだって?そして門番は今、既に総本山の仲間が戦っているの。それで門番に出くわさなかった晴明師匠だけが戻されてしまったってわけなの。
「門番が結界の役目を果たしているわけね?」
そこに私達に向かって新たな鎧武者達が現れる。
「また、うじゃうじゃと~嫌になるわね!」
「見て!」
宮ちゃんが叫んだ先に、私達が進んでいたはずの真っ直ぐの道が突然消えて、竹林の中に閉じ込められたの?
「えっ?何?突然場所が変わったわ??」
「この富士の一帯は果心居士の作り出した異空間結界になっているのです」
晴明師匠達も私が到着するまでに何度も転移させられたのだと…
その結界の核こそ、門を守門番なんだって?
つまり門番倒さないと頂上には辿り着けないわけね?
「私達は皆を信じて頂上を目指しましょう」
「はい!」
「新手よ!」
宮ちゃんが叫ぶと同時に竹林の上から忍びの姿をした骸骨が落下して来て襲って来たの!
私達が頂上を目指していた時、仁王さんは柴田勝家を相手に苦戦していたの。
「そろそろ年貢の納め時のようだな?仁王とやら?」
「そう見えるか?」
「強がりおって!」
柴田勝家が刀を構え振り払うと、刀先から血が矢のように飛んで来て仁王さんを襲う。
「クッ!」
全ての血を躱して走り回る仁王さんに、
「逃げているだけでは面白くないぞ?」
「逃げているだけに見えるか?」
「何?」
すると仁王さんが雷を帯びて移動速度が上がる?更に向かって来た血滴が風に巻き上がって仁王さんに届かないでいたの。
「神の力は通じぬとも我が身を強化する事には問題あるまい?更に我が身を守る気流はカミシニの血をも寄せつけぬぞ?」
「成る程。防御に徹したか?だが、それでも我を倒す手段が無ければ時間の問題。それにいつまでもお主を遊ばせておくつもりはないぞ!」
柴田勝家は呼吸を吸い込むと、身体中の血が速度を上げて血管が浮き上がる。
「このカミシニの身体は人間の持つ能力を極限に超えた…神以上の存在だ!」
柴田勝家の血管から血が噴き出して身体を覆うと、それは血の鎧と化したの。しかも身体も一回り大きくなって、大剣とも思える刀を振り回す。
「どうやら、それが御主の本当の強さのようだのう?うむむ…鳥肌が立って身体が痺れるわい!ガハハ!」
笑っている場合じゃないわよ?仁王さん?
けど、仁王さんは逆に武者震いして見せたの。
「カミシニを相手にするのだ?少しは学ばせて貰わんと勿体ないからな?しかし、どうやら久しぶりに俺の本気を見せられそうだ?俺は嬉しいぞ?柴田勝家殿!」
仁王さんは一度立ち止まると、息吹きを吐き出す。
その直後、仁王さんの身を纏う護神二体の金剛力士が肉体から離脱し変化が解けたの?
「ん?変化を解くとはお主は諦めて死を覚悟しおったのか?」
しかし、仁王さんは意識を集中したまま答える。
「かつての総本山の守護者達は、その素質に更に鞭を打ち、カミシニを葬る力を手に入れた…この俺もまた、苦行の末にかつての守護者達に恥じぬよう我が身を極限にまで鍛えて体得したのだ!」
『天地眼』
それは力を額一点に集中させ、爆発的な力を解放させる奥義!更に二体の金剛力士が一つに融合し、再び仁王さんの身体に吸収されていく?その直後、仁王さんの額が割れて光輝く瞳が出現したの!?
「かつての守護者達は明王の力を借りていたが、俺のは執金剛神の力を借りる」
執金剛神とは二体の金剛力士が一つになった姿。
右手に『阿』の文字が浮かび上がり、左手に『吽』の文字が浮かび上がる。
「阿!ナマサマンダバ・サラナン・トラダリセイ・マカロシヤナキャナセサルバダタアギャタネン・クロソワカ!」
「吽!ナマサマンダバ・サラナン・ケイアビモキャ・マカハラセンダキャナヤキンジラヤ・サマセ・サマセ・マナサンマラ・ソワカ!」
「ヴァジュラダラ!オン・ウーン・ソワカ!」
仁王さんの手には光輝く金剛杵が握られていたの。
『これが俺の最大奥義!天地眼・退魔金剛杵だぁー!!』
仁王さんは下半身で大地を踏み込み金剛杵に籠めた退魔の力を放ったの!金剛杵から放たれた衝撃波は大地を揺らしながら柴田勝家へと向かっていく。
「所詮は神の力!カミシニの血で無効化してやろう!」
しかし!
柴田勝家の振り払われたカミシニの刀は衝撃波に触れた途端に消滅していく。
それに気付いた時、
「お見事…ぉ…」
柴田勝家は第二の死を覚悟したの。
蒸発するように血が沸騰し、鎧が消えて、その身を消し去った。
一撃必殺の奥義!
立ち尽くす仁王さんは、
「どうやら…ぶっつけで成功したようだ?ガハハ!」
って?
ぶっつけ本番だったの?
でも、今の奥義は仁王さんの身体に相当な負担を与え、拳の他に数本の骨にヒビが入っていたみたい。
仁王さんが柴田勝家を倒した直後、私達を塞いでいた竹林が消えて道が現れる。
「どうやら私達は幻覚を見せられていたようですね。仲間の誰かが門番を倒したのでしょう。先を急ぎますよ?」
「はい!晴明様!」
そこで私が疑問提起する。
「門番が倒れないと道が開けないなら、私達は下手に動かないで体力温存してた方が良くないですか?」
「それは後ろを見てもそう言えますか?」
「えっ?」
見ると私達の背後の土が盛り上がって、その下から新たな鎧武者がわんさかと現れたの。
「休んでられないみたいですね。これ?」
「私達はこの一帯に足を踏み込んだ時から、既に果心居士の術中に嵌まっているようです。とにかく上を目指しましょう!」
きっと他の誰かが門番を倒してくれれば新たな道が開くはずと信じて、私達は開かれた道を駆ける。
こうなったら、もうノンストップでヤるしかないわね?
そんなこんな。
次回予告
物語の自称転生者?
桃井剣太郎、金丸 剛、一瀬 明希が、
戦国の武将佐々成政、不破光治、前田利家と対決する。




