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第一宮殿!紅孩児の挑戦!

干支十二宮殿に到着した法子達


この十二干支宮殿を守る魔王を倒して、何でも願いが叶う秘宝を

手に入れる事になった。


そして最初の相手とは?


私は法子。

十二干支神将の最初に現れたのは虎武黒魔将軍と呼ばれる伝説の魔王。

梁渠が私達にその伝説の一端を教えてくれたの。


虎武黒魔将軍

千年前の戦場でその名を知らない者はいないと言われていたの。

数々の戦場に現れては連れの黒虎と共に名のある武将の首を取る。

仲間を作らず軍にも組みせず、強き者の名を耳にしては戦場を駆け巡り名を上げたの。

ただ浸すら強者を求めて。

その戦術は黒虎に跨り素速い機動力と、手にした虎雷槍で一度に数千の兵士を串刺しにしたと言うの。

そして伝説になったのはその強さだけでなく、倒した名のある武将の首は全て黒虎に与え食させていたとか。首喰らいの虎武黒とも言われていたの。


「紅孩児君は大丈夫なの?」


私達の心配を他所に紅孩児君は静かに相手を睨み付けていたの。

あれ?何かいつもと雰囲気違わない?

「お前が私の相手か?どうやら初戦の相手は捨て駒だったようだな?」

虎武黒は傍らにいる黒虎に手を置くと、

「暫く餌を与えてなかったな?しかしあまり上物でなくて済まぬ」

「グルル」

完全に紅孩児君をナメてるわね?

何かこっちまで腹立つわ!

やっちゃいなさい!

その時、けたたましい音?

梁渠が太鼓を叩いてるの?


「さ〜て!三百年ぶりの挑戦者ですが直ぐに終わらないように健闘してくださいニャ〜では待ちに待った干支十二宮殿第一の闘技、今より〜」

全員が見守る中で、

「始めにゃーー!!」

「うぐぅわああああ!」

えっ?

今、何が起きたの?

始めの合図と同時に虎武黒は黒虎に乗ると、次に気付いた時には紅孩児君の間合いに入り雷槍を突き付けていたの!確実に瞬殺!虎武黒もまた確信はあった。

けど?


「ほぉ?私の初撃を受け止めたのはこの千年間、いや?生前でもお前が初めてだぞ?小僧」


雷槍の尖端は紅孩児君が抜いた火尖槍で寸前で受け止められていたの。

それも始まる前からの極限にまで高めた集中力があったから。

紅孩児君?

何かこの戦いにかける意気込みが全然違うわ?

切羽詰まる感じがする?

恐らく他のメンバーだったら今の一撃は間違いなく受けてしまったに違いないわ。

「そんなもんか?」

「何?」

「そんなもんかと言ったんだ!俺様はお前よりももっと強い化け物連中と渡り合った。お前なんか恐くないぞ!」


紅孩児君が浮かぶのはかつての敵であった妖怪皇帝、龍神界での赤龍王に手も足も出せなかった青龍王。そして嶺黄風国での虎先鋒に黄風だったの。

正直、自分自身の強さに過信していた紅孩児君にとって、そんな強敵の存在は堪らなくショックを受けていたの。何より仲間内にも阿修羅もいたし、ライバルであった孫悟空は自分が全く敵わなかった青龍王と接戦を繰り広げたのだから。


「俺様はもっと強くなる。だからお前なんかに負けない!お前なんかに俺様の道を閉ざされてたまるものかぁ!」

紅孩児君の火尖槍から炎が噴き出すと、虎武黒は身軽に躱す。

「強さを求めるか?そうか。お前を見縊った事を謝罪しよう。そして今よりお前を一人の戦士として扱い、全力をもって相手する」

「へへへ」

虎武黒から今まで抑えていた妖気が高まっていく。

そして覇気が全身を覆ったの?

「覇気妖囲」

※ハッキヨウイ


そもそも覇気とは妖気とは違い、戦闘時に瞬発的に発する攻撃的な気なの。

その覇気を纏うなんて、それこそ有り余る気を持ってこその芸当。

すると黒虎に乗った虎武黒が移動を始める。

その動きは雷のようであり、疾風のようでもあったの。

捉えようのない素速く変則的な動きで紅孩児君を翻弄し、迫って来る。

「このやろー!」

紅孩児君の振り回す火尖槍が全て空を切り、そして気付かないうちに身体に傷が増えていく。

「くぅ!」

焦りはあった。

けど、紅孩児君はこの状況を?

「笑ってるわ」

楽しんでいたの。

「強者と戦う事で自分自身を高めよ!」と、父親に言われて武者修行とか言ってたけど、私達と合流して自信を喪失仕掛け、それでも自分自身に負けないで強さを求めてこその笑み。

「!!」

虎武黒もまた気付く。

自分の攻撃が徐々に当たらなくなっている事に?

見切られた?

違う、本能的に躱してる?


「この時代にも才能ある戦士はいるのだな?」

「俺様は最強になるんだ!!」

「最強だと?」


虎武黒もまた自分自身が熱くなっている事に気付く。生前の虎武黒もまた生前は最強を目指して強者を求めていたの。数々の戦場を渡り歩き、そして名を上げ、恐れられていった。

けれど虎武黒の生涯は最強を手にする事なく終えたの。その強さを恐れたかつての魔王達が虎武黒を暗殺する計画をたてた。全うな戦いで倒せる相手ではないと、その虎武黒討伐に志願した者がいたの。

その者は軍師であり、討伐の引き換えに一族の繁栄を願ったの。


その軍師は虎武黒の儀式に目を付けた。

虎武黒は戦場で名のある強者を倒すと、その首を狩り、相棒の黒虎に食わせていた。

それが虎武黒の命取りになったの。

突如始まった戦場に、虎武黒は現れた。

しかしその戦場は謀によって始まった偽りの戦場。

軍師は将軍を任せれ、偽装の戦場の中で虎武黒の手で討たれたの。

そこで終わるはずが、儀式通りに男の首を狩り相棒の黒虎に食べさせる。

「ギャハ!」

突然、黒虎は血を吐いて倒れ込む?

「黒虎、どうしたのだ!?」

慌てて近寄る虎武黒は気付く。

猛毒に黒虎が侵されている事に?

「まさか!!」

そこで気付いたの。

今、首を跳ねた将軍は死ぬ間際に猛毒を飲み込んでいた事を。

それを食した黒虎が同じく猛毒に倒れた事に。

そんな馬鹿げた策をするなど考えてはいなかった虎武黒は油断し罠にかかったの。

「おのれ!」

しかし、策は終わらなかった。

黒虎を失い、機動力を失った虎武黒に潜んでいた数万の兵士達が襲い掛かって来る。

しかもその武器には全て同じ猛毒が塗られていたの。

半数の兵士を道連れにし虎武黒は絶命した。


それが虎武黒の伝説。

それ故に、虎武黒は不完全燃焼で戦死した事に未練が残っていたの、

「若き戦士よ、この私を熱くしてみろ!」

「熱く?ふざけるな!俺様がお前に本当の敗北を教えてやるぞ!」


激しくぶつかり合う中で紅孩児君は更に意識を高めて集中していた。

恐らくこんなに集中力を高めた事なんてなかったかと言うくらい。

そこで気付く。

相手の動きや次の動作が?

今の今まで雑念で見えなかったモノが見えて来たの。

紅孩児君は今、成長している?

素速い動きで紅孩児君の周りを移動しながら更に加速し、隙を見て雷槍で突きを繰り出す。

じわじわと迫るうちに紅孩児君を中心に互いの妖気がぶつかり合って竜巻が起こり私達は中の状況が分からなくなっていく。


「私の攻撃をここまで受け続けるとは見事なものだ。しかしもう終わりだ!」

「何だと?」

「今より私の奥義を見せてやろう。未だかつてこの奥義を見せたのはお前だけだ!」

「そうか?だったら最初で最後だな?」


その時、駆け回る足を止めずに虎武黒が構える。

その構えを見た紅孩児君は、

「まさか!?」

その奥義を見て身震いしたの。

その奥義が繰り出された時、紅孩児君も両手に神気を高める。

「虎穴!」

一直線に向かって来る虎武黒の奥義とは、まさかの虎先鋒が得意としていた虎穴だった。

「その技はもう知っている!」

「何だと!?」

虎武黒の槍から繰り出された虎穴は真空の槍となって一直線上に紅孩児君に迫る。


「その奥義の対策はもう身体が覚えてる。何度も食らったからな?これが俺様の虎穴対策だ!」


虎穴とは真空を作り上げた事で先ず相手を吸い込むように引き寄せ見動きを奪い、そこにカウンターの真空の突きを繰り出す大技。その威力は本来の二倍にも三倍にも鋭く、そして絶対に回避不可能。

かつて孫悟空は相手の虎穴に対して同じ虎穴を繰り出して止め、更に応用版の雷の虎穴にて攻略した経緯があるけど、まさか同じ方法で?


すると紅孩児君は何を思ったのか?

踏み出すと同時に虎武黒の虎穴に向かって逆に飛び出したの!?

そんな事をしたら余計に虎穴の威力は増して回避なんて出来ないわ!

まさかヤケになったの?

互いに中心にてぶつかり合う。


完全に虎穴に嵌った。

あの技は胸に空洞を作り上げ風穴を開けるの。


「!!」


そして私達は見た。

その決着の結末を!

う、嘘?

心臓を貫かれていたのは虎武黒の方だった。

虎武黒も自分の奥の手だった奥義を破られた事に驚きを隠せない。

「ま、まさか!?」

そして全て理解したの。


まさか、こんな打開策あったなんて?

けど、これは無謀にて命がけ。

下手をしたら自滅行為だわ?


紅孩児君の無謀にも思えた行為には意味があったの。勢いよく飛び出した事で相手の全力の突きを繰り出すタイミングをずらして早めさせ、突き出される最高点に達するより先に火尖槍を突き出したの。もし虎武黒の突きが最高点に達していたら貫かれていたのは紅孩児君だった。なのに紅孩児君の無謀とも勇気とも言えない行為が逆に勝利を手にした事は間違いない。

自分自身の行動に一瞬の躊躇いがあったら、その僅かな動揺が隙となって勝敗の結果を変えていたかもしれない。自信?一途?馬鹿?それが紅孩児君の強さでもあって恐さでもあるの。


「お前という男は・・・」


虎武黒はゆっくりと黒虎から落下する。

その虎武黒を支えたのは紅孩児君だった。

「お前の虎穴を俺様は知っていた。その技で俺様は敗因を味わったくらいにな?もし初見だったら倒れていたのは俺様の方だぞ」

「・・・そうか、恐らく私の未完成だった虎穴の秘伝書を見た者が完成させたのだろう」

「今回の戦いは引き分けだぞ」

「ふふふ。いや、それもまた経験値だ。お前、名前をもう一度教えてくれないか?この私を倒した戦士の名を刻んでおきたい」

「俺様は紅孩児様だ!」

「ならば紅孩児よ、胸をはれ!お前はもっと強くなる。もっともっと強者と戦えば、さらなる高みへのぼれるだろう。そして私の代わりに最強の称号を手に入れてみよ!」

「当然だぞ!俺様は最強になる男だ!」

「ふふふ。頼もしい・・・私はこの神殿に蘇った。そして謀のない正当な戦いに甘んじれるようになった。己の強さのみで戦うこの闘技場に私は満足している。そしてお前のような戦士に敗れた事を名誉としよう!」


すると虎武黒は紅孩児君の胸の中で消えて逝ったの。

残された黒虎も後を追うように消えて逝った。


つまり?


紅孩児君は腕をあげて勝利を示したの。

「やったわ〜!!」

私達も顔を見合わせ紅孩児君の勝利を喜んだ。


「うぬぬ。まさか虎武黒が負けるとは思っても見なかったにゃ。しかし考えてみたら虎武黒の最大限に活かせるのは戦場での集団戦闘だったにゃ。一騎打ちにはむいてなかったにゃ。それに相手が何故らか奥の手も知ってたみたいだったし、ラッキー勝利にゃ!」


梁渠は紅孩児君の勝利を認めると、

「勝利した者よ!続行にゃ?それとも交代にゃ?」

紅孩児君は血が騒ぐように梁渠を指差して答えたの。


「続行!」

「良いニャ。でも次はそう簡単にはいかないニャよ?次の階層に向かうニャ!」


すると突然私達の身体が浮いたような感覚になって止まったの?

「何、今の感覚?」

「恐らく転送されたのだろう」

「転送?」


私達は最初の宮殿にいたのだけど、勝利した事で次の宮殿へと全員纏めて転送されたらしいの。

便利ね!

梁渠は再び相手の駒を手の中でかき回して、ルーレットの中へと放り込む。

すると次の神将の駒が舞台に現れて、その名前から新たな神将が姿を現したの。


「とんでもない奴が現れたニャ!あの小僧、もう助からないニャ」


梁渠が自信満々に誇る新たな干支十二神将の姿は、真っ赤な鎧を纏った巨体の戦士。

そして鎧の下に見える鍛え抜かれた筋肉から只者でないと分かる。

けど、それ以上に特徴的なのが頭が黒牛ならぬ赤牛の戦士だったの。




えっと、虎の次は牛なのね?


そんなこんな。


次回予告


紅孩児の続闘の相手は?


その相手はかつて・・・

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