法子と三人の英雄神?
覇王の圧倒的な力の差に法子達は危機的状況だった。
そこに強烈な光とともに現れたのは?
私は法子・・・
あれ?今、私はどういう状況なんだっけ?
う〜ん?
あれ?私、背負われてるのかしら?
お、お父さん?
違うわね・・・
でも何故か懐かしい感じがするわ
そう、遠い昔に、確か、
お、お兄ちゃ・・・ん?
私にはお兄ちゃんなんていないし!!
ん?
だったら私は誰におぶられてるの?
孫悟空?阿修羅?
私は恐る恐る薄目を開ける。
すると金色の後ろ髪が見えたの。
金髪?
金髪なら孫悟空よね?
阿修羅は銀髪だもん。
けれど、何か雰囲気が違うような?
そこで私は見開いたの!
そこには前方に二人、そして見知らぬ男性に私は背負われていたの。
飛び起きた私は叫び出す。
「だ、誰?貴方達は〜??」
「どうやら起きたようだな?」
「お、降ろして!私を直ぐに降ろしてよ〜」
「こら!暴れるな!女ぁ!」
私は取り乱すように暴れながら背負っていた金髪の彼の後頭部を殴ってしまったの。
「あっ」
すると私は背中から落とされて尻をついてしまう。
「も〜う!急に落とさないでよ〜!」
そんな私に向かって前方を歩く二人が口を開く。
「アハハハ!まさかお前が頭を殴るとはな?」
「これは一生お目にかかる事の出来ない衝撃的な場面を見てしまいましたね?私達」
笑い出す前方の二人。
けれど私は気付く。
私を背負っていた彼が私を恐い顔で睨んでいたから。
「な、何よ~?文句あるの?しゃ~!しゃ~!」
私は腰が引けながら威嚇する。
そこで私は三人の姿をハッキリ見る。
一人は青髪の青年かな?
見た感じ24歳くらいかしら?
まるで韓流のドラマに出てくる俳優さんみたいで凛々しい容姿だわ。
それにもう一人の髪の長い男性も同じくらいの歳に見えるけれど、本当モデルみたい。
しかも女性に見間違う程の見惚れる容姿だわ!
最後に私を背負っていた金髪の彼は私を緑色の瞳で睨む。
歳は私と同じか少し上かな?恐らく。
彼もまた凛々しく女性にも見違える程の端正な容貌。
何なの??
この逆ハーレム展開は??
私はこれまでの経緯を思い出してみる。
えっと、確か・・・
私達の蛇神対策同盟軍城塞に蛇神の大軍が攻め寄せ、孫悟空と阿修羅が大暴れしたのよね。
そこに現れた覇王。
正直、桁違いとか口で簡単に言えないレベルだった。まるで自然の猛威、世界を相手にしなきゃいけない。そんな手の届かない感覚に全身震えたわ。
けれど阿修羅の危機に私は飛び出していたの。
覇王を前にして絶対絶命かと思われた時、そこに現れたのが彼等だったの。
その中の一人が掌に置いた貝殻に気を集中させた時、突然の閃光が私達を飲み込み一帯を覆った。
それからそれから?
その後、一度私は目覚めていたの。
そこには私の他に八戒と沙悟浄、玉龍君がいた。
「皆、無事?」
「はい!怪我一つありません!」
「此処は何処なんら?」
「気付いたら此処に。僕達城の中にいたはずなのにどうして?」
私達は状況が全く掴めなかったの。
そこに、
「どうやら上手くいったようだな」
「!!」
私達の目の前に彼らがいたの。
「貴方達は誰?私達が戦って来た所に現れた人達よね?」
「あ、あわわ〜!」
その時、沙悟浄が震え出したの。
「どうしたの?沙悟浄?知り合い?」
「の、法子様〜!あの方達は〜あ、あの!」
「えっ?」
「英雄神の方々ですよ〜!」
「英雄神?」
英雄神とは天界の武神の中でも数々の武勇伝を成し遂げた者に与えられる称号。その中でも、目の前の三神は最高神に匹敵すると言われているとか。
「つまり天界の神様なのね?」
「は、はい!私も天界では幾つもの伝説を耳にしていましたよ。あの真ん中の鎧を纏っている方が二郎神君様です」
「二郎神君・・・」
かつての天帝の甥でもあり、天界だけでなく地上の厄災にも手を差し伸べる伝説が数々あるとか。
「そして髪の長い女性に見間違える方が楊善様です」
「楊善さん?」
二郎神君さんと同じく伝説的な武勇伝を成し遂げているだけでなく、天界では貝殻に特殊な技工を施して宝貝って武器を生み出したとか。
「宝貝?それってさっきのピカって光った?」
「あれは、きっと転送系の宝貝かと」
「だから私達、こんな場所に移動したのね?」
「最後にあの一番若く見えるのがナタク様です」
「ナタク?」
彼は現在天界を守護する四天王の一柱の直子の為、幼い頃から伝説的な武勇伝を成し遂げたの。
そして天界でも屈指の若き天才神と名高いとか。
「えっ?その有名な三方が私達に何用なの?」
「私にも分かりませんよ〜」
そこに二郎神君さんが口を開く。
「俺達の説明は終わったかな?俺の名は二郎神君。君を迎えに来た」
「えっ?私を?何故?」
すると三人の英雄神は顔を見合わせる。
実は三人の英雄神達もその理由は知らされていなかったから。
そして思い出していた。
それは天界での事。
三英雄神は天界の最高神である天に呼ばれ早急に足を運ぶ。
なにせ天界は今、蛇神の襲撃に合い混乱していたから。
「私達に何の勅命でしょうかね?神君」
「分からぬ。蛇神の襲撃があった今、その件で間違いではないと思うが」
楊善と二郎神君は最高神である天の部屋の扉の前で足を止める。するとそこにもう一人姿を現す。
「ナタク?お前も呼ばれていたのか?」
「ふん!」
ナタクは「お前達も呼ばれたのか?」みたいな顔でつまらなそうに返事する。
三人は天の御前に姿を見せると早々に膝をついて頭を下げる。
「お呼び仕り我ら三名到着致しました」
すると天は玉座より三人に勅命を出したの。
それは三人が予想だに出来ない内容だった。
「お前達は直ちに地上界に足を運び、現在蛇神と戦っているノリコと呼ばれる人間の娘を私の前に連れて来るのだ。それを最優先事項とする」
「!!」
蛇神討伐に出るのかと思っていた三人は拍子抜けするが、何故に人間の娘を天界に連れて来る事が最優先なのか分からないでいた。
「恐れ多いですが、どうしてその娘を天界に連れて参るのでしょうか?それよりも地上は今、蛇神が跋扈していると噂に聞いています。ここは天界の兵を総動員してでも討伐に向かった方が宜しいかと思われます」
しかし天は、
「最優先事項と告げたはずだぞ?」
「!!」
三人はそれ以上言葉を発する事が出来ずに答えたの。
「直ちに我ら三名、地上に出向き「ノリコ」なる人間の娘を天の前にお連れ致します」
そして、地上界へ降りて来た三人は蛇神と戦っている真っ只中似現れたのだけど、
流石に驚かされる。
まさか目的の私が蛇神の軍に囲まれた上に覇王を目前にして危機的状況だったから。
そこで転送の宝貝を使って危機を回避したと言うの。
「あの宝貝は光に包まれた者を全て一斉転送する事が出来るのです。と、言っても移動場所は本人が一度足を運んだ事のある場所。しかも移動先は正確には決められないから使い勝手が難しいのですがね」
「なら皆は無事なの?」
「貴女の関係者と蛇神達だけは別に移動するようにはさせて頂きましたから安心してください」
それは天界で宝貝を作り出す仕事もしている楊善さんが答えたの。
「ちょっと待ってよ!孫悟空は?阿修羅は?どうして此処にいないの?」
「あの二人なら無事です。ただし二人は今は別の場所に移動させて頂きました」
「どういう事?」
「それは貴女が天界に来て頂いた時に全て説明させて貰いますよ」
「そんな一方的な〜」
正直、信用して良いか分からなかった。
「大丈夫じゃないらか?法子はん?」
「八戒?」
「地上界にいても蛇神の脅威にビクビクしていなきゃならないらよ?法子はんも見たろ?覇王ってのはオラ達では手が追えないらよ!オラ達は天界で身を隠して、天界軍が蛇神共を討伐し終わった後に地上へ戻ってくれば良いらよ〜」
「何を呑気な事を言ってるのよ!」
「ならどうするつもりら?実際目の当たりにして勝てると思うらか?」
「そ、それは・・・」
「いつまでも考えてる暇はないらよ?直ぐに蛇神達はオラ達を追ってくるらよ。それに猿と阿修羅がいない今、オラ達に対抗策はないらよ!ここは天界の連中に世話になってらな?猿と阿修羅と合流した後に先の事を考えるら」
「うっ!」
八戒の言ってる事は的確だった。
地上界の皆を見捨て逃げてるようで嫌だけど、今のこの状況で私達に出来る事は何もない。出来ないのは間違いなかった。それだけ目の当たりにした覇王は化け物過ぎたのだから。
「わ、分かったわ!お世話になります。私達は何をすれば良いの?」
「話が早くて良かった。俺達は今から君を連れて地上界から天界に渡るための転送装置のある宮殿へ向かう事になる」
「転送宮殿?」
「天界へは簡単に行ける場所ではないのでね。我々天界の者は転送宮殿を使って行き来している」
「そうなのね・・・孫悟空と阿修羅とも会えるのよね?嘘じゃないわよね?」
「二人も用が住めば君と合流させよう。約束する」
まだ複雑だった。
「なら善は急げら!準備して直ぐに旅立つらよ」
八戒と沙悟浄、玉龍君が荷物を手に取ろうとした時、
「何を勘違いしている?」
「えっ?」
私達を遮るようにナタクが言葉を発したの。
それは私達の期待を裏切る内容だった。
「お前達は一緒には連れては行かせない。連れて行くのはそこの女だけだ」
「!!」
八戒も沙悟浄も玉龍君も唖然とする。
「どういう事ら?」
「お前達は用済みだと言っている。これから相手にする蛇神を相手にお前達下級妖怪は無用だ。孫悟空と阿修羅と言ったな?あの二人には使い道がある」
「そんな〜」
八戒も沙悟浄も泣きそうになる。
「この娘は俺達が護衛する。お前達は消えるが良い!」
「ちょっと待ってよ!皆と一緒じゃなきゃ私は行かないわよ?ふざけないでよ!此処まで一緒に戦って来た仲間を簡単に切り捨てられないわ!」
「お前に拒否権はない!」
「何ですって〜」
このナタクってのは何て酷い奴なの??
「流石に仏の法子と異名がある私でも三度の顔見せる前に怒るわよ!」
私を守るように八戒と沙悟浄が前に出る。
「もしどうしてもと言うなら、俺に一度でも触れてみよ?万が一でも俺に触れる事が出来ればお前達も連れて行っても良いぞ?お前達全員でかかって来ても良いぞ?」
ナタクが挑発する。
すると八戒と沙悟浄が恐る恐る武器を手にしたの。
「オラ達らって困難を乗り越えて来たんら!」
「そう簡単には倒されませんよ〜」
二人は同時にナタクに攻撃を仕掛けたの。
けれど二人が振り下ろした武器は空を切ると、二人は全身に痛みを感じて膝をつく。
「何があったの?今の?」
「当て身をくらわせた。次は本気で斬るぞ?」
二人の全身に痣が残る。
完全な力の差。
こんな相手に勝てるはずなかった。
その時、ナタクは掌に乗せた宝貝に気を送ると新たな武器が飛び出したの。
それは燃え盛る槍。
けれどそれを見た私達は驚愕する。
アレってまさか!?
「その武器はどうしたの?」
ナタクは手にした槍を見ると、
「これは俺が討伐した妖怪から手に入れた神具だ。そもそも妖怪が手にする事が不釣り合いというもの」
ナタクは武器コレクターでもあるの。
倒した妖怪から目ぼしい神具を奪うらしいの。
手に入れた武器の数は千を超えるとか。
けれど彼が今手にしているのは見間違えるはずなかった。アレは紅孩児君愛用の火尖槍じゃないの?
八戒が蒼褪めた顔でナタクに叫ぶ。
「お、お前・・・その武器は紅孩児のらろ?どうしてお前が持ってるら?討伐したらと?嘘を言うなら!アイツは強い奴ら!」
「倒した妖怪の事など覚えてはいない。俺がコレを手にしているなら、ソイツは既にこの世にはいない。俺が妖怪に手心を与えるとは思えないからな?そして次にお前達が歯向かうなら俺はお前達を妖怪として葬るのみ」
その言葉に八戒と沙悟浄は脅えるどころか戦意が立ち込める。
「紅孩児はオラ達の仲間らったら!」
「はい!私達は仲間を倒した貴方を許せません!」
その覇気にナタクは一瞬怯む。
まさか下等の妖怪相手に無敗を誇るナタクが怯むなんて誇りが許さなかったの。
「どうやら早死にしたいようだな」
ナタクに殺意が込み上がる。
私はその空気の変化に気付いたの。
「止めてぇー!」
その直後、ナタクの手にする火尖槍から炎が火柱の如く燃え上がると、二人に向かって落下して直撃したの。
「う、嘘・・・」
二人は全身黒焦げになって動かなかった。
まさか本当に死んで?
「お、お前ぇーー!」
私は怒りで霊気が爆発した時、ナタクは私の眼前に掌を翳したの。
「あっ・・・」
私はそこで力が抜けて膝が崩れたの。
「ナタク、手荒な真似は」
「心配ない。眠らせただけだ」
そして私は気が遠くなって眠ってしまったんだ。
「全て思い出したわ!よくも!」
再び怒りが込み上がる私に楊善さんは言った。
「安心してください。ナタクは彼等を殺してはいませんよ」
私は少し安堵する。
けれど怪我させられたのは間違いない。
「彼等が一緒に来れば必ず戦いに巻き込まれるでしょう。そうなれば生き残れません。あそこで眠っていれば多少なりとも生存率が上がります」
「えっ?それって?」
楊善さんが言うには蛇神達の中に妖気探知に優れた者がいると言うの。その者によって地上界にいる力の強い者の所には蛇神が襲撃に向かっているとか。
けれど八戒や沙悟浄レベルなら感知外のため襲われる事はないって事なんだと。
「その感知の対象に覇王に直接襲撃した貴方も入っているようなのです」
「えっ?」
「どうやら、また現れたぞ」
えっ?えっ?えっ?
その時、私達の前に突然蛇神兵が姿を現したの。
どうも私が眠っている間も襲撃にあったのだけと、私がスヤスヤしている間に三人は蛇神達を撃退していたの。けれど今回現れた蛇神は数が多かった。
「天界の連中か?こいつ達を覇王様に捧げよ」
蛇神達は一斉に襲い掛かって来たの。
そんなこんな。
次回予告
孫悟空達と離れ離れになった法子。
三人の英雄神は敵か味方か?
※二郎神君、楊善(楊戩)、ナタク、
彼等は過去作品の「転生記」「天上天下美猴王伝説」「唯我蓮華~破壊神と呼ばれた少年~」
にて登場しています。