黄袍怪夫婦の試練!
黄袍怪夫婦に襲われて返り討ちにしたのは
良かったけれど・・・
私は法子
私達法子一行は旅の途中で出会った…ん?
ちょっと違うわね?
実際には襲って来た所を返り討ちにしたのだけど、どうやら孫悟空の知り合いらしいのよ?
「助けてください!助けてください!助けてください!助けてください!」
泣いて懇願する夫婦に孫悟空は笑っていたの。
でも、孫悟空達が苦労したこの頑丈な黄袍怪を殴って倒した人間って、本当に人間なの?
しかし確信したかのような八戒と沙悟浄、孫悟空の様子から凄い人がいたんだと思ったわけよ。
で?この後、どうしようか?とにかく放っては置けないわよね?
「でっ?」
脅える夫婦に私達は提案をしたの。
「特に貴方達は人間を襲うわけではないのよね?」
「は、はい!私達夫婦は幸せに暮らしていければ良いのでして…故郷に錦を飾る事さえ出来れば!」
「錦を飾る事が目的ね?それは別に名前が有名になれば良いわよね?」
「えっ?えっ?あ、はい」
何が始まるか分からないまま納得する黄袍怪夫婦に、私達は互いに考えをぶつけ始める。私達は全員で輪になって会議を始めたの。
「さて、本日の議題はどうすれば有名人になれるのか?です。何か案があれば挙手をして根拠と手段を述べてください」
また悩み始めると沙悟浄が恐る恐る挙手をする。
「はい、沙悟浄!」
「やはり指名手配の妖怪を退治するのが良いと思います!」
「そうだな?倒して名を上げるのが手っ取り早いんじゃねぇか?」
「でも、指名手配の妖怪だなんて、そう簡単にいるの?」
「そうらな。オラ達が退治されるわけにいかないからな?」
「別に有名になる手段が妖怪退治に絞る必要ないわよ?何かないかな?」
「何か大会とかあれば?」
「大会?」
そこで私達は近隣の村の祭りで行われている大会を調べ始めたの。
さて?何が集まったかな?
絵画に、陶器?料理大会に舞い踊り?
「黄袍怪さん?こういった才能あったりします?」
当たり前のように首を振る黄袍怪さんに、私は特訓を命じたの。
因みに師匠は沙悟浄にやって貰う事にしたの。
「さ~て、先ずは基礎から始めますね~」
陶器は土探しから始めるの。それから練って練って、形作る。この程度が出来ずに数十、数百と「ガシャン!」と桁ましい音がして涙を流して諦めたの。
「無理です…私に陶器は無理です…私はダメな妖怪なんですよ…ダメな…」
「陶器に固執しない。次は絵画よ!沙悟浄、教えてあげなさい?」
「了解!」
絵画も駄目だった。
「………」
「そもそも細かい作業は私には向いてないのですよ…私はダメな妖怪なんですよ…私にはもう…無理」
「あなた…」
二人は抱き合って泣き出すと、私は叱り飛ばす。
「無理!とか軽々しく言わない!」
そうよ?無理って最初から諦めていたら、やれる事も出来ないし、可能性も潰してしまうからね?
「だったら身体を動かそうぜ!」
孫悟空の提案で次に始めたのは舞いだったの。しかし私達に舞いは出来ない。出来ない事は教えてあげられない。
「無理よ!」
私は諦めた。
「あ、オラ…舞いが出来る奴を知ってるらよ?」
「はい?」
そこで私は孫悟空と八戒に舞いが出来る助っ人を連れて来て貰ったの。
「何なの?何?せっかくのデートを邪魔してどういうつもりなの?」
二人が連れて来たのは以前出会った白骨乙女さんだった。どうやら白骨乙女さんは人間だった時に旅の舞姫だったらしく、過去に孫悟空達の前で披露した事があったらしいの。
「成る程ね?私も貴方達には恩があるから、少しくらいなら手伝ってあげるわ?」
「ありがとー!白骨乙女さん!感謝するわ」
それから白骨乙女さんの扱きが始まったの。
「ほら?足上げて!次はステップ。次はターンして?違うわ!こうよ?こう!」
実践する白骨乙女さんの舞いは本当に綺麗だった。
「うむ。惚れ直した」
気付くと骨覇美神さんが頷きながら魅とれていたの。
「いつの間に…」
孫悟空が驚きつつ引いている中で、私は白骨乙女さんを見詰める骨覇美神さんにちょっかいする。
「本当に惚れてるのね?」
「無論。そもそも前世では夫婦であったからな」
「LOVEね!」
「ラ、ブ?」
とにかく白骨乙女さんの舞いの特訓に黄袍怪さんだけでなく、奥さんもやらされていたの。だって夫婦共同作業のが良いよね?
そして二週間の修行の末、村の舞踊祭りに参加したの。
緊張する黄袍怪夫婦。
「最後まで見届けたかったけど、私達はこれで?」
「ありがとー本当に助かったわ?」
「う、うん」
「?」
白骨乙女さんと骨覇美神さんはそそくさと旅立ったの。
何だろう?何か慌てていたような?
「頑張っ!二人共!」
「頑張って来ます!」
「やるだけやってみます」
舞踊祭りが始まった!
数時間後、
二人は泣きながら戻って来たの。結果は参加者の中で最下位。流石に付け焼き刃は無理だったようね?
白骨乙女さんも結果が分かっていたから逃げたのね?
余計に自信を無くして落ち込む夫婦に私達は取り敢えず泣き止むのを待ったの。
「落ち着いた…かな?」
二人は完全に暗くなっていたの。もう何もしたくないと諦め顔で空を見ていた。
私達はダメな妖怪を作ってしまったようね?
「って、それで終わらせるつもりか?」
「何よ?孫悟空?他に何か手段があるって言うの?」
「ない!」
「そうよね」
私達も諦めかけていたその時、黄袍怪夫婦が突然良からぬ会話をしていたの。
「もう私達別れましょ?きっと私達は結ばれない運命だったのよ」
「何を言ってるのだ?私が不甲斐ないばかりにお前に苦労をかけてしまった。けど、私はお前と離れたくない!お前はどうなんだ?」
「私だって別れたくはないわ…けれど、悔やむ事ばかりです」
「悔やむとは私と一緒になった事か?」
「それは…」
「それは?」
私達は聞き耳立てて唾を飲み込んだの。
「美味しい物をもっと食べた~い!」
「はぁ~~??」
「だって、私達朝からずっと食べてなかったでしょ?」
「確かに!気付けば腹が減っているではないか?」
そう言うと、黄袍怪夫婦は昼飯を食べに食事処へ行ってしまった。私達は呆然と見届けているしか出来なかったの。それから黄袍怪夫婦は満腹になると開き直るように告げたの。
「もう、どうでも良くなりました。はい。私達は柵は全て捨てます。もう家の事はどうでも良いです!好きなように生きます!幸せハネムーン・リターン致します!」
「あっ?」
どうやら開き直ったみたいね?でも、これで良いのかしら?本当にダメな妖怪を作ってしまったの?私達?いや、ダメダメ!
私は黄袍怪夫婦を呼びトメルと、胸ぐら掴んで睨んで言ったの。
「な、何をするのですか?私達はもう諦めたんですよ~だから、離してくださいよ~」
「あんた達、それで本当に良いの?いえ、あんた達が良くても私が許せないわよ!何か、私に関わってダメになる姿をそのままにしておけないわ!だから、一からやり直すわよ!」
「そんなぁ~」
「そんなじゃ、ない!私が今から貴方達の性根を変えてあげるわ!そうよ調教よ!洗脳よ!」
もう私自身、何をやりたいのか分からなかった。
「とにかく貴方達を有名にしてあげるわ!」
でも、どうやって?
それから私は黄袍怪夫婦に鬼のような猛特訓でしごく。
腹筋、筋トレにジョギングからの発声練習!
「あ・え・い・う・え・お・あ・お!か・け・き・く・け・こ・か・こ!さし…」
「もっと腹から声出す!」
「はい!」
「腹式呼吸を忘れない事!頭の上から抜けるように声を出すのよ!」
「あぁあああああ!」
次は朗読、滑舌からイントネーション、演技指導から歩行練習。
えっ?
何をやらせているかって?
もう分かるでしょ?
芝居よ!
黄袍怪夫婦に私が作った台本で芝居を仕込んでるの。
物語は孤児院の娘に金持ちのボンボンが名前を伏せて近寄り、金の力で自分の好みの娘に育て上げる話。
成長した娘に自分の素性を隠して近寄り恋に落ちる。しかし彼は彼女の秘密を知り驚く事になる。だって彼女は自分の生き別れの妹だったから!
それでも彼は妹と知りながらも恋に落ちたの。それを許さなかったのが二人の両親!二人を引き離そうとするけれど、二人は駆け落ちして逃げてしまったの。
当然、二人を連れ戻そうと刺客は来たわ?切なくも結ばれない恋の顛末に二人の選ぶ道は?
「私は私が恐いわ!だって何よ?この作品。もしかしたら私って文才あるのかしら?とても続きが気になるわね。私の隠された才能に私自身が驚きを隠せないわ」
すると黄袍怪夫婦は私の書いた台本に涙ぐむ。
「どうして私達の過去を知っているのですか?」
「へっ?」
「私達の経緯を、まるで見てきたかのように書かれた台本ですわ」
「へっ?」
そこで私は気付く。もしかして私は無意識に二人の過去を覗き見ていたの?創作じゃなくて二人の記憶を文にしたの?もしかして?
「………」
さっきまでの自画自賛が恥ずかしくなって来たわ。
まぁ…
そんな事は今は気にする必要ないかぁ?
「良い?3日後に貴方達は公演するのよ!ボヤボヤしてないで気張りなさい!」
「は、はい…」
二人は自分自身の物語を演じる事になったのでした。
さて?
「孫悟空、八戒、沙悟浄は二人のサポートよ?小道具に音響、脇役に呼び込み、やる事は沢山あるからね?ちゃんと働きなさい!」
「へ~い」
そんなこんなで私達の初めての戦いが始まったの。
と、そんな私達を怪しい連中が覗いて見ていたなんて?
コイツら何者?とにかく人波乱が起きそうね?
そんなこんな。
次回予告
何が始まるのか?芝居?
この展開は読めなくても、続きは読んでよね?
法子




