梁渠ニャ!
法子達は唯一の救いを求めて干支十二宮殿へと向かった。
そこに待ち構えているものとは?
私は法子
私達は錬金魔王さんの案内で干支十二宮殿へと向かっていたの。
錬体魔王さんが言うには孫悟空と阿修羅の容態はとても悪く、もって三日。
出発地点から目的地まで猛スピードで飛行雲を飛ばして一日。
目的果たして一日で戻りで一日。
本当にギリギリだわ。
私達の目的は、かつて錬体魔王率いる妖恐達を倒した化け物の持つ毒を入手して血清を
作る事。万が一血清が間に合わなくても願いが叶う秘宝にかけるの!
でも何でも願いが叶う秘宝なんて本当にあるのかしら?
ここまで来たら、
もう信じるしかないわ!
干支十二宮殿には私と八戒、それに白骨乙女さんと錬体魔王さんに鉄扇ちゃんが向かう事になったの。
どうやら危険な戦いが待ち構えてるらしいからね。
因みに黄袍怪さんには嶺黄風国に残って内乱の監視をまかしたわ。それに沙悟浄には孫悟空と阿修羅の治癒の継続をお願いしているの。せっかく私達が戻って来ても二人が助からないと意味ないもん。そうそう!後、玉龍君には特別な御使いを頼んでいるのよ?
それから二日かけて目的地まで私達は来たの。
干支十二宮殿は本当に観光地みたいで立派な所なの。
宮殿のような建物や、大理石の床、それからゴミ一つなく整理されてたの。
見える物全てが眩しいくらいに綺麗なまま存在していた。
ただ、人っ子一人いないけどね?
けど案外、結界の中には簡単に入れた事が不思議だったわ。
「この宮殿には入るのは容易いが、一度足を踏み入れたら最後、二度と戻れはしない」
「けど錬体魔王さんは一度は尻をまいて逃げて来た事があるんでしょ?」
「・・・すまぬが、少し言葉を選んで欲しいが良いか?」
「あら?ごめんなさい。悪気はないのよ?」
「悪気があったらたまったもんではないが、うむ。正直、どうやって逃げて来れたのか記憶がないのだ。今でも思い出せぬし、気付いた時には宮殿の外で意識を失っていたのは覚えている」
「使えないわね」
「悪気ないと思うが少し言葉を選んで欲しい」
「あ、門があるわ!急ぎましょ!」
私が走り出すと錬体魔王は「放置か?訂正してから走れよ!」と嫌そうな顔をしていたのを私は知らない。私達は門を抜けると柱が幾つも列ぶ階段を登って行く。
そして暫く歩いた後、最初の宮殿が見えたの。
「あれが宮殿なの?」
「ここから先は皆、気を抜くな」
私達は緊張して最初の宮殿の中に入ると、そこは大きな広間があって、中央に広い闘技場があったの。
「まさか、ここで戦うの?私達?」
「う、うむ」
かつての敗北の恐怖に錬体魔王も口数が減る。
そこに紅孩児君が口を開いたの。
「あそこに誰かいるぞ!!」
紅孩児君が指差したのは闘技場の真ん中で一人、私達を見ている者がいたの?
「もしかして、あれと戦うの?」
「いや、あれは私の知る物がではない」
すると警戒する私達に向かって、その者は近寄って来たの。
「お久しぶりのお客様にお出迎えが遅れて申し訳ないニャ」
「へっ?」
その者は中華風の衣を纏った猫妖怪だったの。
見るからに恐い力を持ってるようにも見えないし、少し可愛いくらい。
「我輩の名は梁渠ニャ!この十二干支宮殿の案内役なのニャ」
梁渠と名乗る猫妖怪は挨拶し私達を物色した後に、
「残念ニャ。お引き返し願うニャ」
えっ?何?
「ちょっと!私達はこの十二宮殿にある何でも願いが叶う秘宝が欲しいの。引き返さないわよ!」
「目的が邪なのは正直だにゃ?しかしこの干支十二宮殿に挑むには十二体の屍じゃなくて捧げられる生贄じゃなくて、戦う戦士が必要にゃ!」
「うっ!アンタも嘘がつけない性格なの?それともワザと?」
「どっちでも良いニャ!この十二宮殿に挑むには十二人の命知らずの名をこの駒に刻まないと始まらないのにゃ!」
梁渠が見せたのは十二個の駒だった。
私達の人数は私を含めて六人。
「そこにいる錬体魔王は魂の存在だけど一人と数えて良いのかしら?」
紅孩児君も掌に小鳥を召喚させたの。
「ピイちゃんもいるぞ!」
「あら?これで七人ね?」
「駄目にゃ!その幽霊と鳥は反則にゃ!そこにいる二人と魂が融合してるから二人で一人とみなすニャ」
「ケチくさい事言わないでよ?私達のが少ないなら貴方達が有利で構わないでしょ?」
「そうはいかないニャ。こちにも理由があるのニャ!大人の事情にゃ!十二人いないなら消えるニャ! 来年また来るにゃ!」
「何よ?その理由って?私達には時間がないのよ!直ぐにでも始めたいのよ!」
「この干支十二宮殿に挑むには十二人の魂を掛ける事が必要不可欠なのにゃ」
十二人の魂を掛けるですって?
つまり負けたら駒に名前を書かれた者の命を取るわけね?
そういう事か・・・
「ん?」
「なんにゃ?」
私は少し考えた後に、梁渠に近付いて駒を奪うと、文字を記入したの。
「これでどう?文句ある?」
「それなら問題ないニャ~」
思ったより簡単に梁渠は了解する。
私は皆の所に戻ると、皆が不思議そうに私に集まって問いただす。
「何を言ったの?」
「どんな手を使って梁渠を言い負かしたのだ?」
白骨乙女さんと錬体魔王さんも私に言い寄ると、
「いえね、ここにいないメンバーの名前を駒に書いたのよ?」
「何ぃ??」
「ほら?私達が戻らないと孫悟空と阿修羅だって助からないでしょ?」
「二人の名前を書いたの?何て無責任な!けど、それでも足りないわよね?」
鉄扇ちゃんが不思議がるので私は平然と教えてあげたの。
「沙悟浄よ?」
一瞬で全員顔が青褪める。
孫悟空と阿修羅ならまだしも、まさか沙悟浄の命を勝手に使うなんてと!
「待つらよ?後二人は?まさか考えられるのは玉龍と、後は誰を??」
八戒が信じられないような事を言うから私も怒る。
「そんな玉龍君が可哀相な事が出来ないわよ!そこまで私は鬼鬼畜じゃないわ」
「鬼鬼畜の自覚あるらか?沙悟浄は良いらかよ?」
「あんたって!!」
さすがに仲間割れ寸前になって怒る鉄扇ちゃんに私は諭す。
「負けなきゃ良いの。負ける気ないし、私達は勝って願いを叶える。他に選択肢はないの!その覚悟持ちなさい!」
「!!」
正当のような?言い負かされたかのような感じて皆が落ち着いた所で本題に戻すわ。
「で?私達はどうしたら良いの?」
私が聞くと、梁渠は私達の目の前に黒板みたいのを置いて文字を書きながら説明してくれたの。
けど、私には読めないので皆が読み直してくれる。
「説明するニャ!よく聞くにゃ?一度しか言わないニャ!明日のテストに出るか出ないか分からないニャ!でも暗記するニャ!空で言えるようにするニャ!」
何かウザく感じて来たわ。
一 一体一で戦う。この場合聖獣と契約者は一体とみなす。
二 戦う順番は駒を投げ、対戦相手を決められる。
三 勝者は続闘出来る。
四 勝ち負けは相手の死で終わる。
五 どちらか十二人が全滅するまで終わらない
「ちょっと?アンタが審判なら私達に不利じゃない?私達はアウェイよ?」
「見損なうニャ!我輩は誰の味方でもないニャ!だから安心して死ぬニャ!」
「死なないわよ!」
「この干支十二宮殿に挑んで生きて帰れた者はいないニャ!」
えっ?
「そう言えば錬体魔王さんは生きて戻ったのよね?」
そこで梁渠は錬体魔王の姿に気付いて一言呟く。
「そう言えば戻って来たようだニャ?お前さんのお陰で神殿を護ってた奴が一体外の世界に出てしまったニャ」
「えっ?それってどういう事?」
「何も知らないのニャ?教えてやるニャ。この干支十二宮殿を守護する干支神将達は千年の間、無敗を通して来たのニャ。そこで今年、お前達に勝利した者はお前達の肉体を手にして甦るのニャ!千年前の覇者が現代に現れるのニャ!」
えっ?
「それって私達が負けたらヤバイ奴達が世に放たれるって事?」
「そうニャ。この三百年の間、挑戦者が一向に現れなかったから全員やる気満々ニャ。そしてお前達を倒して蘇った暁には地上で千年前の魔王が新たな戦争を起こして世界を再び脅かすニャ!そうならないようにお前達も少しは足掻くニャよ?どうせ全滅になるのが落ちニャけど」
「私達は負けないわ!」
「自信あるようニャ?そこの男も変な化け物を連れて来て自信満気で挑んで来たけど、たった一体の干支神将に全滅させられたニャ。そんでソイツは外へ出て行ったニャ!とんでもない邪悪な奴だったから今頃世界を奪う動きを見せるかもニャ」
「そんな奴が外で野放しになってるの?」
「自由になったと同時に暴れ出して神殿を一つ破壊して消えて行ったニャ。そのどさくさに紛れてその幽霊男も逃げ出したニャよ。なのに結局死んでるなんて笑えるニャ」
「覚えていないが、そうだったのか?」
錬体魔王さんも驚いていた。
その時、錬体魔王さんは肝心な事に気付いたの!!
「待て!!それなら私を倒した奴はもう、ここにはいないと言うのか?」
「そうニャよ?」
「それがどうしたの?強敵が減ったのは取り敢えず幸運じゃない?」
「馬鹿か?私達の目的を忘れたのか?」
「へっ?」
そうだったわ!
かつて錬体魔王を倒した化け物から毒を入手して血清を作る事だった。
「梁渠?悪いけどやっぱり止めるわ!」
「却下にゃ!もうお前達は宮殿を制覇しないと二度と帰れないニャ!」
「う、うそ??」
私達は引き返そうと試みたけど、同じ場所に戻って来てしまったの。
「ゼェゼェ、無理みたい」
「こうなったら前に進むしかないな」
「そのようね。こうなれば、何でも願いが叶う秘宝で助けるしか手がないわね」
私は再確認する。
「ねぇ?梁渠、伝説の願いが叶う秘宝ってのは本当にあるんでしょうね?」
「それはあるニャ。吾輩は見た事ないにゃが、火のない所に煙は立たぬにゃ」
「嘘だったらわかってるわよね?」
私は恐い顔で梁渠を見下ろす。
「それに瀕死で死にそうな仲間も助けられる?複数?」
「そんな願いはおちゃのこさいさいニャ」
「本当に本当ね?」
「疑り深いニャ~心配しなくてもお前達には制覇は勿論、全滅にゃよ」
「わかった。信じるわ!挑戦してやるじゃないのよ!」
すると梁渠は闘技場の真中へと飛び上がり着地する。
「ふふふ。覚悟は良いニャ?お前達はもう引き返す事は出来ない所に足を踏み入れたニャ。蟻地獄ニャ。生きて帰るには干支十二宮殿の神将を全て倒さないといけないニャ。無理とは思うが、せいぜい頑張ってるみるニャ」
「ありがとう。つまり全勝すれば良いのよね?わかりやすくて良いわ!」
私の強気に全員が逆に怯む。
その中で唯一、この戦いを待ちに待っていたのは?
「さぁ〜俺様が一番手でやってやるぞ!そして全員ぶっ倒す!」
それは今まで黙って着いてきていた紅孩児君だったの。
「やる気満々ね?」
「おーう!」
張り切る紅孩児君を見て梁渠が不満げに空気をかえる。
「説明聞いてなかったかにゃ?戦う順番は我輩が駒投げて決めるニャ!勝手に決めるのは却下にゃ!」
すると梁渠は右手に干支十二神将の駒を持ち、左手に私達の駒を手にする。
もしこの場にいないメンバーの名前が出たら不戦敗になるのかしら?
そこまで考えてなかったわ。
梁渠は駒を投げると、突然足下からルーレットのような石版が現れて二十四個の駒がカラカラと中で回転する。
「何が出るかニャ?誰が出るかニャ?どれが出るかニャ?にゃにゃにゃ!」
すると二つの駒がルーレットの中央で数回ぶつかり合って、真ん中にある穴に落下すると突然噴出されて飛び出しながら徐々に大きくなって石版となって闘技場の中央に落下したの。
「あれは!?」
そこに書かれた名前は?
「よっしゃー!」
その名は紅孩児君!
すると石版が光りだすと、私の隣にいた紅孩児君の身体も輝いて消えていくと、突然石版から飛び出して闘技場に現れる。
そして、もう一つの石版も光りだすと私達の前に千年前の伝説の魔王の一人目が姿を現したの。
その姿は黒虎の毛皮を羽織る半裸の戦士のようで、その手には一本の槍を構えていたの。そして寄り添うように従う黒虎の姿があった。
「あれが十二干支の神将?」
現れた神将の姿に梁渠は首を振る?
「ヤレヤレニャ。まさか最初にあの伝説の魔王が出て来るなんて誤算ニャ。これじゃ観戦楽しむ事なく終わるニャ」
「ちょっと?あれは誰よ?教えてよ!」
「何?知らないのかニャ?あの伝説の虎武黒魔将軍を!?」
「虎武黒魔将軍?」
紅孩児君が相手する虎武黒魔将軍とはどんな相手なのか?
そして紅孩児君は勝利出来るの?
それは次の話よ!
そんなこんな。
次回予告
いよいよ干支十二宮殿の戦いが切って落とされた。
初戦は紅孩児と虎武黒
千年前の魔王である虎武黒の実力とは?




