第1章 プロローグ
俺がこの世界に来て感動したことがある。
それは、色があること。
俺がいた世界ではあるのは黒。単色の世界だった。
それが普通だった。もうひとつ色とは言えないがあった。
それは光。色を持たない光もあった。
初めて見た色は黄緑。本で読んだ『草原』という所らしい。
とうとうこの世界に来ることができたのか。
その嬉しさよりも何倍も黒以外の色を見れたことが嬉しかった。
そして、空。あの世界では真っ黒の漆黒の空だったがここの空は違う。
水色をしている。その水色のキャンバスに白い雲が描かれていてとても美しかった。
この世界には水色を司る□□□がいるのだな。
俺がいた世界ではとうの昔に□□□の一族は皆、殺された。他の者の一族も皆、殺された。
色を司る一族が皆殺しされるとその色の宝玉は粉々になり消える。それと、その色の宝玉を盗むかでその色が世界から消えてしまう。
その色が収めていた所に住んでいた者は消えはしないが、黒一色の世界……単色世界になってしまうのだ。
ただ、この世界はまだそれがどこにもない。ならば、それを防ぐべく俺は宝玉を奪う。
まずは……緑。緑系の色を司るローリエの所だな。
……そう言えば、□□は無事なのだろうか?
急に心配になってきた。兄としては当然のことだろう。
しかし……捜すわけにはいかない。残された時間はあと少し。□□□の助けがあってこそ『過去』に来れたのだ。
邪魔が入り、ずいぶん時間が減らされたが……。
きっと、□□も宝玉を捜しに行っているに違いない。今は目先のことだけを考えよう。
□□とは、あの地で逢えるはずだから。
今はローリエの所に行って宝玉を奪うことだけに集中しよう。