またまた大問題?何が起きるの?晴明師匠?
坂上田村麻呂は座主の守護者であり、
全ては法子達を育てるための修行もあった。
だが、これは次の事件への序章だった。
私は法子。
私達は魔界と現世を繋ぐ厄介な穴を塞ぐ任務を終えて、落ち着く暇なく総本山へと戻ったの。
総本山に戻った私達は五重塔の最上階、座主様の前に拝謁していたの。私も座主様に直接お会いした事はなく緊張していた。座主様は結界の張られたカーテンの向こう越しに気配でいるのが解る。
座主様ってどんな方なのかしら?
相当な権力者って話だけど?興味津々だわ!
此方には晴明師匠と坂上之田村磨呂さんに、私と宮ちゃんが控えていたの。
「座主様、例の穴の調査より只今戻りました」
坂上田村磨呂さんは普段のキャラとは売って代わり、真面目な様子で調査内容を述べる。
『フム。では晴明よ?お前の見解は?』
次に晴明師匠が述べる。
「間違いなく時限の穴で間違いないでしょう。既に穴は塞ぎ、再び開く事はありません。穴より現れた気配を探りましたが、あの二人の悪魔以外の異種の者の気配はありませんでした」
『そうか。なら、もう問題はないのだな?』
これで、問題解決かな?
そう思った時に、晴明師匠は真面目な顔で答えたの。
「あの穴を作りし者に一人心当たりがあります」
『なぬ?心当たりとな?』
「はい。もし私の知る者でしたら、恐らく近々恐ろしき事態が起ころうとしている前触れかもしれません」
「!!」
晴明師匠は過去に対峙した呪術師が同じ穴を作ったと伝えたの。
若き晴明師匠はかつて新宿に起きた大きな戦いに、別の任務で動いていたの。
それは座主様でなく卑弥呼様からの特別な任務で、時の穴を作りし呪術者を捕らえるか、倒すように命じられたそうなの。しかし、晴明師匠はその者を取り逃がしてしまった苦い経験があったと…
更に、それから数年先に中国にある遺跡調査にて、再びその者を見たと!
『お前ほどの者が二度も取り逃がすとは?』
「その者はかつて日本国を裏で操り、その時代を戦乱へと導きし呪術者」
『その者はモノノケの類いか?』
それも、その時代から生きてるなんて、化け物か仙人?
少なくとも人間のはずは?
「私の知る限り、その者は人間です。但し…」
『但し?』
「時を移動する能力者のようです!」
『時を移動だと!?』
私でも知ってるわ!様々な能力者が世に存在するのは仕事がら知っているけど、時を渡る能力は神々の中でも禁忌とされてるの。それを人間が使っていると言うの?しかも世に災いを呼ぼうとしているなんて?
『だが、晴明!お前なら次は必ず捕らえる事が出来るのだろう?』
「………」
しかし晴明師匠は重い表情で返答をしなかったの?
それって、どういう意味?
そして次に晴明師匠が告げる言葉に、その場にいた全員が固まったの。
「あの者は…」
『錬魂の雫を持っています』
騒然とする中で、私は一人状況が解らずにいたの。
だって?
錬魂の雫って何よ?
錬魂の雫とは香水のような入れ物に入った真っ赤な雫。それは人を人でないモノにする禁薬。しかも、それを口にした者は忌まわしくも恐ろしい能力を手に入れてしまうの。
その能力とは?
神の力を無効化させ、神を殺すの!!
しかし、錬魂の雫の能力は誰もがその能力を手に入れられるわけでないの。数千?数万?それ以上の確率で、その力を手に入れた者達はこう呼ばれたの…
『カミシニ』と!
待って?待って?
また解らない言葉が出て来たわよ?何よ?カミシニって??
ハッキリ言って私だけ茅の外?ちんぷんかんぷん?解りやすく誰か説明してよ?
説明します。
実は私が産まれるより前に、東京で起きた大戦があったんだって!それはヤオヨローズと呼ばれる日本国の神の転生者達と、その神を殺すカミシニの大群が生き残りをかけた戦いがあったの!それは熾烈を極め、この総本山からも指折りの猛者[当時の五重塔を守護していた四人]までも出向く程だったの。正に生存をかけた戦い!
戦いの結末はカミシニの王を特殊な封印で拘束し、犠牲が多くも神の転生者側が辛うじて勝利したの。
で?
その戦いが再び日本国で起ころうとしているわけなのね?
でも、それって不味くない?
「よく解らないけど、戦争が起きるんですよね?今、日本でそんなの始まったら大パニックよ?」
「それなら安心するんだな?ちゃ~んと策があるぜ?お嬢ちゃん」
私をお嬢ちゃんと呼ぶのは坂上田村磨呂さん。
「策って何ですか?」
その策とは、戦場をすっぽり結界で覆ってしまおうって事らしいの…
…って、そんな事が本当に出来るの?
「俺も実際は見た事がないけどよ?前回の戦争はそれで凌いだらしいぜ?あはは!どんなもんか楽しみだ!」
楽しみって…
そんな余裕かましていて本当に大丈夫なのかしら?
「法子。本当に安心して大丈夫だ。過去にあった数々の大戦もその結界で難を凌いで来たのだからな」
えっ?数々?大戦?
そんな事が何度も起きてたの?歴史の教科書にも載ってないような戦争が?
その結界は座主様と卑弥呼様の承認された時にのみ発動を許された超結界なんだって…
「やろうと思えば日本全土を覆う結界らしいぜ?俺もまだ見た事はないがな?あはは!」
そんな大掛かりな結界があるなんて、ビックリだわ!
天地大結界の中は異空間になっていて、リアル世界とは写し鏡のような世界なんだって?
唯一違うのは一般人のみ存在しないって事。
「それなら思いっきり暴れられるわね?」
その時、全員が私を見て固まっていたの?
えっ?何?
私、今何か変な事言った?
「何でお前が乗り気なんだ?法子?」
坂上田村磨呂さんの言葉に周りの皆も頷いた。
えっ?えっ?
ちょっと?ここまで話を聞かせておいて、のけ者にするつもり?
「嫌よ!私だって戦えるわ!ここで引き下がったら女の子が廃るってもんよ!」
「しかし、この件は荷が重すぎる。法子?我慢しなさい!」
晴明師匠の言葉に私は駄々を捏ねる。
「連れて行ってくれなくたって良いもん?私は一人でも行くからね!」
困り果てる皆に、
「力不足だって言ってるんだよ!」
「んまっ!何ですって!?」
「この件はカミシニって連中が絡むって言うじゃねぇか?カミシニにはお前の使う術も霊力だって無効なんだぞ!」
「そんなの、ヤってみなきゃ解らないわよ!」
この坂上田村磨呂さんは口が悪い!頑張るつもりの乙女に、何て言い草!酷すぎるわ!少し力が強いからって、もう少し女の子に…むしろ私に気遣いってものはないの?
流石に諦めるしかないと思った時、田村磨呂さんが思いがけない話を続けたの。
「そう言えば俺の案件で雑魚だがカミシニを討伐する任務があったな?そんな雑魚を相手に手こずるようなら、このデカイ話じゃ無駄死に決定だ!」
ん?それは、つまり?
「!!」
「解ったわ!そのカミシニを私が倒したら連れて行ってくれるの?その大きな戦争に!」
「田村磨呂?君は!」
晴明師匠が止める間もなく私はもうヤル気スイッチが入っていたの。
こうなった私は誰にも止められないわよ?
「仕方あるまい。なら言い出した田村磨呂!君が法子君の付き添いだ?」
「任せろよ?」
そして私は一足先に準備のために五重塔を降りたの。
静まり返る残された塔の部屋に、
「で?どういうつもりなんだい?田村磨呂?」
「お怒りは承知ですよ?座主様?しかし、あんまり過保護に育てていたら、せっかくのダイヤの原石が石コロのままだと思ってね?あの娘…磨けば光るぜ?」
すると、座主様…は、カーテンから抜け出して来て田村磨呂さんの胸ぐらを掴むと、
「まさか?お前、法子にちょっかい出すつもりじゃないだろうなぁ~?」
怒り形相の座主様…
それは実は私も知らないのだけど、座主様の正体は実は私のお父さんなの。
「父親として…いや、座主として…法子には絶対に手を出させんぞぉおお!」
「大丈夫~大丈夫ッスよ?俺はガキンチョに興味ないっすから~マジで?あはは!」
「本当に本当だろうなぁ?お前のタラシは有名だからな?もし万が一何かしたら…」
『俺がお前を始末する』
「あはは…マジに目が怖いいッスよ?完全に座主様としてでなく父親入り過ぎだから~マジで?」
ヤレヤレと晴明師匠が二人のやり取りを見て割って入る。
「確かに法子には実戦経験が必要です。田村磨呂が付いていれば問題はないと思われます。座主様?」
「お前が…そういうなら…うむ。座主として…認めよう。だ・が・な?」
「しつこいッスよ~?座主様~」
そんなこんなで私は坂上田村磨呂さんと新たな任務に向かうのでした。
………えっ?
男女二人で心配?
ありがとー!
でも大丈夫よ?
私と坂上田村磨呂さんの他に、坂上田村磨呂さんの彼女の鈴鹿御膳さんも同行する事になってるからね?
そんなわけで、またまた新たな展開に胸が躍るわ!
そんなこんな。
次回予告
法子は坂上田村麻呂とカミシニのいる地へと向かう。
そこで、何が待ち構えているのか?