南の地の竜宮城へ!!
小角の物語は完結し、
再び法子達の物語がはじまる。
「あ〜!お魚食べた〜い!」
そんな私の一言で、私とその一行は今南方に向かって旅を続けていたの。
私は法子。
お供に孫悟空に八戒、沙悟浄を連れて長旅の最中、私達は天竺を目指していたのだけど、その目的地が何処なのか検討もつかない。そもそも情報がなさ過ぎるのよ、全く!
でっ?
「孫悟空?本当に本当なんでしょうね?」
私がマジマジ凝視すると孫悟空は自信たっぷり気に答える。
「しつけーな!嘘じゃねぇし。南の地にいるんだよ!誰も知らない事でも知っている奴がよ!そいつなら間違いなく天竺って場所も分かるに違いねぇよ!」
「違うわよ?お刺身を食べさせてくれるって話の方よ?」
ずっこける孫悟空を横目に八戒と沙悟浄が孫悟空に対して憐れみの表情で首を振る。
どうやら私に対して変な諦めをい持ったみたいなのよ。
まるで私が我が儘娘みたいじゃない?
なんかこれって失礼しちゃうわよ!
話を戻すわね?
孫悟空が言った通り、私達は天竺を知るかもしれない人物がいる地に向かっているの。
しかもよ?
「目指すは竜宮城だぜ!」
竜宮城って?
あの?
「ねぇ?もしかして私達が向かう先で待ってる方って?あの乙姫様とか?なんて事ないわよね?やっぱ?あはは」
私の問いに孫悟空は平然と返す。
「ん?乙姫の奴だぞ?法子、お前知ってるのか?乙姫の奴を?」
「うそ〜??乙姫って、あの竜宮城の乙姫様よね?知ってるか知らないかで言えば、物凄く有名よ〜!けど、話だけで当然会った事ないわよ?マジ?本当に?」
「俺様は嘘は言わん!」
「ねぇ?乙姫様ってどんな方?」
「どんなと言われてもよ?俺様も転生してから会ってないから変わってなければ、すげー奴だぞ」
「よく分からないわね。えっと浦島太郎さんとか知ってたりする?二人の仲はどうなったの?太郎さんはお祖父ちゃんになって、その後は?」
「何だそれ?そんなプライベート知らんぞ?てか、法子は乙姫の何なのだよ?
「ただの好奇心よ。そうね〜。実際、物語と現実はかなり違うわよね?良いわ!先ずは会ってから確認します」
「よく分からんな〜?けど、間違いなく乙姫に会いに行くぞ!アイツなら天竺知ってるかもしれないしな」
そんなこんなで私達は行く先を南の地に方向転換したのよ。
でも本当に本当にあの乙姫様なのかしら?
私達は数日歩きながら、南の地へと辿り着く。
「うわ〜!」
そこは海岸だった。
「オラは海を見たのは始めてら〜」
「私は昔、海を渡ってこの地へ来たので久しぶりです〜」
八戒は海の水を飲んで、辛い辛いと喚き、沙悟浄は昔の故郷を懐かしんでいたの。
その中で孫悟空だけはキョロキョロしていた?
「どうしたの?孫悟空?」
「いや、この辺りはもう奴の敷地内だからな?恐らくもう俺様達が入って来た事には感付いていると思ってよ。俺様が来たのに迎えもないし、とりあえず竜宮城へ直接向かうかな」
そう言うと、孫悟空は一度海の中に飛び込んだの。
「?」
そして海から出て来た孫悟空は何かを捕まえて来て腕に抱えていたの?
「そらよ!」
孫悟空が放り投げたのは、大亀?
まさか?
「食うらか?」
八戒が涎を流すと亀は涙目になる。
「待ってください!八戒兄貴?同じ甲羅を持つ者として一言言わせてください!」
「何らよ?」
「亀が卵を産む時に涙を流すのは、実は親心じゃないって知ってました?これ豆知識ですよ〜」
「マジらか?知らんかったら〜オラ、騙される所らったらよよ〜」
ちょっと?話が脱線してないかしら?
「まぁ、待て?この亀は食うために捕ってきたわけじゃないのだ。実は竜宮城へ行くには特殊な結界があってな?ある儀式を行わないと入れないのだ!その儀式ってのは・・・」
まさか!
儀式って、やっぱり?あれなの!?
すると私達は孫悟空の演出に従って、段取りや台詞を割り当て、役者魂に火をつける。
「あっ!亀がいるぜ!亀だ!」
「うすのろ亀なんか虐めてやるらよ!」
「日頃の八つ当たりにはちょうど良いですよ〜」
と、孫悟空と八戒、沙悟浄が海からあげた亀を踏んだり蹴ったりして虐める。
そこに私が登場する。
「や〜めなさいよ〜!幼気な亀を虐めるなんて最低よ〜」
と、棒読みで正義の味方を演じる。
「もし止めないと言うなら私が許さないわよ〜!3つ数えるうちに・・・」
「殴る!」
と、私は三人を殴って虐めを止めたの。
「だ、段取りと違うらよ〜」
「本気のグゥ〜ですよ〜」
「虐められてるのは実は俺様達の方か??」
と、不平不満を叫びながら逃げて行く。
「これにて一件落着よ!」
と、私が決めポーズをすると、亀が涙を流しながら感謝する。
その直後、足下が揺れ出して巨大な門が地面から盛り上がって出現したの。
「何なの?この門は??」
「儀式が成功したようだな?この門が竜宮城への入口だぞ!」
「えっ?亀が乗せてくれるんじゃないの?」
「はっ?馬鹿言うなよ?俺様達を乗せて泳いだら亀が沈むぜ?可哀想な事を言うなよ?」
「うっ!!」
まさか最後の最後で私が悪役??
と、何か気乗りしない気分で目の前に現れた竜宮城への門の扉を開いたの。
「わぁー!!」
すると私達は扉の奥から放たれる閃光に飲み込まれる。
視界が戻り周りを見回すと、そこは海岸にいたはずなのに、海底の城の前にいたの。
えっ?どうして海底って分かるかって?
だって、見上げると宮殿を囲む球体の中に私達はいて、その外に魚達が泳いでいるんですもの!まるで水族館だわ!しかも旅館付きの〜
とか、感動している私達。
「こんな宮殿が海の中にあるなんて不思議ですよ〜」
「乙姫の奴の結界で城を覆ってるんだぜ」
「結界って、この宮殿を覆う程の?しかも水圧に潰されない結界を張り続けているわけ?」
「あいつは、それが出来る奴なんだ」
「そんな事よりオラは早く乙姫ちゃんにお会いしたいら〜。きっと運命の相手で結ばれる運命らよ」
「いや、乙姫にはちょっかい出さない方がお前のためだぜ?」
「なぬ?それは、実は乙姫さんは不細工とか言うオチじゃないらかな?」
「う〜ん?そう言う美的感覚は俺様には分からないが、周りからは美人と持て囃されてはいたな」
「なら問題ないらよ!楽しみらよ〜」
「八戒、恥ずかしい真似は止めなさいよ!」
私が叱咤したけど聞いてないわね?変な事をしたら黙らせないといけないわね。
私が乙姫さんを守らなきゃ!
そんなこんなで孫悟空の案内で着いた所は広間だったの。
そこはもう華やかな夢の世界。
私達がテンション上がる中で孫悟空だけが緊張していた。
もしかして久しぶりの再会だら?もしかしてもしかして昔の女??
そんなバカな??
「お前ら!少し警戒心持てよ?ここから先は何が起きるか分からんぞ!なにせ奴はさっきから俺様達の来るのを監視していたんだからな!」
孫悟空が叫ぶと、奥から誰かが姿を現す。
「あっ!」
大人の女性の色っぽさに、開いた胸元は巨乳を感じさせ、緑色の髪の長い美系なお姉様なの。私達は唾を飲み込み目を奪われる。その存在感に私達は完全に魅了された。あの八戒が美しい女性相手に飛び付けない程に。
「貴女か乙姫様なんですか?」
私の一声に乙姫様は突然笑い出す。
「あはははは!私の昔名を知るお前は何者だ?」
そこに孫悟空が前に出て返す。
「久しぶりだな?俺様は孫悟空。いや美猴王様だぜ!元気していたか?」
すると乙姫様は孫悟空を頭上から足下まで眺めると、その存在を認める。
「なるほど。同じ魂の色が見える。再び甦り私の前に現れると言われた予言は嘘ではなかったようだな。でっ、今頃何用だ?」
「お前に頼みたい事があってな!昔のよしみで頼まれてくれないか?」
「その内容は?話によっては聞いてやってもよいぞ?」
すると孫悟空は乙姫様に私達の探し求めている天竺の場所について教えて欲しいと伝える。
けど、さっきから乙姫様の事だけど、抱いていたイメージより威圧感半端ないわね?
何か萎縮しちゃうわ。
「ふ〜ん。それがお前達の目的か?風の噂で妖怪退治をしている僧侶が妖怪を連れ回していると聞いていたが、お前達で間違いないようだな?」
あら?何か私達有名みたいね?
でも、その後の台詞に私達は凍り付く。
「お前達に手配書が出ていて多額の懸賞金、それにある交渉に使えると聞いてな?近々見つけ出そうとしていたんだよ」
えっ?それはどういう?
「今よりお前達を捕らえよう。そして私の為に使わせて貰おうか」
「!!」
私達は突然の展開に警戒する。
「孫悟空?あの人と友達じゃないの?」
「あいつは仲間だった奴だ!それも世界征服って目的で結ばれたな?だが目的が違えた今はどうか分からなかったが・・・蛟魔王の奴!」
「え〜〜!?今、なんて言いました兄貴?名前は何て言うのですか?乙姫さん?」
沙悟浄の問いに孫悟空が答える。
「何だよ?蛟魔王の事か?」
「蛟魔王ですって〜??」
沙悟浄は簡潔に説明する。
蛟魔王とは、かつて孫悟空が美猴王として世界征服を試みていた時に、共に戦った六兄弟がいたらしいの。その中でも天才軍師であり、戦闘に関しても特殊な秘術や、格闘にも長けた最強魔王。
現在は地上界南の大地を任されていて、この地には他の妖怪も恐れて近寄らないとか。
「乙姫さんって、そんな恐い人だったの〜?」
その直後、私達は乙姫さんじゃなくて蛟魔王の覇気に圧し潰されそうになる。
「うわあああ」
何?この桁違いの覇気は?
この世界に来てから立て続けに様々な強い連中と対峙したけど、桁違いだわ!?
「ふふふ。その程度なのかい?」
勝ち誇る蛟魔王に私は意地で霊気を高めて膝に力を入れて立ち上がる。
「負けるかぁああ!」
「ふ〜ん。人間の割に面白い娘ね?私の観賞用にするのも面白いわ」
えっ?
蛟魔王の掌に異質な気が集約していく。
「終わりだよ」
蛟魔王から放たれた気は凄まじい破壊力を増して私達に向かって来たの!
「任せろー!!」
孫悟空が飛び出して受け止め、その衝撃が見ていた私や八戒、沙悟浄を吹き飛ばそうとする。
孫悟空は覇気を両掌に集中させて蛟魔王の放った気を天井に向けて軌道を変えて飛ばすと、天井を破壊しながら粉砕して消えたの。
「私の気弾を弾くとは間違いなく美猴王ね?でも隙だらけよ?」
その言葉に孫悟空は後ろにいた私達を振り返る。
「あっ・・・」
私は青ざめる。
孫悟空が止めた気弾は囮で、本命は私に向かって飛んで来たの。
それは全身を石化させる針?
けれど!
「あぶなーーい!!」
私に向かって来た針に一人いち早く気付いた沙悟浄は私の前に飛び出して、代わりに針に刺さったの。
徐々に石化していく沙悟浄は私に向かって、
「今度は、法子さんを守れました。私、足手まといじゃない事出来ましたか?」
そのまま涙を浮かべて石化して動かなくなったの。
その一部始終を見て、残された私達は怒りがこみあがり爆発する。
「沙悟浄ーー!!」
私と八戒、孫悟空が蛟魔王に向かって行こうとした時、蛟魔王は笑みを浮かべていた。
まさかの急展開に私達の新たな戦いが始まろうとしていたの。
そんなこんな。
次回予告
蛟魔王と法子一行のまさかの激闘必至?
しかし物語は?