八戒の約束!
孫悟空と八戒の参戦
そして阿修羅が蛇神の王と一騎打ちだ!
私は法子よ!
私達のピンチに孫悟空と八戒の参戦で第二開戦の始まり!
これで決着付けるわよ!
玄武王と対峙するのは孫悟空だった。
そう言えば試練がどうとか言ってなかった?
この場に現れたって事は試練を乗り越えたって事なの?それでこの状況を変えられたりする?
とにかく頼んだわよ!
孫悟空は精神世界での事を思い出していたの。
過去の謎謎的な試練と違い、聖獣の核心に迫る内容なのよね。
そして朱雀王と白虎王の見守る中で孫悟空はその真意から答えを導き出したの。
「いくぜ!玄武!これから俺様の新しい力を見せてやるぜ!」
孫悟空は印を結ぶ。
「聖獣変化唯我独尊・朱雀!」
孫悟空は全身を炎が吹き起こると朱雀の鎧を纏って姿を現したの。そして空中に舞い上がり炎の弾丸を投げ付ける。
「・・・」
けれど炎の弾丸は全て玄武の盾で消されてしまうの。それもそのはずよね?赤龍王さんの炎だって通用しなかったんだから。
すると孫悟空は即座に印を結び直す。
「聖獣変化唯我独尊・白虎!」
今度は孫悟空に落雷が降り注ぐと白虎の鎧を纏って姿を現したの。そして素早い動きで移動しながら雷を玄武目掛けて放ったの。けれどこれも通用しなかった。ん?あれ?今までと何が違うの?
「やっぱり通用しないか?アハハ!」
アハハじゃないわよ〜
「仮免許取っただけだからな〜まぁ、何とかしてやるぜ!」
か、仮免許ですって??
そんな中で阿修羅もまた戦っていた。
相手は蛇神の大ボスよ!
「妖怪?神?違うな、お前は魔神族か?」
蛇神・鈎蛇王は阿修羅に興味を抱く。
神と龍神が世界の調和の象徴なら、
魔神とは蛇神は破壊の象徴。
鈎蛇王は大剣を振り回しながら阿修羅の間合いに入る斬り伏せるけれど、どれも寸前で躱す。
「見切ったわけではないな?戦いの本能か?命の駆け引きの中で危機を察知し躱しているのか」
「・・・・・・」
今度は阿修羅の攻撃。
掌から黒い炎が発火すると拳や手刀の突きを繰り出す。阿修羅は徐々に速度を上げているにも関わらず、鈎蛇王は阿修羅の攻撃を全て躱していたの。
「本気を出すが良い。さもなくば」
「!!」
その直後、阿修羅の全身に斬り傷が浮かび上がり血が噴き出したの。完全に避けたと思っていた阿修羅も驚きつつ膝をつく。
阿修羅が圧倒されてる??
やっぱり強いの?
すると鈎蛇王は語り出す。
「千年、いや俺のいた更に前の時代にはお前程度の腕の者は巨万といたぞ?それこそ俺は魔神も数多く斬り伏せて来た。この数年この時代には手応えのない雑魚ばかりだった。もう少し楽しませてみろ!」
「そうか、なら僕もお前を倒すのではなく殺す事を優先する!」
すると阿修羅の殺気が高まり魔神の気が膨れ上がっていく。
「ふふふふ。そうだ!それでこそ死の世界から蘇った甲斐があるってもんだ!この俺と殺し合おう」
鈎蛇王は狂気に満ちた目をしていたの。
一度死んで蘇った事で、その死線の淵の快楽を楽しんでいた。
「俺の蛇牙歯断の剣は血に飢えている。この俺と同じくな」
鈎蛇王が再び斬りかかると同時に阿修羅も攻撃を仕掛けたの。
それは隙あらば一瞬で終わる命の取り合い!
そして私も倒したと思った紅鱗大蟒を相手に策なく困ってしまって、ワンワン状態だったの。
「法子はん!オラが来たからにはもう安心ら」
と、八戒が勇むけれど・・・頼りがいないわ〜
「お前、八戒さん?ふふふ。何処にも見かけないと思えば来ていたのね?」
「何ら?オラを知っているらか?」
あ、そうだった。
八戒は紅鱗大蟒が蛇神化した瑠美ちゃんだって知らないんだった。
「私の事を忘れてしまったなんて酷いわ?」
「ん?オラはお前みたいなべっぴんさんは一度見たらスリーサイズは決して忘れないはずなんらが?記憶にないらよ?」
「いつも状態ばかり言うのね?」
「ん?ん?ん?」
「私、瑠美よ?めでたく蛇神として生まれ変わりました〜ふふふ。どう?素敵な身体でしょ?私成長したのよ〜。嶺黄風国にいた連中もいっぱい食べたわ〜私、成長期だから仕方ないわよね?八戒さん?」
八戒は信じられない表情で私を見ると私は本当だと頷き返したの。
「そ、そんな・・・嘘らろ?」
八戒の目から涙が溢れ落ちた。
すると八戒は紅鱗大蟒に向かって叫ぶ。
「見た目が蛇神になろうが構わねぇら!またオラ達と一緒にいるら!そうら?良かったら一緒に旅をするらよ?瑠美ちゃんは嶺黄風国しか知らないから、色んな世界を見れて楽しいらよ?」
それは懸命に説得したの。
私には八戒の気持ちが痛いほど分かる。
出来る事なら私もそうしたいに決まってる。
「私達には人間から妖怪になった女の子で白骨乙女さんっているのよ!だから大丈夫!」
私も叫んだの。
すると紅鱗大蟒は私達を見て笑顔で答える。
「もう〜馬鹿だなぁ〜二人とも?私は今を喜んでるのよ?清々しいの!半人半妖の力は中途半端だったけれど、この蛇神の力は正に至福の悦び!私はこの力で覇王様に仕えるのよ」
「もう引き返せないらか?」
「引き返す必要なんてない。でもその前に後片付けしなきゃいけないの。私、貴方達の首を並べて覇王様に献上するんだ!うふふふ」
もう瑠美ちゃんでは・・・ないのね?
もう戻って・・・来れないの?
私の溢れる涙を見た八戒が先に答える。
「紅鱗大蟒らったらか?どんなに醜く凶悪な化け物らろうと、どれだけ罪を重ねていようと、心さえ有ればやり直せるんら!」
その言葉には重く伝わる。
八戒?ソレは誰の事を?
まるで八戒、貴方自身の事のように聞こえたけど?
八戒は無防備に紅鱗大蟒に近付いていく。
「は、八戒!」
「法子はん?ここはオラに任せるら!」
八戒は私の静止を振り切る。
「何?馬鹿なの?私は紅鱗大蟒!お前らの知ってる可愛い可愛い弱くて貧弱で、何も出来なかった虫けらとは違うのよ!」
紅鱗大蟒の振り払う蛇気が鞭となって八戒の身体を切り裂く!血が飛び散り、ふらつく八戒はそれでも足を止めなかったの。
「何も恐くはないらよ?オラは味方ら!いやオラらけじゃないらよ?法子はんも、猿も河童も玉龍もいるら!大丈夫らよ、オラ達と一緒にもう一度!」
八戒の説得にも耳を傾けずに紅鱗大蟒は蛇気の鞭で八戒を打ちのめしたの。無数の傷から血飛沫が飛び散る。いくら八戒が不死の再生力を持っていようと痛みは感じる。激痛が全身を打ちのめす中で八戒は苦しそうに言う。
「い、痛いらよ、でもそれは身体の痛みらけじゃないら。オラは瑠美ちゃんを救えなかった事で胸が締め付けられ、今にも心が引き裂かれそうら・・・」
「何なの!気持ち悪いわ!こうなれば肉も残さず消し去ってあげる!」
紅鱗大蟒は掌を向けて蛇気を集中させたの。
「あっ!」
紅鱗大蟒の掌から無数の蛇が飛び出して八戒の身体に絡み付き噛み付くと肉を食い破る。血が大量に流れ意識が朦朧としながらも八戒は足を止めずに歩む。
「どうして止まらないの?どうして死なないのよ?どうしてそんなになっても?この化け物め!」
紅鱗大蟒は蛇を鞭のように振り回して何度も何度も近付く八戒を鞭打ち、血が滲む中でもその目は一度足りとも紅鱗大蟒から視線を外さなかったの。
「く、来るな!近寄るな!気持ち悪い!」
私は紅鱗大蟒の僅かな変化に気付く。
本来ならこれだけ力の差があれば八戒の首を落とすなり、手足を切り落として動けなくさせたり出来るはず?なのに格上の紅鱗大蟒が格下の八戒に気後れしている理由は、もしかしたら?
そしてついに!
「は、八戒?貴方って・・・」
私は八戒に対して胸が熱くなった。
八戒は攻撃の手を止めた紅鱗大蟒を抱き締める。
「あ、あぁぁ」
すると手にした鞭を手離して落としたの。
まさか本当に蛇神化した紅鱗大蟒の心を取り戻したと言うの?
私でも無理だったのに?
けれど私は寒気を感じたの。
「あっ!!」
私の目の前で紅鱗大蟒が八戒の胸を貫いたの!
「アハハハ!このままお前の心臓を握り潰してあげるわ。そうすれば少しは動けなくなるでしょ?その後は再生出来ないように地下の溶解炉で永遠に生き地獄を与えてあげるの。それがお前の罪よ!」
「お、オラの・・・罪らか?」
「そうよ!この私を助けなかった!何度も何度も助けを求めたのに来てくれなかった!私は最後の最後まで貴方たちを呼び続けたのに来てくれなかった!それがお前達の罪なのよ!」
「そうらな。ならオラを責めるが良いら!オラを痛めつけて、それで少しでも気が晴れるなら」
「ふざけるなぁ!それに私はもう蛇神。もう何人も人間を喰らい、何も感じなかった!もう私は化け物なのよ!」
「そうらか・・・なら、オラが一緒に罪を償ってやるら。オラは多分、この世に生きていて良いか分からないほどの数えきれない罪を背負っているら。らからお前の罪もオラが背負うし、お前への罪も償ってやるら!らからオラにだけお前の苦しみを晴らせば良いらよ」
「そんなんで私の気が晴れてたまるかぁー!!」
紅鱗大蟒は無慈悲に八戒の心臓を握り潰したの。
八戒は崩れ落ちて動かなくなる。
「はっかーい!」
私の声は八戒には聞こえない。
「うふふふ。口では何とでも言えるわよ。また動き出さないように溶解炉へ落としてやるわ!」
本当に紅鱗大蟒は人間の心は残ってないの?
見た目だけでなく中身まで化け物に変わり果ててしまったと言うの?
「蛇毒溶解炉!」
紅鱗大蟒の口から毒が吐かれると、それは床を熔かして広がっていく。
そして動かない八戒に迫ったの。
「この猛毒の中で肉体だけでなく魂も飲み込まれ永遠に苦しみながら消えちまぃな!」
このままじゃ、いくら再生力が半端ない八戒だって死んじゃうわ!
私は倒れている八戒の救援をしようとした時、
「近寄るなぁー!!」
紅鱗大蟒は鞭を振るい私の足場を崩して道を塞いだの。
「さぁ、死になさい?豚野郎!」
猛毒が八戒を飲み込む。
「!!」
けれど八戒は間一髪立ち上がったの!
しかし猛毒に触れた足は徐々に溶け始める。
「ウググゥ!」
痛みを耐えながら八戒は口をパクパクと開く。
「何を言っても変わらないわ?私は蛇神なの!人間の瑠美は死んだ。私はこの新たな生を覇王様に捧げ生きていくのよ!アハハハ!」
既に救いようがなかった。
身も心も蛇神になってしまったのね。
そんな紅鱗大蟒に八戒はまだ涙を流して訴える。
「オラはお前を救わないといけないんら」
「余計なお世話よ!私にお前達は必要ないの!私には覇王様だけが尊いのよ!」
けれど次の八戒の言葉に紅鱗大蟒が揺らいだの??
「!!」
八戒は言葉を続ける。
「オラは頼まれたんら。流華ちゃんに!」
流華ちゃん?
八戒から聞いた事がある。
半人半妖の女戦士。
瑠美ちゃんを救うために身を捧げて半人半妖になり大妖怪討伐の際に命を落とした実のお姉さん。
八戒は半人半妖の戦士達が倒しきれなかった大妖怪討伐に孫悟空と紅孩児君と一緒に向かった。
そこで八戒は死んだ流華さんの霊に遭遇して、生き別れになった瑠美ちゃんを救って欲しいと遺言を頼まれたの。
「オラは流華ちゃんと約束したら!瑠美ちゃんを必ず救ってやるって!例え蛇神になろうと約束は守るら!もし神族や他の妖怪達に命を狙われてもオラが守り抜く!もし蛇神連中が取り戻しに来てもオラが守り抜く!今度こそ必ず守り抜くと誓うら!」
その言葉に、姉の流華さんの名を聞いた時から紅鱗大蟒の殺気が消える。
そして八戒の言葉に涙を流し始めたの。
「お、お姉ちゃん・・・わ、私・・・」
八戒の言葉は蛇神と化した紅鱗大蟒の残っていた人間の心に届いたの。
戦意は完全に消えて、その場に座り込む。
八戒は猛毒の中を一歩一歩足を前に動かして紅鱗大蟒の頭を撫でると、力尽きてその場に倒れ込む。
「は、八戒さん」
紅鱗大蟒は八戒を抱きかかえると既に蛇神としての顔は無く、幼さが残っていたの。
私は安堵して八戒と紅鱗大蟒に駆け寄ろうとしたその時だった。
私はその衝撃に全身が凍り付く。
私の目の前で瑠美ちゃんが背後から現れた者に剣を突き刺されたの!!
「裏切者にようはない」
その者は今、阿修羅と戦っていたはずの鈎蛇王だったの!
そして私は離れた場所に阿修羅が倒れている事に気付いたの。
「あ、阿修羅?」
まさか阿修羅が負けたなんて?
いえ!今は瑠美ちゃん!
「お、お前ぇええええ!」
私は爆発的に高まった霊気が全身を覆い、一瞬で鈎蛇王の間合いに入って金の錫杖で殴りかかったの!
「虫けらか」
けれど私の錫杖は鈎蛇王の振るった剣で両断されると、次の太刀が私を脳天から降りて来たの!
このままじゃ私、真っ二つに??
けれど振り下ろされた大剣は止められる。
「あ、阿修羅!?」
寸前で阿修羅が飛び込み振り下ろされた大剣を片腕で受け止めたの。
「法子に手は出させない」
「だが、また斬られたぞ?」
受けた腕から血を流す阿修羅。
すると阿修羅の力が抜けるように押し潰され膝をつく。あの阿修羅がこんな簡単に押し負けるなんて?
その時、沙悟浄が私に向かって叫ぶ。
「法子さん!その大剣は魂喰らいです!触れたら魂を削られてしまうんですよ〜!」
「えっ!?」
それって?
今、阿修羅は魂が不安定の状態だった。
そんな阿修羅の魂を削るなんてされたら?
「危険過ぎる相手だわ・・・」
正直、阿修羅なら倒せると思っていた。
例えどんなに強くても阿修羅なら負けないって!
けれど、相手が悪すぎる。
「この中で一番強い気を感じていたのだがな?手負いでは遊び相手にもならんぞ!」
「そうかい?手負いの獣は恐いって事を教えてあげるよ。それにお前は法子に殺意を向けた!それだけで殺すに値する!」
静かに阿修羅が怒りを見せる。
「なら俺の剣の錆にしてやろう」
鈎蛇王は剛剣の如き勢いで斬りかかる。
阿修羅は紙一重で躱しつつ攻撃のタイミングをはかっていたの。僅かな隙を見せれば阿修羅は間違いなく鈎蛇王の命を狩る一撃を繰り出せる。
「面白い。鬼気迫る殺意だ!しかし俺の相手ではないな!」
「狩る!」
二人同時に斬撃と拳を振るう。
一瞬時が止まったに思えた。
互いの制する間合いに入っての攻撃。
「見事だ。魔神よ!」
鈎蛇王の脇腹の鎧にヒビが入る。
やっ、やったの?
けれど倒れたのは阿修羅の方だったの。
胸から血を噴き出しながら自らの血で染まった床にゆっくりと倒れたの。
「やはり俺を倒すほどでなかったな?」
鈎蛇王は倒れた阿修羅に接近して来る。
鈎蛇王にとって、その首を斬り落として初めて己の勝利を得る習わし。
なんて律義過ぎるわよ!
「阿修羅ぁ!立って!立つのよ!」
けれど阿修羅は足に力が入らないみたい。
「あっ!」
阿修羅の足の健が切られ膝を割られていたの。
そんな!!
今、私が飛び込んでも力及ばないし足手まといになるのは自覚してる。
孫悟空達も交戦中で救援には間に合わない。
このままじゃ阿修羅が!
「お前の血を俺に捧げよ!」
鈎蛇王が阿修羅の首元目掛けて大剣を振り下ろす。
「あ、あぁぁ」
私はその場で起きた状況に言葉が出なかった。
う、嘘?そんな馬鹿な・・・事って!?
鈎蛇王の振り下ろした大剣が床に突き刺さり、その場に阿修羅の姿は消えていた。
あの一瞬で何者かが阿修羅を移動させたの。
そして阿修羅が離れた場所に姿が現れる。
「き、君は?」
阿修羅も自分を助けた者を知っている。
けれど有り得ないの!
アイツが現れるはずないのだから!
だって彼は間違いなく死んだはずだから。
すると彼は口を開く。
「僕を殺した君がこんな簡単に死ぬのは見ていられなかった。君の実力はそんなもんじゃないよね?それとも僕の買い被りだったかい?」
その声は私も知っている。
彼は、
「黄風魔王!!」
阿修羅との一騎討ちで死んだはずの嶺黄風国の黄風魔王が私達の前に現れ、敵である阿修羅を救ったの。これはどういう状況なの?
そんなこんな。
次回予告
阿修羅との戦いで消滅したはずの黄風魔王が再び?
敵か味方か?