日高夏樹について
夕陽が降り始めた頃、堅護は細い路地を茶色い長い髪を持つ少年と並んで歩いていた。何故か説明するためにはほんの少し時間を遡ることになる。
堅護が校舎から出て校門を出ようとした時、
「おーい!堅〜!」
と背後から呼ぶ声がしたのだ。
堅護が振り返ると、そこには日の光に照らされ髪が金髪に映る少年が笑顔でこちらに走ってきていた。
「お疲れ〜!」
堅護は右手を挙げてそれに答える。
人懐っこい笑顔を見せる少年の名は日高夏樹。童顔で身長も女子の平均と変わらないものだからすごく小さく高校のマスコットキャラクターとして皆から愛されている。堅護とは昔ながらの仲でいわゆる幼馴染というやつだ。
「はぁ、はぁ……。何してたのー?遅かったね」
「いやー、ちょっと、いろいろあって……さ」
走って近寄ってきた夏樹は息を整えるため小休止を挟む。だが堅護は明らかに反応が鈍い。
「堅、僕に何か隠してない?」
「な、なんのことですか夏樹さん?」
更にそっぽを向く堅護。
「いやだなぁ、夏樹さん。夏樹さんに嘘ついたことなんてありましたっけ?」
「一昨日、先に帰ってくれ俺ちょっと学校に忘れ物してきたからって言って花壇に水あげる係でもないのに水あげに行ったり」
「あれはー、頼まれ事してたの忘れたからだし」
「昨日、堅護には特に関係のない不良の喧嘩の仲裁に入ってタコ殴りにされたり」
「ちょっと待て。誰にも話してないのにそんなことまで知られてるのは親友としてちょっと怖いぞ?」
今度は夏樹が余所見する番となり、
「堅護のことなら何でも知ってるさ」
気恥ずかしいのか口を尖らせながらモソモソと言った。
このセリフを女の子に素直に言えたりするときっとモテモテになるのになぁ、と思いながら、
「今回はしゃーない。時間がないから素直に話すよ。うちのクラスの生徒が例の無差別失踪の件に関わっているらしいんだ。だからその生徒を見つけに行こうと思ってる。しかし、夏樹はこのまま帰ってくれないか?危険に巻き込みたくない」
夏樹の大きな瞳に視線を向けていた堅護だったが、逆に夏樹の目に射止められていた。
「いつもいつもいつも堅護はそうやって僕や皆のこと蔑ろにして一人で事を成そうとしてるの、ホントは嫌なんだよ?僕って何さ、親友だよ?親友が重大な危機なのに放っておくのはもう嫌なんだよ。僕も力になりたい、だからついて行かせて?」
堅護は夏樹がここまで真剣に心配してくれていたことに驚きを隠せなかった。お互い良い友だと思い信頼してきたが、自分は知らぬ間に夏樹のことを突き放し続けていたのか、堅護には自らの気持ちははっきりと理解できなかったが、夏樹が苦しい思いをしてたのは理解できた。
「……しゃーないなぁ。一緒に行こうか」
泣きそうな顔をしている夏樹の頭をポンポンと撫で、そう呟いた。
直ぐ様校門の方へ向き直ると、堅護は歩み始める。
涙が目尻に溜まっていたのは秘密だ。
一日遅れになってしまいました(汗)
できれば毎日少しずつ投稿したかったのですが……(笑)
言い訳させてもらうとこれは僕が高校生の時に考えてた話で手直ししながら投稿していたのですが、手直しどころか全文書き直しの嵌めに……(笑)
数少ない読者様重ねてお詫び申し上げます(ーー;)
できる限り急いで投稿していくのでこれからもよろしくお願いします。