トラウマとの戦い!法子の心の扉?
百眼魔王の魔眼で孫悟空達が危機に陥った。
残されたのは法子だけだった。
私は法子
百眼魔王の使う魔眼の力で孫悟空達が苦しんでいる。
催眠状態?
孫悟空達は涙を流しながら藻掻き苦しんでいたの。一体、何をそんなに苦しんでいるの?
「しっかりしなさい!そんな精神攻撃なんて気合いで何とかしなさいよ!」
「無駄だ!私の魔眼、輪廻崩壊の能力で繰り返す地獄を死ぬまで味わうのだ」
「輪廻崩壊?」
輪廻崩壊とは、かけられた者は無意識に記憶の中に閉じ込めていたトラウマを呼び起こされて、精神崩壊まで繰り返し体験する術らしいの。作り出した幻術とは違いリアルで感じた体験からされての悪夢!
私は三人に近寄り力づくで身体を揺すったり大声で声掛けしても、トラウマの呪縛に苦しみながら私を突き倒したの。
「三人とも、一体どんなトラウマを抱えているというの?」
三人が見ていたトラウマは同じ体験だったの。
それは、かつて失った師
いえ、師であり、かけがえのない友だった方しとの死別!?
三人はその方と共に旅をしていた過去を繰り返し見ていたの。
最初は馴染めるなんて思えなかった。
それでも旅の中で絆が芽生えていく。
他愛もない喧嘩して、一緒にと笑いながら食事をしたり、襲って来る妖怪達と戦う日々。
三人はそこで初めて自分自身を認められた。必要とされたの。時には守っていたつもりで守られていた事に気付かされ、導かれていたと実感した。
血だらけになって傷付き、命がけで自分達を守ってくれた事もあった。
苦しい事も辛い事も、一緒にいれば乗り越えられると信じていた。惹かれていくカリスマ性に三人は言葉にはしていないけれど、信頼以上の絆で自分に必要な存在だと実感していたの。
そんな守るべき存在との突然の別れ
三人が駆け付けた時には、既に悲惨な姿で横たわっていた。
呼んでも、擦っても冷たくなったまま動かない。目の当たりにしても信じられずに残る力を振り絞り治癒を試みた。何度も何度も、涙をながしながらで・・・
心の中で、何かが音を立てて砕ける感覚が全身を凍らせ思考を麻痺させた。
嘘であって欲しい・・・
それでも現実は三人の心を引き裂いた。
肉体の痛みなら堪えられる。しかし心の傷だけは耐える事が出来ない。
このまま心を消してしまったら、どれだけ楽か?
三人の苦しみは、知り合ったばかりの私には計り知れなかった。
けどね
「いつまでも過去を引きずってるんじゃないわよ!」
私は立ち上がると両掌に霊気を籠めると、霊気が光り輝きながら伸びて形作る。
「金の錫杖!!」
私は霊気で作った錫杖を振り回すと、百眼魔王に向かって駆けだす!
「とぉうわー!」
私の攻撃を百眼魔王は容易に躱す。
「もう油断も手加減もせん!」
見開く百眼魔王の魔眼が私に向けられると、私は身動きを止めて握っていた錫杖を落としたの。
「人間の小娘よ?お前もトラウマの地獄へ落ちよ!」
私の視界はボヤケ、過去の記憶が鮮明になっていく。
「あぁ・・・」
百眼魔王は勝利を確信した。
「私はお前達をずっと、この魔眼を通して見て来た。だが、この人間の小娘だけは奇異」
それは、私が未来の世界から突然この世界へと現れた事を言っていたの。
「だが、もう終わりだ!孫悟空の目の前で始末出来なかったのが残念だがな!」
百眼魔王は私の眉間に向けて指を突き付ける。
このまま意識ない状態で眉間を貫かれてしまうの?
「な・ん・て・ね」
「へっ?」
瞬間、百眼魔王は手首を私に掴まれて合気で床に叩きつけられたの。
「懲りずに不用意に近付くからよ?おバカさん?学習が足りないわよ!」
百眼魔王信じられない顔で私を見る。
「まさか・・・!?お前にはトラウマがないのか?」
どんだけ楽に生きて来ようとも、多少はトラウマはある。
百眼魔王の魔眼はそれを限りなく悪夢へと過剰体験させるみたいなの。
「私がトラウマの一つもない単純な子みたいに言わないでよね?」
ムッとしながら、
「乗り越えたのよ!いえ、違うわね?私は過去よりも未来を選択したのよ!」
それは、どう言う事って?
まんまよ?
トラウマは乗り越えてナンボよ!
どれだけの辛いトラウマも乗り越えて見せるわ!
乗り越えた分だけ、私は強くなるんだから!
それに・・・
「それより、さっきおあんたは何を見ていたって?」
私の殺意が百眼魔王を怯ませる。
「あんた、あんた私がこの世界に来た時からずっと見ていたと言うの?朝から晩まで?四六時中?」
「そうだ!お前達の全てを観察し、今日この時のための策を練っていた・・・お前だけでなく孫悟空達の行動から仕草、癖から何まで全て観察し記憶している。それがお前のような人間の小娘に無駄にされてたまるものか!それがどうしたと言うのだ?」
瞬間、私の二本指が目潰しの如く百眼魔王に迫っていたの。
「ひぃ!!」
堪らずに仰け反る百眼魔王。それは躊躇なく目を潰すための殺気ある突きだった。
「す、全て記憶しているって?」
思い起こすは私の旅での記憶。
それはどうでもいいわ!
この男は私の日常生活を見てたのよ?
それって、私が水浴びしている時も、旅の途中にトイレが無くて草む・・
「きゃああああああああ!!」
私は顔を真っ赤にして懐の数珠を全て上空に放ると、
「数珠炸裂弾!!」
炸裂した数珠が天井から壁、床に浮かぶ全ての魔眼を貫き消し去ったの。
「はぁ、はぁ、はぁ、残るは」
私は残る百眼魔王を睨み付ける。
「待て!待て!」
慌てる百眼魔王に私は殺気立って迫る。
「ありえん!何を怒っているのかさっぱり分からんが、それよりもトラウマが無いはず!」
百眼魔王は私に向かって再び魔眼が発動する。
「輪廻崩壊」
しかし私には魔眼が通用しなかったの。
「必ずあるはずだ!お前にも死にたくなるような過去の一つくらい!」
「無い!」
「無く無い!」
お互いムキになり、
「必ず探り出してやるぞー!!」
すると百眼魔王の肉体から魂みたいのが飛び出して私に向かって来たの!?
「えっ?」
百眼魔王の魂は私の肉体へと吸収されるかのように消えると、私も視界が光に飲まれていく?
「何?これは?
私は霊体になったかのように私自身の過去を繰り返して見ていたの。
確かに辛い事も悲しい事も苦しい事もあったわ・・・
だけど、私は全て乗り越えて来たから!
百眼魔王もまた私の過去を覗き見ながら致命的なトラウマを探していたの。
「どこだ何処だ何処だぁー!!」
焦る中で、
「!!」
百眼魔王は私の記憶の中で、閉ざされていた扉を見つけたの?
「何だ?これは?何者かに記憶を封じられていたのか?興味深い、この先に憎たらしい小娘の
闇があるのだな?」
しかし、百眼魔王が扉に手を伸ばすと強力な結解に雷を打たれたかのような衝撃を受けて膝を
付いたの。
「馬鹿な、こんな強力な暗示をかける者が?だが、私の魔眼で消し去ってやるぞー!!」
百眼魔王の魔眼から閃光が放たれると強力な結解に閉ざされていた扉が徐々に開き始める。
「どうやら、間違いないようだな!苦しみもがき後悔して死ぬが良い!」
開く扉から私の知らない記憶が噴き出して出て来た。
「な、何ぃ??」
噴き出した記憶の波は私の意識を囲むと、私の閉ざされていた記憶を見せたの。
その記憶の私はまだ幼い子供だった。
周りは身に覚えがある。そこは私がいた未来でお世話になっていた密教の本拠地に
建てられた五重の塔のだと思う。しかし中は荒れ果て、炎に包まれていた。
その中で私は意識を失いながら何者かに連れ去られていたの。
これが私の記憶?
確かに私には幼少の頃の記憶がない。
何かショックな事が原因で記憶を失ったと聞いてはいたけど、もしかして?
そこに誰かが私の名前を呼んで追いかけて来たの?
誰?
それは髪の長い綺麗な女性だったの。
「法子ぉーー!!」
私の名を呼ぶその綺麗な女性は連れ去られた私を追いかけながら、
襲い掛かって来る化け物を倒していたの。
この女性、強いわ・・・
化け物は次々と現れては女性に倒されていく。
そして遂に眠っている私を見つけると、優しく微笑み抱きしめる。
「もう大丈夫だからね?法子」
・・・貴女は?
その時、女性に気付いた昔の私が目を覚まして笑みを見せて呟く。
えっ?
私は・・・
「ん~おかぁ様?」
「法子、もう無事よ。母が来ました」
お母さんなの?
それは私の記憶から失っていたお母さんの姿だったの!!
この綺麗な女性がお母さん?
凛として綺麗で、真っ直ぐに私に向ける優しい瞳と綺麗な声に、長い黒髪が印象的だった。
その再会も直後、背後に立ち上がる影が二人を覆う?
それは白い巨体の化け物だった。化け物は二人まとめて串刺しにしようと槍を突き出したの。
「!!」
お母さんは私を庇うようにして軽く私を押すと、背中から化け物の槍が貫く。
血が噴き出して、目覚めた私に降りかかる。
幼少の私とリンクするかのように私は声にならない悲鳴をあげた。
「ふふふ」
百眼魔王の笑みを見せる。
現実世界の私は涙を流しながら全身を強く抱きしめて悲鳴をあげた。
そんなこんな。
次回予告
孫悟空、八戒、沙悟浄だけでなく法子までもが百眼魔王の
魔眼に落ちた。
このまま敗北してしまうのか?
※法子の過去は第二部の「神を導きし救世主」にて