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ウイルス戦争  作者: 甲斐のTORA
7/10

消失

「真波紗綾、どうして……どうしてそんな姿になったんだ……」


決して動けるはずの無い傷を負い、致死量の血を流し続けながら立ちはだかる化物、真波紗綾に堅護は驚きを隠せなかった。


昨日まで何も変わることのない日常に対し、それなりに楽しんで生きてきたつもりだった。日常に慣れ親しんできたばかりに、この状況は異質さを増大させた。


「おい!答えろよ!」


語気を荒げて言うものの、真波からは吐息とともに喉を震わせた音しか響かなかった。

ジリジリとだが、確実に堅護と真波の距離は縮まっている。もしも話が通じる相手なら何とかなるのかも知れない、そう思っていた堅護だったが失敗に終わった。


周囲は壁面に囲まれ、前方には化物と成り果ててしまった真波。夏樹を助けた今、もう堅護が守らなければならないものはない。


諦めようとした時、堅護は自分の当初の目的を思い出した。


自分の馬鹿さ加減に嫌気が差し、自らを力強く殴りつけた。


「真波紗綾、アンタをその地獄から救い出す」


血の味がする口で静かにそう述べた堅護は、ゲームの主人公のような粋な構えをとった。


気持ちが恐怖から戦うのと救出の為に戦うのとでは断然違う。堅護は不思議と相手に立ち向かっていた。


「ア゛ア゛ア゛」


真波から発せられる耳障りの悪い不快音が壁面に反響し、それが戦いの合図となる。


「はぁぁぁっ!!」


堅護は実戦経験など何も持ち合わせていない。主に一方的に殴られるばかりで勝利したことは一度も無いのだ。だがしかし、敗戦から得られる事は勝利よりも大きかった。


真波が姿勢を低くして突進する。チーターのような素早い動きに、堅護は驚くべき反応速度でそれを飛び越えた。標的を見失った真波は、先ほど堅護が背にしていた壁に鈍い音とともにぶつかった。奇跡的に回避した堅護は、そのチャンスを逃すことなく出口へ走り出した。


真波の身体能力を総合的に見て、スピードとタフさは人智を超えていたと判断しての行動だ。逃げるためではない、堅護なりの真波を救う考えである。


疾駆しながらも堅護は思考を止めない。救う手立てを必死に作り出す。

真波はさらに血で顔面を濡らし、形相も更に劣悪に歪みながらも起き上がり、追走を開始した。


自分が今まで生きてきて経験したことの無い事例にすぐさま解決案が出せる訳がなく、堅護は疲弊した身体に鞭打って夏樹を逃がした通りに逸れた。そこに夏樹の姿は既に無く、無事逃げ切った事を確認した。


解決策が見つからぬまま細い路地を全力で走り抜けた時、空は夕空から暗い闇に交代していた。完全な夜に変わっていることは理解できるものの、普段は多くの人が出入りしている通り一帯に、一人の少女が手提げカバンを背負い、見慣れた後ろ姿でのんびりと歩いていたのだ。


「あれは……」


堅護が立ち止まり独り言を呟くと、その少女は体ごと堅護の方へ向いた。真波同様もしかしたら化物かもしれないと一瞬身構えた堅護だったが、


「おっと!そこに見えるイケメン君は堅護君!どしたのー?」


独特の口調と、大袈裟なモーションでこっちに向かって手を振る少女を見て堅護は安堵した。


少女の名前は日高ハル(ひだかはる)。夏樹の一つ下の妹で堅護と同じ高校に通う生徒だった。


安堵もつかの間、堅護を追って路地から抜け出した真波が堅護を視認し、ニタリと気味の悪い笑みを浮かべた。


「ハルちゃん、こっちへ!」


言うと同時に堅護はハルの手を掴んで走った。


「あわわわわ、堅護君何事!?誰かに追われてるのっておっと、真波さんじゃない♪堅護君逆ナンされてるんですかー?このこのぉっ」


一緒に走っていながらも畳み掛けるように話し掛け、なおかつ肘で堅護の脇腹を突くハルに堅護は、


「今そんな話してる場合じゃないから!真波紗綾でも見た目明らか普通じゃないし!」


窮地に対して鈍感なハルにツッコミを入れてもハルは、うん?と首を傾げるだけで言うだけ仕方無いことを悟った。


かと言って堅護も真剣に考えているものの、正確には事態を飲み込めていないのだ。解らないことが多すぎて対応できず、時間を引き延ばしている、そのように感じた。


「キャッ」


思考の波が止まったのはハルの小さな声と手から温もりがなくなったからだ。

ハルは足を抱えてうずくまっていた。


「ハルちゃん!」


すぐにハルを迎えに行こうとする堅護は、ハルの数メートル先に真波が迫っているのを目視して、決断した。


ハルを迎えに行かずにその上を飛び越え、


「ハルちゃんは……逃げて」


静かな声で後ろに言葉を投げ、


「真波紗綾!」


眼前に迫る化物の名を叫んで、


「……すまない」


消え入りそうな音を発し、


二人の身体が交差した。


先に崩れ落ちるのは堅護、数秒後に真波が倒れ、堅護は腹に大きな風穴を空けて絶命する。


無音な通りで一人しゃがみ込むハルは呆然としていた……。

本当に申し訳ありません!


サボっていたわけではないんです、アイデアの神様が私の下に降りてこなかっただけで……(逃避)


また新しいキャラが出てきて、微妙な切れ目ですが、決して投げたりせずに最後まで書き続けますので、どうかよろしくお願いします!

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