嶺黄風国の陰謀!?
孫悟空達が氷原の王討伐の最中、
法子達も問題を抱えていた。
あら?お久しぶり。
法子よ?
私達は大妖怪討伐に孫悟空達を向かわせ有意義にお留守番・・・だったら、どんだけ気楽か。
私が嶺黄風国に残ったのには理由があったの。
私達が助けた女の子。
彼女は恐怖のためか、ずっと黙ったままだったの。
嶺黄風国の住人は皆さん親切で彼女の預かり手になってくれると申し出てくれたの。未だに一言と会話すら出来なかった彼女を嶺黄風国の人々に預けようとした時、引っ張られて行く彼女は私の方を一目見たの。その時、私は彼女の唇が僅かに動いたのを見逃さなかった。うん。読心術ね?
彼女は間違いなく「助けて」って
どうして?もう無事よ?
でも彼女の目は私に縋るような目だった。
その反面、諦めた目も・・・
「気になるわ」
私達は最初は全員で国を出て孫悟空達を向かわせた後、阿修羅と沙悟浄、玉龍君を残して嶺黄風国に戻る事に決めたの。まぁ、取り越し苦労だとしても孫悟空達が氷原の王に負けるはずないし、もしこの嶺黄風国で何か問題があったとしてもボディーガードに阿修羅がいれば問題ないかな?
さてさて
私達は再び嶺黄風国に戻ると、誰にも見られないように忍び込む。
「法子さん?この後は何処に向かいます?やっぱり彼女の所ですか?」
「そうね。先ずは彼女の安全を確保しましょ?それで何が嶺黄風国で起きてるか彼女の口から聞くわよ!」
玉龍君は緊張した顔で私を見ていた。
「玉龍君はお留守番してる?」
「い、いえ!僕も何か法子様の役に立ちたいです!」
「そう?だったら私達から離れたら駄目よ?」
「は、はい!」
「私も離れません!」
ちゃっかり沙悟浄も私に縋る。
「沙悟浄は役に立ちなさい!私を守るのがアンタの役目でしょ?」
「あわわ〜」
そこに阿修羅が私に言う。
「大丈夫。法子は僕が守るから」
「あはは。正面で真面目な顔で言われると逆に返答困るわ!」
「そ、そうなのかい?ごめん法子」
「あ、いや、謝らないで」
うん。このメンバーで作戦開始よ!
私は沙悟浄の後を着いていく。
実は前もって沙悟浄に頼んで彼女の持ち物に追尾用の術札を忍ばせておいたの。
私達はこっそりこっそり忍び込む。
兵士に見つかりそうになる度に阿修羅が殺意を持って攻撃繰り出すから、慌てて止めたり。
「手加減覚えてよ〜」
私が前線で兵士を合気で倒して気を失わせると、沙悟浄が術札を使って眠らせて記憶を曖昧にさせた。
「これで転んで頭を打って気絶したと思いますよ」
「よくやったわ!沙悟浄!」
「あの〜?」
「どうしたの?玉龍君?」
「阿修羅様がいません」
「へっ?」
私は辺りを見回すと本当に阿修羅がいない。
「何処に行ったの〜??」
探し回った挙げ句、阿修羅は道に迷っていたの。
何故?何故私達と一緒にいたのに迷うわけ?
「ごめん。法子」
「お願いだから私達から離れないでね」
「分かった。僕は法子から離れない」
「うっ!?」
赤面するような台詞を恥ずかしげもなく!
私の方が動揺するわ!
私達はまさかの世間知らずの問題児だった阿修羅をフォローしながら先に進む。
けれど一見、特に問題はなさそうだけど?
やっぱり思い過ごしだったのかしら?
「法子さん!この先に彼女がいます」
「そう?うん。とりあえず彼女とゆっくりお話して落ち着かせてあげよう」
「そういう事なら私が作った落ち着くお香を使いましょ〜」
「お香?良いわね!何か沙悟浄が役に立つって不思議な気分だわ〜」
「そんな〜」
確かに龍神界では出番なかったしね。
私達は廊下を駆けて、彼女がいる部屋の前でストップする。
どうやら鍵が閉まってるわね?
「僕が壊す」
「阿修羅待って!沙悟浄、お願い?」
「は〜い!」
阿修羅はショボンと立ち尽くし、沙悟浄が錠前に髪の毛に気を送り鍵にする。
そして鍵を開けると私達は部屋の中に忍び込む。
「潜入成功よ!」
私は先ず、彼女を探す。
彼女は部屋の奥の部屋で眠っていたの。
「どうやら取り越し苦労だったわね。でも良かったのかしら?これで」
すると彼女が目を覚まして驚いた顔で私達に気付く。
そして突然、泣き出したの??
「ほ、本当に助けに来てくれた・・・」
私は彼女を抱き締めて落ち着かせる。
きっと嶺黄風国から出た時に妖怪に襲われて怖い目にあったのね?
「もう大丈夫よ?安心して?」
けれど彼女は口をパクパクさせながら何かを伝えようとしていたけど、言葉にならないよう。
「法子さん。こんな時こそ私のお香が役に立ちますよ〜」
「お香ね?やってあげて」
沙悟浄はお香に火を付けると部屋中に良い香りが漂い始める。
う〜ん。落ち着くわ〜
けど
「な、何!?」
私達はそこで初めて気付いたの。
この城全体に漂う妖気を!
「ここって人間の城よね?」
「たしか、この城の兵士は妖怪の骸を武器にしているのですよね?その妖気が漏れ出してるとか?」
「あり得るわね。けど?」
その妖気は尋常じゃなかった。
完全に妖怪城よ?これは!
「法子さん。このお香には魔除けの効果がありまして、恐らくこの城の妖気を消していた結界をも消したのかもしれません」
「つまりそれって?やっぱり?」
私達は、この嶺黄風国の謎に足を踏み込んでしまったようね?
しかも、その謎は彼女が知ってる。
「教えてくれる?この城の秘密を?」
彼女は脅えながら頷いてくれた。
彼女が語る秘密とは?
彼女の名前は瑠美
彼女には姉がいたの。
姉の名前は流華
流華さんは戦士として、儀式を受ける事が決められていたの。
儀式とは妖怪の骸を使った武器に適合するかの儀式。
この嶺黄風国では全ての国民が儀式で力を手に入れられるみたい。
流華さんは中でも選りすぐりの戦士になったの。
そして他の五人の戦士と一緒に氷原の王を討伐に向かう。
討伐は成功したけれど流華さんは二度と戻っては来なかったの。
大妖怪に姉を殺された瑠美ちゃんは、流華さんが討伐に出る前に言い聞かせられた事は?
「瑠美、聞いて?私達はこの国から逃げないと行けないわ!私が討伐から戻ったら私と一緒に国から出るわ?分かった?」
「流華姉、どうして?この国にいたら私達は安全よ?なのに何故国を出るの?」
「分かって!」
流華さんは、この国で起きている秘密を妹の瑠美ちゃんに告げる。
それは恐ろしい秘密を!
この国の王は国民達全てに力を与えようとしていた。
それは脅威である妖怪達から身を守るための大義名分があるから。
力とは・・・
「半人半妖の国を建国する!」
つまりそれは、人間を人間でなくす事を意味していたの。
人間の存在しない国を作ろうなんて?
けれど妖怪の骸を使った儀式には適応者でなくてはいけないはず?
だったら全員半人半妖になんて出来ないわよね?
そんな事は・・・
流華さんは伝えたの。
儀式の内容を!
彼女達はこの城にある儀式の空間で並べられたのは三十人の少年少女だった。
それは最初から国にいた子供達だけでなく、他の土地からさらって来た子供達も混ざっていたの。
全員眠らされた後、子供達は湖の中へと放り込まれる。湖の水を飲み込んだ子供達は足掻きながら沈んでいく。この力を得られるのは適応者のみ?その適応がない者は、その湖に落ちた途端に身体が蒸発して消えていったの。残った子供達もまだ安心じゃなかったの。身体が盛り上がって、皮膚が裂けて化け物へと変貌して近くにいた子供を喰らい始めたの。
その中で正気に戻った子供達は、その場に用意された剣を手に取り化け物を斬ったの。
そして湖から抜け出た子供達は息を切らしながら辺りを見回す。残ったのは僅か六人だけ。
その少年少女達には自ら分かるくらいに本能的に自分自身に備わった新たな力を理解していたの。
同時に残った子供達は全員洗脳されていた。
王に忠誠を尽くし、そして王の考えを忠実に従う手足となるように。
けれど流華さんだけは洗脳が十分じゃなかったの。
それは自らが手に入れた植物を操る能力が洗脳の水液が脳に流れる前に薄める事に成功したから。
抗うには精一杯だった。
流華さんは討伐に出発する前に瑠美ちゃんに事の全てを告げたの。
そして隙を見て逃げるように!
瑠美ちゃんは流華さんが討伐で戦死した事を知り、待つ事なく涙を流しながら国から逃亡した。
けれどそこで今度は妖怪達に襲われ、私達に救われたのだったわね?
「大変だったわね。恐かったね。けれどもう大丈夫よ?だって私が、いえ?私達が来たから!」
「お姉さんは一体?」
「私?私は正義の女子高生よ!」
「じょし、こーせい?」
私は瑠美ちゃんを守りながら、この国を救う事を決心したの。
とは言ったものの・・・
「さて、どうしようかしら?」
とにかく、その半人半妖を生み出すための湖ってのが気になるわ。
それに、この国の王って奴の陰謀!
その時、この城の地下の湖がある場所に王がいた。
その王の下には、三人の守護者と新たに戦士となった七人の使徒が従えていたの。
守護者の一人が前に出て新たな戦士に告げる。
「王に使える優秀なるお前達に称号を与えよう。お前達は選ばれし者。お前達はその称号に値する力を、新たな力を手に入れた新世代の戦士達よ!」
称号を与えしその者は三人の守護者の一人。
五年前に氷原の王討伐にて帰還した三人の戦士の玲音だった。
帰還した三人の戦士は半人半妖のさらなる進化を遂げて守護者と呼ばれていたの。
新たな戦士達に与えられた称号は
『剣聖』
この地を救う刃と言う意味らしいの。
そこに王が戦士達の前に現れる。
「これより我々は全世界を支配する。我々の成すべき事は全世界の魔物を一匹足りとも残さずに討伐する。そして生き残りし人間達に進化を!」
「進化を!」
進化とは人間達を全て半人半妖にする計画。
そんな事をさせるもんですか!
この王が本当の私達の敵なの?
けれど、その前に立ち塞がる半人半妖の守護者達!
この時の私はまだ知らないけど、龍神族達が恐れる覇王の出現に関係あるのかしら?
そんなこんな。
次回予告
嶺黄風国の陰謀に法子達は?
そして孫悟空達は?