結解修復は何かの縁?
法子達は愛音の料理店にお世話になった。
そこで、法子は愛音の失踪した父親が果心居士だと知る。
私は法子。
その夜、私は眠れなかったわ。果心居士との戦いを思い出していたの。
「果心居士」は、私のいた未来で地脈を操作して富士山を噴火させようとした。しかも織田信長を化け物に造り上げて魔王を誕生させたの。
恐らく私が戦った相手の中でも最強クラスの呪術者だったわ。
しかし果心居士は自分が造り上げた最恐の化け物・織田信長に裏切られて殺された。
私は死に際の果心居士の記憶から、この馬鹿げた事をしでかした理由を知ったの。
それは、どこか離れた世界に残して来た娘のいる場所へ帰るため。
しかしそこは果心居士でも守りきれない化け物が跋扈した世界。そこで最強の織田信長を造り上げ、娘のいる世界へと帰るための力を富士山の地脈を使い補う事を思い付いたの。
未来の人達がどうなろうと構わない。唯一の娘だけを守るために命を捧げた人…
愛音さんはお父さんの失踪に不信がっていた。信じたいけど信じられない気持ちのジレンマ。
「私はお父さんを許して良いのかな?あはは。法子に言ってもだよね?」
私は涙目になっていた。
「お願い。愛音さん…信じて!お父さんは愛音さんを誰よりも…誰よりも!例え、全てを犠牲にして敵に回してでも!愛音さんを、愛音さんを愛していたに違いないわ!」
「大袈裟よ?」
でも私の真剣な顔に愛音さんは嬉しい顔で笑む。
「有難う。法子」
私達は次の日の朝から村に張られた結界のある場所へと足を運んだの。
「結界が張れるのは私と沙悟浄だけど、皆はお手伝い宜しくね?」
「了解!」
孫悟空と八戒が敬礼をして答えたの。そして私達は結界の柱に近付くと、そこで私達は驚いたの。
「何、これ?」
私は結界があまりにも高度で驚いたのよ。まるで私の師匠が張ったような高度な結界だったの。
「ん?」
すると沙悟浄が涙を流している事に気付く。
「どうしたの?沙悟浄?」
すると沙悟浄が涙目に発した言葉に孫悟空と八戒も涙を流したの?
えっ?何?
「この結界は三蔵様が張られた結界です…」
三蔵様?三蔵様って、孫悟空達が跋扈以前一緒に旅をしていたお坊さんよね?
「貴方達の知り合いが張ったんだ?」
「間違いありません」
「三蔵、此処に来ていたんだな?そうか…繋がっていたんだな?」
「三蔵はんも水臭いらよ」
私達は直ぐに準備を始めたの。沙悟浄が結界の公式を調べている間に私達は柱の補強工事をする。
「柱も崩れかけていたからグッドタイミングで修復出来たみたいね?」
一本の柱は完全に崩れていたの。それはかつて白い魔物が現れて結界を破壊し、村を襲った事があったからみたいなの。その時、愛音さんと旦那さんのお子さんが襲われた事を聞く。
「この結界を破壊するなんて、よほどの化け物よね?また現れたりするの?」
「心配いらねぇよ!」
「孫悟空、何か知ってるの?」
「その魔物は俺様が以前立ち寄った時に、ダチと一緒に倒してやったからな!」
「そうなんだ?やるじゃん!孫悟空!」
「あたりめぇ~だぜ!」
「けど、弱い妖怪は入って来れないだろうけど、また強い力の魔物が現れたら簡単に入って来られちゃうわよね?やっぱり乗り掛かった船!私達が強固で長持ちする結界柱を作りましょう!」
「おぅ~!」
柱の補強工事を孫悟空と八戒が取り組んでいる間、私は沙悟浄と新しい結界の構想を練っていたの。
「どうかしら?」
「素晴らしいです!法子さんの発想は新しく独創的で勉強になります」
「まぁね?確かに新しく独創的よね」
私は照れながらも自分自身が未来から来た事が役にたったと思うわ。
「では、これで始めようね?」
「はい!」
私と沙悟浄も結界の術式を始める。鏡と剣、勾玉を前にして、私と沙悟浄が印を結んで勾玉へと神気を流し込む。更に鏡と剣とを並べて同じく気を流し込む。
私達の気が勾玉の中に流し込まれ、鏡に太陽を浴びて光の線が幾重にも交わりながら神々しく輝く。太陽の光を浴びながら半永久的に結界を長持ちし、剣が厄災から守護の役目をする。
「三種の守護結界よ」
これを休まずに七日間続けるのだけど沙悟浄は凄いわ!沙悟浄の術の早さは尋常じゃないのよ?この私が置いていかれそうだわ?
「沙悟浄?」
私の教えたばかりの法式に自分自身のオリジナルを交えて、また新しい術式を作り出してるの。それも無意識に?新しい玩具を与えられて遊びながら進化させてるみたいだわ?でも、沙悟浄を止めるどころか、もっと成長を伸ばしたくなるわ。沙悟浄のお陰で私達は僅か2日で結界を完成させたの。
「ふぅ~」
疲れきった私達に愛音さんがご馳走を振る舞ってくれたの。
「有難うございます」
「礼を言うのは私達の方よ?本当に有難う、法子!村の皆を代表して礼を言うわ?」
「う、うん」
「?」
私の戸惑いに愛音さんは見抜いていたの。
「法子?私に何か隠してはいない?」
「べ、別にないわ…」
私の迷いは愛音さんの父親であるかしんこじの事を言い出すべきかどうか悩んでいたの。愛音さんのお父さんを結果的に殺したと思われる事が私は耐えられないと思ったの。
狡い?
そうかもしれないわね。
けど、私にはまだ言い出す勇気がなかったの。
「何だってぇ~?」
その時、広場の方で村人達が騒ぎ始めたの?何が起きたと言うの?
私達も意味も分からないまま向かうと、そこには怪我をした男達が倒れていて、村人が集まっていたの。
「沙悟浄!」
「あ、はい!」
私と沙悟浄は慌てて怪我をしている人達に治癒術を施し始める。無事に治癒が終わると私は疲れはてて座り込む。
暫くした後、私達は何が起きたかを知ったの。
「それは一大事ね!」
私は孫悟空達を連れて村を出る事にしたの。
えっ?何が起きたかって?
実は村の村長が前から結界を外の寺院に頼むために出していた者達が、途中で妖怪の争いに巻き込まれたと言うの?
「で、どんな妖怪連中なんだ?」
孫悟空の問いに襲われた男の一人が答えたの。
「狼の毛皮を纏った妖怪達です…」
「狼だと?はて?」
「この村から離れた場所に妖怪達の大地がありまして、燃え盛る大地には炎狼族。氷の大地には氷狼族がいるのです。奴等が争っているせいで私達人間達は村から出る事を困難にしているのです」
「その妖怪達が喧嘩していて巻き添えにあったわけね?はた迷惑な話よね!」
そんなこんなで私達は妖怪達の喧嘩の仲裁に向かう事にしたの。
力ずくでかな?
ふふん
私達は愛音さんからお弁当を作って貰い、その妖怪の村へと向かったの。
「また戻っておいでよ?ご馳走作って待ってるからさ!」
愛音さんが手を腰に置きながらの見送りに、私も返事に答えたの。
「必ず戻ります!愛音さんにはまだ話したい事があるから!」
そう告げると、私達は次の目的地へと旅立ったの。
あ、手土産のクッキー美味しいわ~
私達は話に聞いた妖怪の巣窟へと向かっていたの。
「それにしても暑くないかな?暑い~」
「きっと、あれのせいでは?」
「何?あっ!?」
見ると、山向こうに見える地が燃え盛っていたの。
「あっちも凄いらよ?」
「今度は何?」
逆方向は氷の地になっていたの。つまり炎の大地と氷の大地があって、そこに住む妖怪達が縄張り争いをしているわけかな?
「とりあえず奴等の頭をぶっ倒して、そんで喧嘩するなって強制させれば良いのね?そんで人間には手を出すなって言えば良いのよね?」
「そんな簡単な事じゃないんじゃないですかね~」
「でも、力ずくで決着付けるしかないでしょ?結論的に?」
「まぁ…そうなるらろうらなぁ~」
「そっちのが簡単だから良いんじゃねぇか?でも…」
「何よ?何か文句ある?」
「ねぇけどよ?確か此処のボスは…」
「なに?」
何か孫悟空が知ってそうな素振りを見せたけど、めんどくさいから話を遮った。
「とにかく相手を知らなきゃ仕方ないわ?先ずは潜入して情報収集よ!」
「了解!」
私は八戒と炎の大地へ向かい、孫悟空と沙悟浄は氷の大地へ潜入したの。
「でも暑いわ~」
「法子はん!」
八戒は私をジロジロ見て近付いて来る。因みに私は潜入のために狼の毛皮に水着みたいな服を着ていたの。
「近寄るな!」
私は八戒を蹴って後退る。
「酷いらよ~」
「あんまりヤラシイ目で見ないでよね?やっぱり氷の地のが良かったかしら?あっちならコートで厚着だったし…」
「うらぁ…」
落ち込む八戒を無視して私は炎狼の妖怪達が集まる集落へと忍び込んだの。
そこには炎を纏った狼の毛皮を被った妖怪達が集まっていた。何をしているの?
「儂らは戦わねばならないのじゃ…」
そこには武器を手にした妖怪達が戦闘の準備をしていたの。今にも戦場に出向くような感じだった。
「止めるわよ?八戒!」
「待つら!何かおかしくないらか?」
「えっ?」
見ると女、子供の姿まであったの?しかも脅えながら?今から戦場に?しかも泣いてる妖怪もいたのよ?
「変…よね?やっぱり?」
「んら!」
私は八戒と顔を見合わせると、炎狼の集団の前に姿を現したの。
「ちょっと話を聞かせてくれないかしら?」
無謀無策な私に、
「マジらか?」
八戒は私の無茶に仕方なく自分も追い掛けて来る。ざわめく炎狼族はざわめきながら私達を警戒していた。そこに長老らしき妖怪が私達の前に出てきたの。
「何者じゃ?お主らは?見たところ人間と妖怪のようじゃが?なにようじゃ?」
「私達は話を聞かせて貰いたいだけよ!素直に話せば悪いようにはしないわ?」
「何か脅してるようらよ?法子はん?」
村の妖怪達は私達に対して警戒しながら見ている。
「何を話せば良いのじゃ?儂らをどうするつもりじゃ?」
「何をって…そうね?どうして喧嘩してるかかな?そんなに脅えながら喧嘩する理由を教えなさい!」
上から目線の私に長老は襲って来る事もなく、恐る恐る話始めたの。
それは炎狼族と氷狼族の戦いの歴史。
かつて炎狼族を支配していたのは獄狼魔王。そして氷狼族を支配していたのは銅角魔王。かつての二人は仲の良い兄弟であったが、過去の地上世界を巻き込む戦争の最中、大魔王が二人に言ったのよ。
「お前達はどっちが強いのだ?どっちが偉いのだ?」
その何気ない言葉が二人の心に刻まれてしまったの。
地上界の戦争が終局し、平和になった後に二人は…
喧嘩したの!
そして縄張りの土地を二つに分けて、ついには何年にも続く戦争を始めたんだって。
喧嘩から戦争?
けど、今から六年前に首謀者であったお互いのボスである獄狼魔王と銅角魔王は、この地に現れた強い妖怪に退治されたと言うの。それでも残った互いの部族はめんどくさいボスを失った後もずっと戦争を続けていたの。
長きに渡る蟠りは決着を終えるまでは、どうにもならない。どちらかが滅びるまでは終われないと?
私は涙涙に語る炎狼族の長老に対して一言。
「馬鹿じゃない?」
「へっ?」
「別に相手を滅ぼす必要ないじゃん?何かしら決着付けば良いのよね?」
「それは…まぁ…」
「だったら私に考えがあるわ!この戦争、私が終わらせてあげる!」
と、何か始める私に八戒はヤレヤレとした顔で、最後まで付き合うしかないと決めたのね。
そんなこんな。
次回予告
法子は炎狼族と氷狼族との戦争に首を突っ込んだ。
一体全体、どう解決するのやら?




