百獣王と青獅王と、獣神対決!
孫悟空が大鵬金翅鳥を倒した。
百獣王が自分の複製であり不死の青獅王との対決していた。
同時に沙悟浄とフォンも不死のカラクリがある部屋を目指していたのだ。
それは孫悟空と大鵬金翅鳥、百獣王と青獅王が死闘を演じていた頃に遡る。
沙悟浄とフォンは三魔王へと注がれる力の供給を止めようと、フォンが見た地下の隠し部屋へと向かっていたのだ。
「地下には見張りがいなくて良かったですね?フォン君」
「恐らく三魔王が手下を餌にしたりするから近寄れないのだと思います」
「ぞわ~」
そしてフォンは上の実験場で見付けた地図を頼りに何もない地下通路の前に立ち止まると、沙悟浄が壁に向かって妖気を流す。
「!!」
すると壁だった場所が歪みだして扉が出現したのである。二人は妖気に反応する隠し部屋を見付けた。
「さて、入りますよ?」
「はい!沙悟浄さん!」
二人は扉を開き中へと入ると、そこには並ぶように置かれた水晶柱があり、その中には見るからに力の有りそうな妖怪達が封じ込められていた。
「どうやらこの水晶の中に閉じ込められた妖怪の力を三魔王へ送っているのでしょう」
「なら、その供給を停める装置がありそうですね。探しましょう、フォン君!」
二人は部屋の中を探し始める。すると中央に遺跡が置かれていて、見馴れない文字が描かれていたのだ。
「なんでしょう?これは?文字みたいのが書かれていますが自分には読めません」
「う~ん…これは昔の天界文字ですね。何とか解読出来そうです」
「本当ですか?沙悟浄さんは天界文字も学ばれたのですね?」
「えっ?あ、別に習った訳じゃないのですが、昔に天界にいた時に興味あった巻物を読むために、独学でさわり程度かじっただけですよ~」
「好奇心ですか?」
感心するフォンに沙悟浄は照れていた。
「さて、解読致します」
「お願い致します!」
沙悟浄は遺跡を読み漁る。
「今頃、法子さんは無事だろうか?本当なら自分が救援に向かうべきなのに」
しかし治癒を施され動けるようになっているとはいえ、それは仮の事。折れた骨や神経、血管は薄い気で膜を覆って繋げているに過ぎない。無茶をすれば直ぐに身動き取れなくなり、下手をすれば命さえ危険な状態なのだ。
「………」
フォンは沙悟浄を見て感じていた。確かに沙悟浄は法子一行の中では戦力的には数段に格下。戦えばフォンのが力量はあるのは間違いなかった。
「それでも沙悟浄さんの存在は法子さん達には欠かせない仲間だと痛いほど感じる。それに…」
沙悟浄の治癒術は旅の道中、妖怪との戦いの連戦続きの中では必要不可欠。
「料理は沙悟浄さんしか出来ないだろうし…」
旅の中では食だけは外せない。沙悟浄は全てにおいてスーパーサブなのだ。
その時、フォンは沙悟浄の様子がおかしい事に気付き、近寄ってみる。まるで人形のように動かないのだ?
「沙悟浄さん?」
その時、フォンは沙悟浄が遺跡に描かれた文字にとりつかれたように目を輝かせて、口許に笑みを見せたまま動かない事に異様さを感じて沙悟浄の肩を揺らしたのだ。
「…えっ?あ、はっ!」
沙悟浄は気付くと自分が何処か遠くの世界にでも行っていた感覚に陥っていた事を告げた。
「この遺跡は…本当に凄い!いや、凄いって生易しい物じゃないです!難しい理論式が、無数に描かれていて…何て言ったら良いのか分からないですが、好奇心に魂が奪われる所でしたよ~」
この遺跡には何が描かれていたのか?
「沙悟浄さん、何か分かったのですか?」
「あ、はい!力の供給の事でしたよね?その実験についても二千三十六項に描かれていましたよ」
「二千??」
この遺跡には何が描かれているのか?二千以上の実験?沙悟浄が言うには、まだ序章に過ぎない。まだ三万近くの未知の実験が描かれていたとか。
「全部読んでいたいですが法子さんの方が大切です!急ぎましょう?」
「はい!」
フォンは沙悟浄に対してただ者ではないナニかを感じて余計に頼もしくなった。
「イテッ!」
が、何もない場所で足を引っ掛けて転ぶドジぶりに少し安心もした。
「さてと…こっちに来てください?」
「あ、はい!」
沙悟浄は部屋を出て、まるで場所を知っていたかのように隠し部屋を見付けると、部屋の祭壇に置かれていた五つの水晶を外して並び替えようとする。玩具を扱うように水晶を嵌めるための土台に置かれているパズルを完成させて水晶を嵌めていった。
「沙悟浄さん?このカラクリを知っていたんですか?」
「えっ?いえ、さっきの遺跡に沢山ヒントが散りばめられていたので、なんとなくですよ?」
「なんとなく?」
遺跡にあった文字には二千以上の未知の実験が描かれていて、その中にあったこのカラクリを間違いない順番で解読していたのだ。
実は、このカラクリは順番を一度でも誤れば、この部屋の扉は密閉されて猛毒が流れてくる罠もあったのだが、沙悟浄は解答を前以て知っているテストを解く感じに不安がなかった。
「よし。これで妖気の供給は止まりました。後は不死の再生力を止めるのですが…困った」
「どうしたのです?」
「う~ん。どうやら三魔王への無限の妖気の供給は止めれても、不死の再生力を止めるには私とフォンさんだけでは無理みたいなんです」
「それは、どういう?」
沙悟浄は置かれた五つの水晶を指差すと、そこに雷、風、水、火、土の気を同時に流し込む必要があると説明する。
「沙悟浄さんが水の気を使えるとして、私は風の気を流せますが…後、三人必要なんですね?」
「それも火と土と雷の気を使える術者が…ん?あれ?そんな便利な術者がこんな都合よくいる…いたぁあああ!!」
それは百獣王の戦いを見ている三妖仙達であった。彼等は本来五行の属性は一つしか持たない中で、三妖仙達は五行の全てを扱う術。五雷法の術を得意とする超レアな大妖仙なのだ。正に渡りに舟であった。
「あの三人に来て貰いましょう!」
するとフォンは印を結んで幽体を飛ばした。
「フォン君、そんな術も出来るのですね?凄い。幽体離脱の術ですか!」
フォンに対して感心する沙悟浄は残されたフォンの肉体を守る事にする。
飛んで行ったフォンの幽体は壁をすり抜けながら直線的に三妖仙達のいる場所に着いた。百獣王と青獅王
の馬鹿でかい妖気がぶつかり合っていたから、直ぐに探知出来たのだ。
そこでフォンは三妖仙を見付けると、幽体の身体で三人に内容を告げた。
「何と?承知した!」
三妖仙は姿を消すと、フォンの幽体を追って二人のいる隠し部屋へとやって来る。
「どうやら上手くいったようですね?」
すると幽体が戻ったフォンの肉体が動いて頷いた。
そこに三妖仙が隠し部屋へと到着したのだ。
「私達は何をすれば良いのかな?」
三妖仙達は沙悟浄の説明を受けて頷くと五つの水晶の前に立つ。
「では行きますよ?」
沙悟浄は水気を水晶に流し込み、フォンは風気を水晶に流し込む。虎力大仙は雷気、羊力大仙は土気を、鹿力大仙は炎気を水晶に流し込む。
「皆さん!気合いを入れてくださいね~」
沙悟浄に合わせて四人も気合いを入れた。
その頃、百獣王は青獅王との激闘の中で異変を感じた。青獅王は妖気の供給で既に百獣王よりもスピードもパワーも上回っていた。しかし倒せば倒すほど厄介に強くなっていた青獅王の力がそれ以上に上がらなくなったのだ。
「限界来たのか?」
野生の勘で百獣王は青獅王の強さがそれ以上上がらないと気付き、だったら次に倒せば終わりじゃん?と、気楽な感じになる。
「もう少し俺俺、俺俺と戦っていたかったぞ?」
百獣王は雄叫びをあげると、青獅王もまた呼応するかのように雄叫びをあげる。
互いに激突すると百獣王が力負けする。しかし青獅王の一発の拳に対して二発、二発に対して四発と、手数を増やして応戦する。やがて攻撃のスピードが青獅王を上回っていく。
「ウガッ!」
青獅王の胸に百獣王の爪が刻まれて血を噴き出させた。しかし先程まで傷を負うと同時に塞がる再生力が失っていたのだ。
「お前、もう俺俺には勝てないぞ?死にたくなければ最期は全力で来い!」
百獣王の複製である筈の青獅王は、百獣王に対して震え始める。目の前に現れた勝てない相手、それは野生の本能が告げる恐怖だった。
「お前には飽きたぞ」
百獣王は既に戦意を失った青獅王に対してつまらなそうに背を向けた。そこに勝機を見た青獅王
は今ぞと襲い掛かったのだ。
「あ~つまらんぞ!」
百獣王は背後に迫った青獅王に対して身を回転させ爪で切りさくと青獅王の頭を吹っ飛んでいき、残された胴体から血が噴き出していた。
「うむ。お腹空いたぞ」
すると百獣王は牙を剥いて自分自身の複製であった青獅王の身体に噛み付き、食べ始めたのだ。
ウゲッ!
そして、二体目の大魔王を討伐したのだった。
しかし、実は今一番ピンチだったのは、残りの大魔王黄牙白象のいる場所であった。
意識のなかった八戒を残して置けずに、法子は黄牙白象を相手に無謀にも戦いを挑んだのだった。しかし法子は黄牙白象に殴られて一発で壁にまで吹き飛び衝突と同時に額から血を流して意識を失ったのだ。
黄牙白象が動かない法子に近づいて来る。
トドメを刺すつもりだった。
そこに!
「待つらぁあああ!」
意識を取り戻した八戒が止めたのだ。
八戒はそこで状況を把握した。意識のなかった自分のために法子が重症を負った事に。
「オマエ…許さんら…許さんらぁああ!」
今、八戒が妖恐黄牙白象を相手に男を見せる。
次回予告
化け物的な強さを持つ黄牙白象に、今まで目立たなかった
八戒が法子を守るために戦っていた。