第1話 光り輝く砂の上
やっと本編に移ります。
「え……そ……だ……」
聞いたことがない声が聞こえる。
「だ……だい……ぶ……」
何かに遮られて声が聞き取りずらい。
「だい……ぶ……です……か……」
だんだん遮られているものが消え、聞こえやすくなった。急に視界が黒から水色へと変わる。
「ここは……?」
見たことのない空、そして、左目に包帯を巻いた少女が私の視界に入った。
「だ……大丈夫ですか……?」
少女が私に話しかける。とても挙動不審な女の子、それが私の貴女への対する第一印象だった。
「海岸へ来てみたら、えっと……君が倒れていて……」
そのっ……えっと……
言葉を詰まりながら話す少女が私を助けてくれたのか……。
「起きてほっとしましたぁ……」
「!!」
胸をなでおろす少女の胸に手を当てている手が人の手じゃなかった。黒に近い紫色の手で、人の手の何倍もの大きさだった。
「貴女の……その手は……?」
おそるおそる聞いてみる。
「はわっ! えっと……この手は……その……手じゃないんです。『羽』というものなんです……」
「『羽』……?」
「そうです。この世界には、その、神様の化身である、えっと……10人の色を司るものがいて……その人たちだけに与えられた『羽』を私はなぜか生まれたときから、うんと……あったんです」
『羽』……どこかでその言葉を聞いたことがある。
『□□はもしかしたら□を司るものになれるかもね♪』
ズキッ―――――――
頭が痛い。そして、また聞いたことがあるような声。
「だ……大丈夫……?」
心配そうに私を見詰めてくる。そういえば少女の名前を知らない。
「そういえば、貴方の名前は?」
もっと早く知るべきだったかなと私は思った。名前も知らないで話し続けるのは失礼過ぎたかも……
「わっ、私はヘルン。黒と黄色系を祀るアンダー族です。貴女は?」
「私は、ルイ。……あれ? 私、何族だったかしら……」
自分の名前以外何も思い出せない。自分はどんな人間でどの色を祀っているのかも分からない。
「もっ、もしかして記憶喪失ですかっ!」
はわわわわっ
ヘルンは手と化した羽を口にあてる。
「分からないけど……そうかもしれないかも……」
「!!」
ヘルンが突然何かひらめく。
「だっ、だったら一緒にチームを組みませんか!?」
とっても展開早くない?
喉まで出た言葉を必死で引っ込める。
確かに今は何も分からないし、もしかしたらそのうち記憶が戻るかもしれないから、ヘルンと一緒にいる方が何かと安全かもしれない。
その後のことは記憶が戻ってきてから考えよう。
「……分かった。一緒にチームを組もう。よろしく! ヘルン」
ぱぁぁぁぁ
顔が見る見るうちに明るくなっていく。
「よろしくね! ルイ!」
ルイとヘルンの長い長い旅が始まろうとしていた。