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生者根絶!

虎先鋒の強さに圧倒される孫悟空達、


地下での浄化法を試みる法子達。


その結末は?


私は法子

私達は半人半妖を生み出す泉を浄化しようと浄化法を唱えているの。

この泉を放って置いたら、何度も何度も繰り返されるに違いない。

半人半妖の儀式!

それは更に殺戮への序章に過ぎないの。


例え核を取り除いたとしても、新たな核を用意されたら同じ事。

だったら、この泉を無くしてしまえば良いのよ!

だけど、この泉を全て浄化するのは命がけに近いわね?

この泉にかけられた数千、数万以上の魂。この泉を作るために殺された妖怪達、半人半妖の実験に使われた人間達。それがこの三百年の間、この地を作った王によって始められた。

その固まり固まった怨念は凄まじく、本来一体の霊を浄化するのにも手がかかると言うのに、これは私の手に余る。けど仲間と一緒なら出来ない事も不可能を可能しなきゃ!


「この娘、本当に人間なのか?」


金角児は私を見て驚いていたの。

正直無駄な足掻き、失敗して終わった後は銀角児を連れて遠くに離れるはずだった。

救済の力?

人間レベルでどうこう出来る内容でもなく、神でも出来るか疑わしい。

この泉は既に地獄と繋がってきる。私達のしている事は地獄を浄化させるようなもの。

暴走した後、恐らく島一つは消し飛んで暗黒地帯になるかな?

それだけの異常な磁場が発生していたから。

この状況に匙を投げようと考える金角児。

「そろそろ諦めるか?」

今、逃げれば金角児と銀角児は助かるだろう。

なのに身体が動かないでいたの?

金角児は首を振って続ける。

別に拘束されているわけではない。

この場所で私を見届けたいという愚かな好奇心が金角児を押し止めていたの。

「クソ!クソ!クソ!ふん!」

もう排泄物なみの自責の念を吐き出すと、

「最後まで付き合ってやる!」

覚悟を決めたの。

すると、金角児の隣に別の者の力を感じる?

「状況分からないけど金角児が頑張ってるようだから僕も入れて貰うよ?」

それは目覚めた銀角児だったの。

「銀角児、起きて早々地獄行きかも?」

「金角児、大丈夫!僕達が揃えば出来ない事はないんだよ!」


その直後、金角児と銀角児の力が融合していき私にのしかかる力が倍増したの。

沙悟浄は二人の妖気が変質している事に気付く。


「二人の妖気が神気に変わっていく?どうなっているのですか〜?」


金角児と銀角児

かつて天界から落ちて来た双子の神を喰らった金角と銀角と呼ばれる妖狼がいた。

二匹の妖狼は神を食べた事で並の妖怪とは桁違いの力を手に入れ人間を襲っては暴れ回っていたけれど、旅の一行だった孫悟空達に倒されたの。

けれどそれは始まりだった。

妖怪に食べられた双子の神は妖怪の体内で生き続けていたの。

しかも妖怪の邪悪な魂を吸収して育った赤子は、金角と銀角が死んだ後に蘇ったの。

神と妖怪の半神半妖として!

その特異な気を持つ双子は本体だった金角と銀角を遥かに上回る異種神となった。

金角児と銀角児から神気が解放された!


「嘘?何よ、この力は?神気なの?」


神気は私達人間の霊気より濃縮な浄化の力を持っている。当然、妖気みたいに霊気を変換する必要ないし、その一手間は悪循環でロスなのよ。

でも神気は浄化にはもってこいなの!


「これならイケるわ!」


私は金角児と銀角児の神気を一度に受け止めて浄化法を更に高密度により難易度の高い術を私は試みる。て、正直私のレベルでは本来なら不可能なのだけど、これだけの神気があれば高難度の術も出来るかな?とか、まぁ~沙悟浄がサポートしてくれるからの無茶なんだけど、これが出来たら不可能を可能に出来るかもしれない!

「法子さーん!」

「もう少し堪えて!沙悟浄!」

「いえ、私は神気の免疫があるから大丈夫ですが、法子さんの方が心配です!」


真剣な顔で私を案じる沙悟浄に私は親指を立てて心配するなと合図する。

確かに神気を人間の私が生身で受けるのもまた自殺行為に近かった。

神気は人間には持て余す力なの。

そうね?例えるなら三輪車にスポーツカーのエンジンを乗せるようなもんかな?直ぐに壊れます。

「まぁ、私は三輪車じゃなくてジェットコースターよ!」

それでも壊れるとか言わないでね?

けどね?

正直身体なんか気にしてる場合じゃないの。

もう終わったら二、三日は起き上がれないでしょうね?


「神気浄化法!」


神々しい力が泉を浄化し始める。

そんな私に金角児と銀角児が助言する。


「おい、人間の女?」

「な、何よ?」

「まだイケるか?」

「どういう意味?」

「そろそろ全開で神気を送ってやる。最初から飛ばしたらお前が壊れたりしたら面倒たをからな?けど僕達の全開を受け止められないで壊れるなら、それは仕方ない。どうする?」

「当然出し惜しみ無しよ!」

「ふん。少しは粘れよ?」

「宜しくね、金角児と銀角児だっけ?」

金角児と銀角児は一歩下がると私の背中に手を置くと神気を集中する。

「ねぇ?金角児、この人間壊して良いの?」

「銀角児、この人間の娘は・・・」

「何?」

言いかけて止める。


私も緊張する。

一気に神気を受けて私の身体大丈夫かしら?

けど、阿修羅の頑張りに私も答えなきゃ!

私は倒れて起きない阿修羅を見る。

金角児と銀角児の背に沙悟浄が手を置く。

「私がサポートしますから!」

「頼むわ!」


私達は緊張の中で、一呼吸した後に全員同時に神気を使った浄化法を発動させる!

そして私が唱えた真言は!


「ナウマク・サンマンダバザラダン・センダ・マカロシャダ・ソワタヤ・ウンタラタ・カンマン!」


それは不動明王の浄化真言だった。

その真言を唱えた私に沙悟浄は涙を流していたの?


(本当に被って見えます・・・)

かつての師を被せて見ていたの。


私達は全開で力を合わせる

光が満ちていく。

清浄な気が覆い、泉から発していた障気が浄化されていく中で、縛られていた荒魂が解放され鎮まっていく。私達が見守る中で人間、妖怪関係なく魂は鎮魂となり光となって極楽浄土へと消えていく。

赤子の魂もまた穢れが消えて天使のように召されたの。


そして、私達はついに


「やりましたね?法子さん!」

「ギリギリだったけどね?もう霊力がスッカラカンよ?」

私は膝をつきへたり込む。

「もう駄目!立ってらんないわ〜」

その偉業に力を化してくれていた金額児と銀角児も驚いていたの。半信半疑だった。なのに人間の身で自分達の力を受け止め不可能を本当に成功させた事に!

「あの力はいずれ自分達にとって危険だよ金角児?今、ここで始末するかい?」

銀角児のこのタイミングで恐ろしい提案に金角児は答える。

「いや、放っておこう。いずれ敵になるなら僕達が更に力を手に入れるだけさ。それに・・・」

「それに?」

「いや、何でもないよ銀角児」

金角児と銀角児は私達に向かって

「おい!女ぁ!借りはかえしたぞ?僕達はここでオサラバだ!次に会う時はお前達にとって敵となるだろうよ!あはははは」

金角児と銀角児の姿が私達の前から消える。

「敵になるの?惜しいな〜このまま私の下僕にしたかったのに。チッ!」

私の悪巧みに沙悟浄と玉龍君が引いてる。

「じょ、冗談よ?」

「・・・」

二人の目は明らかに信じてなかったの。


「本当に成し遂げたね。本当に不可能を可能にした」


それは一部始終を黙って見ていた無風さんだった。

あ、夢中で忘れてたわ。

「どう?何か答えは見つかったかな?」

私の問いに無風さんは何も答えずにいたの。

何か考えてるみたいだけど、心読めないわね?

この辺りは阿修羅に似てるわ。



場所は再び城内屋上王の間。

そこでは虎先鋒を相手に紅孩児君、八戒、黄袍怪が戦っていたの。

「こやつ強すぎです!八戒さん」

「そんなの知ってるらよ!」

「くそぉー!」

三人がかりでも苦戦している中で、孫悟空はいまだ目覚めないでいたの。

そして夢を見ていた。


かつての辛い記憶の夢を・・・


「久しく思い出さないでいた。思い出すのが辛かったから。苦しく、辛かった前世の記憶。けど、忘れてはいけない。俺様が唯一愛した女・・・」


えっ?孫悟空に女??

前世の美猴王だった時、戦場で出会った人間の娘がいたの。

決して結ばれる事のな妖怪と人間、それは禁断の愛。

けれどそれだけじゃなかった。

その女性は虎先鋒の主人だった黄風魔王の娘だったの。

その禁断の恋は彼女の死で終わった。

守りきれなかった唯一愛した女性の死。

それは転生した今でも重くのしかかったの。

虎先鋒にその名を聞かされた孫悟空は攻撃の手を止め、そして虎穴で貫かれた。

孫悟空は自責の念で苦しむ。

「俺様はまた」

孫悟空は彼女を自らの手で終わらせたのだから。


愛した女性を殺した?

孫悟空に昔何があったの?


孫悟空は目を覚ますと過去を振り切っていた。


「俺様は俺様の夢のためにあの女を捨てたのだ。捨てたモノを再び取り戻そうなんて傲慢過ぎだな」


非情な言葉とは裏腹に涙を流す孫悟空は、彼女との約束を思い出したの。

「私達を救えるのは貴方だけよ」

彼女の父親であった黄風魔王は半人半妖の世界を作り、全ての妖怪を根絶やしにすると。

そして今、その意志を継いだ虎先鋒がその世界を作ろうとしている。


「過去との因縁。今ここで決着をつけるぜ!」


孫悟空は再び立ち上がると、戦場に足を踏み込んだの。

その姿は朱雀変化でもなく白虎変化でもなかったの。その姿は玄武変化だったの。

「孫悟空!」

孫悟空の参戦に紅孩児君と八戒が気付く。

けれど孫悟空の玄武変化は動きが鈍く、虎先鋒を相手には分が悪いはず?なのに何故?


「だったら動かせるようにするだけ!」

孫悟空の身体に装置された鎧が外れて落ちていく。

残されたのは左腕に装置された玄武の盾のみ。

「これだけあれば戦える」

そして虎先鋒に向かって指差したの。

「因縁に決着をつけるぜ!」

孫悟空は駆け出すと虎先鋒に向かって行く。

いくら孫悟空が参戦したからって三人がかりでも勝てない覚醒した虎先鋒に適うの?


「お前が蘇る前に仲間の首を並べる予定だったのにな?その命、今度こそ我が主に捧げさせてもらうぞ!」

「やれるものならやってみろ!」

虎先鋒は素早い動きで孫悟空の間合いに入る。

「虎穴」

その一撃必殺の奥義が孫悟空の首元目掛けて突き出される。

けれど虎穴は止められたの。

「虎穴でも玄武の盾までは破壊出来なかったようだな?」

「おのれ、小細工を!しかしそのような盾で進化した虎穴を躱せられるか?」

虎先鋒は妖気を高めると、その構えから妖気の大虎が飛び出して襲い掛かる。

その牙や爪の一撃が全て虎穴に匹敵する攻撃力。

受け止められるものじゃないの!

更に虎先鋒の蹴りや拳が繰り出される中で孫悟空は全て玄武の盾で受け止める。


「強固な盾で守られ防戦一方か?情けないぞ!」

「お前こそ数百年もの間、いつまでも成長しないな!過去同様、この俺様がお前の野望をぶち壊してやるぜ!」

「野望だと?これは救済だ。この世を平和にするためのな?それが我が主が託した夢!俺はその未来へ世界を作り上げる」

「それが今の大量殺戮か?半人半妖の世界が救済だってのか?」

「無論。確かに最初は妖怪のみを駆逐すれば世界は救われると思っていた。そのために毒は毒をもって制すれば良いとな?だが違った。人間もまた駆逐するべき対象だった。互いに反発するなら一つにすれば良い。だからこそ導かれた答えが俺の求める統一世界なのだ!」

「くだらねぇな?」

「所詮は妖怪のお前には話しても無駄のようだな」

「馬鹿はお前だ!どうやらお前は道を誤り、身も心も魔物と化したようだな?お前のやってる事は救済でもなんでもない。ただの傲慢だ!考えてみろよ?半人半妖の世界を作ったところで、今度は半人半妖同士の争いが始まるだけだぜ?それに気付いてないわけではないだろ?」

「ならばまた壊せば良い」

「!!」

「失敗したら、やり直せば良い。半人半妖で争うなら争い分子を選別していくまで。そしていずれは」

「お前の思い通りの世界を作るんだろ?」

「なんとでも言うが良い」


虎先鋒は虎穴の構えを取る。

「真・虎穴!」

六本腕から繰り出される真・虎穴は妖気を纏った大虎と化して再び襲い掛かる。

孫悟空は玄武の盾で受け止めながら重く激しく鋭い攻撃に防戦一方だった。


「孫悟空、何かやるつもりだぞ?」

紅孩児君は孫悟空の考えを読み取り、その動きを瞬きしないで見ていたの。

孫悟空は妖気を高めると、

「虎穴ぅー!」

孫悟空は虎先鋒の奥義虎穴で貫いたの!


「どうだ?久しぶりの虎穴だが上手く使えたぜ?」 

「そうだったな」


過去に二人は戦い、美猴王だった孫悟空は同じ区虎先鋒の「虎穴」を使いこなしていたの。


「それがお前の奥の手か?ならばお前に勝ち目はない。何故なら俺はこの三百年の間に更に進化しているのだからな!先程の真・虎穴はお前を殺すためではなく生かしたまま動けなくするつもりだった。お前の前に仲間の首を並べると言っただろ?」


虎先鋒は再び妖気を解放させると、その六本の腕から「虎穴」の構えを取る。

「真・虎穴!」

再び大虎が出現すると、その覇気を纏った威圧感は桁違いに圧力は先程の数倍にもあった。

その一撃を受けた孫悟空は玄武の盾で受け止めるも強烈な力で弾き飛ばされる。


「まだまだ!その首を撥ねるまで真・虎穴はお前を襲う!」


唸り声があがり孫悟空に迫る大虎。

爪も牙も虎穴と同じ、違う。桁違いの攻撃力なの!

それでも孫悟空は構えを取り、何かを狙っていた。


「猿、大丈夫らか?」

「心配ないぞ。孫悟空はやる奴だ!」

「孫悟空さ〜ん」

紅孩児君と八戒、黄袍怪が見守る中で孫悟空の瞳が金色に光り輝いていたの。

れは青龍王との戦いで見せた魔眼なの?


「俺様は決着を付ける。それは奴を死なせてしまった責任。俺様は誓った。もう二度とお前のような半人半妖を生み出すような悪魔の所行はぶっ壊してやるとよ!」


それはかつて孫悟空が愛した女性との約束。

その方とどんな関係でどんな事があったなんて私は知らない。

けど、本当に大切な方なのだと。

孫悟空の金色の瞳からは涙が流れていたから。

孫悟空は構えから玄武の盾を消した?

何故?

けれど逆の手に新たな聖獣の力が宿る。

迫る真・虎穴の大虎に向かって孫悟空は虎穴を放つ。

う〜ん、うん!違うわ!あれは!?

「雷光」

孫悟空は白虎の雷を右手に集め、その雷が全身を覆う。

それは変化せずに一点に力を集中させて能力のみを引き出しているの。

でも、左腕には玄武の力を集中させて盾のみ引き出してるって、あんた器用すぎるわよ!

孫悟空の姿が残存を残し消えた。

すると虎先鋒の真・虎穴で現れた大虎が木っ端微塵に消え去る。

本来雷は真空の中では力を失うけれど、玄武の盾が真空の壁を破壊して内部から破壊したの?

さらに孫悟空は雷の如く不規則に猛スピードで虎先鋒へ向かっていく。

「くっ、おのれ!」

虎先鋒の六本の腕から飛ばす虎穴はそんな孫悟空の不規則な動きで全て躱され、間合いに入られる。

「これから俺様流虎穴を見せてやるぜ!」

「何だと?」

孫悟空の身体が雷を帯び、その掌に白虎の力が集中していく。

「雷槍虎穴!」

孫悟空は雷の槍の如く虎先鋒に突進する。

「!!」

気付いた時に孫悟空は虎先鋒の背後にいた。

「ぐはぁっ!」

虎先鋒の唇から血が流れ落ちる。

その胸に風穴を開いていた。

虎先鋒は自分自身に起きた事を過ぎらす。


雷槍虎穴とは?

本来の虎穴は真空を生み出す時に発する吸引力で敵を引き寄せた所を真空の突きで貫く必殺技。

この技の恐ろしさは相手を逃さない事なの。

でも孫悟空は真空ではなく雷を使った虎穴。

それは雷より発生する磁場で相手を引き寄せた所を雷の突きを繰り出す応用版なの。

仕組みこそ同じだけど、白虎の力を凝縮した虎穴は破壊力は計り知れない!


「ま、まさか・・・再びお前に敗れると言うのか?私は?再び夢を砕かれると言うのか?再び!」


虎先鋒の姿が元の姿へと戻っていく。

既に妖気は薄れ、戦える状態ではなかった。

これで決着ついたの?

そこに、


「孫悟空ぅー!」


泉の浄化に成功して最上階にまで上がって来た私達が入って来たの。

私と体力が消耗している阿修羅に玉龍君と、

本来敵だった無風さん。


「どうやらこっちも決着ついてたみたいね?」


孫悟空と紅孩児君も八戒、黄袍怪さんも重傷だけど、何とかなったみたい。

その時、私達の前で瀕死状態だった虎先鋒が再び立ち上がったの!


「ふふふ。まだ終わってはおらん!」


すると私に向かって瞬間移動して来たの!

「法子ぉー!」

孫悟空が叫ぶ中で私も警戒する。

どうしよう?

いくら手負いだとしても、私ももう戦える力なんて残ってはいないわよ〜


けれど虎先鋒は私を通り過ぎ、無風さんの前に立つ。

まさか最後に裏切り者の処罰とか?嘘?


「無風さん逃げて!」


けれど私達は再び予想を裏切られる。

虎先鋒は無風さんの前に膝を付いて頭を垂れる。

えっ?どういう事?


「我が主よ・・・すみませぬ。私はここで終わりのようです。この先、貴方様の行く末を見届けられないのは惜しむところですが、貴方はもう私無しでも全てを手に入れられる力をお持ちでいます。貴方のお好きなように生きて、くだ、され・・・」 

「今の今までよく仕えてくれた感謝する虎先鋒よ。安心して眠るが良い」


虎先鋒は無風さんに手を差し伸べると無風さんも握る。

そして虎先鋒は光となって消えて逝ったの。

その状況を全て理解したのは孫悟空だった。


「まさか、生きていたのか?玉風!」

「今は父の名を受け継ぎその名は捨てたよ」

「やっぱり生きていたのか?」


孫悟空は無風さんの事を知ってるようだった。

それは三百年も昔に。


「本来、半人半妖は短命だから三百年も経って生きてはいないと思っていたのにな」

「虎先鋒が延命の研究をしてくれたお陰さ。そして三百年経って、ようやく僕の答えが見つかったよ」


えっ?

無風さんは私達に告げる。


「僕は世界の救済をする」


えっ?

けれどその手段は・・・


「この世界に生きる全ての生者を無にして、最後に僕も無に戻る。それが僕の救済。この世界から争いは消えない。だったら争いの元を無くせば良い。生者根絶。それが僕の導き出した答え」

「何を言って?そんな事」

「君達は不可能を可能にした。僕も何年かかるか分からないけど、必ず成し遂げる。その手始めに悪いけど君達にも世界のために無に返してあげる」


その直後、無風さんから今まで感じなかった覇気を感じたの。

それは私達の見動きを止めた。


「か、身体が動かないわ?何、これ?」

身体に絡み付く気流が私達を縛り上げる。

「僕は風に愛されてるんだ」

突然の突風が吹き、私達は突然力が抜けて座り込む。

「今の突風に力を奪われた?」

そして私に向かってゆっくりと近付いて来たの。

「無、無風くん?本当に?」


無風君は片腕をあげる。

その振り下ろした風の刃は私の首を落とすため。


「安心して?君からは沢山の事を学ばせて貰った。だから僕はもう半妖は作らない。誰の手も借りない。僕は僕の手で全て終わらすから。そこに恨みも怒りも何もない。ただ終わらす。だから恐怖を与えないから」


本当に殺意は感じなかった。

ただ作業的に私を殺す気なの?


「!!」


無風さんが私の首を落とそうと振り下ろした時、その腕は飛び出して来た孫悟空に受け止められたの。


「邪魔はしないで。次は君だから。君には私事で恨みがある。君は僕の父上と姉さん、それに永く僕に仕えてくれま虎先鋒の死を招いたから」


その時、無感情だった無風さんから僅かに殺意が感じられたの。


「相手になってやる。俺様がお前の性根を根本から叩き直してやるからよ!」

「そうかい?けど君には無理だと思うよ?」

「何だと?・・・ん!?」


孫悟空は突然膝を付く?

気付いた時、自分自身の胸から血が噴き出したの?

それは無風さんからの見えない速度の突きだった。

孫悟空は更に苦しみ始める。


「もう君は助からない。今の突きには呪毒が混ぜられている。君は遠かれ早かれ助からないよ」 

「く、クソ・・・」


孫悟空は猛毒の消耗激しく膝をつき、その場にゆっくりと倒れて動かなくなったの。

う、嘘?

その強さ、圧倒的!


「でも罪ある君にも救済はあげる。苦しまずに僕が終わらせる。あの世に旅立つ君達に僕の名を教えよう。僕の名は黄風。さぁ?死へと旅立て!」


黄風は孫悟空にトドメを刺そうと渦を巻いた手刀を振り下ろしたの!

嘘?いや、駄目・・・

孫悟空が死、んじゃう?


「いやぁあああ!!」


私の叫びに答えるかのように私の真横を通り過ぎて呟く者がいたの。


「法子。心配しないで。僕が孫悟空を死なせないから。だから泣かないで?」


それは泉に飛び込んで意識がなかった阿修羅だったの。

けど阿修羅だって戦える状態じゃないはず?


「黄風。君は僕が相手する」 


阿修羅の覇気が倒れている孫悟空にトドメを刺そうとしている黄風の手を止めたの。


「君から先に消えたいようだね?」

「僕は負けない。負けたら君は法子にも手を出すだろ?なら僕は決して負けない」


今、人類の命運をかけた戦いが始まる。


そんなこんな。


次回予告


まさかの展開に結末はまだ終わらない!



※孫悟空の過去の物語は転生記シリーズの

第四部

天上天下美猴王伝説にて語られています。



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