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倉橋 裕太

初投稿です。

つたない部分も多くあると思いますが、頑張って書きました。

大したものじゃありませんが、良かったら読んでいって下さい。

感想やレビューをくれたら嬉しいです。

「おれの名前は、大和 リョウ。少しうっかり屋なところもあるが、負けず嫌いで曲がった事が嫌いな、ごくごく普通の高校一年生だ」


 という、書き出しで倉橋くらはし 裕太ゆうたは自作の小説を書き始めた。倉橋は小説を書くのが好きだったのだ。だから思う存分小説を書けるであろう文芸部に入部を決めた。倉橋自身高校一年生。今が十月だからもう入部してから一ヶ月になるだろうか。高校入学してしばらくどの部に入るか迷っていたとき、季節外れの文芸部の入部説明会を聞いて、倉橋はこれほど自分に合った部は他にないだろうと思ったのを覚えている。


「ここでは本を読むのはもちろん、自分で小説を書いたり、好きな作家について話し合ったり、とにかく本や小説を読むのが好きな人。また書くのが好きな、もしくは書いてみたいという人は是非我が文芸部に入部してみてください。自分の好きなペースで来ればいいので他の部との掛け持ちも可能です。興味がある人は、来てみるだけでいいので、部室に足を運んでみてください」


 という説明を聞いて今まで自分で小説を書いても他人に見せる勇気が湧かなかった倉橋はいい機会だと思った。ここなら、自分と同じ様に小説を書いてみたいと思う人が大勢いるのではないか。そういう人と小説を見せ合い、感想を交換したらどんなに充実するだろうと期待に胸を膨らませていた。しかし、実際入ってみると小説を書いてみようと意気込んでいるのは倉橋だけであり、他の部員は全員図書室で借りた本を読むのがいい所で、もっとひどい人は学校に持ち込んだ電子ゲームを通信させて放課後の時間を費やしていた。それでも、やはり自分の小説の感想を他人に聞くというのは長年の夢だったので、今こうして自分ひとりだけ黙々と小説を書いている。


「それ、見るからに面白くなさそうな小説だよね。ありきたりすぎて、今や誰もやってないと思うわ」


 と、真っ向から倉橋の小説を批評する同級生――佐賀さが 奈美子なみこがいるからか、倉橋は最近自分には才能がないのではないかと落ち込み始めていた。いつもの事だ。倉橋が何か書く度に悪態をついてくる。素直な感想なんだから仕方ないじゃない、と彼女は言う。素直すぎるのではないかと倉橋は文句を言いたくなるが、この部で倉橋の小説に感想をくれる人間は他にはいない。腹は立つが倉橋にとっては貴重な存在だった。


「まず、一人称ものの小説で主人公がいきなり自分の事を語りだす小説ってロクなもんがないのよ。私、そういう出だしで始まる小説は絶対最後まで読みたくない」


 いつもの事だったが、ここまで言われて黙っていられるほど倉橋の気も長いわけではなかった。


「何で勝手にそう決め付けるんだよ。最後まで読まないと面白い小説なのかどうかわからないだろ」

「わかるわよ」


 あっさりと言い放つ佐賀に、倉橋を怯みそうになるが、それでも引き下がりたくはなかった。


「何でわかるんだ。おれは小説の面白さを判断するときは最低でも必ず三分の一あたりまでは読むようにしてるぜ。最初の二、三行でその小説全部の面白さがどうしてわかる?」


 佐賀は、「わかってないなあ」とでも言いたげに溜息をつき、


「だってさ。そういう主人公の人格っていうか、人間性はさ。その小説の中の、主人公の行動や、発言、考えから読者に伝わるものでしょう。それを最初にべらべら説明されたら拍子抜けよ」

「それでも、他のストーリーが面白いかもしれない」


 苦し紛れな反論だった。


「最初に説明しなきゃ主人公の事すら伝えられない作家が書いた小説なんて他が面白いわけないし、他が面白かったとしても読む気しない。ついでに言うと、大和リョウって名前もダサい。二番煎じってレベルじゃないよね、それ」


 最後はくすくす笑いながら、佐賀は言った。なら、お前がもっと面白い小説を書いてみろ。おれに読ませてみろ――と言いたかったが佐賀は「私は、読むの専門」と言って、頑なに書こうとはしない。自分は文芸部に落ち込みに来ているのだろうか。そうして、実際に落ち込みかけたとき佐賀は言った。


「ほら、うなだれてないで次、書いてよ。次」

「次って今書いてるのはもう書かせる気ないのか。最後まで書かせろよ」

「そんな面白くなさそうなのは、とっととやめて次いけって。次回に期待してるから」


 女子らしからぬ粗忽な言葉使いだ。とにかくこの女は辛口なのだ。


「まぁ、書きたいって言うなら止めはしないけど。ただし私は読まないからね」

「書くよ。お前に何て言われようがこれはおれの小説だからな」


 そう言うと、倉橋は執筆を再開した。「あーあ、どうせつまんないのに」とでも言いたそうに佐賀は微笑んでいた。気にはしない。もう佐賀とは一ヶ月、同じ部にいる。彼女の奔放ぶりに慣れるには充分だった。倉橋は慣れる事に関しては自信がある。しかし佐賀は何を考えているのか、未だによくわからない。

佐賀はどんなに辛口に批判しても、「書くな」とは言った事がない。おそらくこれからも絶対に言わないだろう。それが倉橋には理解できなかった。そこまで嫌いなら、どうして律儀に人が書いたものを読んで感想――という名の駄目だし――をしてくれるのか。

 

「そもそもここは文芸部なのに、どうして小説を書きたいと思っている奴がおれしかいないんだ。ここは文学が好きな奴が集まる場所だろ。おれ以外にいてもおかしくないのに」

「前は、いたんだよ。それも結構たくさん。それが何故か私が感想を言ったら誰も書かなくなっちゃった。だから今は自分が好きな作家の情報交換場所くらいにしかなってないみたいだね」


 そういう事だったのかと倉橋は納得しつつげんなりした。

 そりゃあ、あんな辛口で批判されたら書く気も失せるだろう。

 この女のせいでみんなが小説を書くのを避けてるのだ。


 倉橋は決めた。この小説は何としても完成させる。

 それもこの女の度肝を抜くぐらいの面白さにしてやるのだ。佐賀が自分に惚れてしまう程の。

 それも自分なりのやり方でだ。

 「読みたくない」と言われたとしても、無理矢理にでも読ませるつもりでいた。

 そして、死んでも「面白い」と言わせてやる。

 倉橋はそう決めた。

とまぁ、こんな感じに倉橋に負けず劣らずの駄文です。

一応連載って事になってますが、次回最終回ですよー。

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