遺跡の罠に黒幕の正体?
獅駝嶺の三魔王である青獅王、黄牙白象、大鵬金翅鳥
を倒した法子一行だったが?
私は法子!
私達は遺跡に隠れている謎の黒幕を探していたの。
因みに三魔王を倒した今、残党が襲って来ても相手じゃなかったのよ。
「あのお二方に任せていれば怖い相手などいませんよ」
鹿力大仙の言う通り、孫悟空と百獣王の元最強大魔王タッグを相手にして敵う相手がいるのかしら?
「しかし何処にいるのかしら?本当にいるの?」
沙悟浄と三妖仙が地下遺跡に妖気を飛ばしながら探っているけど、気配すら見付からなかったの。
「…もう帰る?」
「駄目ですよ!法子さん。乗り掛かった船は何処に行ったのですか?」
「もう沈没したかな?」
「法子さん…」としては
「じょ、冗談よ!」
私にフォンさんが真面目に寂しそうな顔で訴えるもんだから、ついつい慌てて訂正する。取りる正義の女子高生としては敢えず良い子ちゃんではいないとね?
「大仙である私達の探索術にもかからない結解術を持つ者とは一体何者ぞ?」
「強力な結解の中に隠れているにしても、結解があれば微かに分かるのにな」
「後は…我々の飛ばした念破を打ち消しているとか?よほど我々が恐いと見える」
鹿力大仙、虎力大仙、羊力大仙がどうにもならないと苛立ちを隠せないでいる時、一人念を遺跡中に飛ばしていた沙悟浄が微かな異変に気付いたの。
「この地下遺跡…上空から見たら円錐形になっていますね?それが地下に向かって…えっと?」
すると沙悟浄は地面に地図を描き始めたの。
「これで良いと思いますが~すみません」
私達は沙悟浄の描いた地図を見て目を丸くする。
「そんな有り得ないでしょ?これ?」
それは地上深くにまで続く独楽を逆さに埋めた巨大な大陸のように見えた。半信半疑の中で鹿力大仙が土術の印を結ぶと、土が盛り上がって沙悟浄が描いた地図を立体的に模型にしたの。
「凄いわね…」
けれど鹿力大仙はこの模型を見て、沙悟浄に真面目に返したの。
「これが本当にこの地下遺跡に間違いないのであれば、恐らく本体だった遺跡は更に未知数に巨大な物体だと思えるのだが?まるで先端のみが地上に現れたような?」
「信じがたいですが…私にもそう思えます」
虎力大仙と羊力大仙も会話に混ざり、私にはちんぷんかんぷんな話が盛り上がり始めたの。
「ちょっとー!この遺跡が何なのかはどうでも良いのよ!私達の目的忘れてない?黒幕よ!く・ろ・ま・く!」
四人は私に言われて渋々会話を中断させると、沙悟浄が指さしたの。
「この立体模型の中心にですね?実は隠し部屋があるみたいなんですよ~」
「何で知ってるの?」
「実は…」
沙悟浄はフォンさんと一緒に遺跡に関する石盤を読んだらしいの。そこには天界の言葉で未知の技術が無数に描かれていたらしく、その中には妖怪の培養とか融合技術なんかや、再生や不死の技術まで描かれていたんだって!つまり三魔王を造った技術よね?更にこの地下遺跡に関わる迷宮の地図とカラクリの仕掛けが描かれていたんだって!
「つまり?」
「それが正確なら、この隠し部屋がある場所は厳重に閉ざされていて、私達の探知術なんかでも見付けられないとか。更に幾つもの実験場があるらしいのです。と、言う事は?」
「そこに黒幕がいる可能性が高いってわけね?」
「大正解です!さすが法子さん!」
「ふふん。もっと持て囃しなさい!」
そんな訳で、私達は沙悟浄の案内で地下遺跡の隠し部屋へと向かったの。しかも数々の罠もあったんだけど、全て沙悟浄が反則的に安全なルートで案内してくれたの。
「でっ?」
私達の前には壁で行き止まりになっていたの。
「何もないじゃないの?沙悟浄!どうなってるのよ?」
「あれれ?この道で間違いないはずなんですが?まさか私、道に迷って??」
するとフォンさんが行き止まりの壁に近付くように歩き出すと、壁に向かって手を伸ばす?
「あっ!!」
フォンさんの伸ばした手は壁を透き通り、その壁の向こうに身体が入って消えたの。どうなってるの?するとフォンさんの声が壁の向こう側から聞こえる。
「目に入るのは存在しない。幻術ですね!」
壁の向こうに消えたフォンさんに呼び掛ける私。
「フォンさん、大丈夫ですか?」
「皆さんも、こちらへ!更に道が続いています!」
私達は追い掛けるように壁をすり抜けると、そこには宮殿のように豪華な彩飾された廊下が一本道のように続いていたの。
「王宮みたいね?」
すると今の今まで黙っていた孫悟空と百獣王さんが言葉を発したの。
「見覚えないか?獅駝王?」
「俺俺、うむ。何処かで見たような気がするようなしないような?因みに俺俺は百獣王だぞ?」
「忘れたのか?お前が昔に捕まった宮殿にも、至る場所に同じような印が刻まれてなかったか?」
「そうだったか?」
孫悟空が指さしたのは確かに至る場所に印された不気味な目玉の絵だったの。
「恐らく…この先にいる野郎は俺様が知ってる奴に違いない。生きていたとはしぶとい野郎だぜ!」
「孫悟空?何か心当たりあるわけ?」
孫悟空が言うには、前世で美猴王として地上界制覇を目指していた時に敵となった大魔王の事らしいの。
その答えに達した時、突然私達の歩いている廊下の風景が歪み出して、目の前に大きな扉が現れたの。
「何?この扉の先に敵がいるわけ?私達を待ち構えているわけね?」
私は扉に触ろうとした時、フォンさんが私の腕を掴んで止めたの!
「何?どうしたの、フォンさん?」
「これを見てください」
えっ?
フォンさんが扉に向かって持っていた数珠を投げると、数珠が石化して転がったの。
「フォンさん!?これって?」
「罠ですね」
私は危なく扉の罠にかかってしまう所だったの。
「まさか罠だったなんて…この扉に触れたら石化してしまうの?扉を開けないと開かないのよね?」
「手のこんだ罠を仕掛けやがって!」
孫悟空が妖気の弾丸を扉にぶつけて破壊しようと試みるも、妖気の弾丸は弾けるように消滅したの。
「法子さん?見てください?これを!」
「何?」
沙悟浄は扉に付いている輪を指差すと、それは五つ扉にはめられていたの。
「恐らくこの扉に五行の気を流しながら同時に開かないといけないみたいですね?」
「五行の気」
五行の気とは雷、水、風、土、炎の気の事。
「つまり私達の中から五人が犠牲にならないといけないわけ?そんな真似させられないわよ!」
「この扉の向こうに水晶があるはずです。その水晶を破壊すれば石化が解けるはずです!」
「沙悟浄、それは確か?それも遺跡に描かれていたの?だとしても、本当に中に水晶があるとは限らないじゃない?もしかしたら中に水晶がなくて、私達の数を確実に消す罠だったら?」
「それは…」
私は万が一の不幸な展開を予測して決断出来ないでいたの。
「自分が立候補致しますよ?法子さん?」
フォンさんが簡単に自分から名乗り出たの。
「今の自分は正直、戦力的に足手纏いです。それに中に法子さん達が入って水晶を破壊してくれると信じていますし、沙悟浄さんの事も信じますから」
「フォンさん?」
すると三妖仙達も立候補したの。
「また五行の気が必要ならば私達が立候補するのが道理に叶っていよう?」
残りは一人だった。
誰に?
すると孫悟空が指名したの。誰を?何で?
「獅駝王、お前やれよ?」
「仕方ない…俺俺しかいないようだな」
えっ?
「ちょっと待ってよ?この扉の先には強敵が待ち構えているんでしょ?だったら戦力になる百獣王さんは残しておくべきじゃない?」
私の考えに孫悟空は首を振ったの。
「全部、仕組まれてたんだよ!この罠で獅駝王を足止めするようにな?」
「えっ?」
孫悟空は扉を見るように私に伝えると、私も理解したの。
「五行の気は他の奴でも出来るが、この巨大な扉を開くには力不足。つまり獅駝王か俺様のどちらかが開ける役割が回ってくるのは計算されてたんだよ!」
私も納得して頷く。
「私達の数から力量。最初から見透かされているようで何か不気味で…」
「いや、この奥に待ち構えている奴は俺様達を今も近くで隠れて見ているんだろうぜ?そういう陰気な奴だ!」
扉の前に五人が並ぶと、掛けられた輪を掴む。そして同時に五行の気を流しながら扉を開いていく。
「うぉおおお!」
足下から石化が始まる中で扉は開く気配がなかった。すると石化していく百獣王が孫悟空に向かって叫んだの。
「オィ!美猴王兄貴よ?」
「何だ?」
「本当なら俺俺の獲物を任せるだぞ?だから俺俺の分も合わせて百倍返しにしろ!約束だぁー!」
「!!」
百獣王さんにしろの筋肉が盛り上がり妖気が爆発すると、ゆっくりと巨大な扉が開き始める。
石化していくフォンさんも私達に向かって「信じています」と頷くと、私達は開いた扉の隙間に向かって飛び込んだの。
私達は部屋の中に入って直ぐに周りを見回す。
当然、黒幕が待ち構えているはずだから!
「いたわ!」
黒幕は私達の全面にある階段の上に置かれた王の椅子に腰掛けて私達を見下ろしていたの。
アイツが黒幕?
ソイツを見るなり孫悟空が黒幕の名を叫んだの。
「しぶとくも生きてやがったんだな!眼力魔王!」
眼力魔王?それが黒幕の正体なわけ?
紫色の衣を纏った魔術師のような姿。髪が長く、目を包帯で巻いていた。
「久しいな?美猴王…今は孫悟空と言うのだな?」
眼力魔王と呼ばれた黒幕は自分を睨む孫悟空を見て、久しい旧友に会ったかのように答えたの。
「何でも知っているようなムカつく態度。お前が黒幕で正解だったようだな?眼力魔王!」
「ふふふ。私は確かに何でも知っている。この眼が届く所なら全てな!」
「だが、お前の眼は過去に俺様が潰してやったはずだぞ?」
眼力魔王は孫悟空の台詞に対して目を隠していた包帯を取って見せたの。その中から見えたのは三目眼だったの。
「馬鹿な!?お前は確かに三目眼一族。だが、確かにお前の力の源である魔眼は三百年前に潰れたはず?意味がわからねぇ!」
「ふふふ。私の魔眼は蘇り、そして更に…」
眼力魔王の周りを目玉が幾つも浮かび上がる。そして紫の衣を脱ぎ捨てた身体にも眼が存在したの。
「教えてやろう。眼力魔王は確かにお前によって死んだ。今の私は新たな眼を手に入れた無敵の魔王…」
『百眼魔王様だぁ!』
自慢気に名乗る百眼魔王に対して、私は何て安直なネーミングなんだろうと思ったの。
そんなこんな。
次回予告
黒幕の正体は百眼魔王と呼ばれる魔王だった。
孫悟空との因縁合わせ、法子達が戦う!




