紅孩児と八戒?まさかの共闘!
まさか孫悟空が?
孫悟空の身に何が起きたのか?
私は法子。
えっ?嘘よね?何?どういう事?
冗談は止してよ?
私達の視線の先には、龍神兵達の中心に結界の貼られた丸太のような柱に担がれ、
全身ボロボロの孫悟空が張り付けにされていたの。
全然動く気配もなく、気も感じられない。
死んではないと思うけど、かなり弱っているのは間違いないわ。
ちょっと??
どうして、あんたが負けてるのよ?
愕然とするのは私だけじゃなかった。
「孫悟空?嘘だろ?何だよ?そのザマは?何とか言えよ!」
紅孩児君が感情に身を任せて飛び出したの。
けれど赤龍との激闘の後に体力なんてないわよ?
それじゃ犬死にになるわ!
私は拳に力を入れると、紅孩児君だけに任せてられないと飛び出そうとする。
「待つら!」
八戒が背後から私を止める。
「何よ?今は話してる暇ないわよ!」
「無茶だと言ってるらよ!法子はんが行っても、奴と一緒にやられるだけら!」
「この状況で臆病風?いい加減にしてよ!」
「違うら!」
「何が違うって言うのよ?」
「オラが戦うと言ってるらよ!」
えっ?八戒?
「らから・・・」
「だから、何?」
「オラにまた胸を触らせるら〜」
この状況に予想外の返答に私は、
「ふざけるなー‼このエロ豚!」
私の回し蹴りが八戒の脳天に命中する。
「イタタ」
「もう良い?私は行くわよ!」
すると八戒は顔を上げて私に笑みを見せたの。
「!!」
私はソレみて驚く。
「気合いが入ったらよ。やっぱり何度か試みても簡単に出ないらから、ありがとうら!イタタ」
八戒の手には黒龍を倒した黒い気が凝縮した棒を持っていたの。
もしかして、ソレを出すためにわざと?
「オラの黒くて硬くて凄い武器ら!脳天割られたくなかったら、道を開くらよ!」
八戒は私を残して紅孩児君を追う。
「貴方達は無茶苦茶だ・・・」
私達の行為に茫然とする玉龍君に私は答えたの。
「無茶苦茶?かもね?けど、何もしなきゃ始まらないのよ!私達は何度もそうやって乗り越えて来たのだから」
「法子様・・・」
まだ信じられなさそうな玉龍君に私は付け加える。
「今、ここで逃げるのは簡単だけど、きっと後悔すると思うの。だって、やりもしないで諦めた事は必ず今後の人生の中で似た境遇に陥る度に屈して繰り返すからね?そうなったら私は私を許せない!少なくとも私は自分に胸を張って生きたいから!」
私の言葉に玉龍君は全身を雷で打たれた感覚になったの。
そして私自身も自分自身に言い聞かせる。
駆け出した紅孩児君に八戒が追い付く。
「何だ?お前?」
「加勢に来たらよ!」
「いらん!足を引っ張るだけだ!」
「引っ張るらろうから、オラを守りながら戦うのが良いらよ?オラは長生きしたいからな〜」
「変な奴だな?お前?まぁ〜孫悟空のダチなら守ってやるよ!」
「ならオラはお前の援護するらから、働くらよ!」
「俺様に命令すんな!」
「余所見するな?来たらよ!」
「分っかってるよ!」
二人に対して龍神の兵士が襲いかかる。
「火炎熱風!」
紅孩児君が掌を仰ぐと炎の熱風が龍神兵の足を止める。
そこに掌を炎で灯した拳で殴りながら次々と竜神兵を倒していく。
そんな紅孩児君の動きが止まった?炎の拳が止められたの??
「イテッ!」
それは大型の龍の盾を手に武装した兵士達。
龍神の防御力は一品というけど、その盾には龍の鱗を何十にも重ねて作り上げた防御の盾!
紅孩児君の炎も止められ、大型の盾を前に紅孩児君を追い込み囲み始める。
「しゃがむらー!」
「なぁ??」
そんな紅孩児君を救うために龍神兵の頭上を渡りながら紅孩児君の近くに飛び降りて来ると、
あの奇っ怪な黒い武器を1回転力任せに振り回す。
黒い棒は伸びながら紅孩児君の頭上をかすり龍神兵士の盾を木っ端微塵にしたの。
驚く龍神兵の隙きを紅孩児君は炎の弾丸を連続で飛ばして次々と倒していく。
「お前やるな?孫悟空のダチの事はあるぞ!」
「何を言うらよ?オラは猿より強いらよ?」
「何?だったら今度手合わせろよな?」
「断る!」
二人のコンビネーションで兵士達の数が減っていく。
そして互いに目配せをしながら捕らえられている孫悟空が拘束されている丸太まで接近すると、
「今、助けるぞー!」
紅孩児君が龍神兵に火炎放射を放つと同時に八戒が丸太を破壊したの。
倒れる丸太から結界の札が炎で焼け焦げ、落下する孫悟空を紅孩児君が受け止めたの。
「お前をこんな姿に?許せないぞ!」
八戒が迫る龍神兵を近付けないように二人を守る。
「後は任せて!」
私は駆けながら数珠を手にして弾く。
「数珠龍連弾!」
弾かれた数珠は龍神兵を貫通して倒していくと、私は救われた孫悟空を紅孩児君から任される。
「まさか最強の血族である龍神の兵士をこんな簡単に打ち破るとは・・・」
驚く白龍王は、次は自分が戦うために前に出ようとすると、その横を先に向かう者がいたの。
「青龍王?」
それは四海龍王の筆頭、青龍王だった。
「あのような輩、私が!」
「お前は既に敗北をした。俺の戦いから己を見直し、精進するのがお前の役目。良いな?」
青龍王に制され白龍王は自分自身の力の無さを悔しながらも従う。
既に白龍王は孫悟空に一度敗れていたみたいなの。
私達は孫悟空を観ながら警戒する。青龍王が前に出てから他の龍神兵は退き、その場を見守る。
「あれが青龍王?一番強いわけ?」
「ヤバそうな奴ら〜猿は奴にやられたのか?」
四海龍王の中で唯一、前任の生き残った伝説。
赤龍王、白龍王、黒龍王はまだ若く、四海龍王になったばかりの新鋭の中で、この青龍王は別格。
数々の伝説を残してきた英雄らしいの。
「かつての天界大戦では、地上界から進軍して来た妖怪軍の大魔王。あの牛角魔王と一騎打ちの末、引き分けたと言われています」
玉龍君の説明に紅孩児君が反応する。
「何?父上と引き分けただと?そんな事、あるものか!だったら俺様が確かめてやるぞ!」
「えっ?牛角魔王の御子息?だったら、その強さの理由も納得出来ます。けれど青龍王様は別格なんです!だから戦うなんて無茶な事は・・・」
「牛角の旦那相手に引き分けたなんて化け物らよな。けど、オラは誰よりも強いら!」
二人は戦闘体制に入ると、
「ちょっと待ちなさいよ!二人とも!」
私は力いっぱい二人の背中を叩いたの。
「気合い注入よ?頑張ってよ!」
二人は私に顔を見せずに片腕をあげて答える。
「気合い入ったぞ!孫悟空は任せたぞ?」
「法子はん?時間稼ぎしてくるから早く猿の奴を起こすらよ?」
そう言って青龍王に向かって行ったの。
「私は私の仕事をするわ!」
私は術札を数枚用意すると、孫悟空に貼り付けていく。
それから今度は別の術札を出して念じる。
治癒の札と強化の札。
治癒はその名の通りだけど、強化の札は本来肉体強化に使ったり武器を強化したりするのだけど、
用途次第では能力強化にも使えるのよ。だから治癒の効果の強化にね?
けど、術札の同時発動はかなり体力と精神を使うのよ。
なんとしても孫悟空を助けなきゃ!
「!!」
そこに別の手が出される。
「玉龍君?あなた?」
玉龍君は私を補助するように治癒の気を送ってくれたの。
でもどうして私達を助けてくれるの?これじゃ、どう言い訳しても裏切り者じゃない?
「僕にもわかりません。けど、身体が勝手に動くんです。心がざわめいて、出来る事をしなきゃいけない。この方を助けなきゃいけない気がするんです!だから・・・」
同族を裏切り、会ったばかりの私達を助ける行為に震える手で気を送る玉龍君に私はウインクする。
「あんたの面倒は私が見るからね!」
「えっ?あ、はい!」
それにしても孫悟空の身体は重症だったの。
どんな戦いをしたら、こんなズタボロになるのよ?
と、その時私は気付いたの。
あれ?
孫悟空に治癒を行いながら、私の精神だけが肉体から離れて孫悟空の魂と繫がった事に?
そして私は孫悟空の記憶を覗く。
それは、私達と分かれた後の記憶。
白龍との一騎打ちに勝利したのもつかの間、そこに現れた青龍王と対峙した時の記憶?
孫悟空の身に何が起きたのか?
そんなこんな
次回予告
過去に遡るは、孫悟空と白竜王との一騎打ちの後の話。
孫悟空に何が?