どうしよぉ?開かない扉と芭蕉扇の使用方法?
鵺と百獣王との爆裂バトル!
急がないと孫悟空と阿修羅が・・・
私は法子
本当に本当にもう駄目ぇ〜
って思った時に、天井を突き破って突っ込んで来た乱入者が鵺をぶん殴ったの!
って、鵺は十二人の神将の妖気を身を守る結界にして守られていたはずよね?だから私達は一撃を与えるために苦労してたわけよね?
なのに結界なんて無いものみたいに直接鵺をぶん殴ったってどういう事なの?
百獣王さん!!
鵺は殴られた頭を振りながら涙目で百獣王さんを睨んで驚いていたの。
鉄扇ちゃんや白骨乙女さんも目を丸くしている。
「なぁ?誰だよ?あいつは?」
紅孩児君でさえ動けないでいたの。
私と八戒は彼の事を知っているからこそ、もう本当に泣きたいくらい喜んでいる。
「法子はんが呼んだらか?」
「そうよ!」
あの百獣王さんとは?
孫悟空と阿修羅、紅孩児君のお父さんの牛角魔王さんに私達の視線の先にいる蛟魔王さんと同じく、現世地上界を統べる大魔王の一角!
移山大聖・獅駄王!
今は百獣王と名乗ってるらしいの。
以前、旅の途中で百眼魔王と三魔王を討伐の際に助けて貰った事があるのよ。
「な、何なんにゃ?お前は誰にゃ?我輩に手を出すのは勿論、この干支宮殿の試練最中に部外者が入り込むなんて絶対に出来るわけないにゃー!?」
「あん?」
百獣王さんはどうやら理解してないので蛟魔王さんが仕方無しに説明する。
「そいつの名は私達の駒に記されているだろ?」
「にゃに?」
そうなのよ。
百獣王さんも蛟魔王さんと同じく玉龍君に助っ人をお願いするようお使いに頼んでいたのよ〜
「ナイスタイミングだわ!遅いくらいよ!」
正直、蛟魔王さんは来てくれるか微妙だったけれど、この百獣王さんは強さを求める喧嘩戦闘馬鹿だから、誘えば来てくれるとは思ってはいたけど。
「めちゃくちゃ強い奴と戦いたくない?興味あったら私の所に来て?好きなだけ戦わせてあげるから」
って手紙を持たせたのよ。
「しかし時間内に現れなければ呪い死ぬはずにゃ?どうして生きているにゃ?」
「少なくとも第二宮殿辺りから、この宮殿の結界内には来ていたのだぞ?それが十二宮殿まで登って来るのに時間かかり過ぎていてようだがな?」
「た、確かに宮殿の結界内に入っていれば呪いはないにしろ、しかしこ最上階まで走って来たというにゃか?ここ[最上階]までどれだけあるか分かっているにゃか?一万キロ以上はあるにゃよ?それをこの短時間で走って来たのにゃか?不可能だから一宮殿毎に転移してたにゃよ??」
「だから遅れたんだろ?」
当たり前のように答える蛟魔王さんだけど、私は驚くのはもう無駄で疲れるだけと分かっていたの。この百獣王さんは義兄弟達からも過去に何度も驚かされてばかりだったから。
「どうでも良いが、コイツ[鵺]倒して良いよな?俺俺の獲物だぞ?他にはやらんぞ?」
百獣王は鼻息荒く私達に叫ぶ。
「勝手にしな?」
蛟魔王さんが答えると百獣王さんは鵺に向かって無防備に突っ込んだの!
「さっきは油断しただけにゃ!」
鵺もまた受けて立とうとした時、百獣王さんは結界を軽々とぶち破り直接鵺の身体へ拳を数発埋め込んだの。血を吐く鵺。
「うがぁ!馬鹿な・・・結界だけでなく猪牙の強固な身体を突き破るなんて・・・」
更に容赦なく蹴り飛ばされる。
そんな戦いを紅孩児君は、
「あんな化け物がいるなんて?父上と同じ?信じたくないが父上以上の威圧感を感じるぞ?」
「アイツは六大妖魔王最強だからな?」
「!!」
それは蛟魔王さんよりも紅孩児君の父親の牛角魔王さんよりも強いって事なの?
「まぁ〜馬鹿だけどな」
少なくとも肉弾戦で百獣王さんには勝てない事を意味していたの。
ショックと同時に強さへの渇望が紅孩児君の闘志を震え上がらせる。
「あはは。孫悟空はこんな奴らと一緒にいたから強さへ歯止めがなかったんだ。確かにこんな奴らが傍にいたらもうここまでで良いなんて思えないよな。俺様は足りない。全然足りなすぎるぞ!」
その目は輝いていたの。
「馬鹿な・・・??何だコイツは?何なんだ?」
「俺俺は百獣王だぞ?さっき名乗ったぞ?」
「そうじゃないにゃ!何でこんな強い奴が存在するかと言ってるにゃ!我輩は千年前の指折りの十二体の魔王の力を手に入れた最強の大魔王にゃんだぞ??」
「そうか?だったらお前は大した事ないそ?」
「何でそうなる?」
「だって俺俺は百獣の王!十二体程度で百獣に敵うわけないだろ?」
「わけわからんにゃ〜!!」
鵺の身体から凄まじい雷が放電し闘技場に降り注がれる。
「あっ!」
力尽きていた私達に結界が張られて守られる?
「蛟魔王さん?」
それは蛟魔王さんの張ってくれた防壁だったの。
「も〜う!助けてくれるなら最初から助けてよ!」
「ふん!甘えるな」
も〜う!
そんな事より百獣王さんは?
鵺から放たれた放電は凝縮しながら弾丸となって百獣王さんに直撃し感電させる。
「うぎゃあああ!」
更に床を伝う電流が伸びて糸のように絡み付いて来たの。
「そのまま感電死にゃ!」
鵺から止むことのない雷が放たれ全て百獣王さんに命中してしまったの。
「嘘?このまま負けちゃうんじゃ?」
「そんなヤワな奴なら私らの義兄弟にはなれんよ」
「えっ?」
雷に全身を焼かれつつ百獣王さんは一歩一歩鵺に向かって足を運ぶ。
「何にゃ?化け物かぁ??」
百獣王さんの強さは獣神の破壊力以上に、その頑丈さらしいの。更に言えば八戒並の再生力の持ち主とか?まさに無敵頑丈怪人なの!
「うぐぐ!このビリビリ邪魔だぞ!」
しかし鵺の雷は百獣王の身体を麻痺して簡単には動けずにいたの。
「主君、俺をお使いください」
それは百獣王さんにのみ聞こえる声だったの。
「ん?お前は?」
「お忘れか?俺は主君に魂を預けし魔獣。あの者の雷術を払ってみせましょう」
「そうか?なら頼むぞ?」
その時、百獣王の身体からオーラが飛び出したの。それは二体の獣。大虎と獅子の獣!
その二体は合体すると雷と化して百獣王へと同化したの。直後、鵺の雷を弾き飛ばす。
「おっ?思い出したぞ!お前、確か・・・」
「雷牙!」
雷獣王雷牙とは三百年前に孫悟空達義兄弟を苦しめた大魔王なの。二体の大魔王の合成妖怪でその実力は転生前の孫悟空を震え上がらせる程。最後は百獣王さんが一騎討ちにて倒したらしいの。その後、雷牙の魂は百獣王さんを主君として聖獣となったの。
雷牙の聖獣は百獣王さんに纏われると獅子と大虎の合成した鎧を装置していたの。
「ウゴォ、うごぉおおおお!!」
百獣王さんの身体から妖気に満ちた雷が発散して鵺の雷から呪縛を解き放ったの。
「何にゃ〜??あの雷は何にゃ〜??」
百獣王さんの聖獣雷牙は名前の通り雷を操る魔王だったの。しかも二体の魔王級の雷を融合させた上に百獣王さんの桁違いの妖気が上乗せされて信じられない力を発したの。
「うごぉおおお!」
「にゃああああ!」
互いの雷を衝突して弾け、轟音とともに火花が散る。それはもう私達には近づけない領域。もし蛟魔さんの結界がなければ私達は黒焦げだわ?
雷の力は互角だわ・・・
けど、やっぱりだわ!
「うぎゃあああ!」
悲鳴をあげたのは鵺の方だったの。
鵺は全身に百獣王さんの拳や蹴りが命中し悶絶しながら血反吐を吐く。鋭い爪や強固な身体、それに十二体分の妖力を手に入れたとしても、それは仮初めの力と同じ。魔王達自身が長年培って手に入れた膨大な能力を、ついさっき手に入れた者が使いこなせなくても仕方ないの。
百獣王さんは素早く強烈な攻撃を繰り出しては鵺の身体をサンドバッグにする。
「ふぎゃあぇええ!」
鵺の身体から生気が消えて、直ぐに再生する。
そう言えば十二個の魂があるのよね?確か?
最初は反則かと思ったけど少し同情するわ・・・
既に半分死んでるのよ?
鵺の奴!
それだけ百獣王さんの力が異常なの。
いやもう出鱈目よ!あの強さは!
「ぜぇはぁ・・・」
息を切らして消耗する鵺は百獣王に恐怖すら感じていたの。
「お、お前は何にゃー!?何なんにゃ!!」
鵺の言葉に、
「俺俺は百獣の王だ!お前程度では俺俺は倒せんのだぞぉ!」
自信満々に答える百獣王さんに鵺の怒りは頂点に達したの。
「こうなれば我輩の奥の手を見せるにゃ!」
「おっ?楽しませてくれるのか?」
鵺の身体から妖気が更に高まり大技を繰り出す。
「雷獣咆哮!」
鵺から吐き出された雷が躱す間もなく百獣王さんの身体を貫いたの!
「ぐぎゃあああ!」
百獣王さんは腹部を貫通されて血を吐く。
「このまま跡形もなく消し去ってやるにゃー!」
再び充電される雷は槍と化して百獣王さんの逃げ場を奪い、肩やふくらはぎを貫く。
「グルルル!」
百獣王さんは危機的状況にも関わらず笑みを見せていたの。相手が強ければ強いほど百獣王さんは更に妖気を増して、肉体が活性化していく。
うそ?まだ強くなるの??
そして向かって来る鵺の雷槍をくぐり抜ける百獣王さんは更に速く、本人が雷の如く突っ込む!
「なぁっ?何て奴にゃ〜!?」
既に間合いに迫る百獣王さんは牙を剥き爪を光らす。その殺意が鵺の身動きを止めたの。
「こ、こわいにゃ・・・」
恐怖で動けない鵺の身体が一瞬で串刺しになり八つ裂きにされたの。
けれど鵺は再生を繰り返し蘇るわ!
「やれやれ。そろそろ飽きたな?」
蛟魔王さんは観戦している鉄扇ちゃんを呼ぶ?
「そこの赤い娘」
「えっ?何?私?」
突然呼ばれた鉄扇ちゃんは意味も分からずに蛟魔王さんに恐る恐る近寄る。
「な、何よ?私に何か文句あるの?」
「そう恐れるな?」
「恐れてなんかないし!」
「それよりお前の芭蕉扇を出せ!」
「なぁ?何でよ??」
奪われるかと思い抵抗しようとすると、
「早く出せぇ!」
「えっ?あ、はい!」
蛟魔王さんの威圧感に負けて素直に芭蕉扇を出したの。
でもどうするつもりなのかしら?
「だけど私の芭蕉扇は私以外に扱えないわよ?」
「無論、知ってるよ!私はただ・・・」
ただ?
「ソレの使い方の一端を教えてやるだけだよ」
「えっ?芭蕉扇の使い方を?」
すると蛟魔王さんは鉄扇ちゃんの背後に立って肩に手を置いたの?
「えっ!?」
蛟魔王さんを通して鉄扇ちゃんに力が注ぎ込まれると、手にした芭蕉扇が今迄にない輝きを放ったの。
「これは何?芭蕉扇どうなったの?」
「やはりお前は芭蕉扇の正体を教えられていないようだな?」
「芭蕉扇の正体ですって?」
蛟魔王さんが語るのは芭蕉扇が生み出された理由?
えっ?芭蕉扇って何か秘密あるの?
芭蕉扇の秘密。
それは今より千年より更に過去。
世界は窮地に陥っていたの。
世界が闇に包まれ崩壊するほどの!
って、何それ?
芭蕉扇の話から世界崩壊?
それは覇王の出現!?
覇王とは天地を喰らい神も魔も滅ぼす最強無比の存在だったの。覇王の脅威に神々だけでなく魔神、魔王、龍神族すらも力を合わせて戦ったの。
覇王と呼ばれる者は連合軍を寄せ付けず破壊の限りを尽くし世界を消滅させるかに思えた。
そこに現れたのが孔雀の姿をした光り輝く魔神だったの。
孔雀の魔神は半翼を覇王に引きちぎられ激しい戦いの末、覇王を封じる事に成功した。
しかし孔雀の魔神も傷付き身を隠したの。
その者の正体も分からずに。
唯一引きちぎられた半翼を残して・・・
孔雀の魔神は去る前に言った。
「再び覇王が現れたのなら、私の残した翼を使い封じるが良い」と。
神々と魔神達は残った半翼を封印の素材として使う事にしたの。
そして出来上がったのが芭蕉扇。
やがて長い年月の後、覇王封印に使う事もなく芭蕉扇は神々の宝物庫にあったのだけど、神々と魔王、龍神族との戦乱の中で回り回って羅刹女さん。そして鉄扇ちゃんの所へ行き着いたわけなの。
「芭蕉扇がその魔神の羽で造られたのは分かったけど、でっ?どうするわけ?」
「慌てるな。芭蕉扇は突風を巻き起こすだけではないって事だ」
「えっ?」
驚く鉄扇ちゃんに蛟魔王さんは背後から妖気を流して芭蕉扇へと語りかけたの。
「お前の力を使わせて貰うぞ!」
すると芭蕉扇から突風が吹き荒れたの!
それは今までの殺傷力に重点を置いた力とは異なる力を感じたの。
絡み付くような重く冷たい風?
その時、百獣王さんと鵺の戦いは壮絶になっていたの。殺される度に鵺の力はより強大に増していく中、百獣王さんはその更に上の強さで鵺の命を奪っていたの。
既に残りは二つ・・・
「何なんにゃ?こいつは??こんな奴は千年前の昔にもいなかったにゃよ?規格外過ぎにゃ!」
正直、鵺に同情してしまうわ。
命を幾つも持っているから、その分殺されて痛い目にあう。しかも相手は桁違いの化け物だし逃げ道はないわね。
「こ、こんなところで我輩の野望が消えてたまるか〜死んでたまるかぁ〜嫌にゃ〜!!」
突如、百獣王さんの目の前から鵺は逃げ出したの。
「嫌にゃ!嫌にゃ!千年も待ったにゃ!我輩は死にたくないにゃ〜!!」
泣き叫ぶも、この宮殿の結界からは逃げる事が出来ないのは鵺自身が教えてくれた事。
「なら我らの役に立つか?」
蛟魔王さんが悪そうな顔で提案したの。
「死にたくないにゃ〜」
もう情けない顔の鵺の選択肢は一つだった。
「宜しい」
蛟魔王さんが鉄扇ちゃん越しに妖気を籠めていた芭蕉扇に向かって叫んだの。
「芭蕉扇・魂縛」
すると芭蕉扇から煽がれた風は鵺の身体を拘束しながら妖気を吸い出す。そして魂魄にまで変えると芭蕉扇の中へと鵺を吸収してしまったの。
「何が起きたのよ?説明してよ!」
芭蕉扇の新たな能力に驚く鉄扇ちゃんに蛟魔王さんが説明したの。
「鵺をお前の芭蕉扇に封印したんだよ」
「そんな事出来たの?」
「更に鵺の力を芭蕉扇から使えるようになるのだぞ?とてもレアなアイテムだよ。だが主従の契約という条件があって出来る芸当だよ」
「そ、そうなの?」
まだ、ちんぷんかんぷんの鉄扇ちゃんに蛟魔王さんは更に驚く事を告げたの。
「お前はまだ芭蕉扇の力を二割程度しか使いこなしてないのだ。修行が足りん!」
「!!」
ショックで落ち込み座り込む鉄扇ちゃん。
「さてと」
蛟魔王さんがもう一つの厄介事に目を向ける。
「何処だぁー!何処に消えたぁ〜俺俺はまだ戦い足りないぞぉ〜!!」
百獣王さんが消えた鵺を探して妖気の雷撃を闘技場全体に降らしたの!
「・・・って、ちょっと!もう終わったのよ!何血迷ってるのよ!」
「あ〜なった奴は誰の声も聞こえんよ」
「嘘?どうするのよ?あんなの止められないわ」
「やれやれ」
蛟魔王さんは一歩前に進むと飛び上がり、百獣王さんの目の前に現れる。
「今度はお前かぁああ!」
蛟魔王さんに殴りかかる百獣王さんに蛟魔王さんが拳に龍気を籠めて思いっきり後頭部をぶん殴ったの。でもまだ正気に戻らない百獣王さんの頭を容赦なくぶん殴る!ぶん殴る!ぶん殴る!
「ふひゃ〜」
目を回す百獣王さんから妖気が収まっていく。そして目の前にいる蛟魔王さんを見て首傾げに答える。
「おっ?蛟?なんでお前いるのだ?」
「いつまで寝惚けてるつもりだ?」
「ん?俺俺は寝惚けてたのか?さっきまで喧嘩してた夢見て楽しかったような?」
「それは夢だ」
「そっか〜夢か〜良い夢だったぞ〜」
「そっかそっか良かったな?」
何か百獣王さんの扱い方に慣れてるのね。
あはは、助かったわ〜
すると宮殿の闘技場の結界が消えて私達は新たな場所へと転移されたの。
「ここは?そう言えば鵺が消えたから、これから先の事が分からないわ!願いが叶うのよね?でもどうやって?」
私達の前には巨大な扉がそびえ立つ。
「この扉の先に何かあるのかしら?」
「なら鵺の奴に聞けば良いだろ?」
「えっ?」
蛟魔王さんに言われて私達は困る。
「どうやってですか?蛟魔王さん?」
蛟魔王さんは鉄扇ちゃんに芭蕉扇を召喚させると、鵺を出すように命じたの。
「えっ?鵺が出せるの?」
意味も分からずに鉄扇ちゃんが唱える。
「いでよ!鵺!」
すると芭蕉扇から光の球が飛び出してヌイグルミみたいな鵺が姿を見せたの。
「ご、ご主人様。我輩鵺にゃ〜よしなに」
「お前、調子良いな?」
鉄扇ちゃんに睨まれて怯える鵺。
「とりあえず鵺に聞けば、これから先の事が分かるのよね?願いが叶うのよね?」
「そ、それは・・・」
「何なの?ハッキリしなさい!」
鵺が説明するには、
目の前にそびえ立つ巨大な扉には冥界に繋がる異なる世界があるらしく、そこには旧世紀の神がいるらしいの。そんな神様がいるなら、願いの一つや二つ何でも叶うんじゃねぇ?みたいな噂話が尾ヒレが付いて伝説になったとか・・・
「それじゃ願いは叶わないの?私達は何のために死ぬ思いして頑張って来たのよ!」
「噂は我輩のせいじゃないにゃ〜我輩が来る前から噂はあったにゃよ」
「とにかく扉をこじ開けないと話にならないって事ね?皆ぁ!」
皆は同時に頷く。
私達は最後の踏ん張りと扉に両手を付けて扉を押し始めたの。
あ、蛟魔王さんは見てるだけだけど・・・
けど、うんともすんとも言わなかった。
「はぁはぁ・・・」
私達は連戦続きもあって、体力の限界に達していたの。もう全身力が入らず麻痺していたの。これは霊力も尽きかけているの?だけど私達は意識なく今も苦しむ孫悟空と阿修羅を救わないといけないのよ!
けれどもう力が出ない
そこに蛟魔王さんが百獣王さんに向かって扉を開けるように言ったの。
あっ!百獣王さんなら、もしかしたら?いや!出来るわ!きっと!
「うごぉおおおおお!」
百獣王さんからとてつもない妖気が発して扉を抉じ開けようとするけれど、扉は1ミリ足りとも動かなかったの。百獣王さんの力でも無理なの?
「何か特別な儀式が必要なのか?」
蛟魔王さんが冷静に言うと、今度は沙悟浄を呼び寄せて扉の調査を命じたの。
って知らないうちに沙悟浄まで手懐けたの?
私より人使いが荒いわね?
何か・・・
参考になるわ!
沙悟浄は孫悟空と阿修羅の治癒を止めて扉の調査を始めたの。
「これは旧世紀文字で描かれていますね〜」
沙悟浄は扉の両脇にあった石板を解読しながら顔を青褪めたの?
「沙悟浄?何か分かったの?私達に分かるように説明してよ!」
「は、はい!」
沙悟浄は下を向いて答える。
「この扉は開きません」
「えっ?」
私は沙悟浄の説明に力が抜けて座り込む。
この扉は決して開かない?
開けば冥界から凶悪な化け物達が無数に現世に現れて世界は滅ぼしかねない。この扉は死の世界と生者の世界を分かつ扉。唯一この扉を行き来出来たのは天界の神々の中でも限られた最高神であり、冥界の王だった者らしいの。その最高神も今は消息不明らしく探す事は叶わないとか。
「だったら扉から出て来た化け物を全て片っ端からぶっ倒して冥界に送り返してやるわ!」
「無理だね」
「何でよ?蛟魔王さんや百獣王さんがいれば造作もないでしょ?孫悟空と阿修羅とは義兄弟なんでしょ?もう一度助けてよ!」
「あはは!私を買い被るな?冥界には私の力が及ばない連中がウヨウヨいるんだよ。そんな連中と戦うなんて命がいくつあっても足りやしない。まぁ〜奴は馬鹿だからヤりたがるだろうが私が止めるさ。私達の手で世界を滅ぼしたくはないんでね。それにお前が強行するなら私がお前を止める。どうする?」
「そ、そんな・・・」
完全に詰まったの。
絶望が襲う。
そもそも扉を開けれたとしても二人を助ける手段があるかどうかも不確定なのよ。
本当に私達に二人を助ける手段は残ってはいないの?
「なぁ?これは何らか?」
そこに八戒が気になる物を発見したの。
それは左右にある門の柱に刻まれた石板の下に彫られた紋章だったの。
「それがどうかしたの?」
「いや?何らか気になったらよ〜」
「八戒兄貴、それはこの宮殿の支配者だった太古の神の紋章ですよ」
「太古の神の紋章らか?」
「どういう事?」
沙悟浄が説明するには、その紋章は太古の神の物らしいの。その太古神とは旧世紀の支配者で始祖神と呼ばれてるんだって。
「その始祖神も、蛟魔王さんが話してくれた例の覇王によって滅ぼされたみたいです。この干支宮殿もそもそも始祖神の支配していた頃の宮殿らしいですね」
「まさか、こんな所で話が噛み合うなんて」
けど、だから何?
このままじゃ先に進まないわ。
「あんた何してるの?」
そこに白骨乙女さんがもう片方の扉の端で紋章を眺めている紅孩児君に気付いたの。
「ん?いや〜何かこの紋章見た事あるような気がしてな〜?あはは!思い出せないや〜」
その時、紅孩児君が紋章に手を触れた時に当然異変が起きたの?
紋章が突然光り輝き、扉が閃光を放つ!?
「えっ?」
紋章に手を触れた紅孩児君が扉から発した閃光と共に姿が消えていく??
「何が起きたらか??」
慌てる八戒に沙悟浄が答える。
「八戒兄貴・・・」
「何らよ?」
「の、法子様も消えちゃいました〜」
「な、何らってぇえええ??」
突如光り輝いた閃光と共に消えた紅孩児君と、私?
これはどうなってしまったの?
そんなこんな。
次回予告
消えた法子と紅孩児?
二人は何処へ?




