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お題小説短編集

足首に痂皮

作者: 独りっ子

お題「足首」「痂皮」

先輩のスカートは長いです

「足首挫いたっす」


 脱色した髪を払って、スタイリッシュに彼は告げた。軽薄、もしくは親しみやすい笑みを浮かべた彼を見て、彼女はため息をつく。


「それがどうした」


 茶番に飽きたように、彼女は退屈そうに相槌を打つ。それでも彼はへこたれず、彼女に話しかける。


「先輩、足首を挫いたんで歩けないっす」

「はあ」


 必死に治療してほしいアピールをする彼だが、彼女は一切動こうとしない。


「先輩、保健室まで運んでほしいっす」

「何故私がそんなことをしなければならない。そこらへんを徘徊してそうな君の友人にでも頼んでくれ」

「先輩久しぶりに長文話したっすね」

「そうかもな」


 ここで誤解を解いておきたいのだが、彼らはお互いに恋心など抱いていない。男女の友人という関係は一歩間違えれば恋に発展してしまう関係ではあるかもしれないのは確かだが、それでも本当にただの友人という関係を貫き続けるパターンもそれなりにあるのだ。主人公と、その幼馴染が送るハーレム系恋愛作品など、いい例だろう。例え幼馴染が恋心を持っていてもハーレム系主人公は他を選び、幼馴染は相談役などに落ち着く。報われなさすぎ、といつも思うのだがそんなことはどうでもいい。


「俺、一切この場から動くつもりはないんで、先輩お願いっす」

「嫌だ。先輩権限を行使する」


 彼らは幼馴染といった関係ではない。しかし、そこそこ仲がいい。馬が合うのだろうか。仮にも先輩なのになんちゃって敬語しか使わない彼は、後輩として反面教師になる。そういった考え方をすれば幾人かはこの馬鹿な後輩の存在価値を見出すかもしれない。もしそれで誰もいなかったら、この後輩はただちチャラいだけの変な奴となってしまう。まあ、そういった生活をしている彼が悪いということで誰も興味を持たないだろうし、どうだっていいだろう。


「これほどひどい怪我は初めてなんで辛いんすよー。だからお願いしますよー」


 足首を挫く怪我が今まで一番ひどいとは、どれほど話を持っているのか。それとも、今までどれほど外に出なかったのか。気になるところではあるが、彼女が無言でスカートを捲りあげた。


「あっ……」


 彼は驚きの声を上げた。


 なぜならそこにはあざのように大きな痂皮(かひ)が存在していたからだ。

蛇足

「あ。大丈夫っすか?」

顔面蒼白な彼が問うと、彼女は恥ずかしそうに答えた。

「転んですりむいた」

よく見ると、膝のあたりに広がっている痂皮(かさぶたのこと)だが、ひどく薄かった。表面だけをするむいた、軽い傷のようだ。

「……なんか足首挫いただけであそこまで言ってすいませんっす」

「いや。大丈夫だ」

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― 新着の感想 ―
[一言] さらに蛇足 「先輩、肩貸しましょっか?」 「いやいい。一人で歩ケロイド」
2015/10/14 18:46 退会済み
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