狂戦士玲音!お前は俺様が殺す!
様々な場所での戦士達との戦い
しかし王の正体はまだ謎のままだった。
私は法子よ!
ちょっと待ってね?
今、取り込み中だからさ!
私は半人半妖の夜霧って女戦士と戦ってる真っ只中だから、気を抜いたら首を跳ねられちゃうわ〜
「くっ!」
私は錫杖を振り回しながら夜霧の大剣を弾き返す。
もしこの龍の錫杖じゃなかったら、一撃でへし折られるか一刀両断よね?
流石、龍具!
て、感心してる場合じゃないわね?
私は剣術では敵わないと術札を攻撃に絡めて戦っていたの。札に霊気を籠めれば火炎や雷を放つけれど、これは直接倒せやしないわ。だから盲まし程度にしかならないのは分かってる。
「最高の一撃をかまさないとね!」
私にだって奥の手はあるわ!
そう。
龍神界で貰った龍具の他に、ちょっと気になって立ち寄った倉庫に厳重に置いてあった玩具を拝借して来たんだから!あ、借りてきただけよ?
それは、あっ、ちょっと待った!
「油断していたら首を跳ねるわよ?」
夜霧の剣撃が激しく重く私に降り掛かる。
私は錫杖をブレスレットにしまいこむと、その剣撃を全て紙一重で躱す。
「そんな?お前、何故避けれる?」
「あ、集中力か欠かさないでね?当たりたくないからさ?伊達に貴女の攻撃を黙って受けていたわけじゃないわ!」
私は攻撃を見切っていたの。
そして、このタイミングを見計らっていたの!
「いでよ!龍の籠手!」
ブレスレットから光の龍が飛び出して私の右手に装着されると、龍の籠手は龍気を発していたの。
そして一気に間合いに入ると、拳一発思いっきりぶん殴ったの!
「あちょー!!」
強烈な私の龍の拳が夜霧の腹部に直撃する。
「がはっ!」
悶絶するように倒れ込む夜霧を見下ろし、
「まだやる気?あんまり女の子を殴るの嫌なのよね?正直。けど引き下がってはくれないわよね?やっぱり?」
「くっ、王の前で失態を!許せないわ!」
夜霧は立ち上がると、その綺麗な顔は殺気に満ちていたの。
そして自らの大剣を己の心臓に突き刺す。
「えっ?何?腹切り?自殺?嘘、私が追い詰めたの??」
パニック起こす私の目の前で夜霧さんの身体から黒い霧が噴き出したの??
そして私の周りを覆っていく。
「えっ?何?これ?」
その瞬間、殺気が背後から迫ると私は本能的に躱すと、目の前を刃が数回通過した。
「ひぃ〜」
私は左右見て視界が完成に消える前に明るい方へ飛んで霧から脱出する。
もしかして、この霧全てが夜霧さんの実体?
で、あの中に閉じ込められたら視界がない所を斬られてしまうわけ?
まさに暗殺攻撃だわ!
「これはヤバそう」
私は後方へと駆け出すと、黒い霧が近づき迫って来る。
これは逃げるが勝ちだわ!
私は王の部屋から飛び出して廊下へと出て駆け出す。
こうやって夜霧の注意を私に向けたの。
王の間にはまだ沙悟浄と瑠美ちゃんがいる。
もしこんな攻撃をされたら二人は対処出来ないものね?
それからあの乱入した妖怪の少年。
もしかしたら時間稼ぎにはなるかも!
その妖怪とは金角児だったの。
金角児は玲音と呼ばれる守護者を前に対峙していた。
互いに殺気がぶつかり合う。
「銀角児を返せ!そして殺す!」
金角児は両手を広げると両手に氷が固まりながら爪の形へと変わる。
絶対零度の凍結の爪。
「氷狼の爪!」
瞬間的に間合い入り最強の守護者の玲音に襲い掛かる。
しかし玲音は全て紙一重で躱すと大剣を振り下ろし金角児は氷の爪で受け止める。
「グルルル!」
半人半妖最強の称号を持つ玲音は、かつて氷原の妖怪城へ討伐に出た六人の戦士の生き残り。
玲音はそもそも幼く臆病な戦士であったけれど、そこで兄であった凛音が妖怪に殺された事で潜在能力が爆発したの。その覚醒とも言える力の開放は大妖怪をも凌駕した。それが金角児の双子の弟の銀角児。
共に恨み持つ宿敵だったの。
「あわわ〜瑠美ちゃん大丈夫ですか〜?」
「う、うん」
二人は巻き添えにならないように隠れていると、そこに新たな戦士、いえ?
守護者が近付いて来たの。
「あわわ〜近寄らないで〜」
さっきまで勇敢ぽかった沙悟浄は恐怖しながら降妖宝杖を振り回しているけど構わずに新たな敵は迫って来る。二人の危機はどうなるの?
戦いは城の外でも行われていた。
「何だ?何だ??」
紅孩児君は苦戦していた。
相手の能力は紅孩児君にとっての天敵だったから。
それは炎属性に水属性をぶつけると言った理由ではなく、この戦士の能力は炎喰らい。
この戦士に斬られた紅孩児君の身体から炎が消えてしまい、力を奪われていたの。
「俺様の炎が奪われた〜??」
混乱する中で戦士の攻撃は炎を使った炎撃。本来なら炎攻撃は紅孩児君には無効なはずなのに火傷を負っていたの。
「痛いぞ?マジに火傷したぞ?」
「相手が悪かったな?俺は炎を喰らい奪う能力を持っている。お前はもう無力なガキに過ぎん!」
けれど紅孩児君は戦意を失うどころか逆境を楽しんでいたの。
この敵を倒せば成長出来ると信じて!
「俺様は負けないぞ!」
「お前の炎は俺が奪った。お前はもう手足を奪われた亀だよ!」
「ん?俺様は亀じゃないし、腕も足もあるぞ?俺様はお前が何を言ってるのか理解出来ない」
「お前、馬鹿だろ?」
「馬鹿はお前だよな?ば〜か!」
「ふふ。馬鹿は死ななきゃ分からないようだな?その無知ぶりを後悔して死ね!」
戦士は自らに剣を突き刺すと、鋼の身体の炎を全身から噴き出す龍へと姿へと変わる。
「焼き焦がして消滅させてやる。お前から奪った炎の力でな!」
口から炎を噴き出すと紅孩児君は飛び上がり躱す。
そして落下しながら炎を纏う鋼龍の頭に蹴りを食らわすけれど、ビクともしなかったの。
「がへへへへ!」
勝利を確信した鋼龍に対して紅孩児君は火尖槍を出そうとしても出て来なかったの。
「やっぱり無理か?」
そして腰にさげた剣に手を置く。
それは龍神界で紅孩児君が頂戴した神具だった。
確か名前は?
「煌めけ浄聖鵬魔の剣!」
紅孩児君が剣を抜くと炎が噴き出す。
それは紅孩児君の炎ではなく、魔剣が持つ能力の炎!
鳳凰の炎だったの!
「何だ?まだ炎が出せるのか?ならばそれも喰らってやるぞ!」
「マジか?だったらご馳走してやる。この鳳凰の炎をな〜!くらえ!」
振り下ろした炎は鋼の龍が喰らった。
また炎を奪われたの?
けれど今度ばかりは違ったの。
鳳凰の炎は鋼龍の炎を奪う容量を超えて体内から炎が噴き出す。
苦しみ藻掻く中で、
「一刀両断!」
鋼龍は炎に包まれながら真っ二つに両断され断末魔の中で消滅する。
すると紅孩児君の身体にも炎が戻ったの。
「ふう〜やれやれ」
そして場所は変わる。
「早急に戻り王の間に入った輩を始末せんとな」
その戦士の体内には八戒が封じられていたの。
体内では八戒が疲労して倒れていたの。
「ふにゃふにゃ〜」
驚異的な再生力を持つ八戒も戦士の体内に封じられ、そして徐々に体力も奪われていたらなすすべがなかったの。
「オラにはもう何も出来ないら〜」
けれど八戒は寝転がると、
「もう余計な体力は無駄ら〜」
諦め顔で屁をこいたの。
すると匂いが充満して、自分自身の屁の匂いに窒息しそうになる。
「うぎゃあ〜・・・ん?」
すると匂いが何処かへ流れて消えて行く?
「もしかすると・・・」
八戒は匂いが消えた方向へ向かうと、そこに僅かな結界の綻びを見つけたの。
「ふふふ。オラは運があるらよ〜」
すると八戒は例の武器を手にしたの。
「オラの釘鈀なら、この綻びを広げられるら!!」
それは鍬のような武器。
けれど龍神界の指折りの神具。
八戒の特殊な力を吸収して、産み出す力は数倍にも跳ね上げる。
八戒は釘鈀を振り上げると、結界の綻び目掛けて振り下ろしたの!
衝突と同時に黒い閃光が爆発的に広がっていく。
「えっ?」
戦士は突然腹痛を感じてお腹を擦ろうと手を出した瞬間、内部から爆発して消滅した。
「う〜死ぬかと思ったら〜」
残された場所には八戒が目を回して倒れていたの。
八戒、よくやったわ!
これで七人の戦士は全て撃破したわけね?
残りは三人の守護者と、親玉の王様だけよ!
けど、私は苦戦していたの。
相手は黒い霧?
実体は分からない。
試しに霧の中で無差別に攻撃したけど殺気と妖気が混在して実体は見つからない。
恐らく霧全体が実体なのかもしれないけど、直接攻撃も当たらないし、術札で炎や雷の術も霧の中では消えてしまう。
「どうするべきか?」
私は闇雲に城の中を逃げながら走り回る。
とにかく逃げながら対抗策を考えなきゃ!
「あっ!?」
そこで私は急ブレーキでストップしたの。
マジか〜??
私の前方には大型の剣を持った戦士が立っていたの。
彼は黄色い衣に物静かな太刀抜きで大剣を振るう。
剣圧が私に向かって来て、私は避けきれないと両手に霊気の盾を作りガードする。
ヤバそう。
腕が切り落とされちゃうかも!?
「あれ?」
けど剣圧は私を逸れて追って来た黒い霧を吹き飛ばしたの??何?助けて、くれた?まさか?
すると戦士の背後から沙悟浄と瑠美ちゃんが顔を出したの。
「二人共?どういう事?」
「そ、それが・・・」
二人は玲音と金角児の戦いの巻き添えにならないように隠れていたの。
そこに、この戦士が近寄って来たらしいの。
そこで無言で沙悟浄と瑠美ちゃんを安全な場所まで案内してくれたとか。
「あの〜?貴方は私達の敵?味方?もしかして正義に目覚めて王様に従えないとかだと助かるけど、この展開だと私達を騙してたりするのかな?やっぱり?安心させておいて背後から刺したりする?ねぇ?」
私の直球の質問に彼は無言で案内する。
因みに名前は有名な戦士らしくて瑠美ちゃんが知っていたの。
守護者の一人・無風さん?
「私達を何処へ連れて行くのかな〜?」
けど、無言。
無視?この私を無視してるの?
良い態度ね?
一発後ろから殴ろうとしたけど沙悟浄が慌てて止めに入る。
「法子さん、無風さんの考えは分からないですけど、もう少し様子をみてみましょう?」
「そ、そうね?私ももう少し体力回復させないと戦えないね?ちょっと疲れてるし、少し冷静を欠いていたわ」
「私も油断しないようにします」
「瑠美ちゃんもいるし危ない目には合わせられないしね?」
「はい」
私達の案内される場所は?
そして、この無風さんの目的は?
場所は再び金角児と玲音の戦い。
「くそ!やはり銀角児がいないと力を存分に出しきれない」
金角児は圧されていたの。
「汚らしい妖怪よ、この俺がその穢れた魂ごと斬り裂いてやろう」
この玲音が最強と言われる所以がこの戦いで分かったの。双子の銀角児が敗れた相手とはどのような物が?どのような能力を、使うのか?少なくとも金角児と同等の力を持つ銀角児が敗れるなど信用出来なかったが、その能力に今、金角児も苦戦していたの。その能力とは?
「耐性?」
金角児の氷の術は玲音の身体には全く効果なかったの。
それは玲音の鎧の免疫とも言える耐性の能力。
氷の術は玲音にはもう通用しないの。
「既にその力は過去に倒した妖怪で免疫がある。しかも同等の力程度では俺には敵わないだろう」
「おい!それは銀角児の事かぁ!?」
怒りに狂う金角児は飛び出すも、見動きしないで裏拳のみで金角児は殴り飛ばされる。
「あがが!」
顎を抑えながら血を垂らす金角児は、戦うに連れて経験値を積み強くなる玲音に歯が立たなくなっていたの。
「苦労してるようだな?手を貸そうか?」
「!!」
それは遅れて現れた孫悟空だった。
「法子達は何処だ?」
「ここにいた人間の女は下へ降りて行った」
「そっか?」
孫悟空は金角児を放って出て行こうとしたが、仕方ない顔で引き返す。
「ソイツは凛音って奴の弟のようだな?匂いが似てるから間違いなさそうだが?」
「凛音とは、そうか。城を守らせていた半人半妖の男が言っていた弟だったか?」
「そのようだ」
孫悟空と金角児は妖怪城を守っていた凛音と呼ばれる戦士の遺言を聞いていたの。
「弟を開放させて欲しい。半人半妖としてではなく、人として死なせて欲しい」
半人半妖として覚醒した弟の玲音は直に自我を失い、妖怪だけでなく人間をも殺す殺人機械。王の命令のみで動く人形と化してしまうらしいの。
戦い成長する度に強くはなる引換えに記憶を失っていく。
そうなればもう人間ではないと・・・
「交代だ!」
「ふん!倒せないわけではないからな?僕は直ぐにでも銀角児を取り戻したいからお前に任せるだけだ!その辺勘違いするなよ?」
「良いから良いから、早く行ってちょ~うだい!」
「ふん!」
孫悟空は飛び上がり金角児の隣に着地すると、目の前の玲音を、相手に中指を立てる。
「お前、何者だ?」
「俺様は孫悟空!お前の兄貴から頼まれてお前に引導を与えてやるぜ!」
「次はお前か?異なことを言うな?俺の、兄貴だと?何を言って?俺に兄弟、な、んて・・・うっ!」
すると突然玲音が額に手を置いて苦しみだしたの?
まるで思い出したくない事が引き金となったかのように、筋肉が盛り上がり鋼の鎧から強力な妖気を発する。理性が飛びはじめ、狂戦士へと変わっていく。
「兄貴にそっくりだな?その鎧?流石兄弟だな!うんうん。そっくりだぜ!」
まるで挑発するかのように兄の凛音さんの事を何度も連呼する。
孫悟空何を?
「思い出してやれよ?大事な奴の事を忘れたまま始末するのは、ちょっと気持ち悪いからよ?思い出す事が兄貴への花向けであって、お前も冥土で探しやすいだろ?」
孫悟空もまた殺気を見せる。
それは普段私達には見せない殺意。
孫悟空は知っていたの。
目の前の玲音はもう人間には戻れない。
半人半妖になったらそれはそうなんだけど、
覚醒を繰り返した後に王の人形になるくらいなら兄の凛音を最期に遺言を託された自分がやるべきだと。
「もし法子がいたら、他の手段を考えようとか言うだろうが、どうも時間が限られてるようだからな」
玲音の自我が消えかけていたの。
既に兄の事も忘れていた。
兄を殺された怒りと悲しみから半人半妖の力を覚醒して、守護者として実力を付けたにも関わらず。
狂戦士玲音!お前は俺様が殺す!
「兄貴が待ってるぜ!」
「俺に兄などいなぁーい!」
孫悟空と玲音が大剣と如意棒で衝突する。
激しいぶつかり合いを見守るのは八戒だった。
「猿、頼むらよ!男の勝負に手出しするのはオラの性分に合わんら。それにオラでは勝てそうにないらしな〜」
八戒は封印の戦士を倒した後、とにかく強い妖気を放つ最上階にまで来ていたの。
そして二人の勝負を見ていたのはもう一人いたの。
それは私達が、戦うべき王だった。
「まさか、あの者は?もしそうだとすれば何と奇縁なのであろうな?」
えっ?まさか孫悟空の知り合いなの?
ちょっと気になるところで次に続く!
そんなこんな。
次回予告
狂戦士玲音と孫悟空の一騎打ち
そして法子達にもまた大問題が起きていた。