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黄袍怪夫婦の命懸けの大舞台?


黄袍怪夫婦のために出来る事?


それは芝居よ!!


私は法子。


私達は黄袍怪夫婦を有名にするために、人肌脱ごうと芝居の稽古をつけていたの。


「どう?役の気持ちは掴んだ?役を自分自身だと思って演じるのよ!」


私の熱血指導に黄袍怪夫婦は涙を流しながら熱く受け止めて稽古を励む。


けど、この脚本自体二人の過去をそのまま書いた作品だから、自分自身の事を演じるわけよね?


まぁ、良いか…


と、そんなこんなで舞台発表が迫っていたの。予め沙悟浄と八戒に小道具として舞台の設置に取り掛かって貰って、孫悟空には客寄せの宣伝としてビラを配って貰ったの。


これで準備万端よ!


「でも、私達、本当に出来るのでしょうか?もう緊張して胸がバクバクしておりますよ」


「心配ないわ?練習した時間、頑張った事は無駄にはならないわ!きっと成功すると私は信じているわ!」


「法子さ~ん!」


夫婦の肩を掴んで私は頷いて返したの。


そして舞台当日。


孫悟空が上空に向けて火炎弾を飛ばすと、花火のように弾けてお客が入って来たの。予想以上に盛況だわ?賑わいがてら八戒と沙悟浄には外で出店を開かせてお小遣いを稼ぐ。やっぱり旅に軍資金も必要だからね?それから孫悟空が分身を出現させると、脇役の衣装に身を包み待機する。


「孫悟空?意外と様になってるわよ?それに心なしか慣れてない?」


「…昔、よくやらされていたからな。サーカスって見せ物やら喋る猿とか…」


「?」


何か懐かしさに顔色が曇る孫悟空に私は意味分からないでいた。


そして、お客様が並べられた長椅子に座って準備が出来たのを見計らって。


「お待たせしました!本日はお忙しい中私共の舞台を観に来てくださり本当に有り難うございます。そこで始まる前に注意が幾つかありますのでよく聞いてくださいませませ」


私は注目される中で、


「舞台中の飲食は禁止。スマホや音の鳴る物は先に電源を切り、録画や撮影機器の持ち込みは禁止致します」


お客様は皆、ハテナ?みたいな顔になっていたけど私は気にせずに続けた。


「取り敢えず楽しんで見てくださいね~では、開幕ぅうう!」


八戒と沙悟浄が太鼓を叩いて演出する。幕が開くと黄袍怪さんが中央に立っている。


「私には金も権力もある。せっかくだから面白い事に使いたい。そうだな?うむ。誰かの人生を左右し私の思い通りにしたい」


何と腹に立つ金持ちの道楽でしょうか?そんな道楽を孤児院の身寄りのない娘で実験を始めたの。


「えっ?私に?」


先ずは偽名で里親となって娘に教育を始めたの。戦闘訓練に軍師の英才教育。娘はみるみると才能を伸ばしていく。


「彼女は魅力的だ…何故だろう。彼女から目が離せない。もしかしたら自分は」


金持ちのボンボンはそんな娘の成長を離れながら覗き見ているうちに、やがて恋に落ちている自分に気付いたの。


「私は彼女にもう夢中だ。しかし、彼女とどう近付けば良いのだ?私が娘の里親だよ?と、告げるが良いのか?いや、それはまだ早い。下手をしたら全てが台無しになる。どうしよう?」


そこで素性を隠して近付き、仲を深めていった。


そんなある日?


二人で会話をしていた時に彼女の孤児院に入る前の話を聞いて驚きを隠せないでいたの。だって、彼女を捨てた両親が自分の両親であったから。二人は血を分けた兄妹だったの。


「そんな…何かの間違いでは?何の悪戯だ…」


自分の一族は確かに女児が産まれると、育てずに始末する習わし。しかし彼女は殺されずに孤児院に預けられ命拾いしたの。彼は彼女が妹と知りながらも愛している感情が捨てきれずに、迷い苦しんだ結果…


「まっ、良いか?バレなきゃ良くね?」と開き直り恋愛を始めたの。


二人の芝居はまるで役が二人に乗り移ったのか?二人が役に入り込んだのか?まさに名演技だったの。


まぁ…本人なんだけどね?


お客様も二人の芝居に心惹き込まれて黙って見ている。二人の行く末がどうなるのか?唾を飲み込みつつ息をするのも我慢していた。

しかし二人の運命は良くない方向へと転落していく。

二人の事を知った両親が二人を引き離そうと、娘に対して暗殺の刺客を向け跡取りの息子を連れ戻そうと企てたの。しかし彼は暗殺の者達を返り討ちにしていく。実は彼もまた屈強の戦士だったから!


二人は追手をかわしつつ、ついに決断し駆け落ちをしたの。 二人は逃亡の末で考えたの。手柄があれば、それを理由に関係を認めさせられないだろうかと?


そこで当時、名のある武将達が指名手配にしていた犯罪人を自分が倒そうと決めたの。しかし敵わなかったの。そこで二人は路頭に迷い地獄の日々が続く。その間も刺客は来たの。


「こうなれば私は両親と戦う!」


「そんな!御父様とお母様と?それはいけません!」


「しかし、いつになっても私達に平穏な日々が取り戻せないではないか?」


「それは…」


二人は戦う決意をしたの。二人は故郷へ戻り両親を説得せんと試みたの!


「御父様!お母様!もう刺客を送るのは止めてください!私達はもう逃げも隠れもしません!」




私は二人の芝居を観ながらクライマックスに向けて緊張が走る。後は見せ場の刺客達との殺陣のみよ!そこで一網打尽にして両親の胸ぐら掴んで頷かせて終了よ!頑張って、二人とも!


あ・と・は?


ラストの段取りは孫悟空の分身達が刺客に変装して乱闘騒ぎするだけ…なんだけど?


当の孫悟空が居眠りをしていたの。きっと疲れていたのね?仕方ないわ…


の、はずないでしょ!


刺客との乱闘はどうなるの?見せ場は?もしかして芝居ぶち壊し?今までの苦労は?舞台に取り残された二人は?今後の旅の資金はどうなるのよ!?


しかし演技中の黄袍怪さんの前には刺客達が現れて囲んでいたの。孫悟空の奴、ちゃんと分身を用意していたのね?安心したわ。


「おっ、うん?おっ…?」


黄袍怪さんは殺陣の段取りが練習との違いに戸惑いつつも、容赦なく振り払われる刀を躱しながら芝居を続けていたの。けど、数人がかりの刀を避けるうちに斬り傷が?


「あれ?おかしくない?」


私は慌てて舞台裏から寝ている孫悟空に近付くと、起こし始めたの。


「ちょっと!起きなさいよ?何を寝てるのよ?起きなさい!孫悟空!」


「ふにゃふにゃ?」


起きない孫悟空に、仕方ないから取り敢えず頬をひっ叩いて起こした。


「なぁ?何すんの?」


涙目の孫悟空に私は胸ぐら掴んで見下ろしながら威圧する。


「お前は何を寝てるのかな?」


「えっ?」


聞くに、置いてあった饅頭を食べたら眠くなったと?眠り薬?それは今、舞台にいる連中が仕掛けた巧妙な罠?って…


「あんたが食い意地悪いからでしょ!置いてあったもんを勝手に食べるからでしょ!馬鹿!」


「すみません」


孫悟空を叱咤した後、舞台では黄袍怪さんを襲う連中。恐らく本物の刺客ね?


「俺様が助太刀するか?」

「駄目よ!芝居が台無しになるわ!こうなったら…」


舞台上に斬りかかる刺客に向かって私は手にした数珠を掌に乗せて狙いを付ける。私の数珠を刺客に当てて助太刀するわよ?


「数珠魔弾!」


私から放たれた数珠は暗闇の中で、客に見えない速度で刺客の足に当たり体勢を崩させると、黄袍怪が殴り付けて倒していく。


「この調子でどんどんいくわよ?数珠魔弾!」


体勢を崩していく刺客達はどんどん倒されていき、客席からは歓声があがる。そりゃ~マジの殺陣だもんね?芝居として見ていたら迫力違うわよね。


そんな時、黄袍怪さんの攻撃の手が止まったの?どうしたのかしら?黄袍怪さんの目の前には二人のボスらしき者が立っていたの?誰?


「どうして貴方が?」


えっ?


そこに現れたのは黄袍怪さんの顔見知りだったの。


「お前達がいつになっても戻らぬからな?私が直々に出向いたわけだよ」


「叔父様?」


「ふん。お前達の両親がお前達を許そうと、私はお前達の関係を許せん!いや、お前達が生きている事が許せん!」


「意味が分かりません?御父様とお母様が私達を許したとは?叔父様の言葉はどういう意味ですか?」


「言葉通りだ。私が青鬼族の実権を手に入れるためにはお前達の存在が邪魔なのだよ!だから、お前達には消えて貰うぞ!」


すると他の刺客達が刀を抜き始める。一触即発の中で観客達も唾を飲み込む。


まだ芝居だと思っているのね?都合良いわ!


「こうなったら私達が方をつけましょう?」


「いや、問題ないだろう」

「えっ?」


孫悟空の冷静さは黄袍怪の実力を知っていたから。例え刺客が武器を手に襲おうと、相手にならないと知っていたからなの。


案の定!


黄袍怪は叔父様を返り討ちにしたの。


ラストは黄袍怪夫婦の愛の歌で盛り上がる。


そして二人は手を握りあってハッピーエンドの幕を閉じたのでした。





観客は満足気に退場を済ませた後、私達は捕まえておいた黄袍怪の叔父様を縄で縛って問い質していたの。


「どういうつもりなのかしら?返答次第では殴りますよ?」


「いや、暴力は不味いですよ~」


「沙悟浄?私を止めるつもりなの?」


「いや、だって…もう…」


「えっ?」


既にボコボコ後だったの。これ以上殴ったら命がないみたいね?


「でっ?」


黄袍怪さんの叔父は一族の権力を手に入れるために、黄袍怪夫婦の存在が邪魔だったの。黄袍怪さんの両親が二人の関係を認めていた事も知らずに、駆け落ちで出て行った二人が戻って来ないかと不安で刺客を差し向けたようなの。


「取り敢えず解決ね?」


私は叔父と配下の者達に脅しをかける。


「次に黄袍怪さん達に手を出すもんなら、今度は私達が貴方達を…根絶やしにします!」


「何だと?お前達は何者だ!あはははは!私に手を出してみろ?潜ませている我が配下達がこの村ごと焼き滅ぼしてやろうぞ!」


「あっそ?そんな真似が本当に出来るのかしら?」


そこに孫悟空と八戒が戻って来たの。


「待たせたな?」

「ただいま帰ったらよ」


すると二人は私に向かって拳を見せたの。つまり、このサインは片付いた事。


「やれるもんなら、やってみなさい?でも外に隠れてた刺客の皆さんは、私の仲間が全員おねん寝させて来たみたいよ?」


「へっ?」


そう。全て段取り通りね?


「お前ら!許さん…許さんぞ!私が戻ったら、総力かけてお前達を!」


「出来るのか?お前に?」


孫悟空が叔父の顎を掴んで見下ろして言う。そして顔を近付けて囁いたの。


「この俺様が孫悟空。いや?その昔、美猴王と呼ばれていたと知っても向かって来るなら、次は容赦しねぇぜ?」


「あっ…あぁぁ…」


相手がかつての伝説の大魔王の美猴王だと気付いた叔父は震え上がっていた。



「も、もう致しません。い、命ばかりはお助け…ください…命ばかりは!」


懇願する叔父に、私は冷たく言ったの。


「却下!」


孫悟空が如意棒で殴り付ける。


「うぎゃああああ!」


ナンテね?


殺したりしないわよ?もう!の寸前で如意棒を止めたのにお漏らしをして気絶する叔父を見て私達は溜め息をついたの。


「これで、どうかしら?」


私は黄袍怪夫婦に問いかけると、黄袍怪は私の手を握り感謝しながら答えたの。


「まぁ?これだけ言い聞かせたから、もう二度と馬鹿な真似はしないと思うわ?」


「本当に有難うございました。私達は故郷に戻れただけで満足です」



そして黄袍怪夫婦は私達に何度も感謝で頭を下げて、故郷へと戻ったのでした。



そんなこんな。


次回予告


喧嘩?仲直り?


それは美味しい物を食べてよね?

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