獅駝嶺の居城侵入作戦!
湖で遭遇したのは倒すべき魔王?
その強さは孫悟空をも圧倒する。
しかし、戦いは避けては通らない!
私は法子
私達は西の地の獅駝嶺三魔王を討伐するために、森を抜けた居城に向かっていたの。
「………」
私達一行は沈黙の中で同じ事を考えていた。それは先日出会った謎の化け物の存在。私達の攻撃が全然通用しなかったの。
「心配すんな!次は俺様が何とかしてやるぜ!」
「待ってよ?あんな化け物が三人もいるなら、全員で一殺が確実安心効率的よ!」
「そうですね。法子さんの計画が一番だと思います。あんな化け物を三体相手にするのは分が悪いと思います」
フォンさんの同意に八戒と沙悟浄も同意するなかで、孫悟空だけが現れた化け物に対して別の事を考えていたの。
「孫悟空?あの化け物と知り合いみたいだったけど、正直、どうなのよ?」
「うむ。間違いなく俺様の知る奴だと思うのだが、転生しちまったから俺様に気付かなかったのかもな?しかし分からないのは、野郎が仲間とつるんで支配者になるとか、らしくないと言うか…」
「何百年も会ってなかったんらろ?その間で変わっちまったんじゃないらか?」
「う~ん。あいつ馬鹿だからな~。やっぱり殴って元に戻すしかないかな?」
「で、どういう関係だったんですか?」
沙悟浄の問いに孫悟空は平然と回答したの。
「俺様が美猴王だった時につるんでいた義兄弟だった奴だよ!」
「!!」
八戒と沙悟浄だけでなくフォンさんも凍り付く。
「昔の文献で読んだ事があります。今から三百年も昔に起きた大戦争。地上制覇をした六人の最強最悪の大魔王の話を!美猴王率いる義兄弟の話を!」
「その最悪の大魔王のリーダーである美猴王様が俺様孫悟空の前世だぞ!」
「え~!?」
驚くフォンさんは孫悟空の桁違いの強さを知っているからこそ納得していた。
「で、あの百獣王と名乗った奴が義兄弟の獅駝王って奴だよ!」
「マジらか~?つまり?」
「あの牛角魔王さんや鵬魔王と同じレベルの魔王が相手なんですか…あはは。今度は生き残れますかね…」
意味が分からないけど、厄介で面倒な相手だとだけ理解したの。
同時に私の中で熱い血が流れるのを感じた?
それは正義の使命感!
私達は幾つもの策を考えて練り合わしたの。戦いに備えて攻撃的な術札だけでなく治癒や防御の術札も余るくらい用意したの。
用意周到!
これで大丈夫とは言い切れないけど、考え付き出来る事は少しでもやっておかないと後悔した時には命取りだから。テスト前の心境よ?
そして私達は三魔王の本拠地周辺にまで辿り着いたの。
私達は互いに顔を見合わせて頷く。
「私達は必ず勝てるわ!だから自分自身を信じるの。そして全員必ず生きて戻るわよ?良いわね?」
「おぉー!!」
私達は獅駝嶺三魔王の居城…
まるで要塞に向かって忍び込もうとした時だったの!
「なぁ??」
突然、要塞に向けて大砲の弾丸が飛んで来て攻撃を仕掛け始めたの!
振り返った先には?
その襲撃は人間達の軍だったの。
「何が起きてるの?国の兵士が戻って来たの?」
「違います。あれは東の国の旗のようです」
「東の軍?」
とにかく状況は分からないけれど、攻め混むにはチャンスなのかもしれない?
私達は走り出すと要塞の門を破壊し、穴を開けて進入する。
「!!」
見ると私達と同時に進入した者達が他にもいたの?
何者?
「はぁ~!?」
それは東の軍を指揮していた三将軍だったの。
しかも私達に気付いて驚きを隠せないでいたの?
そこに居城を守る妖怪達が武器を手にわんさか現れて襲い掛かって来る。そこに離れた場所から飛んできた砲丸が爆発してる妖怪達を吹き飛ばす。援護射撃?
「貴方達は引き返して!ここから先は私達に任せなさい!」
「何だ?小娘!我らは東の地の王より魔王討伐に任された将軍だ!逃げ帰れるものか!それに我らは…」
えっ?
三将軍は印を結ぶと地面に向けて気を放ったの。しかも、それは法術?地面が盛り上がって襲い掛かって来た化け物達を押し潰す。
「あの者達は法術師?違う…あの気は妖気だわ?」
「あの三人の将軍は妖仙の者ですね?」
妖仙の将軍?
人間の軍を率いる将軍が妖仙って、どういう事?
そこに沙悟浄が思い出したかのように三人の将軍に向かって叫んだの。
「貴方達は鹿力大仙、虎力大仙、羊力大仙さんでは?」
沙悟浄に言われて孫悟空と八戒も思い出したかのように三人を見たの。
「お前達、何をしに来やがった?」
「まだ生きていたらか?」
すると三将軍の姿が人間の顔から獣の頭をした妖怪の姿へと変わったの。
この三将軍は過去に車遅国にて孫悟空達を苦しめた三人の妖仙。因縁ある間柄だったの。その者達が魔王討伐に参加していたのよ!
「とにかくもう引き返せないわ!要塞に進入するわよ!」
私達は暴れながら要塞である居城へと進入に成功したの。私達は左右を見回して状況を把握する。沙悟浄が術札を撒くと壁に貼りついて妖気が広がっていく。
「はい!私の妖怪探知から見て城の中には七百から千体の妖気を感じます」
「思ったより多いわね?だけど私達の目的は三人の魔王だけだから無駄な戦いは避けて通るわよ!」
「了解!」
沙悟浄の妖怪探知の術を見て感心した三人の妖仙は自分達の術札に念を籠めて沙悟浄と同じく術札を壁に貼りつけたの。
「これで良いのか?」
三妖仙も見よう見まねで同じく妖気探知の術を行ったの。沙悟浄も三人の妖仙の術が自分より洗練されていると気付く。
「ふむ。危うく騙されるところだったわ」
「何か分かりましたか?」
「この城は偽物ですね。魔王はおらん」
「えっ?」
私達の進入が無駄骨になったと聞いて三妖仙に向かって問い質す。
「どういう事?この城攻めは意味がなかったかと言うの?魔王は本当にいないの?じゃあ、何処にいるのよ?」
「違うな。この城塞は偽物でも魔王は近くにおる。しかも近くにな」
「近くに?城にいないのではないの?」
「そうだな。いるのは…」
鹿力大仙は床に指を指した。つまり?魔王は地下にいるって事なの?
「どうやら魔王の城は地下要塞のようだ」
すると三妖仙は孫悟空達には敵わないと知って、魔王討伐に協力関係を結ぼうと言い出して来たの。
「良いわよ?」
「思ったより返答が早いですな?正直、私達は魔王を討伐に来たと言うより調査が目的なのです。貴方達の戦力は願ったり叶ったりです!」
「調査?何のよ?」
「この地の三人の魔王調査です。どんな能力なのか?強さから正体まで…と、これは我が東国の車遅国の王からの指示です。まぁ本当の理由は魔王の正体が私達の知る方と同一なのかの確認が個人的な理由なのですがね。と、言っても貴方達が全て倒して下さるなら調査も必要ないのですがね」
「分かった。だけど私達にも協力して貰うわよ?あんた達、便利な能力を持っているみたいだしね」
「心得ました」
私達に思ってもみない味方を得たの。
「で、どうするよ?地下に魔王がいるなら降りなきゃ駄目だろ?」
「階段なら東の奥に隠し扉があって、そこから降りれま……」
鹿力大仙が説明終える前に私は孫悟空に命じたの。
「オゥさ!」
床に穴が開いて地下への道が開く。三妖仙はその滅茶苦茶さに、コイツらだったら仕方ないと納得する。
「さて、飛び降りるわよ!皆、気合い入れるわよ!」
私達は警戒しながら地下に飛び降りると、驚いたように私達に気付いた地下にいる妖怪達に向かって、落下しながら霊気弾に、術札、妖気弾から、三大仙達の雷撃が飛び回る。
「床が見えたわよ!」
着地した私達は直ぐ様背中合わせになって、新たな敵に備える。
「大丈夫そうね?敵の気配は無さそうだけど?」
「地下に入ってから妖気が濃過ぎて妖気探知の術が使えません!」
「了解よ?後は自分自身の足で魔王探索よ!」
私達は全員一組になって魔王を一体ずつ倒す作戦だったの。
だから離れないようにしなくてはならないの。
「!!」
その直後、私達は強烈な覇気に足をすくませる!
な、何!?
私達は周りを見回して敵の居場所を探る。間違いなく近くにいるわ!それも私達が倒すべき魔王だわ!
妖気から、湖で出会した魔王とは別のようね?
「あそこから殺気が!」
私達はフォンさんの指差した場所、宙に浮いた玉座にその魔王はいた。燃えるように真っ赤な鎧を纏い、翼をはやした魔王が一人。
「あ、あれは鳳魔じゃないでしょうか?」
沙悟浄の言う鳳魔とは、かつて孫悟空達が戦った鵬魔王と呼ばれる大魔王の血族で、再生力のずば抜けた血族らしいの。
「ふふふ。お前達が来る事は知っていた。待ち遠しかったぞ?我が宿敵孫悟空よ!」
孫悟空を宿敵って?因縁があるの?
「お前、俺様を知っているのか?」
「覚えておるだろう?お前達が鵬魔城に襲撃した時の事を?」
「つまり仲間達の仇討ちか?」
「仇討ち?興味ないな。そんな事ではない!俺はお前に恨みがあるのだ!」
「俺様にだと?お前、俺様に会った事があるのか?」
「!!」
魔王は孫悟空に覚えてすらいなかった事にショックを受ける。
「こ、この俺を覚えてないだと?お前へのリベンジを果たすために、この俺がどれだけ…この孫悟空がぁあああ!!」
魔王は翼を広げると、その覇気に私達は全員膝をついてしまう。
「くぅ…こんな奴が鵬魔王以外にいたか?マジに記憶ないぞ?」
魔王は孫悟空に今一度告げたの。
「俺は鵬魔軍の副将軍だった者だ!」
しかし孫悟空はマジに記憶になかった。それもそのはず…かつて孫悟空は鵬魔城にて、この副将軍を一発殴って倒したのだから。
「おっ?」
しかし、こんな強さを持つ化け物を一発で倒したの?
「ふふふ。この俺がお前へのリベンジのために、我が身を捧げて…この力を手に入れたのだ!」
副将軍だった鵬魔族の魔王の鎧が盛り上がる筋肉によって弾けると、その身体が露になったの。
何?胸に別の頭が?
その顔を見た時、孫悟空は前世で戦った大魔王を思い出したの。
「その頭は…まさか鵬獄魔王なのか!?」
鵬獄魔王とは、かつて孫悟空が倒した鵬魔王の父親であって、かつて美猴王だった前世で倒した大魔王の事だったの。
「お前、まさか鵬獄魔王の身体と力を奪ったのか?」
「その通り。かつての大魔王様の力を手に入れた俺は最早最強の大魔王に生まれ変わったのだ!」
そして生まれ変わった自分自身の名を叫んだの。
「我が名は大鵬金翅鳥」
しかし、
「名前なんかどうでもよいよ?それより、どうやって?鵬獄魔王は何百年も前に死んで肉体など残ってはいなかったはずだぞ?」
「何処までも自分本意だな?ふん!今から死ぬお前に答える必要はない!死ね!孫悟空よ?」
大鵬金翅鳥の身体から灼熱の炎が私達に向かって来たの。
「ダメ!あんな凄まじい炎を受け止められないわ!」
直後、孫悟空が飛び出して炎を一身に受け止めたの。
「孫悟空!!」
灼熱の炎に飲み込まれた孫悟空だったけれど、中より声が聞こえて来たの。
「聖獣変化唯我独尊・朱雀変化!」
孫悟空を飲み込んだ炎が次第に集約しながら一点に集まっていく。
それは伸ばされた孫悟空の掌?
孫悟空は朱雀の鎧を纏った姿で立っていたの。
「これからが俺様の本気の戦いだ!悪いが、こいつは俺様に用があるみたいだから法子達は先に向かってくれ!」
「分かったわ!」
えっ?
すると孫悟空は私達の床に向けて集約した炎の弾を放つと、床が崩れて私達は更に地下へと落下したの。
「ちょっとー!!」
とか、まぁ~
そんなこんな。
次回予告
大鵬金翅鳥と孫悟空の朱雀変化!
勝つのはどっち?
そして法子一行は先に進む!
※転生記の最終決戦にて鵬魔王との戦いが繰り広げられています。




