君の全ての罪を僕が背負う!
蛇神工場にて戦いが始まろうとしていた。
四海龍王の赤龍王、白龍王、黒龍王が心強く登場!
私は法子
私達にまさかの援軍?
それは龍神界で私達と激闘を繰り広げた四海龍王の赤龍王、白龍王、黒龍王だったの。
はっきり言ってこれ以上頼りになる相手はそうはいないわ!
昨日の敵は今日の味方とはこの事ね?
「私達は捕らわれた人達を助けに向かうわ!」
沙悟浄と玉龍君が頷く。
眠りについた阿修羅を白馬の姿に変化した玉龍君の背中に乗せ、私達は先に霊体を飛ばして見た貯蔵庫・・・捕らえられた人間達を監禁している場所へと向かったの。
私達が走り去る姿を見て蛇神達が追ってくる。
「ひぇええええ〜」
そこに白龍王さんが私達を庇うように蛇神達の道を塞いだの。
蛇神達は目の前の白龍王さんに襲いかかる!
「お前達は私に触れる事も出来ん!」
白龍王さんの両掌に気流が巻き付くと、凝縮した龍気が白く光る。
「爆砕風流掌」
蛇神達の攻撃は白龍王さんの間合いに入った瞬間、弾き飛ばされ粉々になって消滅する。これは孫悟空を苦しめた白龍王さんの奥義ね?白龍王は拳法の達人で龍気と風気を融合させる事で全ての攻撃を寄せ付けず触れたモノを竜巻に乗せて弾き飛ばすの。
そして私達が貯蔵庫への道を抜けたのを見届けると、気を放って通路の道を崩して塞いだの。
「さて、私を倒さぬ限り此処から先には一匹たりとも行かれないよ」
更に蛇神達が突然地面に押し潰される?
「アハハハ!押し潰されろ!」
黒龍王さんの重力を操る力で蛇神達は身動きを取れずに潰されていく。
「ん?」
黒龍王さんの視線の先に重力圏内の中で平然と立っている蛇神がいたの。
「龍の一族か?下級の蛇では相手にもならないか?もう少し質を上げて生産しないとな。今後のためにも参考になった」
それは部長と呼ばれる蛇神だったの。
「出荷の邪魔をして私の評価を下げやがって!お前も戦えよ?」
「分かっております!」
更に課長と呼ばれる蛇神が主任に命じる。
「どうやら少しはマシな奴がいるようだな?」
赤龍王の視線の先に、先程から状況を見ながらまったく動かずに殺気を向けている蛇神がいたの。
どうやらこの工場のボス?
工場長ね!
「出荷の前に良い質の素材が見付かった。アレは龍王か?龍神界から外界に降りて来るとは素材集めにわざわざ龍神界まで攻め込む手間が省けたと言うもの。今回の出荷の遅れは奴等を手土産にすれば元が取れるな」
すると工場長の姿が鎧を纏う蛇神へと姿を変えていく。
けれど蛇神にしては少し異質な?
「ぐふぅ〜」
その姿は龍と蛇の融合した化け物に!?
「我が同族を喰らって力を得たか?許さんぞ!この赤龍の王である俺が直接葬ってやろう!」
そう。
今回の戦いに龍王である三人が出向いたには理由があったの。
それは蛇神復活に偵察に送った龍神の兵士が戻って来なかったから。その偵察のリーダーである将軍は赤龍王さんが片腕として見込んでいた。
実力も龍王補佐として申し分ない強さだったはずなのに戻っては来なかった。
龍神族は知っている。
蛇神族は人間だけでなく天界の武神や龍族でさえ餌として喰らって、新たな強力な蛇神の兵士として作り上げている事を!だからこそ三龍王は龍神界から降りて来たと言うの。
「お前から龍神族の匂いがする。お前らの穢らわしい蛇の血に混ざってな!」
「ん?この身の素材になった龍族の事を言っているのか?ふふふ。お前ら龍族は優れた上級品だ。我ら蛇神の餌としてだがな!」
「返して貰うぞ!我が龍族の血を!」
赤龍王さんの身体から炎が噴き出して燃える龍が出現する。目の前の全ての敵を喰らう灼熱の龍が!
場所は変わる。
私達は貯蔵庫へ進む通路に侵入すると、そこは耐え難い異臭が漂っていたの。
「霊体の時は気付かなかったわ」
先に沙悟浄がくれた蛇毒血清薬の飴玉を食べていなかったら毒に侵され気が狂っていたかも。
「それにしても地獄絵図ですね」
沙悟浄も蒼褪めながら身体を凍らせていたの。
中は血が床を湿らせ、何体もの骸が転がっている。
人間、動物?神族から妖怪、蛇神のまで。
「悍ましいわ・・・」
私達は鼻と口を布で覆いながら奥へと向かう。
この先には蛇神の雌が玉子を産み続けていたはず?
どうやら蛇神の雄は戦う兵士として重宝され、雌は種族を増やすための道具に使われているのかしら?
しかも産めなくなれば餌にされるなんて・・・
女性差別よ!
ん?けど戦いに参加されるのも嫌よね?
私達は恐る恐る中に入る。
「えっ?」
私は殺気に気付くと同時に飛び退く。
そこには見上げるほどの大蛇が私を見下ろしていたの。
「お腹空いたわ〜人間の生肉を食べたい・・・食べたいのよ〜!」
卵を産んでいた雌の蛇神達は騒乱に乗じて暴れ出して拘束具を破壊し、命令していた雄の蛇神達を襲って暴れ出したの。更に雌の蛇神同士で共食いを始めて生き残った化け物が私達の目の前に・・・嘘?
雌の蛇神は雄の蛇神よりも劣っているわけじゃなかった。ただ本能に忠実かつ破壊衝動を止められない化け物になってしまうの。
「とんでもない蛇気だわ」
この場には私と沙悟浄に玉龍君。
それに眠ったままの阿修羅だけど、起こしたら必ず無茶して戦うに決まってるわ!
「ここは私が戦うしかないようね!沙悟浄は私の支援よ?」
「あわわ〜あ、ハイです!」
私と沙悟浄は術札を構えると雌の大蛇向かって投げつけたの!
術札は空中で爆発して砂埃が舞う。
「うぐぐ、ど、何処へ消えたぁああ?喰わせろ〜お前達の生肉を喰わせろ〜」
とんだ肉食女子よ!
私達はドサクサ紛れに隠れて息を潜む。
さて、どうするかな〜?
はっきり言ってあんな化け物を倒す程のダメージを与える手段はないわ。耐久性、防御力、どれを取っても私達の攻撃力では傷を付けられても直ぐに再生されてしまう。
「法子さん、どうしますか?」
「今、考えてるところよ!」
大蛇は私達を探しながら這いずり回ってる。
気を探る能力はないの?
嗅覚だけで探しているようね?
「あの化け物に気付かれないように捕らわれた皆を救出するのは無理があるわね?助け出しても結局ここしか道がないから戻って来たと同時に襲われちゃう。孫悟空とも連絡取れないし、龍王の三人が外の敵を倒した後に助けて貰おうかしら?」
「そんな事より大至急お伝えしたい事があるのだが?」
「そんな事よりとは何よ!」
「そんな事よりはそんな事よりですよ!美猴王が大変なのですよ!御友人」
「えっ?孫悟空が?どう言うこ・・・事?」
えっ?
「ぎゃあ、むぐぐぐぅ!」
私は危なく悲鳴をあげる所を沙悟浄と玉龍君に口を塞がれて黙り込む。
「有難う。もう大丈夫よ?」
私の前には知らぬ間に砂塵魔王の上半身が宙に浮いて話しかけて来たから。
「あんた、いつの間に?」
「俺は身体を砂化させられるゆえ、洞窟の隙間を渡ってお前達の気を探しながら此処まで辿り着いたのだが?」
「!!」
色々細かい所にツッコミ所たくさんあるけど、
「孫悟空がどうしたって?」
砂塵魔王の説明では突然意識を無くして起きなくなってしまったとか。今は砂塵魔王が作った結界の中に八戒と一緒に蛇神城の何処かに潜んでいるとか。
で?
とりあえず私への報告に砂塵魔王が来たの。
「では、俺は心配ゆえに美猴王のもとへ戻るとしよ・・グッ」
私は砂塵魔王の首元を掴み戻るのを止めたの。
「あんた良い所に来たわ?本当にグッドタイミングよ?マジにさ〜」
「は、離さんか?うぐぐ、お、俺に何をさせるつもりだ??」
私は顔を近付けて威圧する。
「本当に助かるわ〜!私困ってたのよね〜?大ピンチだったわけなの。私に何かあったら孫悟空が悲しむわよ?友達が困っていたら助けてあげるのがお友達よね?貴方お友達でしょ?だってら私の下僕に・・・じゃなくてお手伝いしてくれても良いわよね?そうすれば孫悟空も貴方を見直すわよ?」
「ほ、本当か?だったら私はお前を助けるべきなのだな?そうか、そうか!そうなのか〜。なら俺は何をすれば良いのだ??」
ふっ、ちょろいわ!
私は指さして頼んだの。
「あんたが友達としての役目はアレ!あのへと神を倒してちょうだい!」
「心得たぁー!!」
砂塵魔王は単身飛び出すと見上げるほどの大蛇の目の前に臆する事なく現れたの。
「なぁ〜んだ?お前は?食べて良いのか?良いのだな?食べたぁあああいの!!」
大口を開き喰らいつく大蛇に砂塵魔王は身体を砂化させて竜巻を起こし躱す。
「この砂塵魔王!友達のためにお前を倒す!」
一難去ったわ〜
これで私達は捕らわれた人達を救いに行けるわ。
砂塵魔王に大蛇を任せて私達は先へと向かう。
そこはこの洞窟の更に奥にある貯蔵庫。
そこに捕らわれた人達がいるの!
私は急ぎ足で向かう。
血の匂いと異臭が漂う中を駆け込み、障気を抜けた所で私達は遂に貯蔵庫へと侵入出来たの。
「酷い!!」
私はそこで捕らわれた人達を見付けた。
全員女性で裸の状態で身体を拘束されている。
男性は、恐らく既に・・・
生存者は多く見て二百人足らず。
散らばっている肉片が「餌」として集められた事を意味していた。捕らわれた人達は皆恐怖で言葉を発する人は誰もいなかった。心が恐怖でもぬけの殻になったかのように。そこで私は叫んだの!
「瑠美ちゃーん!」
瑠美ちゃんは嶺黄風国の女の子。
彼女も連れ去られたはず。
お願い!生きていて!
私は沙悟浄と玉龍君と手分けして探し回る。
けれど・・・
私は涙を流しながら膝をつく。
嶺黄風国には瑠美ちゃんの他にも沢山の子供達もいた。
「嶺黄風国の人は誰かいませんか?」
私が叫びながら呼びかけると、一人の女性が手を挙げたの。
「あんたは確か・・・?」
その女性からは半人半妖の気配がする?
間違いなく嶺黄風国から連れ去られた住人だわ。
私は状況を聞く。
「大丈夫ですか?」
彼女は全身震えながら私に答えてくれた。
半妖である事で普通の人間よりも精神が強かったから意識が辛うじて残っていたみたい。
嶺黄風国から連れ去られて来た人達や他の国から連れ去られて来た人間や妖怪と一緒に直ぐに選別されたらしいの。それは餌になるか蛇神へ転生させられるかどうかで。そして女は蛇神を大量に産み出すためにこの場所へ連れて来られたの。既に殆どの者が蛇神化して連れられて行った。外の雌の大蛇も元は連れ去られた人間から蛇神化した姿なのだろう。
「とりあえず、この場から逃げましょう!」
私は怯えて動けないでいる女性達に大声で言葉をかけたの。これで救われる?そう思った瞬間、女性達は歓喜で突然叫び出したの?
「えっ?えっ?何?何が起きてるの?」
すると沙悟浄と玉龍君の悲鳴があがる?
「どうしたの?二人共?」
その直後、私の目の前で捕らわれていた女性達が見る見る蛇神化していくの。
「ど、どうして?」
もう全てが手遅れだった。
連れ去られて来た時には既に体内に蛇を仕込まれ、何かがキッカケで蛇神化してしまう。
私は沙悟浄と玉龍君を自分の所に呼ぶと蛇神化していく二百体の女性達からゆっくりと退く。
「の…法子さま〜」
「あわわ〜」
「二人共、とにかくこの場から逃げるわよ!」
私達は音を立てずに静かに後退する。
僅かな刺激で奴等は襲い掛かって来るから。
出来る事なら、人間だったの彼女達を自分の手で始末したくない・・・
彼女達は・・・
「法子様?」
玉龍君が私の名を呼ぶ?
気付くと私は足を止めていたの。
そうね・・・
自分の手を汚したくないなんて笑えるわ!
彼女達を救えなかったから?
同情で見捨てるの?
このまま放置したら新たな蛇神を産み出し、そして産まれて来た蛇神は人間を攫って来ては同じ悪夢が繰り返される。これはもう負の連鎖。
誰かが自分の手を汚さないと駄目なの。
「だったらその連鎖を私が断ち切るわ!」
私は金の錫杖を手首の籠手から出現させると新たに誕生した蛇神に向かって行こうとする。
「!!」
けれど決意した私は止められたの?
「法子、君が手を汚す事はない。僕の手は既に汚れている。だから僕に任せて」
それは目覚めたばかりの
「阿修羅?」
その直後、私は首元に衝撃を受けて意識が遠退く。
倒れる私を沙悟浄と玉龍君が支えると、
「二人共?法子を頼む」
「あ、は、はい、」
阿修羅はその手を血に染めに向かう。
私がやるべきはずだった罪を背負うかのように
「君の全ての罪を僕が背負う。そのために僕は君の前に現れたのだから」
阿修羅の呟く声が口元の動きで見て取れた。
それって?どう言う意味?
完全に意識が無くなった時、
阿修羅は容赦無く蛇神を手にかけていく。
あ、あしゅら?
でも、
貴方は何故私を守ってくれているの?
何か特別な意味があるの?
そんなこんな
次回予告
赤龍王、白龍王、黒龍王が蛇神と戦う!
この戦いはまだ始まったばかり!