蛇蝕六尾の氷蛇!楊善の戦い!
楊善は蛇蝕六尾の氷蛇を相手に戦う。
しかしその強さに圧倒される。
私は法子
今、目の前で楊善さんと蛇蝕六尾の氷蛇が戦っているの。
氷蛇は真の力を解放させて、上半身は人の姿に下半身は大蛇。それとは別に氷の大蛇の頭が四つもある化け物に変化したの。対する楊善さんは獣神変化で深紅の鎧を纒い剣を構えて本気モードなの。
氷蛇の身体から吹雪が吹き荒れ五本の蛇頭の口から鋭利な氷柱が吹き出される。
「浮遊翼!」
楊善さんの背中から紅色の翼を広げて空中を舞いながら躱し、剣から放たれる神気の刃で応戦する。
けれど倒すまでには至らない。
「・・・・・・」
楊善さんは口数が減っていた。
脇腹からの出血もそうだけど、氷獄地帯と化したこの場所で私の身を守っている宝貝は長くもたないの。もし宝貝の効力が消えれば人間の私は一瞬で凍り付き命を落としてしまうから。
この私が足手まといになっているのが分かる。
焦る中で楊善さんの攻撃の全てが氷蛇を覆う吹雪の壁に阻まれて打つ手がないの。
「これは追い込まれましたね」
そこに氷の大蛇の頭が楊善さんに襲い掛かる!
「くぅううう!」
剣を盾にして受け止めるけれど、その勢いに押されたまま背後の氷山に背中から衝突したの。
吐血する楊善さんに新たな氷蛇の頭が迫る。
「うぉおおおお!」
楊善さんは目の前の氷蛇の頭を剣で両断にして迫る蛇の攻撃を躱す。
けれど躱した先からも新たな蛇の頭が口を広げ、楊善さんを飲み込んだの。
えっ?食べられちゃった?
嘘でしょ??
「どうやら俺の体内で尽きたようだな?なにせ俺の体内は絶対零度だからな」
氷蛇が勝利を確信したその時、
しかし飲み込んだ蛇の頭が内部から破裂する。
「!!」
楊善さんは剣を前方に構えて神気を極限にまで高めて蛇の体内から抜け出したの。
しかしその身体は凍てつき、かなり消耗しているのが分かる。
「フフフ。驚いたぞあ?まさか俺の身体から出て来るとはな?だが、そろそろ観念してその首を差し出すが良い」
すると氷蛇の砕かれた氷の頭が見る見ると再生していくの。
「そうやすやすと私の美しい顔を一人占め出来ると思わないでくださいね!」
楊善さんは神気を身に纏い、氷蛇に向かって特攻を仕掛けたの。
それはもう破れかぶれにしか見えなかった。
迫り来る四本の蛇の頭の攻撃を擦り抜け、そして本体の氷蛇の寸前にまで迫る。
「ぐはぁ!」
けれど楊善さんは氷蛇を守る氷の壁に衝突してそのまま血塗れになって落下したの。
まさか?そんな?
もう打つ手が本当に残ってないの?
けれど楊善さんは落下しながら印を結んでいた。
「あっー!!」
私は気付いて、ゆい大声を出していた。
楊善さんの剣が氷蛇の胸に突き刺さっていたの。
「アガカ・・・!?」
氷蛇は自らに突き刺さった剣に気付いたと同時に楊善さんが印を結ぶと閃光を放たれる。
「うぎゃあああ!」
すると閃光は氷蛇の本体ごと爆発した。
落下する楊善さんの変化は解けていく。
そのまま氷の床に落ちて庇った左腕が折れたの。
もう受け身を取る余裕もなかったのね。
けれど、片腕と引き換えに氷蛇を倒したんだもん!
これは快挙よ!
しかし私は鳥肌が立つ。
それは冷気だけでなく殺気だった。
「う、嘘?そんな馬鹿な」
砕かれた氷蛇の身体に冷気が覆われると崩壊した身体が再生していくの。まさか氷蛇の本体だと思っていた上半身は仮の姿で、上半身と下半身の付け根から新たな蛇神の顔が姿を現したの。
あっちが本体だったの??
「フフフ。この俺を殺す事は出来んぞ?お前達は勘違いしているようだが、俺の本体はこの六つの頭全てだ!一つでも残っていればだった何度でも再生出来るのだよ」
つまり同時に氷蛇の頭を叩かないと倒せないの?
楊善さんが決死の覚悟の特攻でも近付く事が出来なかったと言うのに?
それに楊善さんももう限界だと言うのに・・・
「えっ?」
けれど楊善さんの目は勝機を捨ててはいなかった。
しかも口元に笑みを見せているの?
「さて、そろそろ終わらせないと法子さんが冷たい人になってしまいますからね?」
ムッ?何それ?
「だから私が暖めてあげますよ!」
「馬鹿言ってないで策があるの?」
「まぁ~私の美貌と戦いをその眼に焼きてけて下さい」
楊善さんは片手で新たな宝貝を取り出す。
すると宝貝の形が変わっていく。
それは壺?
そして目の前に置いて神気を籠めたの。
「宝貝・万鴉壺」
すると万鴉壺から黒い何かが無数に飛び出して来て上空を覆って行くの?
あれは?
その鳴き声は間違いなかった。
「えっ?アレって鴉?」
「しかも只の鴉ではありませんよ!」
上空を埋め尽くす一万羽の鴉の鳴き声に氷蛇は苛つきを感じる。
「何かと思えば鴉と?虚仮にするのも大概にするのだなぁー!」
氷蛇から吹雪が上空の鴉向けられたの。
あのままだと鴉達は凍り付いて落下しちゃうわ?
「言ったでしょ?今から暖かくするってね」
楊善さんが指を鳴らしたその時、上空を飛行する一万羽の鴉達は一斉に口から火炎放射を放ったの!
「炎を吹く鴉??」
全面包囲する鴉からの火炎放射の一斉攻撃。
更に楊善さんは結界陣を張っていたの。
「烈焔陣」
この陣の中には三昧火、空中火、石中火という三つの炎が氷蛇を襲ったの。
見る見ると身体が溶け始める氷蛇は苦しみ始める。
「おかしい!?この程度の炎で俺の氷が溶かされるなんて?しかも何だ?この蒸気は?」
地面から熱がじわじわと上がっているの?
「忘れましたか?私達が立っているこの地盤は鋼で出来ている事を?」
あっ!そう言えば!
地面に潜っていた蛇神達を一網打尽にするために楊善さんは先に指地成鋼法って術で地盤を鋼に変化させていたんだったわ!氷に埋もれていて忘れてた!
地盤の鋼が炎で熱っせられ鉄板みたいになっているのね?
何て計算尽くされた戦い方なの?
「氷に炎は鉄板でしょ?」
あ、それはダジャレかしら?
「ぐぅうう!八つ裂きにしてやるぞ!」
氷蛇から四つの大蛇が私と動けない楊善さんに向かって襲い掛かって来る。
「あっ!!」
しかし大蛇達は私達に届く前に見えない壁に止められたの。
「なに?今度は何をしたの?」
「忘れましたか?私達がいた場所を?」
私達がいた場所は確か蓬莱国だったわよね?
ん?どういう事?
「この蓬莱国の結界に少し細工させて貰いました。脱出のために結界の力を拡散させたとは言え、まだまだ力の余波が残っていもので術式を組み換えさせて貰い有効活用させて貰ったのですよ」
つまり氷蛇は蓬莱国の結界に閉じ込められたって事?
しかも中では限り無く炎上地獄?
「蓬莱国の結界は時を止める事でした。しかし私達みたいに抜け出す事も出来たのでは時間稼ぎに過ぎません。しかしこの結界の恐ろしさはその悪意ある特性でした。本来なら使いたくはなかったですが、蛇神のお前には冷酷になれますよ」
蓬莱国の結界の悪意ある特性って?
あっ!!
それは閉じ込めた対象を術式に組み込み、その力が尽きるまで結界は発動する。
つまり生きている間は絶対に出られないの。
私達みたいに部外者がどうにかしない限りね?
すると結界が完全に発動する!
「こ、こんな結界など俺の力で破壊してやるわ!」
更に冷気を高めた時、背後から何者かが腕を伸ばして氷蛇にしがみつく?
「な?何だぁ?お前はああ??」
それには見覚えがあった。
私達が苦しめられた結界の意思だわ!
結界の意思は氷蛇に吸収されていくと結界はより強固になっていき、空間が歪み始めたの!
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まるで水洗便所に流れていくように氷蛇の身体は蓬莱国ごと再び空間の歪の中へと消え去ったの。
「永遠の苦しみを味わう前に、炎に焼かれて息絶えるでしょう。それが神として唯一の慈悲です」
かっ、勝ったの?
同時に私を守っていた宝貝の効果が消えて私は楊善さんに向かって駆けつけたの。
「うっ!」
楊善さんは痛みに膝を付いてしまう。
「やったわ〜!楊善さん!」
「法子さん、すみません。どうやら」
「えっ?」
私も気付く。氷蛇が消滅した事でまだ離れて残っていた蛇神の残党がいたの。
大分減ったとは言え、ざっと数百近くはいそうだわ。
そいつ達が氷蛇を倒した楊善さんと、オマケに私の首を取るために我先に襲い掛かって来たの。
「楊善さんは休んでいて?残りは私が!」
私は手に数珠を構えて戦おうとした時、
「ふぅ〜どうやら間に合ったようですね」
「えっ?」
その時だった。
上空より光が雷の如く私達の前に落ちた。
すると光の中から人影が?
「探したぞ!無事のようだな?楊善」
「生きていたか?人間の娘」
その声は二郎神君さんと、口悪いナタクだった。
私達の安否を確かめると二人は振り向きざまに剣を抜いたの。二人を支点として斬刀が広がるように弧を描くと、その間合いに入った蛇神達はひとり残らずに両断されて消滅したの。
「あの二人が来たのなら私は少々休ませて貰いますね?法子さん」
「えっ?」
楊善さんは二人の顔を見て緊張の糸が切れたのか?
連戦続きが一度にきて私に寄りかかるように倒れ込み気を失ってしまったの。
「楊善さーん!」
私にとってこの三人はまだ敵か味方か分からないのだけど、それでも悪い人達でない事は実感したの。
そんなこんな
次回予告
無事に二郎神君とナタクと合流した法子。
そこで楊善の休養を取るために寄った国で法子に?