皇帝ラウディア
この世界はサラビアと呼ばれ三つの大陸が立ち並んでいる。その中で一際大きいディアと呼ばれる大陸にジュラール帝国がある。
ジュラール帝国は今でこそ大国として諸国を牽制しているが、元々は王国として周辺国と同盟を結んできた中小国の内の一つであった。
今から70年程前、大陸全土を襲った疫病により死者が続出し、大陸全土で国が傾き荒廃していくことに誰もが嘆き苦しむ状況下であった。その状況下の中、誰もが諦めかけていた時にジュラール国にて疫病に対する免疫剤が開発され、人々を病魔から守ることに成功した。これを機にジュラール国は諸国から一目置かれる存在となる。
この免疫剤の効果によって人々は救われ、各国は荒廃してしまった国の立て直しに取り掛かるが、人手不足もあり容易に進めることが出来なかった。そこでジュラール国と同盟を結んでいた五つの周辺国と合併し協力体制で国の立て直しを進めることとなった。大陸の中で一番早く力を取り戻すことができ、大陸で大きな力持つことにもなったのである。
同盟を結んでいた五つの国は、公家と呼ばれジュラール王家の次に権力を持っており、王家と婚姻関係を結ぶことで結びつきを更に強化していった。
以上がラウディアの曽祖父の時の話である。
ラウディアが王位を継承をしたのが五年前の18の時である。情勢は安定しているとはいえ周辺国との関係は良好とは言い難かった。ラウディアは、前皇后ロザリアの子であるため嫡子として早くから王位継承者としての教育を受けることになる。ところが前皇帝には側妃が五、六人居り異母弟がいたため後宮内で暫し謀略がめぐらされる。返り討ちにするのは言うまでもないが、ラウディアの中に貴族の女に対する憎悪が芽生え始める。また自分の母が父に執着をする様は見ているだけで嫌悪感を抱き、他の側妃を罵る様子に皇后としての威厳は何もない。ラウディアの目には母としての姿は無く、哀れに打ち捨てられ執念に駆られた唯の女にしか見えなかった。
父の死後、自分を利用することは分かっていたので病に倒れ呆気なく旅立っていったのは不幸中の幸いであった。異母弟はともかく実の母を死に追いやるのは後味が悪い。そのすぐ後で父が亡くなったのは母上の道連れにでもなったのではないかとの噂があったが、あの執念深さでは信憑性があるなとラウディアは思った。父が亡くなったお陰で生き残っていた側妃も城から追い出せ、ラウディアは清々としていたが厄介な問題が持ち上がり始めることになった。
ラウディアの正妃問題である。
ラウディアは、娘や孫について熱く語る貴族達を冷めた眼差しで見やり一刀両断してきたが年が経つにつれ、この話題を回避することが難しくなってきた。
皇帝として即位したと同時に宰相となった五つ上の幼馴染フレデリックは何も言わないが「早く決めてくれませんかね。大臣や貴族共が煩くて執務の邪魔なんです。毎日毎日飽きもせず執務室に来られ、延々と語った挙句、肖像画を置いて行かれ処理に困ります。」という無言の訴えがわき出ているのが分かり、それも鬱陶しくて仕方がなかった。
そこで城を飛び出し気分転換に遠乗りに出掛けたことで、寵姫となるマリエッタと出会うことになる。
ラウディアは初めて感じる思いに戸惑いつつも振り回され、周りが見えていなかった。
宰相はこの時遠乗りを阻止できなかったことを死ぬほど後悔する羽目になり、寵姫の裏の顔をはがそうと奔走していくことになる。
次は、ラウディアとマリエッタの出会いの予定です。
レイシアは、その次くらいの予定のつもりです。