第二宮殿~因縁の遺恨の戦い!
紅孩児の次の相手は?
第二宮殿の新たな魔王の実力とは?
私は法子
私達の目の前で今、紅孩児君が戦っている。
第一の宮殿で虎武黒魔将軍を倒し、そのまま続闘しているのだけど、苦戦してるの。
相手は鎧を纏った赤い牛頭の化け物で、紅孩児君の二倍以上ある体格のある相手。
名前は確か?
「牛角帝にゃ!」
梁渠が教えてくれたの。
戦場の暴君と異名を持つ牛角帝!
千年前の戦場では、数ある魔王の城を弱い兵隊は必要ないと牛角帝率いる僅か四人の将軍のみで城を落としていく。荒ぶる暴君、鮮血の殺戮王とも呼ばれた。
「うぐおおお!」
牛角帝の拳が振り下ろされると、紅孩児君は咄嗟に片腕、いえ!無理と判断して両腕で受け止める。
反応は間に合ったけれど、紅孩児君はその威力に押し負けてふっ飛ばされる。
「うわぁああ!」
吹き飛ばされながらも身体を回転させて着地すると、地面を抉るように足場が崩壊する。
それでも立ったままの紅孩児君の受け止めた腕は真っ赤に腫れ上がっていたの。
もしかして折れた?
「何て威力だ。骨にヒビが入ったかもな」
冷静に判断して、怪我の治癒に妖気を移す。
「戦いの最中に治癒とは?弱者め!」
「痛いから仕方ないだろ?」
牛角帝は恐らくパワーファイターだわ?
あのパワーは脅威には間違いないけど、力任せの攻撃で紅孩児君は倒せないわ。
「小鼠め!」
牛角帝は両手を振り上げると、その斬撃が地面を切り裂きながら紅孩児君へと向かって来る。
怪我した腕を庇いながら躱すけれど、次々に斬撃が向かって来る。
「斬手の型」
鋭い刃となって向かって来る中を紅孩児君は紙一重で躱しながら牛角帝へと近付く。
「ほぉ?恐れずに向かって来るか?小僧!」
「近付かなきゃ殴れないだろ?」
接近する紅孩児君に対して牛角帝は全て想定内と言わんばかりに片手を振り上げると、今度は押し潰すように地面に覇気を放つ!?
「覇牛の断罪」
直後、紅孩児君が地面に這い蹲るように倒れ込み潰れるように押し付けられる。
「うぐぅわあああ!」
更に見動き取れない状態で牛角帝が放り投げた二本の大斧が紅孩児君目掛けて落下して来る。
紅孩児君は負けじと気合いを入れて立ち上がろうとする。
「無駄だ!そのまま両断されるが良い!」
私達も手に汗握る中で、
「うぉおおおお!」
紅孩児君は寸前で立ち上がり大斧を躱すと大斧は轟音を立てて地面に埋もれたの。
「覇気を全身に纏って僅かに身体能力を高めて脱出したのか?小僧、やるではないか?」
「いつまでも上からモノを言ってるなよ?オッサン!俺様はお前を倒して最強になるのだからな!」
「!!」
その台詞を聞いた時、牛角帝は過去に同じ台詞を言われた事を思い出す。
牛角帝は、かつて世界を統一していた始祖の神の側近として仕えていた。
始祖神は永き戦いの中でその力を失いつつあり後継者を必要としていたの。
つまり実質、世界を支配する事になる。
「俺以外に後継者はいねぇ!」
牛角帝の他に可能性があるのは始祖神の直子達であったが、牛角帝はその直子達の抹殺を計画していた。実力さえあれば、力さえあれば可能だと。
だが、一人では無理。
自分の直属の部下は四人いた。
他の四人も腕の立つ将軍であったの。
「反旗を翻すか?」
しかし簡単に出来ない理由があったの。
「厄介だな」
部下の将軍の一人は、始祖神の王子だったから。
自分の直属の配下に付いたのは実戦経験を多く詰めるとの事からだった。
ただのボンボンなら戦場で足を引っ張り戦死していた。
けれど王子は数々の功績を積み重ねる。
そんな中で戦場で城攻めの際に非戦闘民に対しての牛角帝の目に余る殺戮行為が気に食わないと、止めるように指揮官である牛角帝に進言したの。
「無闇な殺生は止めよ!牛角帝!」
「俺に指図するか?」
「いつまでもリーダーであると思うな!牛角帝よ!いずれ俺はお前を超えて最強となろう」
「!!」
まだ若くありながら鋭くも芯のある瞳に牛角帝は怯んでしまった。
その様の自分自身に怒りを感じた牛角帝はやがて王子に殺意を抱くの。
「嫌な事を思い出してしまった」
牛角帝は見下ろす紅孩児君を見て、過去の苦い思い出を蘇らせてしまったの。
「まぁ、良い!あの者の代わりに今はお前をなぶり殺してやろう」
牛角帝は巨体とは思えない動きで紅孩児君の間合いに入り込むと、強烈な拳を繰り出したの。
「ぐぅ!」
両手を交差してガードするけど、骨の芯にまで衝撃が伝わり苦悶する。
青痣が受ける腕を腫れさせて擦り付いた箇所から血が流れる。
「よく耐えるもんだ。よほど受け身は得意とみえるな」
「・・・!!」
油断したその時、紅孩児君が拳が牛角帝の溝打ちを与えたの。
突然の痛みに牛角帝は一歩足を後退させた直後、紅孩児君が追撃を繰り出す。
紅孩児君はガードしながら攻撃の機会を待っていたの。
そして耐え凌いだ後の猛攻は烈火の如き燃え盛る弾丸のように牛角帝に休む暇を与えなかった。
直撃をくらいながらも、牛角帝は自分と戦う紅孩児君の拳闘が自分の流派に似ている事に違和感を感じていたの。
「お、お前?その拳闘は誰に教わった!その拳闘は我が流派と同じではないか?」
「教えてやらん!」
その時、顔面目掛けて突っ込んで来た紅孩児君の姿が、過去の王子と被って見えたの。
「うりゃあー!!」
紅孩児君の拳が牛角帝を殴りつけてぶっ倒す。
その衝撃に牛角帝は信じられない顔で紅孩児君を見上げる。
「ま、まさかお前は王子なのか?」
しかしありえない。
自分の知る王子は黒髪で頭上には立派な二本の黒い角が生えていたはず。
目の前の紅孩児君は赤髪の二本の角はあるけれど、小さく頼りなく感じた。
しかし、見れば見るほど過去の王子と被って見えてきたの。最初見た時は鬼族の小鬼と思い考えてもみなかったけれど、もしかしたら?その考えが脳裏を過った時に牛角帝は首を振る。
「奴は俺を・・・」
殺した。
牛角帝はゆっくり立ち上がる。
「ふふふ。この俺に膝をつかせるとはな?今宵はお前の命を捧げる事でこの俺は再び生者として蘇る。その前祝いに一つ俺の過去を聞かせてやろう」
「はっ?意味分からないが、聞かせてくれるなら聞いてやろう」
素直に話を聞く紅孩児君は耳を傾ける。
かつて始祖の跡取り候補であった王子を始末するべく、牛角帝は禁断の地へと足を踏み込んでいた。
そこには始祖の神が跡取りに与えるべく特別に造り上げた魔鎧が奉納されていたの。
その魔鎧は持ち主の潜在能力を極限にまで引き上げるとともに成長し、武装凶器ともなる。
その魔鎧を手に入れようと牛角帝は直属の二人の配下を連れて結界の中へと忍び込んだの。
幾重の結界も牛角帝の力を前には無力だった。
そして魔鎧が祀られた祭壇の前にまでたどり着くと、そこには魔鎧が三領[三着]置かれていたの。
赤と黒と白の魔鎧。
「なぁ?俺達にも貰えるんだろ?」
「だよな?こんな危険な手伝いをしてるんだもんな!」
二人の将軍に牛角帝は頷く。
二人は浮足立って黒と白の魔鎧に近付き手にしたその時!
「オボギャア!」
二人は魔鎧に触れた途端に木っ端微塵に爆死してしまったの。
「やはりか、あの魔鎧は持ち主を選ぶという噂は・・・」
牛角帝は二人の将軍の屍を見る。
この二人の将軍もかなりの強者であったにも関わらず、魔鎧に認められなかった。
自分は?
「だが、俺は自らの野望のためにも、この魔鎧が必要なのだ!」
牛角帝は中央に置かれた赤い魔鎧に近寄ると、その魔鎧に恐れる事なく手を伸ばしたの。
「うぐぅおおおお!!」
強烈な衝撃が全身を襲い、冷たいのか熱いのか分からない痛みが駆け巡る中で牛角帝は己の強い意思で赤い魔鎧を制したの。
「うぐぅ・・・」
牛角帝の全身が震える。
それは歓喜の震えだったの。
全身に溢れる程の力が湧き上がる。
この魔鎧は持ち主の本来持つ潜在能力を引き出してくれるの。
「この力があれば俺は誰にも負ける気がせん」
両手から噴き出す覇気のオーラが全身を覆う。
そこに、新たに二人の将軍が入って来たの!
「牛角帝!お前、我が軍の兵を皆殺しにしてこの王宮神殿へと侵入したのは本当だったようだな!これは間違いなく謀反とみなすぞ!」
その者は始祖神の王子だった。
「兄者!あれを見ろ!」
もう一人の者はの王子と瓜二つの顔をした将軍だった?
その者は王子の双子の弟で、髪の色が白髪の将軍だったの。兄である直子を慕い、その副将軍としていつも連れ添っていたの。
そして二人が目にしたのは封じられていた三領の魔鎧の中の一領を手にしていたのを。
「それがお前の目的か!?」
二人は同時に斬り掛かるが、
「もはやお前達など赤子をひねるようなものだ」
振り払った片腕からの覇気の波動が二人を吹き飛ばして壁に激突させる。
「ぐはぁ!」
吐血し全身への衝撃で意識が遠退く。
その中で王子は弟が額から血を流して動かない事に鳥肌が立つ。
「脆すぎる。こんな簡単に壊れるなら、もっと撫でるように殺すべきだったか?あははは!」
今まで目の上の単瘤であった直子が、今では相手にならない虫けらと見下す。
「おのれ、許さんぞ!俺の実弟をよくも!」
直子は妖気を解放させて牛角帝へと斬り掛かる。
その全ての攻撃を軽々と躱す。
潜在能力が引き出された事でこうも力の差が出てしまったのか?
まるで相手にならない。
けれど王子は攻撃を止めなかった。
「もう飽きた。お前の首を刈り、始祖神に捧げて俺を後継者と認めさせようぞ!」
牛角帝が翻弄される王子に渾身の拳を振り下ろしたの!
けど、その時予想だにしない事が起きる。
突如、目の前に黒き魔鎧が現れて牛角帝の拳を止めて王子を守ったの!?
「これは?」
そのまま黒き魔鎧はそのまま王子に装着されての。
「まさか魔鎧がお前を持ち主と認めたと言うのか!?」
「そのようだ。これで俺はお前に制裁を下す」
「図に乗るな!」
その後、激しい戦いの末に王子の手で牛角帝は謀反の罪で倒されたの。
そしてその魂はこの干支十二神殿に封じられて今に至る。
「お前を始末すれば俺は再び生身の肉体を得て蘇られる。そして千年間恨み積もる憎き直子を見つけ出して今度こそその首をこの俺が取ってやるのだ!」
高笑いをする牛角帝に、
「それは無理だぞ?お前はまた負けるぞ?その前にお前はこの俺様にも勝てやしないしな!」
「寝惚けた事を言いよる。もう手加減も油断もせん。お前はもう生きては戻れぬ。それに異なことを言ったな?また俺が負けるだと?お前に何が分かると言うのだ?」
「分かるさ!お前は父上よりも弱いからな!」
「!?」
瞬間、その場にいた全員が「へっ?」となったの。
今の過去話に登場した王子が紅孩児君のお父さんなの?
「その鎧見て変と思ってたんだよな〜。父上の鎧と似てるからさ?それに奴の鎧にも・・・」
奴の鎧とは、かつて紅孩児君と父親を引き離し、お母さんを殺めた張本人の事。
紅孩児君は物心つく前に攫われて、その宿敵を父親として信じていたの。
そして実の父親と戦わされた。
それを止めたのが孫悟空だったの。
「お前、あの男の血縁か??」
まさかとは思っていたけれど、今まで感じていた王子と被る理由も頷けた。
紅孩児君は名乗りをあげる。
「俺様は牛角魔王の第一子、妖怪王子・紅孩児様だ!」
牛角魔王
その名を聞いて牛角帝は身震いし感極まる。
「そうかぁ!そうかぁ!そうかぁ!何て好機!何て運命の悪戯?いや、これは俺への生贄に違いあるまい!あの男の血縁をこの手で葬れる機会を与えてくれたのだからな!」
「それは違うぞ?」
「何だと?」
「父上が倒した難敵を、息子である俺様が代わりにぶっ倒せるんだからな!これは俺様を強くするためのチャンスなのだ!」
「面白い!どちらが贄になるか今から教えてやろう!ウゴォオオオオオオ!!」
牛角帝の赤い鎧[赤牛魔鎧]が膨れ上がる覇気に反応するかのように変形していく。
より異様で凶器にも思える物騒な鎧へと!
「この手で始末してやるぞ!」
「やれるもんなら、やってみろ!」
二人は激突する。
互いの意地と生存をかけた戦い!
「ねぇ?法子?」
二人の戦いの最中、観戦している私に鉄扇ちゃんが真面目な顔で私を呼びかける?
「何?鉄扇ちゃん?どうかしたの?」
「私、あの赤髪の奴の事を知らないけど、さっき言ってた事は本当なの?」
「さっき言ってた事?」
「アイツが牛角魔王の子供だって話よ!」
「えっ?あ〜。私も孫悟空からちょい聞いただけだから詳しくは知らないけど、孫悟空の義兄弟の息子なんだって?それがどうかしたの?」
「嘘!そんなはず!」
「何か色々あったらしいよ」
私は孫悟空と紅孩児君の馴れ初めを簡単に説明して上げたの。
赤子の時に攫われて宿敵に育てられ、本当の父親と殺し合いをさせられた事。
そして孫悟空が二人を結びつけ、紅孩児君と親友になった経緯を。
まぁ、私も聞いた話だけどね。
「鉄扇ちゃん?」
私の話を聞いて鉄扇ちゃんが顔を青ざめる?
そして呟いたの。
「まさか生きていたなんて・・・」
あれ?
まさか鉄扇ちゃんと何か因縁あるの?
その謎は次の話で!
そんなこんな。
次回予告
まだ続く因縁の戦い
そして鉄扇との関係は?
次の話を読む前に、転生記シリーズ一章
転生記を読むともっと詳しく物語ってます。