第三話
カンテラの明かりが揺れ、洞窟の壁に映っていた影が、揺らめいた。
天井が低く、壁一面には大きな棚があり、ずらりと瓶が並べられていた。
そして、部屋の一番奥にあるテーブルで、怪しげな女性が談笑していた。
「マジュリーナ、あの戦争中の国の人・・・・。誰だったかしら?シー・・・シーオドアとか言う人に、薬をあげたら?」
美しい黄金色の髪の女性が聞いた。
「残念ながら、私の薬は高いのよ。あの人間の価値とは比べ物にならないの」
マジュリーナと呼ばれた、ローブを着た、顔の見えない女が言った。
「でも、どうかしら?あなたのお気に召す人だと思うのだけれど」
「そう?おもしろい事になる気はするけど・・・。レージュの実が足りないのよね」
黄金色の髪の美しい女性はくすりと笑った。
「やる気満々じゃない」
「私、ああいう人、好きよ。己の欲望のまま、突っ走れる人」
「でも、どうせ負ける運命なのに、知って何の得をするのかしら」
マジュリーナは答えた。
「未来って、変えられるじゃない。彼は、詳しい未来を知って、これからどうすればいいかを知りたいのよ」
「確かに変えられるわ。でも、あの男の影響力は、そこまででもないもの。知った所で何一つ変えられないわ」
「そう・・・」
黄金色の髪をした女性は、マジュリーナが茶を濁した事に気付き、細い眉をしかめた。
「なによ。何か違った所でも?」
「私の薬でどれくらい影響力を変えられるか、と思って。そうなったら、どうなるかしらね、ルーナ」