第三宮殿~伸びしろ無限大?それが成長期?
牛角帝を相手に紅孩児が挑む!
そして鉄扇の驚きとは?
私は法子。
紅孩児君の出生を聞いた鉄扇ちゃんの様子がおかしいの?
何かあるの?
「まさかアイツ[紅孩児]が義姉様の忘れ形見なんて・・・」
鉄扇ちゃんにはかつて義姉がいたの。
義姉の名は羅刹女
かつて異界より鉄扇ちゃんと女孩だけの軍を引き連れてこの地へと現れた魔神の女性。
その羅刹女孩さんこそ牛角魔王さんの妻であって、紅孩児君の母親であったの。
けれど羅刹女さんさんは暗殺された。
その後、
鉄扇ちゃんは義姉の復讐を果たすために、その相手を百年もかけて探し出し復讐を遂げたの。
けれど知らなかった。
まさか義姉に子供がいたなんて。
「アイツ・・・」
鉄扇ちゃんの視線の先には紅孩児君が牛角帝と死闘を繰り広げていた。
けれど力の差には開きがあったの。
一撃一撃に紅孩児君は苦悶の顔を見せる。
全身の骨にヒビが入る。
皮膚が裂けて血に塗れる。
それでも紅孩児君は攻撃を止めずに牛角帝相手に殴り合いを繰り広げる。
「所詮は出来損ないか?今のお前は同じ頃のお前の父親に遠く及ばんぞ?容易い!」
「父上・・・」
紅孩児君は父親である牛角魔王を思い出していた。
かつて宿敵と疑わず憎んでいた相手。
そして孫悟空のお陰で和解し、親子である事を知った後も、
父親である牛角魔王のもとで力を付けるべく修行を続けていたの。
しかし力を付ける度に自信を失う紅孩児君。
何せ目の前に最強とも思える存在がいるのだから、己の成長が見えなくなる。
そして無意識に甘えも持ってしまったの。
そんな自信を責めるように、追い込むように紅孩児君は父親から離れて武者修行の旅に出た。
ライバルである孫悟空に笑われないように、救ってくれた恩を返すために!
強くなると誓ったから。
そして目指す強さとは父親である牛肉魔王を超える事でもあったの。
口の中で血が鉄分の味となって広がり、
激痛が意識を奪おうとするけど、何とか堪える。
「俺様は負けなぃ、グホォッ!?」
食らいつく紅孩児君の腹部に牛角帝の拳がクリーンヒットしたの。
意識が薄れてゆっくりと膝から崩れ落ちる。
そして倒れかける紅孩児君の後頭部目掛けて牛角帝が首を落とそうと突き出したの!!
「あんたぁ!それでも羅刹女姉さんの血を本当に受け継いだのかい!義姉さんはそんな奴、片手で倒せたわよ!」
それは鉄扇ちゃんの激励だった。
「は、母上?」
そう。紅孩児君は牛角魔王孩さんだけでなく、羅刹女さんと言う両方の最強の血筋を受け継いでる。
その言葉が紅孩児君の消えかけた闘志の火を再び炎の如く燃え盛らせたの。
「うぉおおおおおおお!」
噴き出す業火が牛角帝の拳を弾かせると、その僅かな隙に紅孩児君は怒涛の炎の拳の連打を牛角帝の全身に繰り出す。
「お、おのれ!こんな炎の拳が俺に傷を付けられると思うなぁー、がッ!!」
今度は牛角帝が意識を失いかける衝撃を受けたの。
先程までの攻撃とはまるで重さも速度も違う。
圧縮された闘気が覇気となって牛角帝の身体を貫通させたの。
「こ、この、ガァキ!!」
それでも踏ん張り紅孩児君に拳を振りおろした時、紅孩児君は片腕をあげる?
「ま、まさか??」
牛角帝の渾身の拳を紅孩児君は片腕で受け止めたの!?
間違いないわ。
紅孩児君は成長している!
虎武黒の時もそうだけど、戦う前は完全に格上だった牛角帝と戦いながら成長しているの!
まさに成長期ってやつかしら?
「凄いわ!紅孩児君!」
「ふん!羅刹女義姉さんの血を受継いでいるのだから、あのくらいしてもらわなきゃ嘘よ!」
「鉄扇ちゃん、ありがとね?」
「何がよ?」
「ふふふ」
鉄扇ちゃんの激励がなかったら、間違いなくさっきの攻撃で紅孩児君は殺られていたに違いないわ。
けど、今の紅孩児君は負ける気がしないわ!
「まだやるか?」
牛角帝を見下ろす紅孩児君の姿に牛角帝は過去に牛角魔王さんに負けた時の記憶が蘇る。
「二度も俺の邪魔を、俺の邪魔をしやがってぇー!!」
もう、相手が牛角魔王さんなのか紅孩児君なのか分からなくなっていたの。
立ち上がろうとする牛角帝だったけれど、突然膝をついて倒れ込む?
それは紅孩児君の発する覇気の圧力だった。
「俺様が最強になる!」
「こ、小僧!お前のその根拠は、一体何なのだ?」
「根拠なんてない。俺様が俺様だからだ!俺様は出来る子なのだ!」
「俺は、こんな小僧に、こんな目に合わされているというのか?あり得ん!あってたまるかぁ!」
怒りを増す牛角帝だけど立ち上がる事は叶わない。
そして立ち上がれない牛角帝に紅孩児君は言葉をかけたの。
「死んでもなお父上に挑もうとするお前の志しは学ぶに値する」
その言葉には重みがあった。
「お前と戦っていて分かった事があるぞ。お前も最強って称号に捕らわれているんだよな?俺様もそうだ。けど最強は一人だけ!最強の座はお前でも父上でもなく、いずれ必ず俺様が手に入れる!」
「!!」
「お前の存在は俺様が最強になるために必要だったのだ!だから、お前が最強を目指した意味はある。俺様はお前の思いも乗せて強くなる。だから誇れ!お前自身を!お前の生き様を!」
牛角帝の目の前にいる少年は、もうか弱き挑戦者ではなく、自分との戦いの中で成長した王の器だった。そして本能が告げた。
もう最強への呪縛は解かれたのだと。
「おぉ、真王よ・・・」
魂が敗北を認めた時、
牛角帝の肉体は霧のように浄化されて消えたの。
「あの世で俺様を見ているが良い!」
その地点で、紅孩児君が干支十二神殿のニ宮殿を制覇した事になったの。
私達は歓喜の声援をする。
ただ一人、驚いて言葉が出ないのは梁渠だった。
「そんな馬鹿ニャ!干支十二宮殿がニ宮殿も制覇されるなんて、歴史上聞いた事がないにゃ・・・しかし、この干支十二宮殿の恐ろしさはこれからニャ!」
梁渠は手にした駒を掌でかき混ぜると、私達が見てない事を知りつつほんの少し小細工をしたの?
次の駒の相手を梁渠が自由に選べるように!
「出すニャ!次の相手を決めるニャ!どうするニャ?お前には続行と退場の選択があるニャよ?退場なら、また駒が出たら出場出来るし休養取れるニャ?さぁ!選ぶニャ!」
梁渠の問いに紅孩児君は拳を挙げて叫ぶ。
「続行!」
「それが賢明ニャ。ではお前達の次の駒も決める・・・ん?にゃんだって〜??」
それは私達も同じツッコミだった。
「ちょっと紅孩児君!ここは一旦退いて休養してよ!」
「嫌だ!」
「言う事聞きなさい!」
「嫌だ!俺様はまだ戦える!まだ足りないんだ!まだこの胸が熱くなったままたぎってるから止められない!」
「!!」
駄目だ、もう手に負えないわ。
完全に戦闘馬鹿になってる。
孫悟空とそっくりだわ!
孩
「分かったわ。なら次に勝った後は絶対に戻りなさい!さもないと私が紅孩児君を訴えます」
「何と!?」
「そして愛音さんに言いつけてお尻を叩いて貰うからね?良いわね?」
流石に紅孩児君も顔を青褪め目を丸くして素直に頷く。
「素直で宜しい!」
あ〜愛音さんが上手く手懐けてくれていて助かったわ〜
次からこの手で紅孩児君を使おう。
うんうん。
「では始めるニャ〜何が出るかニャ?何が出るかニャ?何が出るかぁ〜!!」
すると新たな駒が巨大化しながら飛び出して闘技場に落下する。
同時に私達のいた宮殿の風景が変わって、上階の第三宮殿へとワープしたの。
そして駒から新たな干支十二神将が姿を現す。
その姿は、えっ?
見るからに強そうには見えなかった。
身長は紅孩児君よりも小柄かな?
けど、子供ではないわね?
白い中華風の衣に、白い顔の鼠の顔?
「どうやら恐ろしい奴を出してしまったようニャ!アイツはとんでもない奴ニャ!」
「あんまりそうは見えないわよ?」
「見た目に騙されたら終わりニャ。奴の名前は」
『狙如戦仙大将軍』
狙如戦仙大将軍孩とは、千年前に戦乱を呼ぶ大魔王と恐れられ、数千、数万の兵を率いて数々の魔王の城を落とした伝説の大魔王。数々の仙術を使い熟すだけでなく体術にも秀でて、何より軍隊戦での策士としての優秀さは、後世の兵法の手本になったとか。
「私の相手はその小僧かな?」
丁寧な口調で紅孩児君を眺める。
「現世にも中々の使い手がいるもんですね。あの牛角帝が負けたのも頷ける。それに、まだまだ成長段階ですね?このまま放置していたら私の世界征服の邪魔になる事は明白。ここで私が選ばれたのは幸運と言うべきか?」
この狙如は、かつて将軍であった牛角帝率いる軍隊を壊滅させた戦歴があったの。
そして初めて牛角帝に敗北を与えた魔王。
その敗北から牛角帝は最強への執着心が芽生えた歴史があるの。
これは牛角帝を倒して最強の道を進む紅孩児君との因縁なのね?
「やれやれ、しかし今の実力では私には遠く及ばんですよ」
「そっか?だったら俺様も楽しみだ!俺様はお前を倒して最強となってやるぞ!」
お互い中央に向かって近づく。
二人が闘技場の中央で立ち止まると、睨み合う中で梁渠が片手を挙げる。
「第三勝負、始めにゃー!!」
紅孩児君はテンション上がった状態で飛び掛かる。
はっきり言って良い波きてるわ~!
対して狙如は冷静に繰り出される拳や蹴りを受け流していたの。
あれは拳法かしら?かなりの手練のようだけど、今の紅孩児君は簡単に狙如を追い詰める。
もしかしたら一気に畳み込める?
「そこだぁー!!」
紅孩児君の拳が狙如の身体を貫く!
「ぐはぁ!」
吐血して倒れ込む狙如は紅孩児君に抱き付きながら耳元で囁いたの?
「な、何だ?何だ?」
「捕まえましたよ?」
「!!」
その直後、背後から別の狙如が現れて紅孩児君を背後から襲い掛かる。
その手刀の先は首!
「させるかぁー!」
紅孩児君は身を回転させて抱きついた狙如を盾にして蹴り上げると、二人の狙如が衝突する。
すかさず掌を向けると、
「火炎放射」
紅孩児君の火炎放射に飲み込まれて消滅したの。
「やったわ!」
「まだよ!法子、周りを見なさい!」
「鉄扇ちゃん?」
見ると闘技場には幾人かの狙如が現れて紅孩児君を囲んでいたの。
「あれってば分身?だったら本体を叩けば良いのよね?」
「セオリー通りならそうだけど」
私と鉄扇ちゃんの考えと同じく紅孩児君も本体を探すけれど、どの分身からも本体と同じオーラを感じて区別出来なかったの。
「もしかして全員本体?てか、複数で参加してるんじゃないでしょうね?どうなのよ?梁渠!」
「そうニャ。けれどあの狙如は全て本体であって分身ニャ。分身?違うニャ、あれは!」
「何よ?」
「あっ!見てよ、法子!」
突然叫ぶ鉄扇ちゃんの指差したのは狙如の分身の術だったの。
けれどそれは分身じゃなかったの。
「嘘、あれじゃまるで・・・」
私達の目の前で起きてる状況、狙如の身体から肉が盛り上がって新たな狙如が出現している。
「あれは分裂!?」
驚く私達に梁渠が説明する。
「残像や影といった分身と違い高度な分身は本来、自分の魂や霊体の一部の欠片を器となる身体に憑依させるニャ。その為に自分の身体の一部、例えば毛なんかを分身に与える事でより高度な分身が生み出されるニャ。そこであの狙如は自分自身の肉体を分裂させて分身を作り出す。つまり本体との区別なんか分からないほどにニャ!あれが狙如の秘術」
『分裂分身』
一体でも厄介な相手が何体もいるなんて反則よ!
そもそも十二人相手するのにも手がかかるってのに、そんなに増えたら私達だけじゃ手に負えないわ!そう、梁渠[猫]の手を借りたいくらいに!
けれど紅孩児君の成長は目まぐるしかった。
次々と狙如の分身体を倒していく。
こうなれば時間の問題だわ!
例え増えていこうと今の成長し続ける紅孩児君にとっては有象無象なのね?
後は時間の問題よ!
「思ったより腕が立ちますね?けれど残念ですね。もう私の術式が完成してしまいましたから、もう貴方には勝機は完全に失われましたよ」
な、何を?
「今より戦場の大将軍と呼ばれた私の恐怖を身を持って味わらせてさしあげます」
すると狙如の足下から魔法陣のような術式が闘技場全体に広がっていく?
あれは一体?
「術式・戦場世界!」
その術式が発動した時、形勢が逆転した。
それって、どうゆう?
次話で語るわね?
そんなこんな。
次回予告
狙如戦仙大将軍の奥義
術式・戦場世界とは?




