仲違い?
法子は二郎神君、楊善、ナタクとともにいた。
そして孫悟空と阿修羅もいない上、
八戒と沙悟浄、玉龍は法子から引き離された。
私は法子。
私は孫悟空達と離れ離れになってしまい、否応なくその上天界の三英雄神と同行中。
そこに蛇神の追っ手が襲撃して来たの。
「あの〜かなりの数がいるのだけど何とかなりそうなの?貴方達?」
いくら英雄的に強いと言われていても、私は孫悟空や阿修羅を身近で見て来ているから多少の事は驚かないつもりだった。
「多く見積もって百近くか?」
ナタクが単独で蛇神達に向かって行く。
「あれ?貴方達は戦わないの?」
私の隣には二郎神君さんと楊善さんが残っていたの。
「あの程度ならナタク一人で十分ですよ」
「けれど蛇神を見括らない方が良いわ!」
「見括っているのは君の方だよ。ナタクは強い。それは間違いない」
「そ、そうなのね」
仲間への信頼なの?無謀だわ!
ナタクは腰の鞘から剣を抜く、
「中壇元帥 (ちゅうだんげんすい)ナタク、いざ参る!」
ナタクに向かって蛇神達は一斉に襲いかかる。
けれど蛇神達はナタクの姿を完全に見失ったの?
「う、うきゃあ?」
同時に視界がズレていき闇に染まる。
蛇神達は今の一瞬で全身を細切れに斬られていた。
「う、嘘?」
その動きは舞のようであって閃光。
簡単に例えるなら蝶のように舞って蜂のように刺すかな?次々と蛇神達は倒れ、ついに一人だけで追っ手の蛇神百体以上を全て倒してしまったの。
本当に強いわ・・・
もしかしたら孫悟空や阿修羅よりも?
そんなはずないわ!
そして戻って来たナタクは二郎神君さんに向かってボヤいたの。
「この程度の連中に手を汚したくない。次は二郎神君、お前がやれよ?」
「コラコラ?仮にも上官に向かって口が悪いぞ?ナタク」
「俺はお前を上官だなんて思ってはいない。いずれお前を倒して俺が上に就く」
「アハハハ!楽しみにしているよ」
この話から二郎神君さんはナタクよりも上の立場で、しかもナタクより強いって事なの?関係がイマイチよく分からないわね?仲が良いのか悪いのか?どうやらナタクは下剋上狙ってるみたい。
それにしても余計に逃げにくくなったわ。
ナタクがこんなに強いなんて!
うむむ・・・なんか逆らえないわ。
私は仕方なく彼等に黙って大人しく付いていく。
「もう〜足が疲れた〜お腹空いた〜」
「人間の娘、お前少しは黙れ!」
「もっと丁重に扱ってよ?私は可弱い人間の女の子なんだから!」
と、ナタクが蛇神達を撃退して移動を再会したのを遠く離れた崖上から覗き見ている者がいたの。
「う〜蛇神とのどさくさに紛れて法子さんを救出するつもりだったのに〜」
「もう少し様子をみるらよ」
それは八戒と沙悟浄だったの。
「でもどうして空を移動して行かないらか?天界の武神なら当然飛行雲はあるらろ?」
「きっと蛇神達に感知能力に長けたのがいて追跡されないように飛行雲は使わないのでしょう」
「で、地道に歩いてるらな?お陰でオラ達も追いつけたわけら」
二人はナタクに敗北した後、間もなく目が覚めたの。再生力に自信ある八戒は分かるとして沙悟浄が無事なのは、致命傷は避けられていたからなの。
確かに火傷と攻撃のショックで気を失ったけれど、今はこうして離れた場所から私達の後を尾行しているの。チャンスあれば私の奪還するために。
「それにしても玉龍君も心配です」
「玉龍らか?確かに一人で向かわせて良かったらか分からないらが、今は法子はんを優先らよ」
「そうですねぇ・・・」
実は二人が気を失い私が連れ去られた時に、三英雄神に向かって震えながら単独両手を広げ道を塞いだのが玉龍君だったの。けれど力の差はどうしようもない。
「止めるか?龍族の少年」
「ぼ、僕も法子様の一行です!法子様を守らなきゃいけないのです!」
すると二郎神君さんは玉龍君に近付き耳元で囁いたの。その言葉を聞いた玉龍君は力無く膝が崩れ落ちる。一体、玉龍君に何を言ったの?
八戒と沙悟浄は目覚めた後、玉龍君は消えていたの。
けれど書き残した手紙で事の次第を知ったの。
玉龍君は今、龍神界へ向かっていた。
「とにかく法子はんを救った後に玉龍を追うら」
「そうですねぇ」
もう二人にとって今の状況は手の付けようがない事ばかりだった。
孫悟空も阿修羅もいない今、私の安否を最優先したの。
「八戒兄貴!何か動きがあります」
「何ら?」
二人の視線の先には私と三英雄神が見える。
けれど、その前方に誰かが近づいて来ていたの?
蛇神じゃないようね?
その姿格好から天界の武神に見えた。
その者は全身に傷を負い、血だらけで杖を付いて此処まで来ていたの。そして三英雄神の前に出ると膝をついて土下座する。
「お、お願い致します!英雄神様とお見受け致します!どうか私達をお救いくださいませ!」
二郎神君さんは前に出て言葉をかける。
「お前は?何があったのだ?」
「私は・・・」
その者は地上界に駐在する天界神。
彼はそこの責任者との事だったの。
天界の武神訓練生は幼少時に地上界へ降りて来る風習があるらしいの。そこで地上界の世界を知るために地上にある施設にて学び訓練しなから、いずれ天界へと戻るの。
その施設が今、蛇神達によって襲われていると言うの。
「お願い致します!私は助けを求めるために此処まで参りました。お願い致します!施設の子供達をお救いくださいませ」
その武神は額を地面に擦り付け、涙を流しながら懇願する。
「助けてあげましょう?早く行かなきゃ!」
私が言うと、
「それは駄目だ。君を天界へお連れするのが天からの最優先だと任務を受けている」
「そんな!?」
二郎神君は助けを求めに来た武神に言う。
「お前も天界人なら分かるであろう?天の指示は全てにおいて絶対であることは?」
武神は涙を流しながら歯を食い縛り、それ以上はもう何も言う事が出来なかったの。
「ちょっとケチ臭い事は言わないでよ!」
けれど三人の意思は変わらなかった。
「嘘?見捨てるつもり?だったら私が一人でも向かうわ!私を案内してちょう・・・ウッ!」
すると私は力が抜けるように気を失ったの。
「悪いが眠っていて貰おう」
二郎神君は顔を向けずに呟く。
私はナタクに当て身で気を失わされたの。
そして二郎神君さん達は助けを求めに来た武神を残して去って行ったの。
一人残された武神は涙を流しながら立ち上がると、来た道を再び戻って行く。
本当に、こんな事があって良いの?
助けられるかもしれない命を見捨てるなんて事?
そして時は過ぎる。
私は再びナタクに背負われていた。
「神君、辛い決断でしたね」
楊善さんは二郎神君の心を察していたの。
けれど二郎神君は答える。
「まだ望みはある」
「望みとは、私達を覗いていた彼らの事かい?」
「不思議だが、俺は以前に・・・」
そう言った後に口を閉ざす。
遠く離れた場所から私達を覗いている。
それは?
「大丈夫!私は大丈夫!私は一人でもやり遂げます!大丈夫!あんな豚兄貴なんかもう知りません!」
沙悟浄は一人で私達の同行を監視していた。
あれ?一人なの?どうして?
八戒は何処へ?
まさかまた逃げてしまったんじゃないの??
あの馬鹿豚ぁ〜!!
沙悟浄は思い出す。
それはついさっき起きた八戒とのやり取りを。
「なぁ~?もうオラ達はお役御免じゃないらか?」
「えっ?何を言ってるのですか?八戒兄貴?」
「ほらよ?猿も阿修羅もいないし、オラ達に何が出来るらか?お前も見たらろ?法子はんには天界の強い連中がついているらよ。もうオラ達には何も出来る事がないじゃないらか?と言ってるらよ」
「出来る事が何もないなんて分からないじゃないですか?私達に出来る事は必ずあるはずですよ!」
「オラにはないらよ。オラは恐いんら!あんな蛇神を相手にオラ達に何が出来るら?」
「そ、それは・・・」
あの桁違いの覇王を目の当たりにしたからの無力感。
「オラ達中級妖怪にはもう・・・手の届かない所まで来てしまったんらよ」
「そんなことないです!そんなこと・・・ないです」
「なら、河童!お前に何が出来る?出来るのは足を引っ張るか無駄死にらけら!」
「!!」
「もう手を引くらよ。オラ達は十分によくやったら」
「い、いつもの悪い癖ですよね?なんだかんだ言っても八戒兄貴は一番仲間思いで・・・」
しかし次の八戒の言葉に沙悟浄は、
「三蔵の旦那はもういないんら!義理立てして死ぬのはオラは御免こうむるら!」
「それ以上言うなぁー!!」
かつての恩師を裏切るような台詞を聞きたくなかった。
それは怒りとして沙悟浄は八戒の頬を本気で殴っていたの。
「ふぅ~これは手切れ賃として仕返しはしないでやるらよ」
「は、八戒あに・・・き?」
すると八戒は荷物をまとめて沙悟浄のもとから去って行ったの。
嘘?私がいない間になんでこんな事態になってるの?
残された沙悟浄は涙を流しながら、
「私は一人でも最後まで、最後まで!」
私のために一人残ったの。
場所は変わる。
そこには襲われている施設の子供達を救うべくたった一人で向かっているあの武神だった。
「はぁ、はぁ、私がきっと助けて見せる!この命にかけてでも子供達だけは必ず救ってみせるぞ!」
その決意は変わらない。
「で、一人で蛇神を相手に喧嘩するつもりらか?」
「ー!!」
武神の男は背後に現れた者の声に驚き振り返る。
「よ、妖怪かぁ!私の血の臭いを嗅ぎ付けたようだがそうはいかんぞ!」
「まぁ〜待つら!待つら!」
「待つだと?お前は何者だ?この黒豚妖怪!」
そこに現れたのは八戒だったの。
あんた、何をやってるのよ?
何をするつもりなの?
そんなこんな。
次回予告
八戒の行動は?
そして助けを求める武神は?




