第七宮殿!猪と豚?不死の秘密と破壊神の称号?
鉄扇ちゃんの交代に次に現れたのは?
八戒だった。
私は法子よ!
第七の宮殿で行われてる戦いは城塞の破壊者と呼ばれる猪牙と八戒。
その戦いは追い掛け回す猪牙から涙を流しながら闘技場を逃げ回っていたの。
「む、無理ら〜こんな奴をどうやって倒せば良いんら〜誰か助けてくれら〜」
と、言っても闘技場に一度入ってしまったら逃げる事は出来ないし、私達も救援出来ないの。目の前の敵を倒さないかぎり解放されない戦い。
けれど私にも八戒が猪牙に勝てる手段が全然浮かばなかったの。
「八戒!根性見せなさい!何とかなるわ!」
「何とかならんら〜何とかなる方法を教えて欲しいのら〜」
「・・・」
無言になる私に八戒は涙を流して青褪める。
「いつまで逃げているつもりだ?」
「なぁ!?」
目の前に猪牙が両腕を掴んだ状態で振り上げる。
そして容赦なく振り下ろしたの!
八戒は脳天から圧し潰されるかのように闘技場に埋もれたの。
脳を潰され頸椎損傷、それは確実な死。
「他愛もない。さぁ!次の者を出すが良い!その者も俺が始末してやろう」
しかし新たな戦士は現れない?
「よ?どうした?」
猪牙に催促されて梁渠は答える。
「変にゃ?まだ勝負がついてないようにゃ?本来なら勝敗が付けば我輩に敗者の駒が戻るのににゃ?」
「何?」
不思議がる二人に応援する私達はその意味を理解していたの。
そう!八戒は!
「肉体強化・拳!」
八戒は巨大化させた拳で油断している猪牙を後ろから不意打ちで殴ったの!
強烈な一撃に八戒は勝利を確信する。
「油断大敵ら!」
しかし攻撃を受けたはずの猪牙は蚊に刺された程度にも感じない様子で殴った八戒に気付く。
「ん?奇怪な?生きていたのか?感触は分身とは思えなかったが?まぁ、良い。直ぐに終わらせよう」
「ビクともしないらか?らったら、これでどうら〜!!」
八戒は倍化した拳の連打を繰り出し続ける。
「そよ風のようだそ?」
猪牙は八戒の拳を受け止めて掴むと、そのまま力勝負を始めたの。当然、力の差は比べる必要もなく八戒の拳は握り潰されて肘から逆方向に折れ曲がる。
「ウギャアアアア!」
「心地よい鳴き声だ」
そのまま指先を立てて八戒の胸を貫いたの。
「呆気なく終わったな、さて次の相手を出して貰おうか?俺は壊す事に飢えてるのだ!」
しかし決着の判定がされない?
「何故だ!」
「うら〜死ぬかと思ったら〜」
「!!」
背後から立ち上がる八戒の身体は折れたはずの腕や指先、それに貫かれたはずの胸も完治していたの。
「ど、どうなってやがる!?」
流石に猪牙も八戒の復活に驚きと興味を持つ。
そしてまだフラフラの八戒に腕を伸ばして掴み上げたの!
「お、オラをは、離すら〜」
掴まれて見動き取れない八戒を猪牙は握力で締め付ける。骨が軋み砕かれ、肉が膨張し、破裂したの。
猪牙の手から八戒の血がこぼれ落ちる。
いつ見てもグロテスクだわ。
けど、私達は知っているの!
「!!」
八戒の身体が徐々に再生していく。
それは八戒が超再生の持ち主なのよ!
「不死者か?」
流石に猪牙も気付いて感心する。
「オラは死なないらよ?だから時間の無駄ら!なにせオラは一度たりとも負けた事がないんらよ」
弱りきっていても強がってみる。
「意識を保つ不死者はレアだぞ?面白い玩具を見つけたもんだ。お前程度の力で負けた事がないだと?その不死の体質で生き残れたに過ぎない下等妖怪が強がるな」
「オラは不死だけじゃないら!」
その直後、八戒は腹部に妖気を集中させて渾身の
「オナラ」を噴出させたの!
強烈な臭いが猪牙を襲う。
「ぐはぁ!お前、何を?」
臭いが鼻につき、目に染みて油断するが八戒の身体を掴んだ手はそのまま離さないの。
不意打ち失敗?
「まだら、知っているらか?オラのオナラはよく燃えるのらよ!そら?発火ら!」
八戒が口から炎を吹くと、オナラが発火して爆発を起こしたの。
それには流石に猪牙も堪らず八戒を掴む手を離したの。そのまま八戒は狙っていたかのように攻撃を仕掛ける。しかも、それは!
『釘鈀』
釘鈀九本の玉のような歯を持つ熊手のような馬鍬。
神氷鉄が素で、金環と六曜五星が飾られているの。
この武器は持ち手の妖気を吸って力を発揮する。
それに八戒の力を最大限に活かせる特殊な武器らしいの。
八戒の手に龍神族から貰った龍具を手にすると、力任せに叩きつけたの!
「例え武器を手にしても傷一つ付かんわ!」
余裕の猪牙は次の瞬間、驚かされたの。
弱者の攻撃とたかをくくっていたはずなのに絶対防御を誇る自分に掠り傷が付けられたのだから?
「なんて頑丈な奴らよ!オラの釘鈀で掠り傷らけらか?」
「掠り傷程度だと!この俺に掠り傷だと!おのれ!ん?」
突如怒りから冷静になる猪牙は八戒の持つ釘鈀を見て、その持ち主である八戒を改めて用心深く見回す。
「もしかしてお前、魔神国出身か?いや間違いない!お前の肌の色もそうだが、その武器からは魔神族特有の黒い気を発しているのだからな!」
「何を言ってるら?オラは間違いなくこちらの世界の出身らぞ?魔神国になんか行った事もないらよ?」
自分自身の事なのに意味が分からない八戒。
「ならばお前の不死のカラクリ含めて俺が教えてやろう。俺の真実を見透すこの眼でな!」
えっ?何を?
その時、猪牙の額がバックリ割れて第三の眼が現れたの!それを見た時、私達は気付く。
「あれ魔眼だわ!」
私達は以前、百眼魔王って第三の眼を開く魔眼使いと戦った事があるの。魔眼が開いた後の強さは厄介極まりないなかったのを憶えてる。けど既に圧倒的な力の差があるのに何故?
「俺の魔眼は真実を見抜き見透す」
その魔眼に睨まれた時、八戒は微動だに出来なくなる。まるで蛇に睨まれた蛙のように。
「うぐぐ、何が始まるらか?」
脅える八戒に対して猪牙は予想を裏切る反応を示したの。
「がははは!なるほどなるほどなぁ!全て分かったぞ?お前の出生と不死の秘密をな!」
「何らって?」
それは八戒すら知らない真実だったの。
「どうやらお前は魔神国の者がこの地で死んで、その魂がこの地の者として転生したようだな?」
「な、なぬ?」
「証明してやろう。先ずはお前の武器より発する黒い気の正体。それは魔神国に住む戦士の特有の気なのだ。気とは魂より生み出される力!つまり魔神国の転生者であるお前には新たな地で生まれ変わってもなお、その魂から魔神の気を残したのだ!」
「オラは魔神国の住人の転生者なんらか?」
「次にお前の厄介な不死性の秘密」
「不死の秘密らか?」
「本来魔神国の戦士はこの世界の戦士とは比べ物にならない力の差があるのだ。この地の魔王級など、魔神国へ行ったら早死にするだけだ」
「何が言いたいらか?」
「単刀直入に言おう。お前の不死の秘密は万能ではない!分かってしまえば攻略は容易い!」
「んなっ??」
猪牙が語る八戒の不死の秘密。
そもそも魔神国の戦士の妖気量は桁違いらしいの。確かに干支十二神将に現れた蹄鉄馬王や白猿皇に、鉄扇ちゃんが見せた羅刹女さんの力を見ても納得出来たわ。そして妖気量は肉体である器があって成り立つものなの。けれど八戒はどうやら特別な転生をしたらしく妖気量が強い魔神国の戦士の魂が、こちらの住人の器に入った状態。これが意味するのは?
本来、器の絶対値10に対して妖気量は同等の10が常識なの。これは修行で上下するけど大体統一でなければ均衡が保てずに問題が起きるの。器に対して妖気量が少なすぎると再生力も足りなく病弱だったりするの。逆だと器が妖気量に耐えられないで壊れてしまうの。
で、八戒の現在の器が10として、魂から出る妖気量は100くらいなの。本来なら器が耐えられずに壊れてしまうのだけど、その力の全てを器が壊れないように再生に使っているのよ。更に、ここからが不死のカラクリなんだけど、器が10に100の耐性があると考えて100÷10は10よね?つまり10回分の完全再生力を生まれながらに持っているんだって!
「マジらか?オラは何か特別な存在だと薄々気付いていたらが、やはり特別なんらったな!」
八戒は特別って言葉に感動していたの。
「馬鹿め!」
「何ら?」
「つまり妖気量を上回る消耗と攻撃をされればお前の不死性を上回り、お前は死ぬって事だ!」
「お、オラが死ぬらか?」
それは死ぬ事に対して初めての不安。
「でもオラは負けないら!オラは天峰元帥!決して負けないのら!オラは負けた事がないのが自慢なんら!」
それもこれも不死性から生き延びただけ。
戦略的撤退。
他力本願でいて運に恵まれていた事が幸い。
猪牙は答えが分かると呆気なく感じる。
「これからお前の限界まで殺してやろう!」
猪牙のはよっつんばいになると、漆黒の覇気を纏った獣のような突進力でタックルして来たの。
「猪突猛進!」
撥ねられるように八戒が吹き飛ぶ。
ズタボロになり、全身から血を噴き出しながら落下して転がる。闘技場の壁や柱、床に衝突する。
その突進は幾つもの城塞を粉砕させて跡形もなく消し去った。
城塞の破壊者と呼ばれる所以の攻撃力だったの。
けれど八戒は再生力で蘇る。
「どれだけ耐えられるか見物だな?」
その後も蘇る度に何度も何度も私達の目の前で八戒はズタボロにされる。幾ら不死であっても激痛は溜まったもんじゃない。死ぬ程、否!死ぬ痛みを何度も味わうの。
以前、私はなんとなく八戒に聞いた事があったの。
「不死って便利だけど、そんな痛い目にあっても蘇るってどうなの?」
八戒は私の質問に当たり前のように答えたの。
「オラが生き返れば、その分誰かが死なずに済むでないらか?」
「!!」
普段からエロでどうしようもない奴だけど、やっぱり悪い奴じゃないのよね。少しだけ見直した事があったの。八戒はやる時はやるのよ!
でも、この圧倒的な力の差をどうすれば?
「うぬぬ?」
猪牙は懸念な顔付きでいた。
何度も何度も殺したはずの八戒が一向に死なずに蘇る事に?第三の眼で確かに不死の理由は分かった。なのに死なない?なら考え得る理由は一つ。
「この雑魚、いや?この雑魚の転生前の力は俺が見計らったよりも数倍は上だったって事か?恐らく将軍か魔王級だろう。正直驚いたわ!しかし倒せぬ相手ではない」
猪牙は攻撃の手を止めると、ボロボロの状態で再生する八戒へと近付いて行く?既に弱り切り逆らう力もない八戒の腕を掴み上げたの。
「今からお前に死を与えようぞ?覚悟は良いか?」
「ふふふ」
すると八戒が不敵に笑う。
「何がおかしい?気でも狂ったか?」
「いやな?お前に何度もぶっ倒されながら思っていた事があったんらよ」
「ん?何だ?」
「お前には城塞の破壊者とか言われてらかを将軍やら魔王といった称号がないんらな?確かに桁違いの力はあっても称号には恵まれなかったんらな?残念な奴らよ」
「お前、何を!」
「ふふふ。これから死ぬのに恐い事なんかないらよ?それにお前、そんなに強くても誰かに敗北して死んで此処にいるんらよな?誇って良いらよ!オラのような無敗の大妖怪を倒せたんら、自慢して良いらよ?そんなお前に教えてやるら〜。オラの天峰元帥の称号はオラを倒した者に継がれるんらよ?だからオラを倒せばお前は天峰元帥ら!」
「馬鹿か?お前は?そんな称号いるかぁ!」
「そうらか・・・まぁ、お前にオラは倒せないらがな!」
すると八戒は最後の力を振り絞りを猪牙に向かって釘鈀を突き刺したの!刃は猪牙の右目を貫き、悲鳴をあげる猪牙。
「どんなに強固な身体でも、眼球までは鍛えられなかったようらな?」
しかし八戒はそこで力尽き釘鈀を握る手を離して落としてしまう。
「この、愚か者がぁあああ!雑魚の分散で!雑魚の分散で!雑魚の分散で!確実にお前を殺してやるぞ!」
猪牙は怒り形相で大口を開けて意識のない八戒を持ち上げ飲み込んだの。
私達は目を丸くする。
「幾ら再生しようが、猪牙の消化液で永久に溶かされ続け、やがて再生限度がくれば死に至る。お前は俺の中で死ぬその直前まで後悔し続けるがよい!ガハハハハ!」
大笑いをあげて勝利を確信したの。
まさか、本当に八戒?
死?
八戒も猪牙の体内で身体が消化液で溶けていく事を実感していた。見動き出来ない身体は圧し潰されて既に自分自身の実体が残っているのかすら分からないでいたの。
それでも無意識的に再生されるたびに意識が戻れば痛みやら熱さやら一瞬で意識が飛ぶような死を体験せねばならない。もはや無限地獄とも言えたの。
「オラは、もう助からない、らか・・・」
そして猪牙は勝利宣言をあげたの!
「待ちなさい!まだ八戒は負けてないわー!」
「片腹痛い。既に決着はついた!次は誰が相手するのだ?誰でも構わん。正直、面倒なだけで物足りなくてしかたないのだ!ガハハハハ!」
「ムカつくわね」
でも確かに強いわ・・・
純粋な肉弾戦になると私では敵わないかも。
法術で翻弄するしかないのかしら?
「ねぇ?法子?アイツの胸を見てごらんなさい?」
「何?白骨乙女さん?」
「胸元の鎧、今は塞がってるみたいだけど貫かれたような痕ない?」
「そういえばそうね?あんな奴の身体を貫くような攻撃をされたのかしら?」
私達の会話に猪牙は一瞬嫌な記憶が脳裏を過ったの?
それは自分を殺した相手の記憶。
「破壊神・・・」
その記憶を思い出した時に全身に震えが走る。
それは身体と魂に刻まれた恐怖の記憶。
かつて猪牙は己の力を過信して将軍でもなければ魔王の称号も得る事なく己の身体を痛め鍛え続けていた。そして強固な身体を手にした時に猪牙は魔神国最強の相手に喧嘩を売ったの。
その相手は、
「破壊神!」
猪牙は負けるつもりはなかった。
「俺には欲しい称号がある!それは将軍や魔王なんて小さな称号じゃねぇー!最強最高の称号、破壊神の称号だぁー!俺に怖気づいてなければ相手しろー!」
猪牙は魔神国の破壊神の行列に乱入してその首を狙ったの!護衛する者達を薙ぎ倒し、破壊神の前に現れるとよっつんばいになって突進したの!
「身の程知らずが」
その直後、猪牙は破壊神の手で直接殺された。
一撃のもと、手刀で胸を貫かれ、首を落とされた。
まさに破壊神の力を目の当たりにしたと同時に息絶えたの。
その時の恐怖が流れ込むように体内にいる八戒にも流れ込んで来たの。
「な、なんら?この威圧感は?」
既に魂の状態にも関わらず八戒は伝わる恐怖を感じとり、その記憶の断片を感じる。
「その程度か?それがお前の限界か?」
その声は八戒の魂を揺さぶる?
自分の記憶でないにも関わらず、鮮明に声が伝わる。
「それがお前の限界か?」
「!!」
それが八戒が消える前に聞いた最後の声。
そして闘技場には震えの止まった猪牙が次の対戦相手を出すように急かしていたの。
「まだ待つニャ!駒が完全に勝敗を判定していないにゃ〜」
「て、事は?まだ八戒が生きてるって事?」
「それは分からないにゃ。でも駒から名前が完全に消えないと勝敗を判断出来な・・・ん?」
その時、手に持つ八戒の駒の名前が薄くなっていくの。
「どうやら決着が付いたようにゃね?では判定にゃ〜」
それって八戒が死んだって事??
「勝者は!」
「ぐぁあああ!」
「な、何?」
突如、猪牙が苦しみだしたの?
「何だ?身体から力が溢れ上がってくるようだ?何だこの凄まじい力は?まさか奴の?ありえん!そんな力は感じなかったはず?」
すると猪牙の消耗した体力が回復し、潰されたはずの目が再生し筋力や魔力が一気に膨れ上がったの。
「これはとんだ目っけものだったようだ?この力で俺は更に強くなれるぞ!だが、少々胃もたれを起こしそうだ」
が、突然全身が震え上がる?
「俺の中で何が起きているというのだ?」
猪牙は再び第三の眼を見開くと自らの体内で起きている現状を覗き見たの。
「こ、これは!?」
体内のチャクラを中心に何者かが漆黒の気を高めていたの?
誰?その者は褐色の肌をした少年?
猪牙はその気を肌身に感じて震え上がる。
何故なら、その漆黒の気はかつて自分を殺した者とあまりにも似ていたから!
「お前は、な、何者なのだ?」
その時、少年は呟く。
「破壊神」と?
直後、猪牙の身体が内部から破裂したの!?
「な、何?何?何が起きたの??」
私達も状況が分からないけれど、猪牙の破裂した身体から転がり出て来たのは!
「は、八戒?」
私達が呼ぶと、八戒も何が起きたか分からないような寝惚け眼で言ったの。
「何が起きたらか?」
「それは私達が聞きたいわよ!」
けど、取り敢えず猪牙は起き上がる事なく倒れて、八戒が残ったって事は?
「勝者!八戒にゃ〜!!」
そんなこんな。
次回予告
八戒の勝利。
次の対戦は誰と誰?




