どうよ?歌合戦の始まりよ!!
炎狼族と氷狼族の長年に渡る因縁に終止符をつけるのは?
それは、あれ!
私は法子。
私は八戒と一緒に炎の塔のある地に入ったの。そこには炎の狼の毛皮を纏った妖怪達の縄張り。
そこで私は炎狼族の長老に提案をしたの。
「殺し合いじゃない戦いで、貴方達の戦争を終わらせてあげるわ!」
「そ、そんな事が出来るのですか??」
「貴方達も痛いのは嫌いでしょ?辛いのも悲しいのも嫌よね?死ぬなんて、まっぴらでしょ?」
「それは…まぁ…」
私と長老のやり取りを聞いている村の者達も、ざわめき始める。
一体、突然現れた人間の娘は何を言っているのか?戯言か?それとも?けれど何故か期待感を持たせる言葉に彼らは黙って聞いていたの。
「で、どうしたいの?一族が滅びるまで戦って死ぬ?それとも生きるために私の言う通りにする?」
「そ、それは…」
戸惑う長老に私は間髪与えずに叩き込む。
「はっきりしなさい!長老でしょ?つべこべ言わずに即決、即答!」
「は、はい!お任せ致します!」
長老の言葉に他の者達も賛同する事になりました。
さてと…
「じゃあ、隣の氷狼族との話し合いの場を作ってちょうだい?」
「は、はい~??そんな…使いなんか送ったら、私達殺されてしまいますよ~」
「情けないわね?戦争するつもりだったんでしょ?」
恥ずかし気に照れる長老に私は苛立つ。
「つべこべ言わずにさっさと言う事を聞きなさい!」
「は~い!」
可哀想だから八戒を護衛に付かせて行かせたの。
待つ事、一時間…
くらいかな?
私は腕時計を見て思った事は、ソーラー電池の時計は便利だって関係ない事だったの。
でっ?
私は炎狼族を連れて炎の地と氷の地の中央にある広場へと向かったの。
そこには既に氷狼族も集まっていたの。
お互いに険悪なムードの中で、氷狼族の長老が前に出て来て叫ぶ。
「我々を呼んだのは何用じゃ!使いの者の話だとお互いに全滅しない解決策だとか?それはこちらとて同じ思い…それとも、この日この時に集まった者達だけで決着を付けようと?願ったり叶ったりじゃ!」
願ったり叶ったりですって?どういう事?
すると氷狼族より二人の戦士が前に出て来たの?
「この者達は私達の頼もしい助っ人だ!我々も考えて代表を出し合い、競い、決着を付けようぞ!お前達も代表を出すが良い」
つまり代表戦をしようと言うのね?それも良い妙案だわ?けど、
「俺様の相手は誰だ?どんな相手でも構わんぞ!」
「私も頑張ります!」
氷狼族の代表って孫悟空と沙悟浄なの?あの馬鹿!
私は二人の前に出ると、
「だったら私が相手になるわよ!」
「へっ?」
孫悟空と沙悟浄が炎狼族の代表に現れて目を丸くする?
「どうして法子が?俺様は法子と戦うのか?」
「馬鹿言いなさい!そんな事をあんたに出来るわけ?」
「無理だな」
「結構」
氷狼族は強力な助っ人の登場に優位に立っていたはずなのに、突然の戦闘放棄に驚いていた。
なにがなんだか?
既に収拾付かない状況になっていて、炎狼族も氷狼族も険悪ムードになっていく。互いに妖気が高まっていくのが気配でわかる。
「孫悟空?」
「ウッス!」
すると孫悟空が突然妖気を爆発させて、炎狼族だけでなく氷狼族をも気圧されたの。
「お前ら?俺様を覚えているだろ?一歩でも動けば俺様が相手になるぜ?」
氷狼族は既に孫悟空の存在を知っていたから信頼して代表にしたの。だからこそ恐怖で抵抗出来ないのは勿論だったの。でも炎狼族もまた孫悟空の存在に気付き震え上がる。
今から六年も前、かつて孫悟空がこの地に来た際に炎狼族の長だった炎獄魔王と氷狼族の長であった銅角魔王を討った張本人であると気付いたから。しかも孫悟空はかつて地上界を支配した美猴王だとも!
そうなったら無暗に動けなくなった両方に対して、私は改めて提案したの。
「今から貴方達はお互いに代表を決めて対戦して貰います!」
えっ?今までと同じ?
再びざわめく両軍に私は突拍子もない提案を持ち掛けたの。
そ・れ・は?
「両狼軍・炎氷歌合戦!」
それは歌で勝負をつけるって事よ!お互いに歌い手を出しあって点数を付けるの。因みに審査員は私達!
「時は一月後よ?それまで練習してよね?楽しみにしているわよ!」
そんなこんなで、戸惑いながらも炎狼族と氷狼族は歌の練習を始めたの。
先ずは代表選出よね?
オーディションが必要よね?審査は歌唱力は勿論だけど、パフォーマンスなんかも必要よね?ダンスとか衣装とか?他にもバンドメンバーも必要よね?全てアカペラじゃ何か寂しいし。
衣装や楽器は沙悟浄に作らせる事にして、歌の文化なんてあるのかな?えっ?問題ない?独特の文化があるの?なら良いわ。
両軍、歌の練習が始まったの。お互いの練習は極秘に始められたの。何をするのか?企画会議も行われ、気付くと歌い手に決まった者にはスケジュールを管理するマネージャーまで現れたの。更に舞台作りも始まって後は寝て待てよね~
1ヶ月後…
花火が上げられ、開幕の準備が始まる。舞台にはバンドメンバーが音の調整をして、歌い手は控え室に待機している。出店には食べ物が並べられ、会場前には両族のお客さんが今か今かと待ちわびていたの。
「さ~てと!」
私の合図に、孫悟空と私がステージ前に登場して司会の挨拶を始めたの。
「皆様、お集まりくださり有り難うございます」
「今より待ちに待った炎氷歌合戦が始まるぜ!」
同時に炎の棟と氷の棟から照明が灯されると同時に道に並べられた炎が次々と灯される。それが氷のオブジェに光が反射してライトアップされていったの。
見事だわ~
急拵えとは思えないわね~
これも沙悟浄監修の下、両族が力を貸してくれたからだわ。
ふふふ
「先ず最初の登場は炎狼族のチョガウさん!」
チョガウさんが登場するなり、炎が噴き出す演出が!更にバックバンドが激しいリズムを奏でる。
チョガウさんは予想だにしないオリジナルのヘビメタを叫び歌う!
会場は盛り上がって、歓声があがる。
次に登場は氷狼族のトオ・ボエさん。氷狼族が誇る歌姫が登場!彼女は氷のステージでバラードを歌い上げて感傷に浸れた。
次々と歌われていく中にはウケ狙いのコメディ担当もいたり、漫才始めた勘違いもいたけど、それはそれで面白かった。
後半に迫るに連れて炎狼族の五人のイケメン男子グループ。軽快なダンスに美形の少年達が青春と夢と希望を歌うと、炎狼族の女の子だけでなく、氷狼族の女の子からも黄色い悲鳴が!盛り上がりはもうアイドル?次も凄かったわ!可愛い氷狼の女の子達四人が見えそうで見えないセクシーな衣装で魅了する。熱気が会場を沸かし、視線は歌い手に注がれる。八戒はもう夢中でガン見しているし…
「おぉ~色っぺぇ~お姉ちゃんらぁ~!もっとお尻振るらよ~腰フリフリら~」
あの馬鹿!
でも少し分かるかも。次々と代わる代わる歌い手に私も楽しくて楽しくてノリノリになって、まるで夏フェスみたい。
そんなこんなで佳境に入る中で問題が発生したの?
「どういう事?」
私は沙悟浄に呼び出されて楽屋に駆け付けると、そこにはラストを飾る女の子達が数人お腹を抱えて苦しんでいたの?
「何があったの?沙悟浄」
「それがお昼に食べたお弁当を食べた後に腹痛になったらしいのですよ~」
「そんな…」
炎狼族の女の子だけでなく、氷狼族のラストを歌うはずの女の子達も数人お腹を抱えて苦しんでいた。
このままじゃ振り付けも代わるし、歌のパートを歌う所が抜け抜けに…
「代役がいれば良かったんですけど…せっかく最後の歌は勝敗を決めるための…」
「えっ?どういう事?何か今までと違うの?」
「それがですね…」
私は沙悟浄に説明を聞いて閃いたの!
「これは逆に面白くなって来たわ~」
会場では孫悟空が一人で司会を務め、意外と様になっていたの?
「そんじゃあ!炎氷歌合戦のラストを飾るのは~」
観客達はそこで目を丸くして驚いたの!?
そこには炎狼族と氷狼族の女の子達の混合チームが舞台に登場したから?
何が起きたのかってね
そして前奏が静かに始まり曲に合わせて女の子達がリズムを取り始めると、両方のセンターが同時に歌い始めたの!しかも別々の歌詞を?なのになのに!?
お互いの歌が交わり、代わる代わる歌詞がマッチングし、まるで最初から一つの歌としてあったかのように融合していたの。
「もともとラストは同じ曲を使って別の歌詞を使って、お互いの歌唱力とパフォーマンスで勝負をしてもらおうと企画していたのですよ~」
この沙悟浄の言葉に私は、
「だったら一緒に歌えば良いじゃん!問題無しよ?」
「でも勝敗はどうなるのですか?」
「何を言ってるの?勝敗とライヴの成功、どっちが大切だと思っているの?」
「それは…し」
「ライヴの成功に決まってるじゃない!」
言い切る私に沙悟浄は、
「ですよね~」
私には炎狼族と氷狼族の長きに渡る勝敗の決着なんてどうでも良くなっていたの。今が面白く楽しければ良いって!
会場の観客は最初は驚き戸惑っていたけど、今はもう混合アイドルに大夢中になっていたし。
そして歌合戦は盛り上がりの中で終了した。
「さてと」
問題は歌合戦の結果よね?
どちらの一族も固唾を飲み込んで結果発表を待つ。
孫悟空が沙悟浄より手渡された結果の紙を受け取り、広げると中に書かれた方の名を読み上げる。
「勝者はー!!」
勝者は?
「ごくん」
その結末は?
「白紙だぜー!」
えっ?えっ?えっ?
と、観客達が戸惑っている中で、今度は私が登壇したのよ。
「勝負なんてどうだって良いじゃん!関係ないわよ!」
みもふたもない台詞で全員を一蹴させた後、
「だって、そうじゃない?今日までいがみ合っていた貴方達が、この歌合戦までにどうだったか思い出してちょうだい?」
確かに険悪ムードで始まり共に舞台やら装置やら、練習を朝から晩まで…
本当に大変だったと思うの。そんな中で協力しあい、更にラストでは一緒に歌うなんて助け合った。
わだかまり?因縁?決着?
「関係ないわよ!貴方達ももう分かってるはずよね?このまま争っても意味がないって?何も良い事ないし、結果不幸にしかならないって?」
顔を見合わせる炎狼族と氷狼族は、今日までの日々を思い出していた。最初は無理矢理始めた歌合戦の準備と過酷な練習の時間。それでも協力しながら助け合った時間があったから、歌合戦も大成功したの。
いがみ合っていたのが不思議なくらい、お互いを認めあった時間は嘘じゃない。
「どうよ?これが文化祭効果よ!」
一つの事に助け合い協力すれば知らず知らずに友情が芽生える作戦!
ただ、歌合戦を見たかっただけじゃない私の巧妙な作戦!
どうよ?
「一族が滅びるか?それとも今日をキッカケにして共に生きていくか?どちらにするか決めなさい!」
私の叱咤に、両一族は共に握手を交わしたのでした。
そして歌合戦は毎年続ける事も約束し、私達は長年に続いた戦争の終結をさせたのでした。
でも、この戦争の原因って伝説の大魔王が要らぬ事を言ったからよね?はた迷惑な話だわ!
そんなこんな。
「クシャン!」
孫悟空のクシャミが響き渡ったのでした。
次回予告
法子達は西の大地の平和を守れるのか?
コメディー展開からの新たな展開に戻るわよ!